nawak'osis bawn: final edition
〜三条通を失っての解散ファイナル・ライヴ〜

(PLANET KYOTO、販売DVD-R)
何度かライヴなどで関してきた“nawak'osis
bawn”の、「ファイナル・エディション」としてリリースされた、2010年5月3日のラスト・ライヴをおさめたDVD-R。スリーヴには曲名と、結成当初のメンバー5人の集合写真が掲載されている。その中心に三条通がいることからも推量できるように、三条の急逝を受けて、解散を選んだ全員の意思が集結した、初映像作品。
プロ・ショット収録での収録なので、箇所によっては観客の声や、音のバランス(低音が強調され、ヴォーカルの音量が低い)が気にかかるものの、elementsのステージングを味わえる貴重かつ演奏完成度の高いものになっている。
PLANET KYOTOでのelements紹介ページより、通信販売で購入可能。
なお、曲名とトラック・ナンバーは、冒頭にオープニングがあるため1曲分ズレている。また、それぞれの曲のタイトル下に出典アルバム名を併記する。
01. Opening
“Dedicated to the pulse of elements, the
late and always great
Sanjo Toru”
の文字が入り、入口の三条のソロ・ショットのポスターからズーム・インし、「victory
come」を演奏しているリハーサル風景に移る。
そこからelementsとmaxの旧友、owen(オーウェン)によるオープニングに入り、1994年のファースト・ライヴ写真から、思い出のまじった話が続いて演奏へつながっていく。
02. helicopter ride
(freedom captured)
ゲスト・プレイヤーshigeki fujiiのドラミングはアクティヴで、三条のような成熟味より若さを感じさせる。
03. let's dance
(SANS PATRiE)
ryotaroの右肩に「elementsマーク」の墨が確認できるショットからはじまる。“I
kow, I kow, I know……”のコーラス高音部はそのryotaroとミチヒサにより重ねられる。ミチヒサのアップ・ショットではすでに涙ぐんでいるような表情を確認できる。
低音部が目立つミックスなので、ナスノのホップするベースとドラム、さらにはyungのパーカッションが際立つ仕上がり。shigekiのドラミングは
04. tale to tell
(BEAT-ITUDE)
maxがMCから、メガフォンを取り出して空気が一変。原曲とはだいぶ変わってミチヒサの哀しげなアルペジオが最初から最後まで響きわたり、反面、リズムは常にアクティヴに、踊るかのように激しく重ねられる。後半部のMIDI音によるアコーディオンがいっそうの悲壮感をかもし出し、相反するそれらをつないで哀しみの色をつよく押し出す。原曲よりリズミカルになったため、悲壮感がつよまったという珍しいアレンジ。
05. in this world
(SANS PATRiE)
レゲエ・ビートを基調としたこの曲も、ギターやアコーディオンが原曲とは音色を変え、ときに早弾きをまじえたりするが、ビートが強烈。伸びるベースに刻むドラム、弾かれるパーカッションが三位一体となって曲の大きな根幹となっているために、それらが自由になれるのだ。
“Open your eyes!”の箇所では、maxが両手を広げてオーディエンスに覚醒をアプローチ。原曲ではフェイド・アウトだったエンディングはエクステンドされ、完奏される。
06. save me
(singlar sky)
maxがひとりでアコースティック・ギターを掻き鳴らしながら、声を絞って歌う。他の楽器はそれに最低限のアクセントを加えるだけだ。そこから終盤には、ryotaroが「添えるような」アコーディオンを加えてエンディングへ導く……バンド・サウンドでありながら静謐な良アレンジになっているだけに、ときおり観客の子供の声が入ってしまうのだけは残念。
07. too late
(MACHINATIONS)
原曲に忠実な「正統派」演奏が、この曲の、取り戻せない過去を嘆く歌を、いっそう哀しげに響かせる……「タメ」の箇所など、三条が降りてきたと思えるほどの「静かな緊迫感」に満ちている。それでいてエンディングのmaxとミチヒサのギターの絡みは、もはや「息の呑み合い」。
08. when baby's blue
(BEAT-ITUDE)
