11.勘違いする人々

〜ここは「コンビニ」です〜

 先に言っておきましょう。
「ここはコンビニです」
 とね。
 あのですねえ、勘違いする人々が世の中には余りに多過ぎる。「コンビニだったらできるだろう」と、自分の勘違いとワガママを何でもコンビニに押し付ける。だからこそ最近のコンビニはビシバシとサーヴィス内容が増えていくんだよ。それは店の負担になり、また店員の負担となる。そんなだからコンビニは慢性的に人手不足なんです。嫌気が差して辞めていく人が多いから(もっともその大半が甘えた坊ちゃん嬢ちゃん学生だったりするけどね)。
 今回は、その「勘違い」をここに列挙しますので、もしこれらをコンビニに押し付ける人がいましたら、どうか次回からはそれはなるべく控えて頂きたい。なぜなら店側としてはそれをあからさまに断ってはいけない(はい、「お客様」に対する信用問題ですね)のだし、何よりそこは「コンビニ」なのだから。


[ここは交番じゃない!]

 よーく訊かれるんです。
「○○はどこですか?」「ここは××ですか?」「△△へ行くにはどうすればいいんですか?」
 と。
 えー……悪いですが、コンビニにはその地に詳しい人間が厳選されて勤めているわけじゃありません。遠くから来て学校の帰りに働く学生バイトなんかもいるし、ましてや、そんな道案内なんぞ教育も指導もされなければ、その必要もないと思っています。
 店にある地図を見ろよ。
 そん時ぐらい大得意の「立ち読み」をしたらどうだい? それぐらいの立ち読みは許してやるよ。
 かく言う僕だって、今の街に来てからまだ数ヶ月。やっと通りの名前だとかの抽象的な地図を頭に描けた程度です。なのに具体的な建物名を言われて、マンションなんかの場所を訊かれても知るわけはありません。道案内を業務に組み込んでいる警察官とは違うんだし、何より、ここは交番じゃないんだから!

[ここは公園じゃない!]

 さーて外のゴミ箱を片付けるかな、と思うと、必ずあるのよね家庭のゴミが。コンビニ来たついでにドカッと捨てていくのよね。ゴミ出しの時間までに起きられなかったから、その片付けをコンビニに任せようとして。そりゃ通りすがりでガムや煙草を捨てていくのなら解るさ。そういう時にコンビニはありがたいさ。
 でもな、ある程度大きいゴミは自分で片付けなさい。自分で出したゴミなんだ。あんたの尻拭いをこっちに押し付けるなよ。
 公園でもそれが迷惑で困ってるそうですな。住民がカラスの被害に遭っていると怒っているのに、実は原因は住民が公園に大量のゴミを投棄してたからだ、ってね。
 他にもトイレだけ借りていく客。断りたいけど断れないのよ、生理現象だからしかたないし。でも他人の家に上がってトイレだけ借りて礼も言わずに去るのはどう考えても非常識だけどね。どうしてそれが当然のように振る舞えるのだろう?
 また、今の住んでいる街の関係で、時折浮浪者が現れる。で、ダンボールとかを請求し、こっちが断っても勝手にスタッフルームに侵入してパクッてったりする。「水をください」なんて訴えるケースもあるそうだぞ。
 まとめて言えば「ここは公園じゃない!」になるかな。
 ちょっと歩けば公園ぐらいはあるんだけど……。

[ここはスーパーじゃない!]

