「立ち読み」と「タダ読み」

〜お前らは「客」じゃない〜

 子供達の長期休暇が終わる頃。
 ひと安心、というのが正直なところだ。なぜなら、彼らは長期休暇をいいことに、「立ち読み」ならぬ「タダ読み」を繰り返してきたからだ。
 そのほぼすべては、漫画を読みに来る学生(小学〜高校)だ。小学生がダントツに多い。
 彼らは「これ買おうかどうか、試しに読んでみよう」という「立ち読み(試し読み)」ではなく、「買う気は全然ないけどタダで好きな漫画読めるから読もう」という「タダ読み」だ。
 つまりは、「エアコンのきいている無料の漫画喫茶」として古本屋を利用している。
 これはBOOK・OFFにはあたりまえな光景だが、それを瑣末の古本屋で毎日やられると痛い。それ以前に、人間として浅ましく思えてしまう。
 あまつさえ、彼らは「立ち読み」をしない。
 床に座ったり平台に置いてある本の上に肘掛けたり床に売り物の本を置いたりする。そう、彼らは本を買う気などないのだから、本を大切にするという思考がない。ましてや自分のものではない店の商品なんぞや。買わないから関係ない、自分が楽であればそれでいい、なのだ。さすがにそういうのを繰り返している「タダ読み常連」には注意するが、数が多くてキリがない。
 床に座るのは、殆どすべてが「学生」だ。それも「買うつもりは微塵もなく、タダで楽に好きな漫画を読める環境」に甘えている学生が。こういう連中が当然のようにいるから、ソファを置いている古書店には懐疑的な視線を向けてしまう。連中は、「快適な環境でタダ読みする」思考しかしないのだぞ。それを持ち上げるようなことをしてどうする。本当に「試し読み」している人は立ち読みで吟味して買うかどうか決める。ソファやカフェなんてスペース食ってタダ読みを助長するだけで、売り上げには繋がらない。ましてや漫画がシュリンクされていない古本屋では、金はないが快楽を得たいという図々しい学生は好き放題だ。
 断言しよう。
 子供は、タダで快楽を得ようとする。
 しかし本来、快楽は相応の金を払わなくては得られないものだ。
 だから、それを無料化してはいけない。
 だが子供は弱みを突くのが得意だ。
 だから、漫画なぞ買うまでもなく、タダで読んで当然と思っている。
 葉桜書房の小学生の「タダ読み常連」は、結構多い。
 長期休暇に限らず休日にはほぼ毎日通う、遠慮なくケラケラ笑う少年。大勢で訪れめいめい座ったり立ったりして数時間過ごす女子集団。いつもふたりで来ては座ったり大声で話したり床に本を置いて読んだりする数時間を1日に2〜3回繰り返す男子……。
 これら全員、小学生だ。長期休暇を無料で有意義に過ごすため、マナーもモラルも持たない彼らは遠慮なしにタダ読みに来ている。
 なかでも、図々しいこと極まりない会話を紹介しよう。

「今日は何時までいる?」

「おまえ古本屋寄るの?」
「買わないよ。立ち読みするだけだよ」

「BOOK・OFFだとこれは105円だけど、105円の価値もないね」

「金持ってきた?」
「持ってきてない。読むだけだから」

「また明日読みに来ようっと」

……これら全員、小学生。
 そして彼らが買ったことは、一度もない。

 当店のネットでの紹介コメントに、近隣高校生の「タダで漫画が読めます」というものがあった。
 これが実情だ。
 彼らは、「ちょっと欲しいから買うかどうか試し読みする」のではなく、「買う気ないけどタダで読めるから読むだけ読んで買わない」のだ。
 それで、読んだ本は棚にしまうこともされずにぼーんと平台に投げ飛ばされている。あるいは雑にしまって表紙を折ったりする。
 こういうのを、接客業を繰り返してきた僕は「お客のエゴ」だと片付ける。店側に何の不手際もない。
 タダより高いものはないのだ。

 ある日、小学生が「『ワンピース』の最新刊はないんですか?」と聞いてくるので、買い取ったばかりのものを慌ててクリーニングして「これですよ」と出したところ、読むだけで買わなかった。最初から最後まで、ペロリと。つまり、欲しくて聞いてきたのではなく、タダ読みしたくて聞いてきたのだ。無料で最新の快楽を得たかったのだ。
 こうなると、漫画をシュリンクしている新刊書店とか、再販制度を肯定せずにはいられない。彼らはシュリンクなしになるとタダ読み常連になるだろうし、再販制度が崩れると値崩れしてからでないと買わないだろう。
 子供は社会性や常識を持たない。
 だから快楽に正直だ。
 僕はそんな子供が大の苦手です。

「立ち読み」と「タダ読み」は似て非なるものだ。
 よーく認識を改めてほしい。

*追記*

 たまたま立ち寄ったある古書店では、
「座り読み禁止」
「棚によりかからない」
「本を傷付けたら弁償してもらいます」
「守れない人は即刻退場してください」
 とあちこちに張り紙されていた。
 やはりどこも困ってるんだなぁ。
 葉桜書房もそのぐらい徹底してやれるといいのだが、そうなると地域密着型の店だけに、客足が遠のくからなぁ……。