28.レシートに平手打ち
〜僕を人間不信に追い込んだ「ヤツ」〜
それはお昼時の、お客が行列を作っている時のことだった。
僕はソツなく次々とお客をかわし、列を解消すべく奮闘していた。
そこに現れたのが「ヤツ」である。
「ヤツ」は最初、普通の客だった。しかし「ヤツ」が本領を発揮するのは、釣り銭を受け取る時だった。
コンビニの釣り銭は、レシートの上にジャリ銭を乗せて手渡す。それが定石となっている筈だ。ところが「ヤツ」は違った。それを拒否したのだ。
「はい、こちらお返しが――」
と、レシートに乗せたジャリ銭を渡そうとした僕の右手に、鈍痛が走った。
「ヤツ」が、なぜだろう、僕の両手に平手打ちをかましたのだ!
無論、僕の両手は痛みに耐えかねてジャリ銭とレシートを落とす。何が起こったのかも解らず呆然としていると、「ヤツ」はレジの上に散らばった小銭だけを拾い始めた。
レシートが要らないがために、レシートを持つ手に平手打ちをかましたのだ!
そんなこと、する必要があるか? たったひとこと、「レシートは要りません」と言えばいいだけのことだろう! しかしクチがないのか、「ヤツ」は武力行使に出た。僕は呆然としながらも、散らばったジャリ銭を拾い集め、「ヤツ」に手渡す。
敗北感でいっぱいだった。
レシートが要らないがために人の手を打つ、それがどんなに非常識なことかはこのコーナーの読者じゃなくても解るだろう。僕は悔しさのため涙が止まらず、その日の業務はそこまでしかできずに、早退してしまった。
そして、コンビニ店員を辞める決意をした。
こんな非常識な行為でもって、僕に引導を渡してくれた「ヤツ」を、僕は今でも許さない。
これがトラウマとなり、コンビニを辞め、いっさい客商売ができないカラダになってしまったのだから。
こんな客もいるのが、コンビニの現実である。