elementsとは何か?

〜複合・混成された個性要素の集合体〜

 そもそも、“elements(エレメンツ)”とは何であるのか。
 バンドだ、とひとことで片付けるのは簡単だろう。しかし、そこいらへんの同級生が集まって遊びの延長で作ったようなバンドとは、同じ「バンド」でもまるでわけが違う。とにかく、ひとクセもふたクセもあるメンツばかりがそこにはいるのだ。
 そのメンツを、まず紹介した方が話は早いだろう。elementsの音楽は単純なバンド・マジックだけではなく、積み重ねてきた彼ら自身のバックグラウンドから生み出される魅力も強いのだから。「ブリティッシュ・ロックやアイリッシュ・トラッドの臭いを感じさせるミクスチャー・タイプのバンド」などと型通りの説明をするより、各メンバーの嗜好や経歴を取り込んだ方が正確に理解できる筈だ。

 elementsは「原則的に」以下の5人により構成されている。


max(mark g. dodds):写真中央
 アイルランド系カナダ人ながら京都在住10年強という、経歴からしてミクスチャーな「詩人」。叙情的な楽曲を作成するも、歌詞はポリティカルなスタンスのものが多い。その経歴からして複雑ではあるが、主に自らのおおもとである「アイリッシュ」と、「黒人音楽(特にレゲエ)」への憧憬が武器となっている。アコースティック・ギターと掠れ声の(カナダ特有のフランス語訛り+京都訛りの)ヴォーカル担当。おおよその楽曲は彼がアコギ一本で作る。

渡辺ミチヒサ:写真最右
 スタジオ・ミュージシャンとしても定評高いエレクトリック/アコースティック・ギター担当。maxのアコギと抜群の絡みを見せる。elementsはもとより、彼がmaxと出会い、その才を見出してソングライティング・ユニットをスタートさせたことに始まる。初期からバンドを牽引し、方向性を探り、プロデュースや全体のトリートメントを行ってきたまとめ役。サウンドトラックを好む性質からも、そのプレイにはトータル性を重視した音作りが窺える。

ryotaro:写真最左
 メンバー中最年少ながら、elementsに必要不可欠な「アイリッシュな叙情」を引き出す重要素。そういった意味ではmaxの感覚的な理解者と言えるだろう。ロックに於ける単体楽器としては珍しい、アコーディオン担当。打ち込みにも精通しているためプログラミングなどもこなし、喩えばクラブ・タイプの曲には渡辺ミチヒサと共に貢献度が高い。そんな才気溢れる若人。サウンドトラック的なアプローチでのソロ・アルバムも制作・リリースしている。

ナスノミツル:写真左から2番目
 元GROUND ZERO、現Altered Statesほか、多彩なセッション活動ほかに様々な経歴を持つエレクトリック・ベース担当。初期はアレンジ主体だったバンドに、自らの活動をフィードバックさせた即興性を持ち込み、ライヴをアグレッシヴに発展させるきっかけを作った。スタジオでは堅実なベースを弾きつつもライヴでは発火点となり、バロメーターでもあり、演奏により共振する瞬間を大切にする。即興や実験音楽的なソロ・アルバムも制作・リリースしている。

三条通:写真右から2番目
 ファンク・ユニットEP-4の元メンバーにして、セッション活動も多彩なドラム担当。スタジオではナスノミツルと共に正確なリズム・ワークを見せるが、ライヴの際、リズム隊が「人力テクノ/ハウス」状態に突入した際にその真価を発揮する。タムをやたらと設けたりせず、少ないタイコで多くの音を出すのが特徴だが、ブライアン・イーノなどプロデューサー音楽を好み、雰囲気を尊重したプレイ。
(2010年1月19日、喉頭癌のため永眠されました。謹んでご冥福をお祈りいたします)

yung tsubotaj(ユン・ツボタジ)
 三条通の盟友で、同じくEP-4出身のパーカッショニスト。2004年にelements加入。EP-4解散後は自身のリーダー・グループUnit4として活動し、活動停止後にelements人脈と交流を深め、ソロを平行しつつelementsでの活動を始める。ソロ・アルバムもネット配信リリースしている。


