21.罪と罰
〜コンビニ店員の密かな愉しみ〜
ああムカつくあの客!
そんな時、僕は少しでも客に復讐がしたくなる。そう、腹癒せのひとつでもしなくちゃやってらんなくなるのである。
ここに、その「些細な復讐」を公開しましょう。こんな行為をされたチミ、気を付けるのだぞ。あなたは私に対して不義理を働いたのだよ。ほっほっほ。
まぁ、全部が全部、なぁんの復讐にもなってないんですがね。くそっ。
[1.年齢アップの刑]
こいつはイチバン解りやすい。けれども、客には解らないことが殆どの、僕の最も行う行為である。というより、最近じゃあ無意識にそれを行っている自分がいるのが怖いのだが。
これはだな、まずレジの説明をせねばなるまい。レジは品物の合計金額を打ち出した後、客から受け取った金額を入力しなきゃならん。で、その後に計算を行うにはどうするのか?
コンビニにある殆どのレジは、次に「客層」ボタンを押すのである。
これは大抵、青と赤で区分けされていて、それぞれ「男性/女性」を意味している。その色の上に、客をパッと見た客層指定が示されている。それを押すことで計算終了となり、釣り銭が表示されるのだが、その客層指定には主にふた通りある。
まずは年齢モノ。
「12歳まで」「〜19歳まで」「〜29歳まで」「〜49歳まで」「50歳以上」といったように数字で指定されているもの。これが一般的。
でも中には、抽象指定モノもある。
「子供」「学生」「若者」「中年」「老人」「外人」なんてヤツがそれに相当する。これは寧ろ珍しいかも知れんけど、僕ぁ使ったことあります。
で、その年齢を「無条件にワン・ランク・アップ」してしまうのだ。つまり態度の悪い女子はオバハンに、行儀のなってない男子はオッサンに。時にはツー・ランクの場合もある。ええ、よほどハラが立った時ですが。
ふふふ、普段は注意を払っていない店員の指先をよぉく見るといいぞ。中年予備軍ならびに、老人予備軍よ! まぁテキトーに押してる人や場合も多いので、一概に「罰」とは言えんが。それゆえに見付かりにくく、見付かってもワザワザ客が怒ることでもなく、もし言われても「つい押してしまいました」などと言い訳もできる万能型の「罰」である。
あ、幼稚な客にはダウンさせることもあるが、それも然り。こうして馬鹿にするんである。僕はこれを「精神年齢制度」とひとりでひっそりと呼んで行っている。店員諸君、やってみたまえ。ちょいとはスッキリするかもよ。
[2.再来店をひそかに拒むの刑]
これはすっごく消極的かも知れんが、客にも解りやすいかも知れない。
会計を済ませた後「ありがとうございました」を言うのは店員として当然だが、その後に「またお越しくださいませ」と言うケースが多い。けれども、やっぱりイヤな客には二度と来てほしくないので、それを敢えて言わないのだ。
ただ勘違いされちゃ困るのは、忙しい時にはそれを言うタイミングもない時が多いということ。だから、それを言わなかったからといってあなたの態度が悪かった、というわけではない。しかし、明らかに言えるタイミングなのにそれを言わなかった場合「再来店を拒んでいる」と思ってくれたまえ。はーっはっは。
最近はそれにモーター加速がかかって「ありがとうございましたぁ」の後に、こっそりと小声で「……二度と来ないでくださいませー」などとボヤいたりする。うわぁ、暗い。
しかし、そう言いたくもなるのだよ、ほんと。
[3.汚いお釣りの刑]
こいつぁ読んでその通り。しかしね、僕は滅多にやりません。いつもは汚いお金はよけておいたり、ワザワザ取らなかったりします。
けれども、これが適用されるのは「明らかに両替目的の購入」をした客だ。万札でガム一個買ったりするヤツに、よれよれでカドが折れてる千円札を「並び順テキトーに」渡したり、片面はすっごくキチャナイ小銭を、その裏面を見せて渡したりするのだ。
大体にして、その汚いカネだって、客から受け取ったものだ。ここは銀行じゃないんだから、ピン札なんかありゃせんよ。そういうお金を選んでしまったのは、返金を急いだ偶然の産物なんですとも。おーほほほ。
[4.シールの刑]
上記の「両替目的のガム購入」にはコレもおまけします。つまり、イヤな客の品物が袋不要でストア・シールだけでいい場合、その品物にとって致命傷となる部分にシールを貼ったりするのだ。
ガムであれば、包装を剥がす部分に。ジュースであればプルトップに。袋モノであれば切れるギザギザ部分に……といきたいところだが、これはあからさまなので正直言ってなかなかできない。なぜなら苦情が来るのである。
店員にそういう反撃をさせたくなったのは、あんたですかんね。重罪に於いてのみ、適用したりしなかったりする。や、してないな、実は。
[5.意図的な声]
店員だって、人間ですもんね。そりゃイヤなヤツには声を荒げることもあります。「袋入れやすか?」なんてチンピラ口調になってみせたりもする。逆に、何も喋らない客(返答せず小さく頷くだけとか)には寡黙になってみせたりする。敢えてぼそっと「……したぁ」とか言ったりね。「ありがとうございました」の意でね。もちろん心なんざ入っちゃいないがね。
僕は無礼なヤツには態度が出ます。ヤな店員ですか? いえ、ただの人間です。
だから「ズル込み」にはよぉく使います。口調で相手の心理を読んでみなさい。っていうか店員のコトバなんか聞いてないか。ハナっから!
……というように、セコい復讐は幾らでもできる。
こーいうことをされた憶えのあるチミ、自分を見詰めてみなさいよー。
店員諸君にはぜひとも活用してほしいテクである。しかぁし、それが意図的なものであるということがオーナーにバレない程度に活用し、かつクビにならないぐらい働けるエリートにのみ勧める。ええ、暗い復讐だけど、店員にはそんぐらいしかできないってことが、君らには解っているだろうから……。