携帯電話との果てしなき戦い:02

〜バカゾーに脅された〜

 2003年08月29日(金)のこと。
 また暴力を振るわれた……。明らかに年下のバカゾー(馬鹿なワカゾー←カタカナなのは軽蔑の意)に。

 碌にメシも食えなくて、それでも夜遅くまで働いて、規律を乱すこともなく、嫌なことは自分にフィードバックさせてばかりで……僕は「誠実」に生きている心算だ。自分(の精神と肉体)に対しては誤魔化してばかりだが、集中力を欠く迷惑な独り言を連発する形式上の上司には舌打ちも嫌な態度も出てしまう。好適対象には結局どうしたって甘くなる。どうやって、嫌いな人には嫌いな、好きな人には好きな態度を、わりと誤魔化さずに出せている。
 だから「携帯歩き(歩きケータイ)」をやってる奴らが前から来ると、そいつが「前を見ていない」ことを思い知らせたくて、わざとぶつかっていく。「ぶつかっていく」というよりは「よけてやらない」だけなんだけどね。そいつが前を見てれば、よけられる筈だからね。僕や他の人々に「俺のことよけてくれよ、俺はそれで当然なんだよ」と無言で強要しているも同然だ。そんな甘えをみすみす見逃せるものか。
 で、今日は、こともあろうに「自転車携帯(しかもメール!)」にぶつかった。
 これとて、僕は直進しただけ。そいつは「よけてもらえる」ことを期待して、見知らぬ僕に甘えていた。なかでも、見るからに非常識で、危険なのは火を見るより明らかなコレなど、もはや感情レヴェルで「ムカつく」ものだ。
「携帯しまえ、馬鹿野郎」
 こんな言葉を、僕はもう何千回吐いてきたことか――ただ、今日は「予感」がした。相手は「バカゾー」だった。きっと……と思っていると、やはり、右足に「すんごく軽い」痛み。前輪のタイヤで小突いたらしい。っていうかこれも痛みじゃなく、「風に揺られた」程度のもの。威嚇のつもりなんだろうな。情けない。
「待てやぁ!」
 悪いな、俺の両耳はおまえの阿呆声がよく聞こえない。精一杯脅したつもりだろうが、まったく恐ろしくないぜ。
「どっちが悪いんだ? 馬ー鹿」
 一瞬振り返った僕は、そう言い残して踵を返す。すると後ろからは、
「悪いとかじゃねぇだろう!」
……お話もできない、脳味噌の小さい子供らしい。
 無視して、この時間になると摂取せずには居られない酒を求め、酒屋へ歩く。するともう一度、「風の囁き(自転車版)」が右足にやってきた。
「や・め・て」
 バカゾーの方さえ見ず、そう言っただけで僕は酒屋へ歩いた。今は、酒が欲しい。こんな馬鹿を忘れられる酒が――バカゾーは、もう追ってこなかった。なんだ、情けない奴だな。
 だが、面白いことに、酒屋からの帰宅中で信号待ちをしていたところに、「バカゾー」が「バカノジョ」をステップに乗せた自転車二人乗り(これは警察から直々に「非常識的行為」に認定されています)で通った。バカゾーは僕を見た筈だ。しかし、にっこりと微笑んであげると(目だけは笑ってないんだが)、目をそむけて通り過ぎていった。
 でも、あれでも、「早稲田大学在籍の大学生」なんだよな。断定するけど、きっとほぼたぶん間違いなく。
 バカゾーの言葉が、僕の脳裏に今でも残っている。
「悪いとかじゃねえだろう」
 何をどう正当化しようってんだ、馬鹿。
 悪いとかじゃないなら、何だ? 言ってくれよ。
「おまえらに迷惑かけても関係なく、俺の好きにさせてくれ」
 か?
 自覚せぬ、幼稚なエゴイストめが。

……今回は、哀しくもなんでもなく、
 ただ、
 虚しかった。
 早いところ、携帯電話を規制する法律を制定してくれ。じゃないと、正しい人間こそ気が狂れていく。
 あと大学、利益ばかりじゃなくて合格基準を改めろ。これ以上、馬鹿を量産しないでくれ。適応能力ないのに「誰かと同じはイヤ」ってのを増長させるのは、CCCDの量産と同じだぞ。