全曲解説:LIVE TOUR 2002 氷の美SHOW

〜ファースト・ツアー・ライヴ録音〜

 初ツアーとなる「氷の美SHOW」より、2002年6月28日、渋谷クワトロでの演奏を収録。「音倉レコード」の公式サイトによる通信販売でのみ購入可能だったが、その後のライヴでは会場物販もされた。いずれにせよ店頭での購入は不可。
 忠実な演奏が多いものの、何かしかのアレンジが加えられた曲も多く含む。大きく異なる曲もあり、またこのツアーで初披露となる「秘密サークル タイガーマシーン」のオープニング・テーマ曲も収録。やはり基本演奏陣のみがステージに上がっているので鍵盤奏者の姿はないが、鍵盤や効果音などもバックに流され、再現されている。全体的にライヴ前作となるVTR『Pia Debut Live Review』よりも各メンバーがフィーチュアされ、各人の個性が引き立った演奏。
 冒頭にはライヴで使用されている「菩提樹」のリミックス風S.E.が流され、それに本人吹き込みの挨拶が乗せられた部分も含んでいる。また、曲間や曲中にはCS放送による特別番組で使用されたオフ・ショットなどがほぼ全部含まれており、演奏場面も同じ部分があることから、当初より製品発売が見込まれていたのが解る。
 現在はDVD化され、限定DVD-BOX『おもひで』に収録されている。


01.菩提樹
 幕が開くと、シングル『Treasure』のジャケット通り、赤いバスローブ姿の天野が登場する。ヴォーカルの力量が問われるこの曲では、さすがにスタジオ再現とまでは言えないが、上ずり加減だった『Pia Debut Live Review』よりだいぶ歌唱力が増し、非常に安定したものになっている。ライヴでは声域が揺らぎがちなこの曲(現に声域がヘヴィだ)も、歌唱の落ち着き具合で言えば、ライヴ・テイクでは最上位に位置するだろう。低音部分はRieによるコーラスで、彼女は全体で大きな活躍を見せている。
 終了後、実際に演奏されていたようにカヴァー「TOKIO」の演奏が開始するが、その曲名を天野が叫んだ時点でカットされ、ライヴ開始前のバックステージの模様に移る。

02.Treasure
 バックステージの模様が終わると、シングル『HONEY?』クリップ中の衣装になった天野が登場。テープ再生による一小節が冒頭に付加され、80年代風味を増したイントロから本体へ入る。意外だが、この曲を発表した記念のミニ・ライヴ・イヴェント「茶会」はアコースティック主体であり、この曲はクリップ再生にとどまっていたので、東京でのライヴ演奏はこの演奏が初めて(「Pia Debut Live Review(関西版)」で演奏されたものが初披露)。サビ部分にヴォーカルの難しさが窺える。なお、ギミックとして設けられていた幾つかの効果音は省かれている。

03.Pleasure
 ここからは「アコースティック・コーナー」を宣言され、信号機の和やかな音について話し合ったツアー話を挟んで簡素なセットで2曲が演奏される。実際の演奏ではこのコーナーでの2曲目なので、その後に「2曲目」という宣言があるのはご愛嬌(因みに、削られた前曲は「箱庭」で、その前後のMCを組み合わせている)。その「サンバだったら?」というMCも、実際的には続くこの曲への布石となっている。
 もとより「素朴な楽しさ」のあったこの曲が、骨格の解りやすい演奏で楽しめる。特に打ち込みだったドラムが、J.Jの叩く小型ドラム・セットになっている点と、シャラのギター・フレーズの違いなどに注目。このアコースティック・ヴァージョンは本作でなければ聴けないので、本作を評価するうえでの大きな要素になるだろう。

04.スナイパー
 こちらもアコースティック・ヴァージョンは数多く演奏されど、正式収録は初めてとなる。声を張り上げがちで、トリックやギミックの多かった原曲に比べ、遥かに「しっとりと歌を聞かせる」演奏となり、その後にエレクトリックに戻って演奏されるまでの歌唱力アップに繋がった。アコースティックゆえすべての演奏が異なるが、特にシャラのソロの違いと、最終コーラス前にJJによるカウントが入るのがこのヴァージョンの特徴。もちろん最後には「拳銃アクション」も披露。よく聴くと観客席からの「コーラス部分のダブル・クラップ」が聞き取れて微笑ましい。

05.HONEY?
 シングル発売直前とあって、ごく忠実な演奏。強いて言えばオリジナルのアルバム・ヴァージョンに準拠したもので、シングル・ヴァージョンでは削られていたスクラッチ音も強く鳴らされている。バック・スクリーンではビデオ・クリップに使用される画像の断片などが流されている。エンディング部分は強いて言えばシングル・ヴァージョンに近い、ギターの一旋。

