「くれない鉄仮面団特別臨時集会vol.2」
ライヴ・リポート

〜Shibuya BOXX:28/11/2004〜

 前回は、クイズ大会やオークションなど、イヴェント的要素の強かった「臨時集会」だが、今度の「Vol.2」はライヴに徹して行われるという。秋晴れの空、輝く晴れ女。今回は、その模様を端的にではあるがリポートしたい。

 普段より和気あいあとした会場。おなじみのソナタ楽曲をバックに、スモークの量が増えてくる。闇夜が青に染まる。そうしていつもの、「菩提樹S.E.」が鳴らされ、会場は早くも歓喜の渦となった。
「皆さんこんばんは。天野月子です。めっきり冬になりました。お風呂が恋しい季節ですよね。この間、入浴剤を入れてお風呂を楽しんだのですが……入浴剤に、貴金属は取り外しください、よの文字が。お陰で中指にはめている抜けないリングが、真っ黒になりました。その後、ソースで洗いました」
 オープニング・トークは、もはやお手のものだ。会場をリラックスさせたところへ、シンセが迫りあがってくる――今日のオープニングは「菩提樹」。すっかりオープニング曲の貫禄に満ちた楽曲となったが、この曲がオープニングになるのは久方振りでもあった。それだけに、「今日は『すぺさる』なライヴ・イヴェントなんだな」という感が強くなった。
 間髪入れず、「Treasure」のエクステンド・シンセ・イントロが鳴り響く。演奏されることが余り多くないシングル曲だけに、「すぺさる」にそれを演奏しているようなきらいさえあった。そのまま楽曲は「鮫」に突入し、一気に会場のヴォルテージを高める。この曲は(いい意味で)「ドスの利かせ方」がコツだと思うのだが、ドスの効いた好演奏だった。
「皆さん、お久し振りです」
 湧く会場内。
「きょう、初めて来たっていう人?……はぁ、結構いますねぇ」
 たしかに、半数近くの観客が挙手していたような気もする。そうやって新しいファンを獲得できているのは、良い証拠だ。
「きょうは、熱いライヴにしましょうね。『東京、すごかったぜ!』と言われるような、ね」
 喝采を浴びて始まるのは「青紫」。ディスコテックなベースが活きる楽曲は、さながら人力テクノと言ったふうに展開される。続く「龍」で天野はゆらゆらと舞い、ポジティヴな刺激で歌いきった。
 その後の「箱庭」では迫力を加味した演奏がこころよく浸透し、赤いライトが鮮烈だった「蝶」はかなりの迫力と説得力で迫ってくる。前半から、飛ばしに飛ばした熱いライヴになってきていた。

「アコースティック・コーナーに移りたいと思います」
 そう、鉄は熱しすぎると良くない。少しばかり冷ますのも必要だ。
「これからお兄様方にはちょっと引いて頂いて、お姉様――ギャル中心でお届けします」
 そう言って導かれたのは、今はSeptemberとして活動している3人――Rie(cho)、Qoonie(p)、momo(vc)――だった。「すべさる・げすとも登場しますよ」という天野の微笑みが妖しい。
 この「天野月子 with September」での開始曲は、生ストリングスが活きる「骨」だった。ぽろりぽろりと紡がれるピアノの旋律に瞳がじんわりと熱くなる。しっとりと、染み込むように。最近の天野のバラード曲は、そうした体に変化しつつある。
「ちょっとここで、すぺさる・げすとを呼びたいと思います――アキコ!」
 そう呼ばれて登場したのは、女装した「あっきー」だった。さきほど出ていた方の双子の妹さんでしょ? 山田アキコさんでしょ?……天野の脳内宇宙は面白おかしく展開している。ファンの集いらしく、リラックスしたいい雰囲気だ。
 ベースを加えた陣営で演奏されたのは、「時計台の鐘」。生ストリングスの美しさに耳を奪われていると、伸びやかなベースと明るい悲壮感に包まれたピアノが被さってくる。最後は拡散した光が天野に集中し、収束する。美しい。『メグに逢えたら』での四重奏団にも負けないチェロの深い音色が魅了してくれた。
「この前、ふと、待ち時間の間に心理テストをみんながしていたって聞いて、ちょっとみんなにやっちゃおうかなー、と思います」
「あなたは薄暗い森の中にいます。てくてく歩いていくと、ビュッ、と何かが横切りました。それでもてくてく歩いていくと、またビュッ、と何かが横切りました」
「最初に通り過ぎた動物と、後に通り過ぎた動物は何?」
 この話題で、ステージ上で和気あいあいと答えを言っていく演奏陣。それをにやにやしながら聞いている天野。
「これはですね、最初に通り過ぎたのは『自分に似ているであろうもの』。2回目が『好きな異性のタイプ』」
 両方とも「J.J」と答えてしまったあっきー、いやアキコが苦悩していた。
「因みにわたしは、相手がハムスターで、自分が蛇でした……絞め殺しや! 丸呑みや!(笑)」
 軽快なトークの後、再び楽曲に戻る。アコースティック・アレンジは初めてではないだろうか、「ライオン」。感想部分の「I love you so much……」が刹那く胸に迫る。この曲も、と僕は思う。この曲もどの曲も、アレンジひとつで姿を変えてしまう。天野月子とは一種の「触媒」であって、その瞬間・瞬間を具現化しているのかも知れない。
「この前、友達と会ったんですけど、それも3〜4年ぐらい久し振りーに会ったんです」
「何してたの? って訊いたら、わざわざ、和歌山県のお寺に行って2泊3日の修行をしてきたそうなんですね。彼女的にもすごい満足で、それで帰る時。『おなかすいたな〜』と思っていたら、いつの間にかマックのチーズ・バーガーをかじっていた、という。お寺は精進料理ばっかりで、やっぱり肉だよ肉! という。何のための修行だったんでしょうね(笑)」
 そんな友人のエピソードの後には、大切な友人を描いた楽曲が披露される。「月」。証明の黄色いライトが月を意味していそうな邪推さえさせてくれた。Rieのコーラス部分での歌唱が強く響く、好演奏だった。
「『イデア』のPV、ちょっとでも観た人?」
 かなりの人数が手を挙げる。ここで披露されたのが、「イデア」にまつわるエピソードだった。
「最初、わたしが『こんな衣装で』と書いた時はもっと地味だったんですよ。しかし、衣装合わせの二日ぐらい前に衣装さんから電話がかかってきて、『つっこちゃんに着てほしい、いいツナギがあったんだよ(『イデア』ジャケット参照)でもね、つっこちゃんをツナギにしちゃうと、他の人より地味になっちゃうから、任せて!』……と任せた結果、ああなりました(笑)。あの衣装でマックとか行って『どれがいーい?』なんてやりたいね」
 そして次曲が“with September”での最後になるとアナウンスされ――「カメリア」が始まった。この曲は、曲の持つ壮大なスケール感が天野には表現し足りない部分があると思うのだが、この日の演奏は等身大、なまの天野の歌唱だった。ベースが活きる楽曲は、ベースのスライドとストリングス、ピアノの絡み合いで発揮されている。
 演奏終了後、次へのブリッジとしてmomoがチェロ・ソロ独奏を始めた。それはヴァイオリンには出せないチェロ特有の、低音に深みのある好演奏だった。

