7.カラーコピーの不条理

〜自分のミスじゃないのに〜

 なあんと、続編です。今はもう、コンビニ店員じゃありませんが、まだまだ思い出せそうなので、面白いお話があったら続けることにしました。
 それに、今度は客の立場です。やー、あんだけ客を敵視していても、やはり店員に対して納得のいかないこともあるもんだな。殆どのことは「ああ大変そうだなぁ」って、元店員の視線で許せてしまうのだが、今回のは、どうしても納得できんのです。はい。

 僕はその日、頼まれものの関係で、CDのジャケットやらをカラー・コピーしにコンビニへ向かいました。今の住まいの目の前にあるコンビニです。でもコンビニとは言っても、よくある「営業時間付きコンビニ」なので、ここはつい最近までモノクロしかコピーできなかった。が、最近になって「カラー・コピーあります」の張り紙がちょこんと貼られていたので、そんじゃ行ってみるか、ということになったのです。しかも1枚100円と割高なのだが、目の前の店なので構わないか、と明らかに主婦には不向きの浪費家ダメ亭主的発想でした。
 でもね、機械が明らかにモノクロ専用が1台だけなの。
 まあモノクロで取るものもあったからそれを先にしたんだが、店内、どっこにも他にコピー機らしきものはない。だもんで、女の娘の(別に意図的に女を選んだわけではなく手が空いていたのは彼女だったからだぞ)店員に訊いてみたのです。すると、
「あー、カラー・コピーは向こうなんですよねえ」
 と言って、入口と反対側を指差した。そこには酒の並ぶ棚がある。機械は見当たらない。向こう? と僕が訊き返すと、彼女は「ええ、事務所の奥です」と言った。酒の棚の横に、事務所への扉があったのだ。元店員の僕はすぐに納得したが、一般客であったらもっと不思議がるだろう。
 何だかイマイチ納得しかねる表現だなぁ、と思いつつも、僕は原稿となるCDのジャケット(歌詞カードと言った方が解りやすいかしら?)、オビ、底ジャケ(プラケース内のヤツね)の3点を渡した。それを受け取った彼女は、事務所の奥へ消えていった。エッチなものじゃなくてよかった、などという安堵はしておりませんぞ。ええ(なら言うなよ)。
 で、待った。
 長いのだ。カラーコピー1枚に、なぜか長いのだ。仕方なしに僕は店内を徘徊し、小さく野菜コーナーが設けられていたので、冷蔵庫の中身を思い浮かべつつ、やはりコンビニ価格のそれを選別していた。
 5分は待ったね。それで、やっと出てきました。
 ついでに、ひときわ安かったピーマン(小が5個で50円)をひと袋一緒に買って、合計150円プラス消費税(コピーにも税がかかるという不可思議なシステム)を払いました。
 だが、部屋に帰ってよーく見てみると……だ。
 切れてるのだ。
 何が? ジャケットその他がぜーんぶ、少しずつ印刷範囲の外になっているのだ。明らかに印刷範囲に入っている位置なのに、なぜか印刷されていない。不自然な印刷範囲の四角形が、どでかい紙の上で印刷対象3点の上にあるのだ。
 これじゃ使い物にならん、僕は印刷物と、比較するために現物を持っていった。僕はカラー・コピーの機械には触れていない。無論、店員のミスである。
 今度は女の娘ではなく、男子店員の手が空いていた。彼に渡すと、なぜだか「うーん」などと印刷対象物3点をじっと見詰めている。その間に客が来た。お客さん来ちゃったんで後でいいですか、というフランクな言い口にも、元店員の僕は頷いたものだ。
「確かに切れちゃってますね。それじゃ、もう一度印刷し直しますね」
 という彼の対応に、無論僕は頷いた。そりゃ当然である。何せ僕のミスではないのだから……で、男子店員は事務所に消えていった。
 無論、待った。やっぱり待った。何をしているのか?
 ようやく現れた店員が渡したものは、しっかりと印刷されていた。今回はちゃんとできている。よく見ると、何やらカーボン紙のような青いものまで一緒に印刷されている。ははあ、と思いましたね、僕は。そのカーボン紙もどきを乗せた場所だけ、コピーがされているのだ。さっきの女の娘はそれを小さいサイズで切っていたため、見切れちゃったのである。
 まあ成功したからいいかな、と踵を返そうとした僕に、男子店員はおっそろしいひとことを放った。

「100円です」

 え?
 これって、店員のミスじゃないの?
 だってそうでしょう? そのカラーコピーを行ったのは僕じゃないし、店員だし、そうなるとそれは店員のミスでしょうが。僕は機械にさえ触れえていないのだから。
「お金……またかかるんですか?」
「ええ、100円です」
 納得いきかねた僕の質問にも、彼は異常に明るい笑顔でそう言った。なんでそんなにニコヤカなんだ、僕はおもくそ拳をお見舞いしてやりたくなったが、相手は店員。しかも彼が僕の相手をしているせいでレジは並んでるし、元店員の同情もあって、仕方なく払うことにした。しかも、もうひとつ疑問があったので、自分の首を締めるとは解っていながらも、馬鹿正直な僕は続けた。
「さっきは消費税が入ったから105円でしたが?」
「あっ、そうですね! 105円です」
 ああ何て抜けた店員。そして払ってしまう情けない僕。
 そうして、店員のミスを肩代わりしてしまったワケで、店から出るとやっぱり納得いかない。どうして105円で失敗原稿をもらわにゃならんのだ? そう思うと普段は温厚で通っている(そうでもない)僕も、納得いきかね、その失敗原稿を忌々しい顔で店の外で握り潰した。それぐらいしか逆襲はできない。できるだけ大袈裟に、ドラマのワン・シーンのようにやってみたのだが、店員はこっちなど見ちゃいなかった。妙な目でそれを見たのは近くで電話をしていたオバハンひとりである。
 やっぱり納得いかねえぞ!
 何が「共同社会店(ヒント)」だ!
 僕がご立腹なのは、その対応方法なのだ。臨機応変でない、「コピー→100円」という対応だ。そして店員のミスを、こちらに押し付けられる形になったことなのだ。100円だろーが105円だろーが、値段は関係ない。もちろん1億円だったらよけい大問題である。
 しかも一緒に買ったピーマンは、いっこ黒い斑点が浮かんでおり、慌てて料理に使った。踏んだり蹴ったり、びっくりして跳ね上がったら開きっ放しの収納スペース扉のカドに頭ぶつけたり、である。んもう。

 こうしてネタにしてやったから、ひょっとしたら安いものだったかも知れないけど。でもやっぱり、納得いかんよなあ。これで納得いくヤツもいるんだろうか?
 皆さんだったら、どうしました?