森重樹一
ZIGGY 25th Anniversary Celebration Album
『KING'S ROAD』

〜「リメイク」ではなく「セルフ・トリビュート」〜 (2009/11/11)

 森重樹一がZIGGY楽曲をソロ名義でセルフ・カヴァーしたアルバムが出る、
 その情報を受け、さっそく予約してから、私はZIGGY関連を追う自分に、熱が入っていないことに気付かされた。
 The Dust'n'Bonesは最初の1作とデモCDしか持っておらず、THE PRODIGAL SONSも初回のみDVD付きだった『非常ベルが鳴り止まない』しか持っていない。ZNXやLUVは全音源を持っていたのにずっと前に処分してしまったし、松尾宗仁のソロ作も気になりつつ聴いていない。肝心の森重ソロも、サードまではちゃんと買っていたのだがそこからプロモ盤などで済ませてしまい、あげく聴いてもいないものもある。何より、ZIGGY本体の活動停止が大きく、するすると興味が薄れてしまったのだ。
 そんな私でも、本作は迷うことなく購入した。やはり「ZIGGY」の力が大きかったからだ。これが森重の普通のアルバムなら、しばし購入を控えて機会を待っていただろう。や、欲しくても金銭的な問題が大きいのだ。

 聴き始めて、しょっぱなから「えっ、ドラム打ち込みかよ!」と驚いた。
 クレジットを見ると、ドラムの名前がない。それ以前に、一聴してわかるぐらい打ち込みドラムだ。ギターとベースはクレジットがあるが、全曲ではない。しかしそれ以外の曲でもそれらの音がするのはなぜだ? 原曲からの引用とは思えないものばかりだから、ノン・クレジットで誰かが演奏しているのか? 3人いるアレンジャーか?
 まあそれはいい。
 かなりのアレンジが施されているのは当然として、それらの演奏は一歩引いている感があり、森重のヴォーカルを前面に出しているので、「ロック」というより「ポップス」としてアレンジされているように感じられる。それなら打ち込みも頷ける。「ロック」を前提としたら生ドラムを取り囲むグルーヴは必須だが、「ポップス」は飽くまで歌の「伴奏」だ。聴き始めはZIGGYナンバーに打ち込みドラムなんて、と思ったが、そう認識してからは純粋によみがえった曲を楽しむことにした。
 各曲について記述していこう。

「STEP BY STEP」
 打ち込みドラムが軽くてヨコノリになりそうだが、ギターの基本フレーズはオリジナル通りなので安心して本作に入れる。原曲から踏襲された打ち込みが多く、ポップさが強まっている。原曲以上にヴォーカルにエフェクトがかけられている。

「Without...」
 メタリックだった原曲に対して、かなりのディスコ・アレンジ。ヘヴィなのは冒頭と間奏ぐらいで、ヴォーカル部分(特にサビ以外)は打ち込みドラムやギターがスカ調のアレンジになっているので、原曲と較べるとスカスカな印象がある。しかしそれが逆にヴォーカル・ラインの恰好よさを再認識させてくれる。

「それいけ!R&R BAND」
 デビュー曲にして、これで3度目のスタジオ録音となるZIGGYの根幹を成す楽曲。ブルース・ハープもホーンも入った、アコギ主体の土臭いブルース・アレンジで、プロサンでの活動が活きているように感じられる。原曲より遥かに軽快で、何だかんだでノリノリになってしまう。

「君をのせて」
 ピアノ・パートを軸とした、ラウンジ・ミュージック調のアレンジ。そういえばラウンジのZIGGY曲はなかったように思うが、意外なほどマッチする。サビは一気に歌うのではなく、コーラスで後追いしている。

「GLORIA」
 またこれかよ、と思わないように。どうしてもZIGGYというとこの曲から逃げ出してはいけないのだ。歌を強めたアコースティック・アレンジで、ぽろりぽろりとしたギターと軽い打ち込みだけの演奏。しっとりとした、それでいてねっとりとした森重のヴォーカルに、この曲はやはり歌モノなんだなぁ、と再認識させられる。終盤は打ち込みが強まる。いっそリズムをなくしてもよかったのでは。

「天のくれたメロディ(LOVE IS EVERYTHING)」
 今回はサビ歌詞を持ってきたサブ・タイトルが付与されている。こちらもギター主体のアコースティック・アレンジだが、やはり打ち込みが追加。ややのっぺりだった原曲より起伏に富んだ歌い方になっている。

「午前0時のMERRY-GO-ROUND」
 もとよりアコースティックだった曲だが、ますます歌を強調したものになっている。打ち込み中心となっていて、ドラム音も控えめで違和感がない。ギターよりシンセ主体。間奏は音をなぞっているが、それもギターではなくシンセ音。歌を中心としたアルバムである本作中、最も歌を強調しているので、私的には最も優秀なアレンジに思える。

