エイジア
『フェニックス』
〜リユニオン・スタジオ・アルバム〜 (2008/05/27)

発売から1ヶ月が経過してしまったが、私の事情により入手が遅れてしまったのでちょっと今更ながらのアルバム評となる。だがまだ本作は燦然たる新譜として扱われているので、間に合わないこともないだろう。
2006年にジョン・ウェットン、ジェフ・ダウンズ、スティーヴ・ハウ、カール・パーマーのオリジナル・メンバーでの再結成がなされ、2007年にはライヴ盤を発表、そして2008年には待望(このメンツでは25年振り!)の新作のリリースである。その名も「フェニックス」。不死鳥だ。このタイトルには、一度死んでもよみがえったこと、さらには、もう死なないという意思が現れているのだと思われる。それほどに、最集結した4人の絆は固いのだ。
さて、肝心の中身だが、ハウの曲や4人の共同クレジットは少なく、多くがウェットン/ダウンズでの曲となっている。そのためか、最初に聴いた印象では「ウェットン/ダウンズの新作」のような印象を受ける。だがイントロのギターの一閃からして「おおっ!」と思わせるし、ギター・ソロやフレーズはハウ独特のそれだ。パーマーのドラムも安定していながらどこか彼らしい豪放な一面もある。ダウンズのキーボードの音色は間違いなくエイジアしているし、何より、ウェットンのヴォーカルが乗りに乗っている。やはりこの4人でなくては、と思わせる演奏力が、本作には詰まっている。
しかも、本作は以前からのプログレ傾向が強まり、組曲(というかメドレー)で構成されている8分ほどの曲も2曲もあって、今までの「プログレらしさを残していた」エイジアよりも「プログレ志向の」仕上がりになっている。それは喩えば、近年のイエスの発想に近いかも知れない。曲によってはテンポが急変したり、変拍子を用いていたり、長いインタールードを設けていたり、演奏に重点が置かれている。しかもかつての「3分間プログレ」を無理に意識せず、5分ぐらいの曲が多い。そのうえで、中でもハウの活躍がめざましい。エレクトリックとアコースティックを使い分けたギター・ソロがふんだんに盛り込まれ、今までダウンズのキーボードがあればエイジアだ、という感のあった楽曲が、やはりハウのギターがなくては、と思わせるものになっている。特に3分構成の8曲目の長いギター・ソロは特筆ものだ。
他にも、エイジアらしいと思わせる部分は多々ある。先に述べている演奏の交わり具合はもちろんのこと、本作の冒頭から感じたことだが、コーラスがウェットンやウェットン/ダウンズのものではなく、エイジアのものになっている。グループでの混声コーラスだからか、「あの頃」のコーラスを思わせる。また全体として各楽曲がジョン・ペイン期のような妙にアメリカを意識した音ではなくなり、ブリティッシュ・テイスト溢れ、またどこかヨーロッパ的な広大な音作りになっている。また、ファーストやセカンドにあったような緊張感は熟成されて大人のポップ・ソングに昇華しているが、それもエイジアらしいものになっている。ハード・ポップもあるが、全体的にゆったりと聴ける曲が多い。この雰囲気は『アルファ』のB面あたりに近いかも知れない。メジャーな曲もあれば、マイナーながら憂愁を感じさせる曲もある。エンディングが唐突過ぎるのも実は狙ったか?
ビッグ・ヒットを放った名作を誇るエイジアだけに、本作が傑作かどうかは、まだ判断しかねる。しかし、水準の高い優れた作品であることは間違いない。単純な過去曲のリメイクや雰囲気の模倣に走らなかった潔さと、老いてますます盛んな挑戦心を見せ付けるバンドに高い評価を与えたい。現に『アストラ』以来の100位内チャート・インをしているとのこと。本作が評価されているということだ。聴けば聴くほど、その味が病み付きになるだろう、完成度の高い作品だ。円熟。大人のポップス。そんな言葉が本作には似合う。若い方には、ファーストやセカンドをまず先に楽しんでから、本作を聴いてみてほしい。そうすれば、その25年の間の成熟が解るだろうから。
因みに、ヨーロッパ盤ではボーナス・トラックが異なり、「アン・エクストラオーディナリー・ライフ」のアコースティック・リミックスが収録されていた。私はそれを加えて編集した、ボーナス・トラック2曲入りのCD-Rで本作を楽しんでいる。
| PHOENIX | フェニックス | |
| 1. | Never Again | ネヴァー・アゲイン |
| 2. | Nothing's Forever | ナッシングス・フォーエヴァー |
| 3. | Heroine | ヒロイン |
| 4. | Sleeping Giant / No Way Back / Reprise | スリーピンング・ジャイアント/ノー・ウェイ・バック/リプリーズ |
| 5. | Alibis | アリバイズ |
| 6. | I Will Remember You | アイ・ウィル・リメンバー・ユー |
| 7. | Shadow Of A Doubt | シャドウ・オヴ・ア・ダウト |
| 8. | Parallel Worlds / Vortex / Deya | パラレル・ワールズ/ヴォーテクス/トーヤ |
| 9. | Wish I'd Know All Along | ウィッシュ・アイド・ノーウン・オール・アロング |
| 10. | Orchard Of Mines | オーチャード・オブ・マインズ |
| 11. | Over And Over | オーヴァー・アンド・オーヴァー |
| 12. | An Extraordinary Life | アン・エクストラオーディナリー・ライフ |
| <日本盤ボーナス・トラック> | ||
| 13. | I Will Remember You (Acoustic Remix) | アイ・ウィル・リメンバー・ユー(アコースティック・リミックス) |
(KICP-1300)