ゴネンジャー・シングル曲
〜活動5周年記念5枚同時発売〜
2006年に天野は、活動5周年を記念しての5枚シングルを同時発売した。
この5タイトルは初めから関係性を考えて書いたわけではない、という。
「ウタカタ」の「放っておいたら消える球体」でスタートし、「何度でも膨らませることのできる球体」として「風船」なのがまずひとつ。「ウタカタ」の漢字表記である「泡沫」のさんずい二文字からの関係で「混沌
-chaos-」が浮かび、同時に、言葉尻が似ている「烏」、「なぜだか嫌われがちな鳥」が浮かんだところで漢字の似ている「梟」、「夜の番人と言われる鳥」に行き着いた、という具合だそうだ。そのうえで天野は「天野月子総集編、みたいなイメージ。わたしの5つの扉へようこそ、な感じだね」とも語っている。現に、ビデオ・クリップには5枚の扉が立ち並ぶシーンが何度と挿入され、それぞれの扉の中で楽曲が展開する。
なお、このシングル5枚は「5周年記念イヴェント」なのだから、天野はこれらのシングル曲をアルバム編集して発売するつもりはまったくないと公言している。そのためこの10曲がまとめられたり、ベスト盤に収録されるなどの見込みはない。せいぜいがカップリング曲をリメイクして『ウマ・サーモン』に収録したぐらいだ。それでもアルバム収録せよという身勝手な声は後を絶たないが、ファンであれば意向を汲み取るべきだろう。
[烏(カラス)]

A01.烏
シングル通算15枚目となる5枚同時リリース作品。天野の得意とするソリッドなロック・ナンバー。弱々しい「君」を守ることができるか? と自問する歌詞が、臆病ながら強大な敵に向かっていくイメージを惹起させる。歌詞にある「仮初めの城」とは「住居」のことであり、温床たるそこを抜け出て白日のもとに晒された時、本領を発揮できるか? と問うてくる。因みに天野曰く「今年は烏が流行る」とのこと。
「衣装のイメージは『聲』のスーツ・スタイルだった。結果的にはヤクザのようでもあり、番長のようでもあるのだけれどね。で、若干やさぐれ番長であるがゆえの『切なさ』みたいなものをカラスくんで出せれば、と思った」とは天野の弁。とまれ、鋭角さでは天野随一。
ビデオ・クリップについてはこちらを参照。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」が初出となった。
なお、初回生産分のみギター・ピックがもれなく当たる連動応募券付き&応募葉書封入。
A02.硝子
打ち込み全開で迫り来る、メランコリックな面もある曲だが、中枢は「pigeon」のような打ち込み主体のビートにあると言えるだろう。そういった意味ではいささか冗長で退屈な曲でもある。とすればひっくり返せばファンクなのか?確かにファンキーでグルーヴィな曲ではある。「鋼の鎧などいらないでしょう?」など、面白い表現はあるのだが……いかんせん曲が単調で、天野の曲としては味わいに欠ける。
ライヴでは、演奏されていない。
[梟(フクロウ)]

B01.梟
シングル通算16枚目となる5枚同時リリース作品。寓話的メランコリック・ポップ・チューン。コミカルな振り付けが施されており、それはライヴやビデオ・クリップで楽しめる。オリエンタルなイントロからから打ち込み主体だと解る、80's趣味では天野随一。コミカルなようでいて真摯で一途な歌詞も味わい深い。作中にて連呼される「ゴロスケホッホー」とはエゾフクロウを代表とした梟の鳴き声のこと。
「梟のキィ・ワードとしてあったのは、なんだか丸い、ちょっとかわいい、だけどアクティヴ、夜の番人、だった。衣装も、そのイメージを膨らませてラフ・デザインした。この曲ではわたしの『動』が出たらいいなぁと思うのね。それはヴィジュアル・イメージやPVなんかも含めて……ちぃとやんちゃで、ドジな番人」とは天野の弁。「もともとは『烏』のB面曲として書き始めたものの、スタッフの意見一致によりA面になった曲」とも。恐らくは、その字面から「烏」のカップリングに予定されていたのだろう。
ビデオ・クリップについてはこちらを参照。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」が初出となり、コミカルな振り付けも好評だった。
なお、初回生産分のみギター・ピックがもれなく当たる連動応募券付き&応募葉書封入。
B02.国道
ブルージィなラヴ・ソングで、まっすぐな愛の形を描いた佳曲。「国道を幾つ抜けても」「隣りの信号が青く瞬いても曲がってしまわないように」……というひたむきな、「一直線な愛」を描いている。それでいて遠距離恋愛をうまく描いている歌詞は感動さえ呼ぶ。「遠回りしても国道のようなちゃんとした道を通らなくてはならない。意思の疎通もそれに似ている」と天野は語る。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」初日のアンコールで弾き語り演奏された。また、「『Howling』発売記念ミニライブ」では打ち込み+ツイン・ギターという形で演奏された。さらには、「アマフェス2007〜天野月子withプレイボーイズ〜」では『ウマ・サーモン』のヴァージョンに準じたアレンジで演奏された。
[ウタカタ]

