セット売りに悩む
〜まとめるべきかバラにすべきか〜
毎回コミックで悩むのが、「完結本」などの「セット売り」。
多くの古書店でやってるでしょう? 完結したコミックをまとめて売っているっていう。中には最新刊までをまとめる店や、「どうしてここでまとめるの?」という店もありますが(先日、『はじめの一歩』の20〜40巻だけをまとめたセットを売っている店を見て「なぜここでまとめる?」と疑問に思ったものだ)。
これは全巻が欲しいというお客には一気に揃うからありがたいでしょうし、その中の1冊だけ欲しいという人は「ケチケチしないでバラにしてくれよ」と思うでしょう。
でもね、これは古書店の常套手段なのです。
まず、まとまっているので売れれば大きい。棚に並べるのは限界があるのでまとめれば別の場所に置ける。何冊かだけ売れ残ることがない。
というように薔薇色に見えますが、その実、セット売りだとなかなか売れないのも現実です。
だって高くなるんだもの。それに殆ど持っているのに欲しい巻はセット売りにしかないということもある。
だから「何でバラ売りにしないんだ? 俺は○巻だけ欲しいのに」と言う方もいます。
でも、前述したような理由でまとめている、というより、「まとめざるを得ない」のです。
何より、「スペースの限界」が大きい。棚には限界がありますから、全巻を並べるとそれだけで相当のスペースを食ってしまい、他の本をしまわなくてはいけなくなる。ということは商品ラインナップが少なくなるわけで、ひょっとしたら仕方なく引っ込めた本を欲しがっていたのに、見当たらないから買えないお客さんもいるかも知れない。それから売れ残りも怖い。後半だけ買われてしまい、前半はそのまま棚で死んでいる、とか。そうなるとやはり、売れないのに棚のスペースを食うことになってしまう。まとめておけば売れたかも知れないのに。
かといって、何でもかんでもまとめられるわけじゃありません。
喩えば『こち亀』なんかはまとめてしまっても、買う人はそうそういない。ストーリーものじゃないし、続刊だし、全巻一気に買いたいという人はなかなかいないから。そういう巻数の多いものは喩え完結していても置き場所に困るし、自然と値も張るので買い手がなかなか付かない。
人気のあるものもどうか。それらは「どういうものかとりあえず読んでみたい」という人が多いので、まとめてしまうと立ち読みもできず、かといって一気に買うほどの冒険心も湧かない。面白かったら1冊ずつ買う人もいるでしょう。だからそういうものはセットにはしない。話題作ならまとめなくても捌けるし。
それでも、ある程度まとめなくてはスペース的に限界がある。
そう思って僕がまとめ売りにしようとすると、店長は「読んでから買う人もいるだろうから、なるべくまとめないように」と言うのだけれど、その通りバラにしたら、やっぱり売れ残ったりしてスペースを食うだけになるんだよね。さらには、相次ぐタダ読みで本が傷んでしまったりする。でもバラでも売れるものは売れる。うーむ、難しいところであります。
で、中には、まとめ売りを見て「これの○巻だけバラで売ってくれませんか?」というお客もいる。
これにはものすごく悩んでしまう。売ってあげたいところだけど、1冊だけ抜けるとセット売りができず、かといって棚には残りを並べるスペースもなく、バラになると逆に売れる見込みがなくなったりする。だから相談のうえ決めるんだけど、正直、バラにはしたくない。売ってあげたいんだけど、店側としてはね。事情があるんです。
瑣末な古書店ではこういうのが実情ですが、ネットの古書販売ではセット売りがあたりまえですね。バラは売りません、という店が多いです。ましてやネット・オークションなんて、昔の漫画だったら1冊だけ売っているのは珍しく、セット売りばかりです。
何より、スペース的に限界があるんですよ。何も意地悪してセットにしているわけじゃありません。BOOK・OFFのように大規模なら棚にずらーっと並べられるし、抜けても倉庫から補充できるでしょうけど町の古本屋にはそれができない。一部のBOOK・OFFにはセット売りをしているところもありますが。
だから、セット売りは「しょうがない」と思ってください。
そりゃね、無尽蔵にスペースがあればセット売りせずに全部棚に並べますよ。でも、そんなことできる古書店はないんです。
欠けている巻はなるたけ新刊で買うか、ダメモトでネット・オークションに賭けてみましょう。そうしてくださると幸いです。
蛇足ですが、「××の○巻はないんですか?」と聞いてきたお子さんがいて、セットになっていたそれをしょうがなくバラして手渡したら、最初から最後までペロッと読んでぼーんと置き棄てていきました。
読みたいだけで買う気がないならバラさせないでくれ。さすがコドモ。
*追記*
最近は、全巻セットのみを販売するネット古書店も存在します。
古い漫画なんかはそうしても値段はそれほど高くならないし、揃っていないと買う気にもなれないでしょう。オークションでも全巻セットの方が多いしね。増刷しない古い漫画は出版社在庫切れが多いから、1冊だけ欲しいというケースは少ない。それがストーリー漫画ならなおさらのこと。喩えば『キン肉マン』全巻を欲しい人に対して、15巻だけ欲しいという人は絶対的に少ないわけで。
なのに、葉桜書房ではセット本すべてを「バラでも売ります」と表記してしまった。
これはのちのち首を締めることになると思うのだけど……「お金のない子供にも少しずつ買えるように」という店長の指針ですから。
『ハイスクール!奇面組』愛蔵版を1冊だけ買う子供なんて、そうそういないと思うんだけど。仮にいたとしても、残りが余計に捌けなくなるだけだと思うのだけど。新しい漫画ならともかく、古い漫画の全巻セットぐらいはターゲットを大人に絞った方がいいと思うのだけど……。