12.お金にまつわるエトセトラ

〜ここは銀行でもないし店員は機械じゃない〜

 というわけで前項で宣言した通り、今回はお金のお話です。
 前項で書いたように、ここはコンビニです。街の一角に小さく小さく店を構えているコンビニです。ですから、そこに大量の現金があるわけじゃありません。けれどもね、余りにもコンビニを「簡易式銀行」と勘違いする人々が多過ぎる。

 まずは、両替について。
 両替だけでしたら、犯罪の可能性もあるのでお断りしたいところです。コピー機使うのなら全然オッケーだけど。あのね、本当に両替の振りをして、レジが開いた途端に犯罪に及ぶってケースが多いのよ。特に不法入国の外国人に。これは実際問題だから仕方がない。そんなわけで、両替を断るコンビニが年々増えている、ということを念頭に置いてください。
 でもって、逆両替。つまりは細かい金を札に変える行為ですな。これを行う人の大半が「小銭で支払っている」ことになぜか優越感を受けている。「オレは釣り銭をくれてやってるんだぞ」とでも言いたげな態度、ですね。
 あのね、こちらは釣り銭はある程度準備しています。だからあなたのそれは親切ではなく、単純に迷惑です。業務に必要な時間と手間があなたによって削減されているのです。貯金箱に溜めていたお金をそのまま持ってきて「幾らある? これで払える?」とか訊くのはやめてください。自分が幾ら持ってるのかは、自分で管理すべきことじゃないの? どうしてこっちがあんたの財布の世話までしなきゃいけないの? それもタダで、サーヴィスで。そのうえ後ろに長蛇の列を作る客を待たせて。彼らに「お待たせしました」と言うのは本来ならあんたなのに、こっちが肩代わりして言ってるんだからな。
 そういった「両替関係」については、どうぞお近くの銀行をご利用ください。
 餅は餅屋、というように、銀行はお金屋です。両替専用の機械だってあります。銀行の開いる時間に起きられなかったとかいうのはあなたの都合であって、自分でケジメを付ける部分でしょ? そういった自分の怠惰をこちらに押し付けないでください。
 お金のことは、銀行へ!

