10.過去最低の立ち読み客

〜しかも夫婦共犯だ!〜

「立ち読みは、まあしゃあない」と考えるわたくしです。そりゃカネのない学生や外国人労働者がバイト雑誌を立ち読みして、ケータイに番号だけメモリーしていくのは仕方がないさ。生活がツライんだったら、こっちも許すさ。そんぐらいの許容だったら、オイラにもあるさ。そのつもりさ。
 しかし、そういう生活苦でもなく、寧ろ裕福なくせにケチり、あまつさえ品物をダメにして営業妨害行為を行った恐れさえある客がいたのでここに報告します。

 それは「太ってて休日は競馬を楽しむ道楽オヤジ」でした。
 彼は妻と一緒に店に入り、入口にある新聞コーナーに一緒に置いてある競馬雑誌をつかみ取り、立ち読みし始めました。その時から「ああ、コイツは買わないな」とは解っていたのですが(歴戦のコンビニ・バイトはそういう洞察力を持っているのだぞ)、その立ち読み方法が「過去最低」だったのです。
 まず、それは雑誌のコーナーにあるわけじゃないから、立ち読みされたら邪魔な場所にある。新聞なんかは立ち読みじゃなく、パッと見て、もしくは軽く見比べて買う人が対象なんだから、立ち読みを計算には余り入れていないと思うのだ。だから入口に置いてあるのだと思うのだ。
 けれどもそいつは、レジ前の通路にドカンと立ち尽くしたまま、堂々と立ち読みを始めました。一緒にいる妻も、その脇でフンフン言いながら脇から眺めています。レジ前の通路というのは、店員も客も業者も、とにかく一番人間が通る場所です。その中央にふたり、ドカンと立ち尽くしているのです。まーずコレが邪魔で邪魔でしょうがないのです。
 そして夫は「フンフン」「ははぁ」「そうかぁ?」などと独り言を呟きながら、時々妻と会話をし、何と!――ツバを付けてページをめくっていたのです! ままままま、待てよ待てよ! それはあんたのページのめくり方かも知れないけど、その本をあんたは今「立ち読み」してるんだぜ? 買わなきゃあんたの読み方をしちゃいけないんだぜ? あんたのツバはあんたと妻にはキレーかも知れないけど、世間的にゃ汚いモノなんだよ!
 しかもよく見ると、脇から覗き見る妻は、その競馬雑誌の情報を持参したメモ帳に書いている! うわあ、セコい! 内助の功? 違うだろ! 夫の犯罪を助長してんだよ!
 そのうえしまいにゃ夫は「(この本は)ダメだな」と言って、その雑誌をもとの場所に戻しました。なぁにがダメなんだよ? 解ってるのか? 本当にダメなのは「目当ての雑誌を買いにきたけど読んでみたら期待外れだった」振りをするあんたなんだよ!
 無論、ツバでよれよれになった汚い雑誌なんぞ買う人はいません。ただでさえ、競馬雑誌は普通の雑誌ほど売れないから入荷数も少ないのに……。
 というわけで、僕が店長だったら、あなたを「営業妨害」でもって訴えたい心情です。裕福なくせに細かいところでセコく、裕福さゆえに周囲が見えない「お客様」!

 ということを休憩時間、オーナーに話してみると過去あった「タチの悪い立ち読み」の前例を幾つか聞いた。中でもひどいと思ったのが、
「店にあるバイト情報誌や地図を当然のようにコピーして、棚に戻して帰る客」
 だ。それも頻繁に、それこそ「当然のように」行われていたのだという。
 何度でも言います。
 それは買わない限り、あなたの所有物ではありません。コピーしていいのは、あなたの所有物だけです。自分が「お客様」だってことに胡座を掻かないでください。ましてやツバだのヨダレだの鼻水だのを付けて返すんじゃねえ!