tRace elementsでの定番曲だったこの曲も、フル・メンバーによるelementsで、maxが開始前に紹介したように、ミチヒサがいるためギターの絡み合いを重視したアレンジに仕上がっている。
09. believe me
(SANS PATRiE)
短いMCから、バンド・メンバーがいちど去っての完全なふたり形式で、この曲へ。こちらは双方ともアコースティックな音色での絡みなので、音数が多く感じられ、しかしより静かに、楽曲自体の美しさを体感できるアレンジになっている。もはや観客も「聴き入っている」ようだ。また、maxが黒いヴェストの下に「SANS
PATRiE Tシャツ」を着ているのが、アップ・ショットで確認きでる。
10. victory come
(BEAT-ITUDE)
原曲に忠実ながら、ミチヒサのギターを中心に音数を増やした、無理のない好アレンジ。単曲でも壮大な感のあった、スケール感がぐっとアップしている。声を絞るように歌う詩人が印象的で、迫力や説得力を増している。
しかしメドレーだったこの曲は、いちど完奏されてしまい、原曲どおり「M.A.M.C.」へメドレーされないのだけは、悔しく、とても惜しい。あのナスノと競い合うような猛烈なリズム・バトルを繰り広げるのは、三条通でなくてはいけないのだ。そのためエクステンドされたエンディング部分はryotaro&ナスノと、ミチヒサのメイン楽器バトルのような二分割ショットになり、完奏される。
11. yong fm
(BEAT-ITUDE)
その代わりに(ほぼ)メドレーとなる対象になったのは、この曲。ryotaroのオリエンタルともいえそうな印象的な音色のイントロから、原曲よりややスピードを上げたアレンジのこの曲へ導かれていく(ryotaroのアコーディオンが曲を導くかたちになるのは、ライヴや別ユニット、ソロ活動などの修練の賜物だと思われる)。ビートは逆にシンプルになり、根幹になるにとどまっている。あくまで弦楽器であるギターを掻き鳴らすミチヒサに対し、鍵盤が構造的に打楽器であるのを、ryotaroの演奏で実感できるかもしれない。もっともメッセージ性のつよいこの曲は、やはりmaxはとてもちからが入っている。
12. stone cold blind
(freedom captured)
アルバムでは展開曲のような、ワン・クッションだったこの曲も、ナスノの刻むようなベース・リズムを軸として、まるでメインになれる曲になっている。エクステンドされたイントロではmaxがブルース・ハープを吹き、ところどころryotaroが効果音的なアコーディオンを挟む。間奏部ではふたたびmaxがハープを吹く。この曲がなによりグルーヴィであるのは、最前列の「踊り狂う男」と、それを煽るかのようなナスノのベースにあらわれている。フェイド・アウトだったエンディングも無理なく完奏される。
言い換えれば、このライヴが、ラスト・ライヴであることを束の間、忘れさせてくれる曲だ。
しかしmaxの「15年前に買った」ギターの弦が切れてしまい(印象的だ!)、急遽ミチヒサがMCをとる。そこであかされた機材トラブルにより、小休止が挟まれる。
13. machine on
(MACHINATIONS)
この曲が、オリジナル・メンバーで楽しめないとは……という印象がつよい曲。
三条のドラムより「端的」なビートのshigekiのリズムは、同じビートのようにきこえて、まだ「若い」。現代社会の機械化を皮肉った曲にとっては、まだ「生々しい」。反面、ナスノのベースは冷酷なまでの端的なビートを刻んでいる。ミチヒサも笑顔でありながら、指先は淡々。観ている/聴いているだけではわかりづらいが、その「ニュアンス」のようなものは、そういったところに反映されるのではないか。そのため、yungのアクティヴすぎるパーカッション・プレイに違和感もあるが、最後には全員が楽しそうに演奏を終わらせたので、それでいいのだ。
14. come down moses
(MACHINATIONS)
また続いて「ファイナル・アルバム」からのナンバー。maxのアコースティック・ギターとミチヒサのエレクトリック・ギターの絡みから、モーゼの求愛のごとくやさしいナンバーがはじまる。それがしだいにアクティヴに、リズミカルに展開し、やがて六位一体の仕上がりに帰着する。このメンバーでのアレンジで、もっとも優秀な仕上がりになったといえるナンバー(それが最終作の曲だというのは、少々皮肉めいたことだ)。
maxは雪駄を脱ぎ、裸足でステージに立つ。大地の鼓動を、大地のようだった三条のビートを、感じているのだろうか。
私見ではあるが、メンバーが口にする「三条が降りてきた」瞬間は、この曲からのように感じられる。
