『メグとライオン』を読み解く

〜はじめに〜

 天野がすべての油彩を描き下ろし、物語も創造した渾身の絵本『メグとライオン』。もとより絵本を好み、絵画にもプライオリティを置いてきた天野にとっても「念願」の作品だろうし、天野という枠を取り払って読んでも充分な出来栄えを誇る作品だ。しかし一般的には、ファンにとってさえも、それは「キャラクター・グッズの一環」としてとらえられているのが現状でもある。だが本書は、そうした範疇に収まって終わるにはもったいない作品だと筆者は考える。
 作者である天野自身から、本書への言及はほんのひと握り――それも紹介文程度――しか見られない。よって、以後は飽くまで筆者の「夢想」や「邪推」に「拡大解釈」、或いは筆者を批判する人間がよく用いる「妄想」の類でしかない。しかし文学であれ芸術であれ、そうした「創作」にとってそれらは原動力であり、糧でもある。
 そのため、この時点で苦笑に耐えられない人物や、冷笑のためここを訪れた人物は早々とページを戻すといい。そうした人々は決して理解しないだろうし、理解する姿勢も作らないだろうから。いつまでも『メグとライオン』を「所詮キャラクター・グッズ」と嘲って、その実「レア・アイテム」などと呼んで珍重しておればよい。そうした偏見にまみれ、そのせいで多くの傑作を見逃してきた人間であることを自覚しながら、ね。

「先ず君の其の偏見を、棄てて見給え」

 なお、先に断っておくが、本稿でしきりに持ち出される「コンプレックス」という言葉は世俗で誤解されがちな、単純思考直行の、幼稚な「性癖嗜好」を意味するものではない。また当然ではあるが「コンプレックス」とは「劣等感」のみならず「優越感」の意味も同時に有する。そもそも「コンプレックス」という言葉は「複合体」という意味であり、砕いて言えば「対象に関して複雑な状態(或いは心理)にある」ということなので、各種それ相応のものとして考えて頂きたい。

 また、本書『メグとライオン』を読むにあたって、その先行絵本とも呼べる、シングル『人形』初回盤付属の『時計台の鐘』も参考資料となるので、以後、二重鍵括弧で『時計台の鐘』と記される場合は絵本の題名と解して頂きたい。逆に、一重鍵括弧での「時計台の鐘」は『メグライオン』収録の曲名や一般的な名詞である、ということだ。