「TOKYO CITY NIGHT」
 再び打ち込み全開のディスコテック・アレンジ。原曲の雰囲気を踏襲したアレンジと言えるかも知れない。ねっとりとしたベースがダンス性を盛り立てている。最も平凡なアレンジに思えるが、もとより打ち込み音の強かった原曲の性質を活かしているのは大きな事実だ。

「HOW」
 ブルース・ハープで始まることから予想できるように、ギター主体のブルージィなアレンジ。そのためヴォーカルとコーラスの美しさを再認識させられる。原曲ならまだしも、このアレンジをラズルが聴いたらどう思っただろうか。

「STAY GOLD」
 打ち込み主体で、ヴォーカル・アレンジが最も施されている。こなし気味だった原曲よりずっと力の入った、今の森重の歌唱を最も味わえる。ZIGGYナンバーの最後を「黄金時代」という意味の曲でシメるのは、実に思わせ振りではないだろうか。

「JOY OF LIFE」
 ボーナス・トラックは、純粋な森重の新曲。だからといって軽視してはいけない。歌詞をよく読んでみよう。まるで自分にとってのZIGGYという存在に対して歌っているような気がしないだろうか?
「雨宿りでもしてゆこう道はまだ続くから」=「雨宿り(このアルバム)」の先にまだ歌うたいの道は続いている
「今日を君と居る喜びを」=バンドが停止しても「君(ZIGGY曲)」を歌えることの喜び
「決して忘れない決して無くしはしない」=ZIGGYの曲を、ZIGGYという存在を
 平凡な森重曲に思う人は、そう思いながら聴き直してみるといい。

 さて、この選曲を見て、何かに気付かないだろうか。
 そう、ZIGGY曲は戸城憲夫在籍時のナンバーのみなのだ。SNAKE HIP SHAKES以降のナンバーはいっさいない。
 それは森重自身も、「ZIGGY=戸城在籍時」の印象が強い(というより一般的)と認めているのではないだろうか。現に10曲中、戸城作曲のナンバーが4曲もある。しかし飽くまで森重名義のアルバムなので、原曲のアレンジを踏襲せず、現在の森重の歌い方と歌声で、ZIGGYというイメージに踊らされずにアレンジしている。
 こうした所為には、コアなファンほど文句を述べたくなるだろう。ZIGGYを好きがゆえに、イメージとは違う、と。
 しかし、ZIGGYが停止してしまい、分裂したユニット双方に在籍しているうえ、ソロもやっている森重の立場を汲み取ってあげようではないか。それらにも未だZIGGY像をファンから求められてしまう彼の立場を。
 そうして分裂しても、ZIGGYの曲を歌えるのは森重だけだ。唯一ZIGGY全作に参加しているのだから、実質「ZIGGY=森重の歌声」であることを認めよう。
 そのMr.ZIGGY、森重がこうしたアレンジを施したのだから、ZIGGYとしてではなく、元ZIGGYの森重作品として楽しもう。
 SNAKE HIP SHAKES時代にZIGGYナンバーをセルフ・カヴァーした『NO DOUBT』というアルバムがあり、それは従来のZIGGY像ばかりを求めるファンに猛烈ながっかり感を抱かせたが、本作もそういう感を抱く人は多いだろう。ZIGGY曲であるからこそ、そう思ってしまう。
 しかし私見では、本作はなかなかのものだ。
 実質的なZIGGYであるSNAKE HIP SHAKESがカヴァーしたのと違い、本作は飽くまで「森重樹一」名義であるので、現在の森重が思い描く自分の曲世界が構築されている。SNAKE HIP SHAKESはZIGGY全員による「セルフ・カヴァー」だったが、本作は森重ひとりによる「セルフ・トリビュート」である。「カヴァー」ではない。間違っても「リメイク」なんかではない。
 森重自身が、自分も在籍していたZIGGYという偉大なるバンドに「敬意」を表しているのだ。
 ZIGGYがなければ今の森重はなかった。しかしZIGGYがあったからこそ今もZIGGY像を求められてしまう。
 ならばその像を自分で作り変えてしまえ。
 破壊や再構築をするのではなく、ZIGGYを尊重したうえで。
 そうした森重の意が、伝わってきたように思う。

 本作は森重によるZIGGYトリビュートである。
 ZIGGY作品として聴いてはいけない。
 それはZIGGYファンとして当然ながら、森重という単独存在を認めていないことになる。
 森重樹一はZIGGYである以前に、森重樹一だ。


KING'S ROAD
1. STEP BY STEP
2. Without...
3. それいけ!R&R BAND
4. 君をのせて
5. GLORIA
6. 天(そら)のくれたメロディ
(LOVE IS EVERYTHING)
7. 午前0時のMERRY-GO-ROUND
8. TOKYO CITY NIGHT
9. HOW
10. STAY GOLD
<Bonus Track>
11. JOY OF LIFE

(TKCA-73494)