ベスト・アルバム『エコーズ〜啓示』
ジャケット考察
〜愛らしく面白味に溢れたジャケット〜
本作のジャケットは、フロイド作品を網羅しているファンにとっては、このうえなく味わい深いデザインになっている。薄手の箱に入っているだけの、特殊パッケージとも呼べないものではあるが、そのデザインはひと目見るだけでファンを喜ばせてくれるだろう。
なぜなら、ジャケット内にフロイド諸作品に関連するオブジェクトが散りばめられているからだ。
ここでは、それらの内でも「私が気付くことができたもの」をざっと紹介すると共に、少しばかりの考察を含んでいく。くれぐれも「私の視点」であることをお忘れなく!
さて、本作には基本的に4枚のカットが用いられている。
1.表ジャケット
2.裏ジャケット
3.中ジャケット
4.箱ジャケット
総合考察
このうち、裏ジャケットと箱ジャケットは基本デザインは同じで細部が異なるものであり、中ジャケットは表と裏が交錯するものになっている。そのため、以下は「表」「裏」ジャケットを基軸とし「中」「箱」ジャケットは異なる部分のみを指摘していく。「表」「裏」ジャケットでも、その存在が重なる物体は割愛する。
また、ディスク1からページが始まる側を「表」とし、ディスク2から始まる側を「裏」とすることをはじめにご留意頂きたい。さらには、スキャナ及び画像処理ソフトの性能により、ジャケットが鮮明でないことをお詫びしたい。それらがかなりの高性能のものでなければ、本作の画像を鮮明に表示するのは難しいのだ……ポスターになったり、ソーガソンの画集に収録されて発売される日を待とう!
さらには「箱裏ジャケット」もあるのだが、文字が重なっていて考察の対象としづらいため、割愛する。ただ、そこには「的」と、窓枠に重ねる「木製窓」があることを記しておく。
以下、番号と物体名称はこの色と書体、その出典もとと思われるアルバム名はこの色と書体で記述していく。後者のうち、判然としないものはこの色と書体にする。
そうして見ていく前に、全体の構図が『ウマグマ』であることを念頭に置いておこう。

01.壁に掛かったハンマー
これは一目瞭然。『ザ・ウォール』である。この写真では見にくいが。
02.額縁(?)
拡大して見てもよく解らない。『P・U・L・S・E』のワン・カット、浮遊する男にも見えなくもないのだが? しかし画像の分配からすると『神秘』であってほしいのだが……。

03.オブジェ(?)
こちらも拡大して見てもよく解らない。割愛した「箱裏ジャケ」ではフラスコらしきものが映っている。その様が『ピンク・フロイドの道』を思わせるような気が……気のせいだろう。また、その近くの窓枠にはステッカーが貼ってある。
04.額縁(飛行機操縦士スタイルの4人)
これは単なるグループ・ショットとしてしまいそうだが「青空のファンタジア(本作未収録)」のクリップ撮影中のカットであるので『シャイン・オン』ボーナス・ディスクの『アーリー・シングルス』とすることもできるのだ。盲点!
05.炎の男とその鞄
無論『炎』であるが、その鞄には『炎』『狂気』それぞれのステッカーが貼ってある。中ジャケットも参照のこと。
06.ピラミッドのオブジェ
オブジェという方法があったか! と思った方も多くおられるだろう。というわけで『狂気』の象徴。
07.斧
お気付きかな? これは本作未収録だが「ユージン、斧に気をつけて」と関連して『ピンク・フロイドの道』と『シャイン・オン』を同時に表している。
08.自転車
これも『ピンク・フロイドの道』だ。なぜかって? このベストの最終曲「バイク」は日本語となるとそう思いがちだが、モーター・バイクの歌ではないのだよ!
09.写真
申し訳ないが、ここではまるで見えないので、お手持ちのジャケットを見て頂きたい。『対』ブックレットの「極(本作未収録)」ページにあるカットの色違いだ。
10.手鏡
当初は虫眼鏡かと思ったが、これは手鏡だ! そう、これは『鬱』よりシングル・カットされた「現実との差違」のジャケットにて抱き合う男女が眺めていたものだ。
11.金魚鉢
もしや「水」ということで「エコーズ」そして『おせっかい』か……? と思ったが、余り深読みせずに『P・U・L・S・E』より、オランダのみシングル・カットされた「あなたがここにいてほしい(ライヴ・ヴァージョン)」のジャケットと関連させることにする。
12.牛のオブジェ
またも、オブジェ。これは収録曲がないものの、明らかに『原子心母』である。
13.煉瓦造りの壁
もはや言うまでもなし、の『ザ・ウォール』だ。
14.ミラー・ボール?
フロイドのライヴではお馴染みのミラー・ボール……と思ったが、質感がそれらしくない。ひょっとするとこれは大きな風船で、それをクリップに使っていた「運命の鐘」を意味して『対』とできるだろうか。
15.額縁(『夜明けの口笛吹き』)
この画像では判りにくいと思うが、よく見てみよう。ここには『夜明けの口笛吹き』のジャケット写真が用いられている。

