全曲解説:ウマ・サーモン
〜お楽しみ or コア入門編 2〜

シングルを20枚通算で発売した記念となる、『ウィノナ ライダース〜月の裏側〜』以降の「太陽」から「Bowling」までのシングル・カップリング曲を総括、また現在のスタイルで再録音した企画盤。カップリング曲だけでなく、提供曲のセルフ・カヴァーも収録されている。タイトルは戸倉と天野が回転寿司を食べにいった際に、天野が発した「うまっ、サーモン!」という言葉を、戸倉氏が『パルプ・フィクション』などで有名な女優「ユマ・サーマン」のことととらえた、という経緯で取られているという。ハリウッド女優シリーズはまだ続いていたのだ。現に、ジャケットは『パルプ・フィクション』のパロディそのものではないか! また、サーモンが美味いという発言から、通称『鮭』とも呼ばれている(天野もそう呼んでいる)。
全曲新アレンジ、新録音となる12曲が収録されているが、これもアルバムであってもオリジナル・アルバムではない。
音倉レコードのサイトでの通販限定アイテムで、限定3,000枚生産。天野月子の「裏側」を知るためのマスト・アイテムであり、ファン・アイテムとなるだろう。のちに何度も追加プレスされたので、余りプレミア品ではなくなっている。
なお、それぞれの出展はシングルにあるので、原典については「アルバム未収録曲」の項を参照頂きたい。全体的に、原曲に較べてギター重視のアレンジが目立つ。
01.太陽
柴崎浩(ギター、元WANDS)+あっきー(アレンジ、ベース、プログラミング)による別名「レボリューション・コンビ」。サイケデリックだった原曲に対し、ビートの効いたハード・ロック・ナンバーになっている。特にワウを効かせたりしているギターが闊達で、コーラス部分では歌唱と交互に早弾きされる。あっきーのベースも炸裂している。一気に『ウマ・サーモン』の世界に入っていける好アレンジ。生のようにきこえるドラムは打ち込みのようだ。最後は天野のシャウトで終わる。
02.硝子
柴崎浩(ギター)+あっきー(アレンジ、ベース、プログラミング)による別名「レボリューション・コンビ」。田中栄二(ドラム)とあっきーのリズム隊に柴崎の絶妙なプレイが冴え渡る。打ち込み全開だった原曲に対し、ロック・アレンジが成されている。ドラミングなどにジャズ・テイストもあるアレンジで、鐘の音など効果音も含まれている。アクティヴさも増し、これならライヴでも再現できそうだ。やはりギターが大活躍しており、平坦だった原曲に較べ、聴きごたえがある。
03.Bowling
藤田謙一(アレンジ、全インスト)+宍倉聖悟(ギター)による演奏。テクノだった原曲に対し、ディスコ風のアレンジ。反復するギターが小気味よい。コーラスではストリングスも入り、Dメロでは声がイコライズされるなど、聴きどころは多い。ダンサブルなのでライヴ演奏されたら盛り上がりそうだ。
04.ウララカ
石原“SHARA”慎一郎(ギター)+甲斐“KAI”貴之(ベース)+工藤“KUDO”義弘(ドラム)による「ムーン・シェイカー」ヴァージョン。ブギー・チューンだった原曲に対し、疾走ナンバーとなっている。スラッシュ・メタル風で、EARTHSHAKERの演奏力を実感できる。ギター・ソロはいつものシャラ節で、早弾きで盛り上げてくれる。この曲もそうだが、本作はギターに魅力が多いが、唸るベースも聴きもの。
05.国道
「トム・ペティのような男臭いサウンドにしたかった」とプロデューサー戸倉が語るこの曲は、阿部光一郎(アレンジ、ベース、元What's