 一転、
 部隊は、「人形」の「いくぞー!」の声から止まらないヒット・メドレーとなった第3部。天野は一気に駆け抜ける。「スナイパー」はエクステンドされたエンディングから「日曜日」にメドレーされ、「人魚」はグルーヴィにステージを熱くさせていく。そして初登場となった「ID」は、中間部の演奏などジャズ・ロック的な熱で包んでくれる。「ストライキ起こしてみせる」という歌詞が、言葉として皮膚に浸透してくるようだった。
 続く「ミサイル」ではブリッジ部分を観客に歌わせたり、メドレーとなった「トムパンクス」では一斉に客が前へ押し寄せ、熱は最高潮へ。この組み合わせは強力だ!
 ひと息つき、
「『金色のガッシュベル!!』を昔から知ってた人?……結構いますね。わたしは知らなくて、エンディングを依頼されてからどーんとDVDが資料として送られてきまして……観ましたよ、全部。あんまりに面白いので単行本とか買っちゃったりして。どんな人でもガッシュかわいい、ガッシュがんばれ、とか思って見ていると思うんですけど、わたしもそうなれればいいなー、なんて思いながら書いた曲です」
 この前振りは――もちろん「イデア」へのイントロデュースだった。ポップネス、ブライトネスを強調した楽曲は希求的にその音色を響かせ、単純に勇気を与えてくれる。ポジティヴなストーリーのテーマ・ソングにふさわしいと思えた。
「特別臨時集会Vol.2に来てくれた皆さん、ありがとうございました。最後の曲です」
 そう告げられ、演奏されるはもちろん「巨大獣」。勇ましい演奏とともに、天野は、風のように去っていった。

 それでも、「菩提樹S.E.」が流れても、会場の熱気はおさまらない。
 拍手の波に押されるかのように出てきた天野は、アンコールは全然考えておらず、譜面だけある曲をみんなで歌わないか、と提案してきた。
「『スナイパー』を、みんなで歌いませんか?」
 これには、一部のファンは特に感慨深かったことだろう。この曲をファンのみんなで会場に向けて歌うというのは、今までのライヴ後に何度も行われてきたことだったからだ。結果、とてもあたたかな「スナイパー」が歌い上げられ、この曲が天野にとっての重要なステップだったことを示された。
「それでは、これをもちまして、臨時集会Vol.2を終わらせて頂きます。あたたかい時期に向けて、わたくし、いまレコーディングしていますので、お楽しみにね」

 そういった、ファン感謝祭ならではの雰囲気がだいぶ盛り込まれたライヴだった。
 しかも選曲がかなり「天野の中核」にほど近いものだったことも、割目に値するだろう。


「くれない鉄仮面団臨時集会vol.2」
:28/11/2004
〜おしながき〜
1. 菩提樹
2. Treasure
3.
4. 青紫
5.
6. 箱庭
7.
<acoustic corner>
8.
9. 時計台の鐘
10. ライオン
11.
12. カメリア

13. 人形
14. スナイパー
15. 〜 日曜日
16. 人魚
17. ID
18. ミサイル
19. 〜 トムパンクス
20. イデア
21. 巨大獣
<encore>
22 スナイパー(みんなで歌おう!)