15. in her element
(freedom captured)
ここへきての、先祖がえり。メンバー全員が集結したライヴのなかで、ほぼ欠かさず演奏されてきた、初期の代表曲でもあったナンバー。なにより“elements”の根幹となるワードを含んでいるのだから、ラスト・ライヴで演奏されないはずがない。
原曲からさほどつよいアレンジはないのだが、それゆえにバンドの成熟を感じさせる演奏。しかしもちろん、ヴァージョンによってかならず変わってきた間奏部分とエンディングのryotaroのアコーディオンだけは、また変わっている。観客と一体になって終盤の“La
La La……”コーラスを口ずさむのは、少なからず感動できる場面だろう。
16. trip #2
(singlar sky)
アルバム全体のハウス・サウンド的な音作りから、このファイナル・ライヴでは数が少ないアルバムから「まさか」の選曲。水がしたたるような静かなギター・リフから、maxが拡声器を取り出し、違和感なく曲へ導入。アップ・テンポでもない、ミディアム・テンポに近いながら、アクティヴでバンド・サウンドになったアレンジに驚き。リズム隊3名の実力がもっとも発揮されるナンバーとアレンジで、とくに最後などelementsのリズムを牽引したナスノの指先のアップで終わる。
17. soldier boy
(singlar sky)
原曲では無機質なビートと有機的な演奏がミックスされるのが特徴となっていたバラード・ナンバーだが、ここではまるで、最初からこのバンド・サウンドだったかのような自然に有機質なアレンジに落ち着いている。ことギターとアコーディオンが有機的になったリズムと絡むのが、このアレンジでの特徴だろう。
演奏終了後、メンバーはいったんステージから立ち去り、観客の熱いアンコールによりふたたびステージへ入っていく。
18. circus of the sun
(freedom captured)
この曲こそが、elementsだ。
この曲こそが、elementsのライヴだ。
maxのアコースティック・ギターにryotaroのアコーディオンが静かに乗り、ミチヒサのコーラスに加えてナスノのベースが入る。そしてドラムとパーカッションが重なり、そして詩人は「自由」を求め、叫ぶ。そこへミチヒサのギターがさらに重なり……やがて完全に一体となる。elementsにとって象徴的な楽曲であり、決して外せない存在。
アレンジとしては、一時期からのライヴでメインになった「冒頭はアコースティック、後半は通常」の2ヴァージョンを足して割ったような、それこそ「完成ヴァージョン」。多少の違和感が拭えなかったドラミングも、ここまでくるとそれを完全に払拭している。
そしてmaxが掻き鳴らすギターと歌で、バンド・サウンドによる一音、演奏は終了する。そうしてふたたび、メンバーはステージから去る。
19. ayoba! / finale
(SANS PATRiE)
ふたたびのアンコールを受け、この曲が、ほんとうにelementsの「最後の」演奏となる。原曲アレンジにのっとった短い演奏ながら、最後は大々的に「バンド演奏の乱打」がエクステンドされ、観客の拍手を受けて未発表曲(ノン・クレジット)につながる。そしてほんとうのエンディングを迎える。
しかしバンドが最後のことばに選んだのは、「PILLOW
OF GLASS」の“goodbye”ではなく、“AYOBA!”だった。これは観客やファンだけでなく、三条に対しても向けられたことばだったのではないか。
またふたたび、会えるような響きをもった「あばよ」。それを文字った「アヨバ」……。
三条通は、生きている。メンバーのなかに、ファンのなかに、演奏を収録した楽曲に。
もちろん最後のクレジットは、最大と最愛の感謝をこめて、彼宛てだった。
<bonus video>
タイトルから選ぶことのできる、ボーナス映像。イントロから結成当初の彼らの写真がクローズ・アップされ、本編未収録の楽曲と映像が楽しめる。はしばしに若かりし頃の彼らの姿が映るので、ファンは必見のこと。
01. put it on
(singular sky)
原曲よりずっと熱を持ったバンド・アレンジで、単調だった曲がまるで別曲のようになっている。はしばしに映される若かりし頃のメンバー・ショットとあわせ、このバンドが成熟してきたことを実感できる演奏。とくに中心人物maxと、その最たるサポート役だったryotaroの成長ぶりには、感嘆の声しか出ない。本編に入れても問題はなかったのではないか?