16.電球男
間違いなく『光』だ。
17.軍人
これも間違えることもなく『ファイナル・カット』だ。

18.男と女
既出ベスト盤『時空の舞踏』で踊っていたふたり。
19.ベッド
さあ、これは「走り回って(本作未収録)」で飛ぶから『狂気』かな?……と思ってはいけない。その形状を見比べよ。海岸に並んでいた『鬱』のベッドだ。
20.スーツの男
これも表ジャケットと同じく『炎』だが、こちらはその裏ジャケットで砂漠に立っていた「実体のない男」だ。
21.樹木
こんなものまで深読みしてしまうのは難だが……『対』の「テイク・イット・バック(本作未収録)」ページの枯れ木か? いや寧ろ『モア』の表ジャケットの佇まいの凝縮のようにも見えるのだが……。
22.水道管?
これも直接的な対照はないのかも知れない。まったく思い付かない。
23.豚のオブジェ
これが象徴する曲は未収録だが、その収録アルバム『アニマルズ』を代表する動物である。
24.スカーフ
全アルバムを中ジャケットまで見ていた方なら判るだろう。『炎』だが、こちらでは、かつてスカーフに映っていた女性の影はない。
25.ロープ
無理矢理だが……『ピンク・フロイドの遺産』の職人が使いそうなロープ、という考え方はいかが? しかし、そのジャケットのロープは実際には命綱ではなく、やはり強引が過ぎるのでこれは対象外。
26.水泳の男
スカーフと同じく、中ジャケに関連。寧ろ、彼が砂漠を泳ぐ姿が再販まではアウト・テイクとされたままだった『炎』より。
27.飛行機
最近のライヴでお馴染み。『狂気』収録曲の「走り回って(本作未収録)」ではこれがステージに飛ぶ。ロジャー在籍時には『ザ・ウォール』冒頭曲「イン・ザ・フレッシュ?」で飛んでいた。
28.ボートの男とメイド
無論『鬱』だが、その位置関係が箱ジャケットでは逆になっていることに注意!
29.額縁(『おせっかい』)
この裏ジャケットでは、もともとが暗過ぎてまったく判明しない。が、箱ジャケットでは明らかに『おせっかい』が嵌められていると解る。
30.顔オブジェ
ご存知『対』のオブジェだ。片方しか見えず、一対にはなっていないけれども。
31.メンバーの顔
暗くて判りづらいが『ザ・ウォール・ライヴ』のライフ・マスクだ。しかし順序が「ニック/デイヴ/ロジャー/リック」であることに何か意味があるのか?

31.椅子
さあ、謎かけです。これは何でしょう? 私には判らない。単純に考えれば16.の電球男が座っていた椅子のようだが。
32.本
これも何でしょう? まったく判らない。
33.帽子
また思わせ振りな……歌詞にでも出てきたか? だがまったく思い付かない。表ジャケットの室内に帽子掛けのようなものがあったけれども……。
34.寝そべる男
さあ、これも何だろう? その意味も、男が誰であるかも判らない。
35.靴
これは単純に炎男の靴、とした方がいいだろうか。それ以外には思い付かない。
36.トルソ
このページにのみある物体は、謎ばかりだ! これも思い付かない。
ともすると、このページには意図的に「意味を持たないもの」ばかりを新たに配置しているのではないか? 深読みと期待をしてしまうフロイド・ファンへのブラック・ユーモアとして!

ここでは「裏ジャケット」と異なる部分を列記する。
・スーツ男の代わりに泣くメイドが立っている
・ボート男とメイドが入れ替わっている
・ピラミッドが豚オブジェになっている
・牛と豚オブジェの位置
・水泳男の立ち位置とタオル
・スカーフの位置と形状
・ロープの位置と形状
・「対」オブジェが両方見える

・樹木の位置
・全体の採光
……などなど。つまり時間的・空間的な差違がここには存在する。
こうして見ると、殆どのアルバムを意味する物体が配置されている。
しかし不確実なものを含めて、見当たらないものもある。オリジナル・アルバムでは『神秘』、サントラでは『モア』、『雲の影』、ついでに『砂丘』、編集盤では『ピンク・フロイドの遺産』と『ナイス・ペア』といったところが……しかしひょっとすると、深読みに深読みを重ねればそれらも見当たるのかも知れない。特にオリジナル・アルバムから唯一見出せない『神秘』は何かしかの対象があってほしいものだ。
というように、本作はオールド・ファンにとってはジャケットだけでかなりの楽しみを得られるのだ! 願わくば、写真が大きくなって見やすいに違いない、4枚組LP盤を入手したいところだろう。ここに挙げた以外にも、余りに細かいので触れなかったものもある。それを探し出して考察してみるといいだろう。
さらに、出典アルバムとは関連のない部分にも触れておく。
「表」では窓は吹き抜け。窓枠だけで、窓がない。これは解放された空間、出入りしやすい選曲……として、ディスク1をとらえてはどうだろう?
「裏」「箱」ではブラインドがある。つまり、今は開かれているが、閉じようとすればいつでも空間を閉じられる選曲……ディスク2は、内省的な曲が多いではないか。
さらには箱とブックレットの時間的相違だとか、裏表が構図として「対」になっていることや、CD盤面までが「対」になっているなど……しかも、私は所有していないが、本作のポスターではまたデザインが違っている。時間的差違だとか多少の位置変化が殆どなのだが、ひとつだけ書いておきたいことがある。それは本作の「裏ジャケット」と基本的には同デザインのポスターなのだが、前者では3つしかなかった窓が、後者では5つあるのだ! まるでフロイド・メンバーの変遷を示すかのように……
見れば見るほど発見があり「面白い」と思わせてくれるデザインである。
快哉を挙げよう!