C01.ウタカタ
シングル通算17枚目となる5枚同時リリース作品。天野ワールドを象徴する儚いミディアム・ナンバー。「箱庭」の最後の一節「扉を開け 手に入れた全てを置いて出ていこう」から5年後、すべてを置いて抜け出てきた「わたし」が現世界で彷徨う様を描いている。「あなたが望むのなら微塵に砕けてもいい」という歌詞は昨今の天野の「自己犠牲精神」を示しているようで興味深い。曲中で「コロシテ」という呟きも聞こえ、原点回帰を思わせる。が、それはミックスか何かの都合でそう聞こえるようになってしまったのだと天野は語る。世界観の壮大さでは天野随一。
「『ウタカタ』は、ジャケットからも解る通り、『箱庭』から続く物語、の意味合いにしたかった」と天野は語る。「『たったひとりだから排泄できる想い』的な曲にしようと思った。この曲で表現したいのは天野月子の『女』の部分。だからそれを象徴する衣装としてウェディング・ドレスを選んだ」
ビデオ・クリップについてはこちらを参照。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」二日目が初出となった。
なお、初回生産分のみギター・ピックがもれなく当たる連動応募券付き&応募葉書封入。
また、この曲はVシネマ『Next phase〜君からの贈り物』主題歌。
C02.ウララカ
ブギー・スタイルのロック・チューン。桜を「待ってろよ」「散るんじゃねえぞ」などと挑発的に身構えるのでこちらも身構えてしまいそうだが、日常への回帰願望を「やりたいゲームもあるんだ」とユーモアにくるんでお返し。実話か? と疑ってしまいたくなる「バンド・メンバーからのダメ出し」など可笑しげな歌詞(夢で見たことらしい)が興味深い。
ライヴでは「ひ・め・は・じ・め」で登場した。
[風船]

D01.風船
シングル通算18枚目となる5枚同時リリース作品。同時リリースの「ウタカタ」と対を成す曲。「丸いものシリーズ」と呼ばれる本曲は「幸せって丸いものだと思うんですよ」という天野の発言を具現化したもの。むかしに思いを馳せる少女が夢みる姿を描いている。セカンド・コーラスがギター・ソロの後という意外な一面も。スウィートで可憐な一曲で、少女らしさでは天野随一。「風船」が何を意味するのか――DVD『5-five-』の随所に現れる風船の様子を鑑みて――は、リスナー個人の解釈に任せる、とはライヴでのMCによるもの。「人によっては夢や希望だったり、答えは人によって違うと思う」とのこと。
「『風船』は、たったひとつの風船を大事そうに持っている女の子、のイメージがあって、そのまま成長してしまった『わたし』っていう感じにしたかった……ちょっと不思議ちゃんっていうか」と天野は語る。「衣装は全部自分でスタイリングした。わたしの普段着スタイルである70'sな感じを取り入れつつ、普段はあんまり着ないですね、これ系、っていう感じ。『梟』が『動』であって『アクティヴな少年的イメージ』であるのなら、『風船』は『静』であって『童話を地でいく少女的イメージ』。天野月子の中の『メランコリックな少女性』を感じてもらえれば幸いです」また「恥ずかしいぐらいぼろぼろに泣きながら歌詞を書いた。ちょ――――個人的な思い出が詰まっている曲」とも。
ビデオ・クリップについてはこちらを参照。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」初日が初出となった。
なお、初回生産分のみギター・ピックがもれなく当たる連動応募券付き&応募葉書封入。
D02.光線
ストレートでポップなロック・ナンバー。ブライトな曲調に対し「君」をひたむきに守ろうとする純粋向くな歌詞が味わい深い。まさにB面曲の真骨頂、とでも言うべき仕上がり。ソリッドでワイルドな曲調も素晴らしいが、中でもコーラス部分は印象に残る。「必殺技」「足りない威力を補ってあげるよ」など、歌詞も「天野節」が炸裂している。ライヴでは、「アマフェス2007〜天野月子withプレイボーイズ〜」で登場した。
[混沌 -chaos-]

E01.混沌-chaos-
シングル通算19枚目となる5枚同時リリース作品。今作はタイトルが示すように生楽器のプログレッシヴなプレイが交錯するディープなロック・ナンバー。ところどころに変拍子(っぽいリズム)が用いられ、すわプログレか、という箇所もなくはない。「烏」と兄弟分、対になるのがよく解るソリッドかつパーカッシヴなナンバー。「わたしが手にした鍵はどの扉を開ける?」といった、今回の5曲同時リリースのキィとなりそうな歌詞も。まさに「混沌」とした部分が魅力だが、シングル曲にしては珍しく、ギター・ソロはない。そのせいか少しのっぺりとした印象を持ってしまうのは残念だが、この挑戦的な姿勢は評価したい。楽曲の複雑さでは天野随一。歌詞の「目指した入口は右と左どちらが近い?」という部分は、人間の右脳/左脳の感覚に、自身がどちらに近いかを示しているものと思われる。
「『混沌 -chaos-』は『烏』の色違いであり、烏の「切なさ」と対になる「凛々しさ」みたいなものを表現したかった。ジャケットの表情で、曲の表情で、「切なさ」と「凛々しさ」が伝われば、と思う」とは天野の弁。
ビデオ・クリップについてはこちらを参照。
ライヴでは、「春爛漫! 無敵のゴネンジャー」で演奏された。
なお、初回生産分のみギター・ピックがもれなく当たる連動応募券付き&応募葉書封入。
E02.かぼす
スウィート&ヴェルヴェットなポップ・バラード。打ち込み主体な部分は弾き語りに化けるかも、と思わせる。「君がなきゃ僕は生きていけないよ」と歌う純粋無垢な、ひたむきなラヴ・ソング。突如「G線上のアリア」の一部をストリングスが奏でている。「わんぱくな織田信長に忠義を誓い続け、裏切った矢先に命を落とした明智光秀の人生を思いながら書いた曲」とのこと。そう思えば「君がなくちゃぼくの生きる意味なんてないさ」「かなしい出来事も全部ぼくが引き受けるよ」といった歌詞も普遍性がありながら具象性にも富む。また、かぼすは搾られることが幸せであり、添え物として生きる。その儚げな姿を歌っているとも天野は言う。
ライヴでは、演奏されていない。