古本屋のふしぎ

〜誰か解決してくれ〜

 古本屋の店員をしていて、不思議に思ったことがままある。

 まず、なぜか開店直前に来て待っている人が多いこと。
 開店時間をあちこちに明記していて、その人も何度も来ているのに、なぜかいつも開店直前に来る。単にその時間にしか来れないのじゃなく、わざわざ10分前に来る。
 そういう人は大半が売却(というより処分)目的なので、紙袋や段ボールを抱えてじっと待っているのだが、じゃあ開店してから来ればすぐに入れて重たい思いをしなくてもいいのに、と思うものの、なぜかその時間に集中する。BOOK・OFFの前で開店を待っている人を見たことがないのだが、葉桜書房にはそういうお客がなぜか多い。大量だと査定に時間がかかるので預かることになり、早く来ても結局変わらないのに。地方の地域密着型だからだろうか。

 でもそれはお客の都合とか店の開店時間を知らなかったとかでまあわからんでもないのだが、これは本当にわからない。コミック全巻を売りにきたかと思えば、なぜか1冊だけ抜けている人。
 全巻揃っているのならわかる。だが、1冊だけ抜けているのはなぜなのだ? それだけわざわざ別の店で処分したとも思えないし、大量処分でなくそのコミックだけの売却なので、うっかり忘れたわけでもない。それも最終巻がないのなら「そこまで集めたけど買わなかったんだな」と思うけど、真ん中あたりの巻に限って抜けていることが多い。全10巻だったら5巻あたり。その巻だけなくしたのかと思えば、そうでもないらしい。現にそういうお客が不思議と多い。お陰で買い取ってもセット売りができず、棚スペースを食う。そして揃っていないので売れる確率も自然と下がる。

 これも謎だった。あるコミックの最新巻を売りにきて、その1巻を買って帰った人。
 それが『こち亀』みたいなブツならわかるが、ストーリーものなのだ。最初を知らずに最新に入れるのもわからんし、売るぐらいなのだから揃えているわけでもないのに最初を知りたくなるという。うーむ、わからん。その逆なら「ああ、最新の情報を得たいのだな」と納得できるんだけどね。

 売りにくることで言えば、サイン本が不思議と入ってくる。それもン十年前の小説とかなら飽きたり醒めたんだな、と思うけど、わりかし新しい漫画のサイン本。うーむ、サインもらうほど好きだったのに処分できるものなのかなぁ。
 しかもサイン本って実は「書き込み」と同じ扱いになってしまうので、古本屋では殆どが価値が下がる。そりゃ手塚の直筆だったら価値は上がるけど、それでも「○○さんへ」というのは難しい。だってその本人じゃないから、価値が余りない。そのためBOOK・OFFでは買い取り不可になるし、葉桜書房でもランクを落として買い、その部分をマジックで潰して値段を下げて売る。たぶんサイン入りだと高くなると思ってる人が多いんだろうけど、それが実情です。CDなんかもそうなんじゃないかな。ジョン・レノンならまだしも、清春のサインは価値がないだろう。現に安くなる直前に黒夢をすべて処分した時、まったく高くならなかったし。そういうのが欲しい人には嬉しいんでしょうけどね。

 また葉桜書房は片田舎にあるできて間もない瑣末の古本屋なのに、かなーり買い取りが多い。
 これは投げ槍な査定をするBOOK・OFFと違い、1冊1冊を計算するので自然と買い取りが高くなり、噂となって売りにくる人が多くなったのもあるし、地域住民の皆様が気楽に立ち寄れるというのもある。
 でも、出たばかりのコミックや話題の小説が結構入ってくるのはなぜだ。それらの買い取り値は、確実に売れるものは高く売るから高く買い取る新古書店には負けるのに。まあ、ありがたいことなんですけど。
 中には「BOOK・OFFなら20円高く買い取ってくれる」と売却をやめた人もいますが。そこまでのガソリン代や手間を考えると20円って……。

 あと売りにきた本に挟まっているものも不思議ですね。栞なら当然だし出版社が違っていてもまだわかる。写真やポスト・カードも栞代わりにしてたんだろうな、と思う。
 けど、枯れ葉が挟まっていたのはびっくりした。君は狸か。
 書類が入っていたことも多くある。まだチラシやプリントならいいんだけど、NTTの請求書や上司に提出する筈の報告書、果ては離婚届が入っていたことも。
 もっとすごいのは、裸のCD。こ、これを栞にする豪傑がいるなんて……。

 そして最大の個人的な謎。小さい話ですが。
 最近、なぜか小説の『電車男』の単行本が売れた。
 それもいい加減値段下げないと処分できないな、と思っていた時期の、微妙な値段で。
 もうレンタル屋にもDVDがないぐらいのシロモノなのに……BOOK・OFFでは売ってないからか?
 まあ、これもありがたいことなんですけど。

 そうそう、これは自己解決したふしぎなんだけど、隠れた売れ筋がひとつあります。
 それは『名探偵コナン』の1巻です。
 なぜかわかります?
 タネを明かすとね、『コナン』はテレビで見てるチビっ子が多いので、途中からしか知らない。それで時々、回想や声真似で新一が出たりするので、最初を知らなくても「コナン=新一」だと理解できる。
 けれど、「じゃあ何で新一は小さくなってコナンになったの?」と思うんです。
 だから1巻を買って、ああなるほど、と納得する子が多い。新品より安いし、かなりの確率であるので古本を求めて。
 よくできた本当の話です。

 他にも思い出したら書き足しますね。