葉桜書房はこんな古本屋
〜成立から現在までの歩み〜
葉桜書房は、片田舎にてずっと建築中でした。
何年もかけて基礎、土台、ようやく内装とできていき、住民から「本屋ができるらしいよ」と噂されていました。覗いてみると、雑誌用のマガジン・ラックが店頭にあったので、こりゃ新刊書店かな? と思っていました。
ところがどっこい、ある日、看板ができたら「古本」と書かれていたのです。
しかも窓には「従業員募集」の張り紙まで。
古本屋の経験がある僕は、割と悩まずそれに応じました。
オープン前は、店長とその親類、それに僕でとにかく値段付け&陳列に四苦八苦。
何せ棚がガラガラで、オープンに間に合いそうにない。
でも店長の親類は店員じゃなくお手伝いなので、オープン前には来なくなる。
なのでオープンは、棚がガラ空きな状態での見切り発車でした。しばらくは値段付けに集中。だからしばらくは噂を聞いて来たお客さんが結構いたものの、商品が少ないので買わずに帰ってしまうことがあたりまえでした。
そんななか、女子高生の「Yちゃん」がバイトに入りました。
Yちゃんは学校が終わってから2時間という変則的なシフトで、値段付け要員として3ヶ月働きました。ここでびっくりしたのは、午後2時あたりに店に来たことです。いまの高校って6時限目までビッチリじゃないんですね。
Yちゃんは女子高生ながら、いろんなことに興味を持つ娘でした。なのでマルクス、エンゲレスとか、ソローの『森の生活』なんてものを買っていったこともあります。ひゃー、今時の女子高生はこんなの読まんだろう、って感じですが、きちんと『ワンピース』や『ナルト』も読み、流行も追っていました。
やがて棚が充実して、それじゃあこのあたりで、と円満退職しても、Yちゃんは時々葉桜書房に来てくれます。そして「どうして君、こういうの読むかね」という女子高生らしくない本を買っていきます。ううむ、女子高生を馬鹿にできないなぁ。
ちなみにお恥ずかしながら、メル友です。
しばらく店員は僕ひとりという時期が続きました。
何人も面接に来たんですが、それがことごとく残念な人ばかりで……。
まずは、今まで工場で働いていたという30代の男性。どうして工場から古本屋なんだろう、と思ったものですが、面接中の店長の質問と彼の回答を耳にして、ハァ? となってしまいました。
「うーん……電卓打ったことありますか?」
「ありません」
えええええ。
世の中に電卓打ったことない人っているんかいな。
結局彼は不採用だったのですが、店長の話によると父親の経営する会社でぬくぬくと働いていたそうです。で、その会社が駄目になっちゃったということで、とにかく働きたいということだったそうです。
次に面接に来たのは、店長より年上の50〜60代の男性でした。
やけに快活で声が大きく、しかし普段は本など読まないという人。うーんこりゃ不安だなぁ、と思ったのですが、何より不安だったのは、彼がアルコール臭かったこと。しかも自動車で来てるんですよ!
で、僕が落ちろ落ちろと念を送ったにもかかわらず、彼は採用されてしまいました。本を好きじゃない人が本屋の、それも古本屋の店員なんかできるんか、と心配でしたが、それは杞憂に終わりました。
彼は、初日から無断欠勤だったのです。
なので即刻クビになりました。そりゃそーだ。
次に来たのは、20代の女性、「Mさん」でした。
またも「本は別に好きじゃないけどとにかく働きたい」という人で、まだ棚も充実していなくて人手不足だった葉桜書房の現状を鑑みて、店長は採用しました。
ですがMさんは、本当に本に興味がない。
流行を追うこともない。情報もない。知識もない。話しかけても話題もない。自分から話すこともない。
なのでどうしようか、という風潮になってきました。
そこへ新たな店員志願が訪れました。
その頃、僕は店長に「もう、募集要項に『本が好きな人』とか書きましょうよ」と提言しました。
でも店長は、「そう書いたら志願者が減る。とにかく誰でもいいから人員が欲しい」と返しました。
なので、その次も食品工場で働いていたというオバサマが面接に来て、うーんこりゃどうしたものだろう、となってしまいました。
それと同時期に志願したのが、現在のもうひとりのオバサマ店員(こう言うと怒られるかな)、「Nさん」です。
Nさんは最初は本を売りにきたのですが、それが何と岩波文庫のデカルト『方法序説』。それでMさんがまだ働いていたので従業員募集の張り紙は剥がしていたのですが、彼女は素晴らしいことに「店員募集してますか?」と聞いてきたのです。
こりゃひょっとしたら、ということになり、面接。そして万々歳の採用。よってMさんは「君はまだ若いから他に向いている仕事がある」ということになり、やっと人員が落ち着きました。
現在、知識豊富な趣味人の店長(ジャズとクラシックが好き)と、きちんとした読書家で映画などにも詳しいNさん(意外なことにKREVAとか好き)、文学から漫画まで乱読野郎の僕(聴く音楽もむちゃくちゃ)の3人で葉桜書房は落ち着いています。
漫画と文庫が主に動きますが、「古本屋」なのでレアな本もちらほらあります。ちょっと高値になりますが。また雑誌も扱っているので、暇潰しにはとても使える店になっています。
そこそこ広いワン・フロアで、最も動く漫画の通路は広く、学生の溜まり場になっています。
古本屋なので雑多な品揃えですが、常連さんも結構できて、近くの新古書店とは趣の違う品揃えになっています。
近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。