全曲解説:MISTY
〜A LUNCH3曲入りマキシ・シングル〜

天野月子が「天○○子」としてヴォーカル参加するユニット、A
LUNCH2度目のリリース・アイテムとなるマキシ・シングル。音倉レコードのオンライン・ショップ「音倉商店」やインディーズ取扱店で購入可能。
A LUNCHはライヴで新曲を演奏し続けていたが、ここにその3曲がお目見えとなる。3曲入りのマキシ・シングルながら作曲者も3人に振り分けられていて全体的にバランスよく、勢い一発だった『First Food』より進歩したものとなっている。寧ろ、全体的に「天野月子」の曲に近付いているような印象さえある。それだけ色彩が豊かになり、ヴァラエティに富んだものとなったということだ。今回はドラミングは打ち込みでなく、ライヴでのサポート・メンバーだった田部井啓人による生ドラムが使われているのが効果的。なお、やっすん83の事情からの帰郷により、A
LUNCHは実質活動停止となる。
01.MISTY
作曲は天○○子とやっすん83(今回も全曲作詞は天○○子)。曲のコントラストが青から赤へ変わっていくような、情熱的なロック・バラード。掻きむしるようなギター・ソロを挟む。3曲中、最も「天野月子らしい」出来となっている。ゲーム・ソフト『MYST』を続編までクリアしても納得がいかなかったということから、それを解決するような曲を作ろう、というのが契機だったという。「掴めるはずもない」「あきらめ」「逃げ出しても 吐き出しても 囚われてる」などの歌詞がそのエピソードを物語る。幻想を追って彷徨っているような歌詞が特徴。
「たくさんのデモは要らない。やっすんの切なさ篭った、魂の一曲を書いておくれ」という天野の要求に応じたやっすん83のデモから、熱過ぎた部分を削って「憂い」をプラスしたのだという(だからこそ「天野色」が強く感じられるわけだな)。歌詞には80年代、ネルソンのCMが役立っているとか。
02.JET SCREAM
作曲はやっすん83。最も前作の流れを汲んだ疾走ナンバー。しかし前作のような荒削りな勢いではなく、グルーヴが強調された整合性のある楽曲になっている。生ドラムの迫力が最も活きた楽曲で、やっすん83の曲らしくベースも執拗にうなる。よく読むとポジティヴな歌詞で、泣きながらもねじれながらも前進する様を描いている。短いながらもワイルドなギター・ソロもあり、疾走感を貫いたままギターの一閃で終わる。なお、デモ・テープ段階の仮タイトルは「お肉もりもり」だったという逸話も。
デモができあがったのは丁度天○○子がある小説を読んでいるところで、突然、失語症のような感じで視力がなくなったサブ・キャラが出てくる話で、彼が「どんどん真っ白になっていく」と言っていたのが鮮明に残り、この曲に繋がったという。「真っ黒に塗り潰されるよりも、真っ白に消えていく方が怖く思う」とは、かのカート・コバーンの「徐々に色褪せるなら、一気に燃え尽きてしまった方がいい」という言葉を思い起こされる。
03.トカゲ
作曲はクーロン。ブライトなギター・リフから始まり、青春を感じるような曲調だが、歌詞は“I
have poison”と宣言しつつも愛を捧げるメランコリックなものになっている。かなわない偶像を想い、「僕」の醜さを認めてくれた「あなた」に感謝と消えない痣を与え、奪うと宣告しつつも踏んでほしいという、永遠の片想いともとれる歌詞が読むほどに胸を打つ。意思を持ったトカゲの視点から人間を想ったような歌詞で「毒のすべてを捧ぐ」など少し「悪」の視点から描かれている。作曲者がクーロンということもあってか全体的にギターが活きた曲で、ソロも簡潔ながら印象的。ラストなど、ひそかにストリングスが郷愁を誘う曲でもある。A
LUNCH初の日本語タイトル曲。
自分で書こうかと思っていた歌世界に、クーロンがぴったりの(天野調の?)曲を作ってきたので、歌詞はするするとできあがったという。「地べたに這いつくばってちょろちょろ動く、トカゲの毒と、しっぽについて」の曲だそうだ。