公式リリース・アイテム
〜シドを知るための3枚と、その先にあるもの〜
『帽子が笑う…無気味に』CD
(オリジナル邦題:幽玄の世界)

伝説の男、シド・バレット。彼のピンク・フロイド脱退後のファースト・アルバムは、狂気と背中合わせの静寂に満ちている。再生していきなり「ズゥン」という重たい響き。続くは、危うげなコードを押さえるギターと幽玄のヴォーカル……シドのソロ・デビュー作にして、最高傑作と言えるアルバムだ。狂気性ばかりが話にのぼる彼ではあるが、そのメロディ・センスも抜群。散文詩的な歌詞も天才と狂人の紙一重。彼岸の華が美しく咲き、散らんとする儚さを全面に称えたサイケデリック・ブルースの名作。「蛸」と「亀」だけでもこのアルバムは「買い」だ。あらゆるミュージシャンのソロ・デビュー作の中でも別格に値するだろう。
現行盤には、ドキュメント性の強いアウトテイクを収録。こと「タコに捧ぐ歌」の聴き比べは『オペル』の「クラウンズ・アンド・ジャグラーズ」と相俟って面白い。
『その名はバレット』CD
(オリジナル邦題:シド・バレット・ウィズ・ピンク・フロイド)

「陰」の部分が強過ぎたファーストに比べ、幾分「陽」の場面が垣間見えるセカンド・アルバム。そして永遠なる「シド・バレットの最新作」。リック・ライトの活躍が目醒ましく、キーボード・プレイのソフトな感じがアルバム全体を包んでいる。その中で、リズムを崩しそうになる場面が多々見受けられるのは、シドが狂気の淵にいたことを物語る。シドのギターとヴォーカルを録音してから、デヴィッド・ギルモアとリックが中心となって肉付けをしていったらしい。つまりは、シドの演奏にバックが合わせる、という方法で録音されている。現に「ベイビー・レモネード」などは何度もリズムが崩れそうになるのを、ドラミングがどうにかキープしている。そのうえ最初に(間違いなく後から入れられた)ギター・ソロが危なっかしいコトと言ったら……。
本作はファーストと比較され、過小評価を戴いている不幸な盤である。そりゃあファーストの危うさとは較べるべくもないが、この「ソフトな狂気」は、これはこれで楽しめる内容となっている。ファーストよりポップだし、「ドミノ」や「ジゴロおばさん」「興奮した象」など、曲のカラーが明るいので、初心者にはこちらの方がとっつきやすいかも知れない。ついでに言うならば、再発盤にボーナス収録された「ベイビー・レモネード」のテイク1を、完成版と比較するなどしても楽しいかも。
個人的に、わたしはコレがシドのアルバムの中で一番好きです。
『オペル』CD
(オリジナル邦題:オペル〜ザ・ベスト・オブ・シド・バレット)

一体何がベストなんだよ、とオリジナル邦題に突っ込みたくなる未発表曲集。「オペル」のような淋しげな曲から、何度もテイクを重ねた「スワン・リー」、夢を描いたかのような「銀河」など、決して駄曲の詰め合わせではない、幻のサード・アルバムの代用品。
現行盤にはさらにアウトテイクが収録されており、楽しむにはちょいと時間がかかるが、堪能できれば至上の悦楽。なお、これら3作のボーナス・トラックは殆どがアコースティック・ギター1本のデモ・トラックといった趣で、楽曲の出来云々よりもドキュメント性の方が強い。
『THE PEEL SESSION』CD

幸運なことに、セカンド・アルバムのリリースにあわせたライヴ音源がシドには残されている。それがBBCラジオ1での「トップ・ギア」という番組を収めた本作と、後述の「ボブ・ハリス・ショー」での演奏だ。そのうち本作は故ジョン・ピールがDJをつとめた「ピール・セッション」を収録したもの。
狂気の噂やどこ吹く風、本作でのシドは実に落ち着いた、下手をすればアルバム以上に「こなれた」演奏をこなしている。ベースはデイヴ・ギルモア、ドラムはジェリー・シャーリー。なお、未発表曲の「トゥー・オブ・ア・カインド」はクレジットがシドになっているが、元同僚のリック・ライト作だというのが通説。
『BBC RADIO ONE SESSIONS』CD

前述の「ボブ・ハリス・ショー」の3曲を『THE
PEEL SESSION』に追加した、現行盤でのシド唯一のライヴ・アルバム。ただ残念なのは、その「ボブ・ハリス・ショー」の音質がブートレッグより数段劣り(ブート音源“MAGNESIUM
PROVERBS”あたりを基にしているのか? ってぐらい)、またDJのスピーチをカットするために無理なフェイド・イン/アウトが施されていることだ。これなら上質のブート(“OUT
OF SIGHT, OUT OF MIND”など)の方がマシだ。
あとは、オリンピアでの伝説的な演奏となった4曲が正式にリリースされることを望む!(ブート化はしてるけど)
『SYD BARRET(S FIESR TRIP』VHS → DVD

シドの、初のLSD体験を録画したドキュメンタリーVTR。ケンブリッジの丘で吠える無声映画のような前編と、ピンク・フロイドの面々も登場する後編とに分かれている。初々しいシドの姿を見られると同時に、LSD体験のドキュメントとしても重要な作品。当初は5000本限定のVHS(左)としてリリースされ、現在は短期間生産ではあったがDVD化(右)している。
『ピンク・フロイド&シド・バレット・ストーリー』DVD

シド・バレットという男の生き様を、関係者達が次々と語るドキュメンタリーDVD。当初はTV番組だったが、数名のカヴァー演奏トラックを追加してDVD化された。バンド・メンバーからマネージャー、同居人、友人……様々な人々が語る「シド・バレットの真実」。たまに見るとジーンときます。
『クレイジー・ダイアモンド/シド・バレット』BOOK

マイク・ワトキンソン&ピート・アンダーソン著、小山景子訳。シドの生き様を活字で楽しみたいなら、本書は必携。こと狂人扱いされるシドを、本書は「人間シド・バレット」として語ってくれる。そして読んでいって読んでいって、最後のエピソードに辿り着くと間違いなく「感動」します。