Love)を中心に、佐々木一剛(ドラム)、佐藤大剛(ギター)の「チーム仙台」。クァルテットの生ストリングスも導入されている。この曲では、ギターも素晴らしいが、ベースが肝。シンプルだった原曲に較べてドラムもテクニカルになり、ストリングスは郷愁を誘う。歌メロディは比較的原曲に忠実。ラストのストリングスは感動的ですらある。本作中、このヴァージョンでライヴ演奏された数少ない楽曲のひとつ。その模様は『アマフェスリポート2007』で聴ける。
06.白い華〜White Garden〜
9 nineに楽曲提供したこの曲は、原曲では打ち込みだったが、プレイボーイズの演奏によりロック・チューンとしてよみがえっている。疾走感があり、それでいてどこか刹那い、好アレンジ。ソリッドなギターにうねるベース、テクニカルなドラムなどプレイボーイズの本領発揮といったところか。ライヴでは冒頭のみアカペラで歌われたことがあったが、「ひ・め・の・ぼ・り」では完全演奏された。
後にシングル『ゼロの調律』にカップリング曲として再登場する(ヴァージョンは同じ)。
07.Sully
石原“SHARA”慎一郎(ギター)+甲斐“KAI”貴之(ベース)+工藤“KUDO”義弘(ドラム)による、ヴォーカルが天野になったEARTHSHAKERでの演奏。別名「ムーン・シェイカー」。まさにEARTHSHAKER風味とでも言うか、重厚な仕上がり。天野の作詞が自らの声で再現されるということもあってか、原曲より幾分ポップになっており、しかしロック・テイスト溢れる佳曲。野太いベースと巧妙なドラム、そして何より饒舌なギターが楽しめる。
後にシングル『ゼロの調律』にカップリング曲として再登場する(ヴァージョンは同じ)。
08.ID
あっきー(アレンジ、ウッド・ベース、プログラミング)+田中栄二(ドラム)+扇谷KENT(ピアノ、オルケスタ・デ・ラ・ルス)による「トリオ・ザ・サッポロ」の演奏。ジャズ・フレイヴァーあふれるアレンジ。原曲から最も変化した一曲とも言えるだろう。ピアノが淡々と鳴り、ベースが唸る。グルーヴィでありながらどこか上品な感さえ漂わせている。間奏とエンディングではピアノ・ソロが聴ける。
09.萌
長谷川智樹(アレンジ、ギター)+ROLLY(ギター)+9
nineより佐竹宇綺と下垣真香がコーラスで参加。意表を突くアイドル・コンサート風の「萌」な雰囲気から始まるこの曲は、軽快なロック・チューンだった原曲に較べてグラム・ロック的なギター(ROLLYの功績だろう)と、ピコピコと鳴る打ち込みが味。特にギター・ソロは聴かせてくれる。コーラスではあどけない声も聴ける。そしてまたコンサート風に終わる。
10.光線
藤田謙一(アレンジ、全インスト)+宍倉聖悟(ギター)による演奏。ブライトなギター・フレーズはそのままに、打ち込みが多用されたためより明るくなっている。途中ブルージィになるシーンも。やはりギターが肝で、しかし打ち込みも印象的。本作中、最も明るい曲と言えるだろう。
11.かぼす
長谷川智樹(アレンジ、プログラミング)+クァルテットでの演奏。ゴスペル風で始まるコーラスから、打ち込み全開の曲が始まる。ところどころクァルテットの演奏が入り、ソロも取る。素朴でアコースティック風味。エンディングではクァルテットの感動的なストリングスとトランペット音の打ち込み、そしてゴスペル・コーラスで終わる。
12.骨
石原“SHARA”慎一郎(ギター)+甲斐“KAI”貴之(ベース)+工藤“KUDO”義弘(ドラム)による「ムーン・シェイカー」ヴァージョン。原曲から最も変わったのがこの曲だ。静謐だった原曲に較べ、EARTHSHAKER組によってハード・ロック・アレンジとなっている。原曲の美しさが好みだった者からすると口を挟みたくなるアレンジだが、これもお楽しみのひとつと考えればいい。リズミカルなコーラスに、余韻を残す原曲通りのピアノでのエンディング。最も評価が分かれるアレンジだろう。