 で、次に、店員は人間だということ。
 以前も書きましたが、ピッタリの金額(だと自分では思っている)をレジに捨て去る客に近いケースが、いっぱいあります。
「勘違いする人々」の一部ではありますが、割と多いのが新聞と雑誌を勘違いしている客。新聞なんかは120円ないしは130円など、あらかじめレジのタッチ・パネルに値段が組み込まれているので、ピッタリの金を渡されればあとは店員の動作次第で処理できます。けれどもね、雑誌は違うの。裏面にバーコードがあるでしょ? そこをスキャンする必要があるの。新聞と処理方法が違うの。だから新聞を買う要領で、ピッタリの金を渡されただけじゃ処理できないの!
 さらにはね、細かい金とか、ピッタリの金はできるだけ手渡しをしないでほしい。これはあんたの手に触れたくないとかいう感情論じゃなく、単純に処理速度が鈍るの。結局はレジなりテーブルなりに撒いて、数え直す必要があるんだから。20枚ぐらいのコインを手渡しされて、一瞬で幾らか把握できる店員なんていないでしょ? 感覚で読み取れるわけがないでしょ? あまつさえ、数えてる途中で立ち去るな! 何度も言うけど、50円玉が混じってるんだよ!
 で、そういう「ピッタリ客(勝手に命名)」に多いのがサラリーマン。その中でよく見られる行為が三つある。
 ひとつめは、500円玉だけを持ち歩く行為。500円玉というのは便利でね、小銭でもあり札に近い金額でもある。だから多用できるのは解る。けれども、公共料金の支払いを含めて1万近くの金をすべて500円玉で渡されたらイヤになります。そのうえ本人の中ではピッタリだからすぐに立ち去ったりするし。用途に応じて適した種類の現金をお使いください。
 ふたつめは、コインを積む行為。何でか知らんけど、サラリーマンはやたらとコインを積む。それも一枚一枚ゆっくり出して、ゆっくり、確実に積んでいく。やがてバベルの塔が完成するのだ。そんなふうに、どうして数えづらくするの? 店員の邪魔をしたいの? そうやって積んだ金が幾らかってのは、あなたにしか把握できないんだよ? タテ社会を嫌うくせに、どうして自分はタテに置くの?
 最後に、すぐに出る手。いや、喧嘩じゃないよ。お釣りがある時、1,000円札を受け取ったその直後からずーっと掌をこちらに突き出しっ放しっていう場面。見たことない? したことない? あのねー……店員は自動販売機じゃないんだから、すぐにお釣りを出せません。受け取った金額を確認し、お釣りが幾らであるのかを認識し、そして釣り銭を間違えないようにして取っていくのです。その間にも袋詰めの方法を考えたり、他にすべき仕事があって慌ててたりします。そんな時に掌を出しっ放しにされているのは、ひどく不愉快です。こっちにはやるべきことがたくさんあるのに、あなたは自分のお釣りを最優先してほしいと願っているのです。そこまで考えたことはないんでしょうけど……。
 サラリーマン以外のオッサンに多い行為が、もうひとつ。それは新聞代を人のいないレジにこっそりと置いて、そのまんま店から去ってしまうもの。おいおいおい、店員を呼べ! 店員を介して品物を買う、という「お買い物の大前提」をどうしてあんたはサボるんだ! あんたが本当に120円の新聞を買ったか、こっちには確かめる術はないんだぞ? ひょっとすると120円の新聞を買った振りをして、あんたは400円の競馬新聞をパクッたんじゃないのか? それとも間に雑誌でも挟んでいったのか? っていうかなぁ、ここは野菜を通りすがりの客の善意に任せて売っている、あの「無人野菜100円農家」かってんだッ! 僕はあんたを信じないぞ!
 あ、もう一個思い出したぞ。これはサラリーマンじゃなく、オバハンや子供によくある行為だ。
 品物をドンと出して、いきなり「コレ幾ら?」とか訊く行為。あのねえ、商品をスキャンすることでレジに値段が出て、そこに消費税が自動的に加算されて、ようやく金額が出るわけです。だからスキャンしないことには、幾らだかなんて解る筈ありません。ひいては、商品に値段のシールが貼ってあるでしょ? 大まかな金額把握だったらあなた自身でできるじゃないの。あまつさえ、ドカンといっぱいの品物を置かれて「コレで幾らになる?」と訊かれても、一瞬で弾き出せるわけないでしょ! 一度でも「スキャンして商品の値段を出す」場面に遭遇したらそれぐらい解るでしょうが! ぜーんぶスキャンしなきゃ合計の値段は出てこないの!
 機械みたいな正確かつ迅速な反応をお求めでしたら、どうぞ自動販売機だけでお買い物してくださいな。ねえ「お客様」?

 さてもうひとつ、今回の最後に、ちょっと会社の裏側を見てしまったお話を。
 そのサラリーマンは僕に1,000円札の両替を頼みました。コピーです。そこで要望通り100円玉を10枚に崩してあげたのです。
 彼はしばらくコピー機のところにいて、コピーしていました。んで、コピーが終了するとレジに向かってきます。ああこりゃ領収書が欲しいんだな、と察知した僕はストア・スタンプを片手間で用意し、彼に備えました。
 やはり僕の推測通り、彼は領収書を請求しました。よしよし今日の僕って冴えてるぅ、と思いつつ、金額は幾らかを訊いたのです。
「1万5千円です」
 へ? と思いましたね。
 だって、彼がコピーのために崩したのは1,000円札1枚……あああ、着服だあっ! と思いつつも、僕はその指示通りの金額を打つことが業務です。疑問に思っても、それを口出しすることは「お客様」に盾突くことになるのです。
 だから1万5千円分の領収書を出してあげたのだが……あーあ、見てしまったよ。サラリーマンの小遣い稼ぎの経路のひとつを。
 会社で部下を持つ方、不自然な料金の領収書にはお気を付けください。ましてやコンビニのものであったら、店員は言われた額を入力しているだけなんですから。