……と、様々な嗜好や経歴を持つ彼らが一要素(element)となって一堂に介し、融合した時に“elements”の名が発生する。よって、単独では“element”でこそあれ“elements”たりえない。その「要素」とは喩えば「地(三条通)」「火(ナスノミツル)」「水(渡辺ミチヒサ)」「風(ryotaro)」プラス「光(max)」と言えるだろう。
 ところで、この5人の構成が「原則的」なものであると記したのには、わけがある。
 なぜなら彼らはセッション/スタジオ・ミュージシャンとしても定評がある者が多いので、まとまったバンド活動を常に続けていくことは困難な場合が多い。授業が終わってデートがあるから今日は練習いけないよ、なんて学生バンドとは事情が違う。そのため全員での活動が断続的になってしまいがちなのだが、その合間でも可能性を探るユニットを多発させている。
 現在のところ、それは下記のものが存在するが、今後も組み合わせ次第で様々な名称のもと音楽が奏でられるかも知れない。

“tRace elements”
 max+ryotaroによる、ヴォーカル&アコースティック・ギター+アコーディオンというシンプルなアコースティック・ユニット。身軽さを武器に全国どこでも演奏できるという強みを持つ。音数の少ない素朴な音色が、maxの持つ歌の魅力を逆に最大限に引き出しているのが「トレース」という響きから解るだろう。elementsに戻ってからはmaxの歌を強調することに成功した。
 飄々と吹く「風」に「光」を乗せた、たおやかな歌と音楽。

“Alternate Symphony:A.S.(Alternate Symphonic Elements:A.S.E.)”
 max+ナスノミツル+ryotaro、さらにその折々のゲスト・ミュージシャンによる、インプロヴィゼイション主体ユニット。ある程度組み立てられた骨格をもとに、ライヴの度に即興演奏で毎回異なる肉付けを行う。アレンジよりもその瞬間の共振を魅力としているのが、「オルタネイト(別の)・シンフォニー(調和)」という語に見られるだろう。elementsに即興性を持ち込んだ。
 噴き出した「火」を「風」が煽り、「光」のもとへ導いていく即興音楽。

“basic elements”
 max+ryotaro+三条通による、エレメンツ・ミュージックの最も基礎となる部分――ドラム、ギター、アコーディオン、ヴォーカル――に視点を当てたユニット。実験的に組まれたユニットなので具体的な姿を持たないが、今後ライヴを展開し、その実態が確かになっていくかも知れない。
 根幹となる「地」の振動に煽られた「風」が吹き、そこに「光」が照射するイメージ。

“ЯAW ELEMENTS”
 max+ ryotaro+ yun-han(yung tsubotaj)によるユニット。“ЯAW”は頭の“R”が逆になっていることが示すように、逆から読むと“WAR”、アンチ・ウォーというところに由来する。

 これは喩えれば、かのキング・クリムゾンが世紀の曲がり角に「プロジェクト」という名のもとにフラクタル分裂し、離散/集合を重ね、それぞれ得たものをバンドに持ち帰ったのに似ている。武者修行や漂白の旅に出るのは、ひたすら同じ編成で続けていくよりも新しい刺激を得ることができるだろうし、その刺激でもって他のメンバーを触発することもできる。結果としてそれはバンドと音の活性化に繋がり、様々な可能性を模索/獲得することができる。
 同じ場所にとどまらない。だからこそ通底するものはあっても、作品ごとに見せる表情は異なり、実に豊かだ。

 elementsとは、おおよそ、そのような「バンド」である。



elements WEBSITE

(バンド公式サイト、貴重な映像もあり。相互リンク)


ryotaro Home Page

(ryotaro個人サイト。相互リンク)