SION
『住人〜Jyunin〜』

〜鋭いブルース・アルバム〜 (2008/06/15)

 SIONは、インディーズに戻ったことによって気が楽になったのだろうか。前作から1年も経過しないで新たな作品がリリースされた。これで通算21枚目のスタジオ盤。老いてますます盛ん、創作意欲に湧いているSIONである。
 当初『Hallelujah』という仮題だった本作は、1曲目から『住人〜Jyunin〜』というタイトルになった。これは、SIONが全生命はどこかの「住人」である、という意味で歌っているように、さながら「居場所」を求める作品となった。全11曲が自分の「存在」を問うたり主張したり嘆いたりして、その「居場所」を求める「住人」を描いている。
 その全曲をざっと見てみよう。
 冒頭の「住人」はSIONバンド、MOGAMIらしさにあふれたロック・ナンバー。すべての生命はどこかの住人であり、常に居場所を求めている、という歌詞が強く響く。メイン・タイトルに相応しい傑作曲だ。ギターもふたりいて演奏に力が入っており、最近の「老いてますます盛ん」なSIONの作風の極みと言えるだろう。
 続く「Saji」は重いビートに乗る歌詞が素晴らしい。「好きでもない人の痛みはただの世間話さ」という痛烈な皮肉が全体に貫かれ、実にシニカルで現代人の精神性を批判しているような深い歌詞だ。全体的にギターがドライヴしていて、ブルージィな曲に味わいをもたらしている。
 R&Bな3曲目「当たり前」は若かりし頃のSIONを思わせる早口気味のヴォーカルが勇ましい。「唾を吐いたら 唾をかけられる よくできたもんさ世の中は」という歌詞もSIONらしい。エンディングはまるでザ・ローリング・ストーンズのようだ。
 ゆったりとした4曲目「ジョニーデップ以外は」では我が子に愛を注いでいるような歌詞がいい。それでいて、ジョニー・デップ以外は何でも与えてあげる、という自分の限界も知っている、ひとつのあるべき親の像がここにはある。ここでもブルース・フィーリングが活かされ、ハーモニカも吹かれて渋い仕上がりになっている。
 転じて明るいギター・フレーズから始まる5曲目「光へ」は、すべての希望の象徴である「光」をクローズ・アップした曲。「昨日もダメで今日もダメだった だから明日出来るかもしれないぜ」という一節が強烈だ。誰もが抱えては諦めそうになっている「夢」を「光」になぞらえて、立ち止まっているリスナーの背中を押してくれているような曲だ。
 6曲目「同じ列車に乗ることはない」はまたもブルージィな仕上がりに。曲はSION節だが、歌詞もSIONらしい。「同じ喜びに向かってるとしても 同じ列車に乗ることはないのさ」というフレーズが鋭く刺さる。間奏のハーモニカもブルース気分を盛り上げてくれる。ヘヴィな歌詞が多い本作の中でも、庶民の代表を気取ったプロパガンダが登場するなど、痛烈な皮肉が振り撒かれている。
 急に明るくなる7曲目「Hallelujah」は祝祭的な雰囲気のオルガンを軸にストレートなリズム、おめでたいギターにあわせて「ハレルヤ!」と叫ぶスカッとした佳曲。ギターもふたり入り、演奏にも力が入っており、アルバムの仮題だっただけはある。抽象的な歌詞はSIONお得意のもの。本作中でも一、二を争う曲だろう。
 8曲目「EQ」については、歌詞カードに「(equalizer)」と書いてある。それは「平等・標準にする者」という意味を持っている。ロックンロールな曲調に乗せて呟かれる「EQ」とはそのことであり、バランスの悪い自分を嘲弄して標準にしてくれ、と歌っているのだ。その反面、「遠慮しないで ケチってないで ドカッと」という反動も起こっている。ロック衝動そのものだ。ハーモニカもR&Bに響く。
 9曲目「棚に上げて」は低音が強く重く響く曲調に、「聞こえる本音と喋ってる距離の恥を知れ」という歌詞が鈍く光る。ギター・ソロが中間でなく終盤に置かれているのも印象的。
 10曲目「夢があることの何処が悪い」はSIONのお得意のミディアム・ナンバー。夢を持つことを恥ずかしいとされそうでいながら、それで悪いか、と居直る歌詞はSIONにしてはちょっと薄味か? だが曲は穏やかでありながら聴かせるもので、ハーモニカも吹かれる。
 最終曲「Happy」はSION初の、レゲエ・ビートを導入した異色曲。聴き始めは違和感があるだろうが、馴染んでくると妙にしっくりくる。レゲエを軸としてはいるが、オルガンやギターのフレーズがそういったものになっている感じなので、基本的にはMOGAMIの雰囲気だ。平凡な幸せをうたう歌詞もなかなかいい。半ばボーナス・トラック的に楽しむといいかも知れない。
……というように、それぞれ、生きる「住人」を描いた本作は、小粒な曲が多いながら、全体的にブルース感覚漂う佳作に仕上がった。前作と較べるとパッと見ではやや見劣りする感もあるが、それは聴き始めのこと。聴き続ければ、本作は実にSIONらしい、やはりSIONにしかできない世界観を築き上げていることが解る。
 本作は、ロックンロールが好きな人にはもちろんのこと、R&Bやブルースが好きな人にはなおさらもってこいだろう。多くの曲が根底にブルースを持ってきている。相変わらず酒の似合ういぶし銀のような光、それがSION。その実力やルーツを見せられた佳作だ。
 ハレルヤ!


住人〜Jyunin〜
1. 住人
2. Saji
3. 当たり前
4. ジョニーデップ以外は
5. 光へ
6. 同じ列車に乗ることはない
7. Hallelujah
8. EQ
9. 棚に上げて
10. 夢があることの何処が悪い
11. Happy

(UGCA-1020)