15.ストローによる受難

〜どこまで使うのか?〜

 昔は、コンビニには割り箸ぐらいしかなかったものだ。
 それこそコンビニ黎明期で「オラの村に畑じゃねえモンができちまっただよ」ってな時代のことかも知れないが、それでも充分だった。ジュースなんかゴキュゴキュじかに飲んでいたし、それでみんな充分だった。近くに便利な店ができたんだもの。寧ろ割り箸だけでも、もらえるだけありがたかった。
 不満はなかった。
 しかぁし、スプーンもフォークもストローもタダで取り放題と勘違いされる今になって、状況はまったく変わった。金もかかり店員の苛立ちも増幅させる「過剰なサービス精神」のせいで、お客様風情にいろんなものをあげなきゃいけなくなった。
 そこで問題が多いのが、ストローだ。
 喩えば弁当なら割り箸、カレーならスプーン、パスタならフォーク(割り箸を指定する人も多い)と相場が決まっている。ああストローだってそうさ。ジュースに付くものさ。本当は解りやすいものである筈だとも。
 でもさ、いつの間に「100円紙パックジュースをストローで飲む」時代になってたんだい?
 僕は口を開けて、じか飲みでゴキュゴキュ派だったから、そんなふうに世の中が変わっていることをまったく知らなかった。だからコンビニで「ストローは使いますか?」と訊かれて、ひそかに驚愕したものだ(そのあと自分で言う立場になるのですけどね)。
 これが、さらなる「サービスの過剰」というか「客のワガママ」を呼んだ。
 時折いるのが、500ミリのペットボトルを買ってストローをせがむ客。え? あのペットボトルって口を閉められて、持ち歩きがかなり可能なことが売りなんでしょ? だったらストローなんか付いてたらその利点が失われるんじゃないの? しかし上品さの基準を勘違いした婦女子どもは、ストローを求めるのだ。コンビニも馬鹿正直だから、そういう人のために長いストローをも供給しているのだ。
 甘やかし過ぎじゃねえのか?
 だってさ、ストローが既に付いてる小さい紙パックのジュースを買っても「これじゃストロー小さいから大きいのちょうだい」ってヘーゼンと言うヤツが結構いるんだぜ? そんな世の中に誰がした、ストロー様よ。
 そのうえ350ミリのペットボトルにも要求されるし、缶ジュースだってそうだし、あまつさえビン牛乳でもまるで当然という態度で「ストローくれないの?」なんて訊かれるし……どれに付ければいいんだよ!
 そんなにプラスチック/缶/ビンに口を付けるのがイヤか? そこにバイ菌でも潜んでるってのか?
 しかも1リットルの紙パックジュースを買って「ストローください」と言われることもあるね。愕然とするね。そんなデケえ紙パックにも見合ったストローをコンビニは用意してろってのか!
 どうにも、紙パックのジュースを「じか飲みゴキュゴキュ」すると、イキオイを誤ってダーッとこぼしてしまうという愚かな連中が後を絶たなかったようなのだ。そこでコンビニ側は「ストローを付けましょう」ということになり、それは世の中にサッと受け入れられ、イマイチだった紙パックのジュースの売り上げも上がって「コンビニにストローのサーヴィスありき」という方向性が定着したようなのだ。でも、昔はみんなその「ダーッとこぼす」のは自分の責任であると解ってたから、気を付けて飲んでいた筈なのだ。そう、自分が気を付ければいいだけのことなのだ。
 なのにその「他人の尻拭い」を、コンビニが肩代わりしたことになるんだな。
 だから「じか飲みゴキュゴキュ派」の人を見ると安心する。古き良き時代を眺めているようで。普段は苦手な体育会系男子も「ストロー不要ッス」なんて言ってくれたら、その頑丈なカラダに自ら飛び込んでいって骨を折ってやってもいいぐらい(明らかに嘘)なんだな。
 でも、屈強な男に限って「ストローください。クネクネ」が多いんだよなぁ。強靭な肉体を持つ男子が、紙パックのジュースをストローでちゅうちゅうと吸っている……その光景、結構違和感があるのは僕だけだろうか?
 おっと、客が来た。

「はーい、いらっしゃいませ。こちらストローはお使いになりますか?
 え? 10本……ですか?
 はい、かしこまりました……お買い上げ1点で、105円になります。
 ありがとうございましたぁ……」

 こんなヤツもいるから、困ったものである。
 そんなに使うなら、買えよ。毎日会う度に「悪いけど煙草1本くれる?」って言う会社の上司みたいだぞ。セコいぞ。得するのはアンタだけだぞ。自分の利益のために他者をネチネチと利用してるんだぞ。それも自分の立場にモノ言わせてだぞ。
 というわけで、君も「じか飲みゴキュゴキュ派」に入らないか?