ザ・コーラル
『ルーツ&エコーズ』
〜〜 (2007/08/22)

「フランク・ザッパがナールズ・バークレイとジャズ・オムレツを分け合ったみたいな作品」と本人達が語る本作は、ルーツとエコーという、コーラルにとって武器となるものを示唆した作品である。ギタリストのビル・ライダー=ジョーンズの離脱を受け、5人になってしまったコーラルだが、フロント・マン、ジェイムズ・スケリーを中心に相変わらずのガレージ・サイケデリックな音楽を展開してくれている。そのうえで、冒頭の言葉にあるようなジャズ・テイストも少しばかり散りばめられ、それでいてサイケな音世界は変わらず、前作『インヴィジブル・インヴェイジョン』のようなゆるいストロークの曲もあり、まさに「ごったまぜ」なコーラルの魅力満載である。
バンドは、ジョーンズの離脱と共にほぼ解散状態にあったという。しかし故郷ホルトレイクに戻り、自分達のやるべきことに視点を定めたのが本作『ルーツ&エコーズ』だ。再スタートの思いは「ルーツ」という言葉に託されている。彼らは自分達の出自(ルーツ)にもう一度向き合い、そこからの反響(エコーズ)にすべてを委ねることを選んだ。初期のサイケ丸出しの狂想曲ではなく、アコースティック・ギター1本でも表現できるような「歌」を作ることを選んだのだ。しかし、レコーディングまで漕ぎ着けたのはよかったものの、途中で資金不足に見舞われることになった。そこで救いの手を伸べたのがコーラルの熱狂的なファンであることを表明してきたオアシスのノエル・ギャラガーだった。彼の所有する機材満載のスタジオを使わせてもらうことになり、レコーディングは急速に進み、やがて本作に収められた全曲を仕上げることになる。
結果、本作は作為的なところのない、ギミックを廃した、スタンダード曲のような仕上がりの曲が並んだ。その仕上がりはとてもさりげなく、初期のようなギラギラしたところはない。フリーキーなインプロヴィゼイション的なものもなく、それらは、曲の中に静かに横たわっている。突出した何かを求めているのではなく、総体として、コーラル流のスタンダード・ナンバーの中に活かされている。
「若い頃には、曲のキャラクターをでっちあげる必要がある。でも、このアルバムの曲はどれも実際の経験に基づいているんだ」とはスケリーの談であるが、カントリー調の曲が大半を占める本作には、ジャズ、ルーツ・ロックといった「ルーツ」をコンテンポラリーに料理した味わいがある。本作には、切羽詰った自己主張や子供じみた虚勢がまるで感じられない。もはやコーラルには、そんな「こけおどし」は必要ないのだ。
いつまでも初期のガレージ・サイケデリック路線を望むファンはいるだろう。筆者も最初はそうだった。しかし本作を聴いて、スタンダード・ナンバーのような仕上がりのそれに、バンドの成長を感じた。このバンドが歩んできた歳月を、凝縮されているように感じた。
間違いなく、本作はコーラルのターニング・ポイントとなる作品だろう。
「そして物語は続いていく」(イン・ザ・レイン)……。
| ROOTS & ECHOES | ルーツ&エコーズ | |
| 1. | Who's Gonna Find Me | フーズ・ゴナ・ファインド・ミー |
| 2. | Remember Me | リメンバー・ミー |
| 3. | Put The Sun Back | プット・ザ・サン・バック |
| 4. | Jacqueline | ジャクリーン |
| 5. | Fireflies | ファイアフリーズ |
| 6. | In The Rain | イン・ザ・レイン |
| 7. | Not So Lonely | ノット・ソウ・ロンリー |
| 8. | Cobwebs | カブウェブス |
| 9. | Rebecca You | レベッカ・ユー |
| 10. | She's Got A Reason | シーズ・ガット・ア・リーズン |
| 11. | Music At Night | ミュージック・アット・ナイト |
| <日本盤ボーナス・トラック> | ||
| 12. | The Voice | ザ・ヴォイス |
| 13. | Laughing Eyes | ラフィング・アイズ |
(EICP-831)