「ありがた迷惑」という言葉の典型ですね、コリャ。
 あのですねえ、いっぱい買ってもらえるのは嬉しいさ。そりゃ儲けに繋がるさ。けれどもね、何でもかんでもコンビニで済ませるというのは、余計なお節介だけど「それはどうかな」と思うぞ。太陽が照りつける時間にカゴふたつぐらいの買い物をされると、こっちはちょっとイヤになるぞ。そのうえ「コンビニって高いのね」なんて言われたら血が沸騰するぞ。
 そう言うのならスーパーや量販店へ行ってください。コンビニは飽くまでコンビニです。喩えばキオスクで「ここは大根ないの? 不便ねえ」って言うのはヘンでしょ? それがヘンだと気付かず、どうして「品揃えが悪い」と言い切れるのよ。「月間××」みたいな本を全部仕入れてるわけもないでしょ? 本屋でもないんだからさ。
 そのうえ「大量購入の人々」は大抵家族で来る。のはいい。が、やはり子供が問題だ。レジ前まで行くと寒いとおでんなり肉まんなり、暑いと手作りアイスなりをせがむ客がいる。それに応じるのは店員として当然だ。けれども、それを大量の品物の会計が済んだ直後に追加注文されるとイヤになる。もう一度会計することになるのに、父親が「お釣りで賄えるだろ、そんぐらい解れよ」なんて意味のコトバを吐いたりする。で、品物が大量だから袋詰めだって時間がかかる。すると「遅い」と言われ、詰め方が気に食わないと愚痴を言われる。
 じゃあな、スーパーで買い物しろよ。しかもこっちはスーパーと違って、袋詰めだってしてやってるんだぜ?
 あとスーパーと勘違いする客に若干いるのが「はじめてのおつかい」ですか。テレビでは感動的に仕上げられてるけど、それをコンビニでやらせるのはやめて頂きたい。こちらはスーパーと違って最少人数で店を回転させてるんだし、スーパーのように人件費を賄えないのだから、案内係をあなたのお子さんのために設けるわけにはいかないのです。

[ここは救済所じゃない!]

 はーい、サーヴィスの時間でーす。
 でもね、前にも書いたけど、サーヴィスってお金がかかるのよ。袋も箸もスプーンも容器も汁も……「お客様」の要望に応えるものは殆ど店がお金を出して買っているのです。本部から無料支給されるわけじゃないのです。
 だのによくいる「サーヴィスをやたら求める客」。
「大きい袋でください」
 ゴミ袋に使うのですね? しかし当方は商品に見合った袋をサーヴィスしております。逆に大き目の袋を使ったり、片手では重いと思ってふたつに分けたら文句を言われることがあるのです。せめて袋詰めを始める前にそれを言って頂きたいものです。それなら快諾しますとも。
「お湯使っていいかな?」
 買った「カップラーメン」に対してでしたら。あなたの持ち込んだ他のところで買ったラーメンや、勝手におでんの容器に袋ラーメンを入れて使われるのは本当はすごくイヤです。水道代と電気料金、もしくはおでんの容器代金を請求したいところです。
「フォークを6つ」
 小っちゃなケーキひとつに、ですか? 学生さん。友達が来たか、食器を買う金をケチってるんでしょ? だったら「すいませんけど」という枕詞や「ください」「お願いします」という結句も必要でしょ? あまつさえ、6つ入れてあげたのに「ありがとう」も「すいません」も言わないのはどういうこと? ねえ学生さん? もしくは彼をそういうふうに育てた親御さん?
 でも、一番お話にならずキッパリ断ってやったのがコレかな。
「おでんの汁だけください」
 一個でも買ってから言えよ、馬鹿。

[店員は機械じゃない!]

 よく訊かれるんですよ。品物のことを。あるとは聞いていましたが、こないだとうとう訊かれましたからね。
「このストッキングはどういうものなんですか?」
 僕は男です。
 それに、品物すべてを把握してるわけじゃありません。コンビニの品物は推移が激しいし、店員にその理解を求めるというのは、客のエゴです。ストッキングや下着の履き心地を試せって言うのか、男子店員に。
 だから「どっちがおいしい?」「どっちがお得?」「酒のつまみに何がいい?」なんて質問も、知ったこっちゃありません。だってそれらはあなたの趣味でしかないし、あなたが買い物を続けていくうえで自ずと知っていくべきことなんですから。自分で金を投げ打って学習することを、あなたは放棄しています。それがエゴなんです。
 え? イヤだ? 最初からいいものを得たい? 人間だもの?(←会田みつを)
 じゃあ店員だって人間ですから「解らない」と言っても不満そうな顔をしないでください。機械みたいに情報が組み込まれているわけじゃないんですから。ミスだってします。それを必要以上に責め立てないでください。
 それ以前に、ほんの少しでもいいから、こっちの身になって考えてみてください。
「レジ停止中」のフダが置いてあるのに品物を置かれることがどんなに嫌なのか、考えてみろってんだよ!

[ここは銀行じゃない!]

 これは「店員は機械じゃない!」とも関わりがありますし、書きたいことが他より多いので、次の項で別個に書きましょう。


 というわけで、まとめて言うのならば、

「ここはコンビニです」

 この言葉の意味を、よーく考えてみてください。