06.進め☆タイガー
 ステージが暗転し「秘密サークル タイガーマシーン」登場を告げる、アニメ番組風の子供っぽい声によるS.E.で曲が開始される。JJが姿を消し、代わりに「レモン色JJタイガー」が登場。メンバーも全員サングラスを着用し、天野と共に踊りまくる。演奏中のスクリーンに投影されている、歌詞に基づいた天野直筆のイラストが映像の右下に紙芝居さながらに展開されるので、レモン色J.Jタイガーのダンスと共に映像として必見。当日、この曲を収録したカセット・テープを買い逃してしまった方には、さらに有用だったことだろう。

07.青紫
 雷鳴と雨音のS.E.から導かれるように、天野の独唱が始まる。そこからディスコテックにアレンジされたイントロと、あっきーによるベース・ソロが挟まれるなど、楽曲として弱かった原曲に比べ、リズムを全面に打ち出すことで楽曲の魅力を発した。天野とRieのチャイナ・ドレスという衣装、さらには天野がもてあそぶファーや、Rieの持つお立ち台扇子といったアイテムからも連想されるように、ごくごくリズムを強調した演奏。もちろん、フェイド・アウトだったエンディング部分も完奏されている。

08.ロビン
 そのままダンス・ホール状態は続き、基本トラックとなる電子音をエレクトロニカ風(というよりテクノ風)にリミックスしたS.E.を冒頭に配置したこの曲へ。腕を突き上げるサビの「ロビン」が叫ばれ、唐突な開始原曲より順調に展開する。基本トラックとなっていた電子音が除かれているため、楽曲自体の速度は変わっていないのだが演奏のピッチが遅いように感じられる。ヴォーカルは多少不安定気味だが、楽曲の大きな改造具合が楽しめるだろう。

09.スパイダー
 こちらは冒頭の“I Know”という歌詞部分がリミックスされた冒頭を付加し、さらに曲中でもバックに被さる。本体はバンド・サウンド風の出来で、やはりリズムが強調されている。結果、原曲でもこの曲の特徴となっていた「チッチッチッチ!」というドラムが際立っている。サビでは腕を左右に揺らす振り付けも。エンディング近辺のギター・ソロに見られる、ちょっとした違いに注目。

10.PLAY BOYS SOLO
『Pia Debut Live Review』では行われながらもクレジットされていなかった、プレイボーイズによるインスト・バトルが今回はワン・トラックに明記されて収録。天野とRieが去り、残る演奏陣はそのままジャム・セッション状態に突入。チャイナ・シンバルで開始される、リズムを尊重したJJのドラム・ソロ、スラップ奏法を多用したあっきーのベース・ソロ、と続いたところで、両者による複合演奏に入る。そこへシャラがリズム・ギターを刻み、あっきーのソロが続き、やがてシャラはブルース・タイプのメロウなものから、ハードでソリッドなギター・ソロを展開。そうして全員の演奏が合致した、お馴染みのトーンのものとなる。終了後にはリハーサル映像やバック・ステージの模様が流される。

11.B.G.〜Black Guitar + Berry Garden〜
 天野のメッセージを画面に映しながら、原曲通り楽曲が開始する――が、そこで原曲では小さかったエフェクト・ノイズをシャラが大きく鳴らしているのに少しばかり注目。『箱庭』ビデオ・クリップ中の赤いスカートに着替えた天野による、『Pia Debut Live Review』に近い堅実な演奏だが、エンディングのシャラによるギター・ソロなどに若干の差異がある。中間部には演奏ヴォリュームを下げ、ツアーについての天野の肉声コメント(文字コメントではない)を挿入。そのため純粋に楽曲を楽しむよりは、記録としての側面が含まれる。またコーラスのみの冒頭部分にて、原曲では「ものすごく小さな音量で」入っていた「ピピッ」という音を、シャラはギター・ノイズで表現している(これ以降のライヴではしばらくその様が見られる)。

12.カメリア
 天野はギターを置き、歌に集中。サビ以外では原曲よりシンプルな感のある演奏は、特に主軸となっていたメロディックなベースが映える。そのうえで、不安定ながら迫力ある天野の歌唱が白眉。特にエンディング近辺など、さながら投げ出すように叫ばれ、痛々しくリスナーの胸に突き刺さること間違いなし。
 私的には本作中、最も繰り返し聴いた生々しい演奏。

13.巨大獣
 アンコールの声が上がる様子から、ピアノ演奏のベーシック・トラックが冒頭に付加され「自分について」の文字コメントを画面に映しながら楽曲が開始される。やはり今回も、最後にはこの曲が演奏された。他の曲より落ち着いた歌唱。エンディング近辺でリズムに終始したJJのドラムなど、細かい点に差異あり。そうして『Pia Debut Live Review』に準拠したエンディングを迎え、ライヴ終了後の明るい楽屋風景が映され、やがてイントロにもあった「菩提樹」リミックスS.E.に被せ、再登場した天野によるライヴ終了及びその後の予定宣言があり、謝辞と一礼で終わる。