志方あきこ
『Harmonia』

〜幻想的に調和する〜 (2009/03/20)

 天野月子が作詞提供しているということで、購入した。
……のだが、何なのこれ? 素晴らしいじゃないの! 遊佐未森とさねよしいさ子が手を繋いで、矢野顕子がエンヤの音楽に合わせて歌っているのを菅野よう子が指揮しているような、すげぇヴォーカリゼイションと音世界。
 ただものじゃねぇな、と思い調べてみると……志方あきこは同人音楽出身の女性アーティストで、自ら作曲もこなし、イタリア語やラテン語を使用した歌詞、広い音域のヴォーカルを活かしたコーラス・ワーク、民族音楽の要素を取り入れた楽曲で知られている。近年では、「アルトネリコ」シリーズ、「うみねこのなく頃に」など、ゲーム音楽への参加も行っている……とのことで、ゲーム・ミュージックかよ、と高をくくって耳にしたのだが、繰り返すぞ。何なのこれ。優秀かつ立派な「音楽」である。
 で、冷静になるべくこのアルバムについて書いておこう。
 ファースト・アルバム『Navigatoria』は「星」、セカンド・アルバム『RAKA』は「月」。そして今作のサード・アルバム『Harmonia』では「ガイア・シンフォニー(生命交響曲)」をテーマに、大自然の4大エレメントをダイナミックに演出。4大エレメント(「地」「水」「火」「風」)をそれぞれ4曲ずつ+全体テーマ・ソング1曲の全17曲を収録。「うみねこのなく頃に」のイタリア語ヴァージョン「うみねこのなく頃に〜煉獄〜」、ゲーム『アルトネリコ2 世界に響く少女たちの創造詩』の主題歌のアルバム・ヴァージョン「謳う丘〜Salavec rhaplanca.〜」も収められており、ゲーム・ミュージック・ファンも楽しめるようになっている。
 ということらしい。
 4大要素って、あんたの好きなコンセプト志向じゃないの。はい、そうです。これは好きですねぇ。で、冒頭にも書きましたが、何より圧巻なのは多重録音コーラスを駆使したヴォーカリゼイション。核たるその歌唱は時に甘く、時に厳しく、時にやさしく変化しつつも、全体的に調和が取れている。音楽も民族要素(特にケルト)がふんだんに用いられ、幻想的でありながらも夢幻だけでは終わらない、ゲーム畑だけで語らせるにはもったいなさ過ぎるきちんとしたもの。
 はっきり言ってしまいましょう。僕はゲーム音楽には偏見を持っています。それがクラシック的アプローチを取ったり、コンセプトに基づいているものであれば評価するけど、多くは「萌え」路線を狙った糞歌手モドキによる公開オナニーだと思っている。大した歌もうたえず、音も外注任せでくっだらなく、ファンしか買わない。そんなのが現状だと思っている。
 しかし、だ。
 この『Harmonia』はそんな偏見を吹き飛ばしてくれた。コンセプト志向で全体が流れるように進行し、ヴォーカルも超一流。天野月子が目的でなくいち媒介になった。ひょっとしたら過去作も買ってしまうかも知れないぐらい、強い「何か」を感じた。
 それは、「表現行為の必然性」。志方は、自分が表現すべきものを持っている。それを正直にあらわし、自慰行為にならない超絶ヴォーカルで彩っている。間違いない、彼女は「表現者」だ。だからこそ、天野月子も関与したのだ。
 アルバムは、優秀なサントラのようであり、民族音楽のようであり、宗教音楽のようでもある。それほど精密に、精巧にできている。4大要素の如く、ずっしりと、激しく、しっとりと、たなびくように展開し、そして「調和」を見出す。これは立派なコンセプト・アルバムだ。
 もう一回言うぞ。これをゲーム畑だけで語らせるのはもったいない。
 騙されたと思って聴いてみたまえ。その超一級の歌唱に腰を抜かしても知らないよ!


Harmonia
1. 調和〜風来の調べ〜
2. 遥かなる旅路
3. 軌跡
4. 風と羅針盤
5. 調和〜焔の共鳴〜
6. 埋火
7. レプリカーレ
8. うみねこのなく頃に〜煉獄〜
9. 調和〜泡沫の子守唄〜
10. 久遠の海
11. アオイロ缶詰
12. 追想花
13. 調和〜大地の讃歌〜
14. 謳う丘〜Salavec rhaplanca.〜
15. Amnesia
16. 調和〜Harmonia〜
17. Harmonia〜見果てぬ地へ〜

(AVCD-23769)