アネクドテン
『タイム・オブ・デイ』

〜メロトロンの鳴り具合〜 (2007/05/24)

 あなたは「アネクドテン」と聞いて、何を連想するだろうか。
 めくるめくメロトロンの洪水? ヘヴィ・リフの連続? キング・クリムゾン的な楽曲?……こういったものが、今までのアネクドテンを支配してきた筈だ。ところが前作『グラヴィティー』ではエレピなどを積極的に使い、楽曲もクリムゾンの模倣から脱出し、また違った魅力を見せてくれた。
 だがしかし、やはりアネクドテンとメロトロンは切り離せない。
 それを本作、『タイム・オブ・デイ』を聴いて実感した。メロトロンが効果的に、しかし以前のように押し付けがましくはなく、北欧の寂莫たる大地を連想させるように響いてくれたのだ。本作の魅力は、そのメロトロンの鳴り具合にある。間奏や壮大な感を抱かせる場面などで、前述したが「効果的に」用いられているのだ。初期のような「とりあえずメロトロン」ではない。ひとつの楽器として、しっかりと使いこなしている。
 そのうえでオルガンやシンセサイザーなども多用し、鍵盤の音色だけでもリスナーを飽きさせない。そこへ熱い塊のようなギターの旋律が襲ってくるのだから、古くからのファンにはたまらないだろう。
 それだけでなく、本作ではゲスト・プレイヤーも招いて「三十の断片」で長いフルート・ソロを挿入していたり、インストゥルメンタル・ナンバー「虚空の轍」が前曲とメドレー展開になっていたり、やっぱり冒頭の「大いなる未知」は「買ってよかった!」と思わせてくれたりと、魅力尽くしだ。今までの作品の中で、最もヴォルテージが高く、しかし、どこかリラックスしたかのような響きを持つ作品ではないだろうか。静と動が、今までの作品中最もしっかりと描かれている。
 しかも今作は、詩作の面でも魅力がある。嘘や虚無、希望などを今まで以上に意味深な、しかしシンプルな言葉で言い表している。それを素朴とも朴訥とも言えるあの独特のヴォーカルで問い掛けられたら、リスナーは唸ってしまうだろう。「海洋のプリンス」では詞がジョイ・ディヴィジョンから引用されたりもしており、彼らの懐の深さを思い知らされる。また、殆どの曲に邦題が設けられているというのが70年代趣味のリスナーを喜ばせるようで、嬉しいことだ。
 聞けば、最近の彼らは初期のナンバーを殆ど演奏しないという。初期の作風だったあの怒涛のリフ攻撃ではなく、郷愁を誘うメロトロンの響きを最大限に活用したライヴであるようだ(それは本作のディスクユニオン購入特典ライヴCDでも聴いて取れる)。そこに近作への自信と、ライヴの経験を下地に作り上げたという本作の魅力を垣間見られる気がする。
 本作は、古くからのファンには「おなじみのメロトロンたっぷりのアネクドテン風味」が感じられるだろうし、新しいリスナーにもメロトロンの魅力を知らしめる作品となっている。
 とにかく、メロトロンを聴け!
 そこに本作の、そしてアネクドテンの魅力はある。もはやメロトロンはプログレ云々で語る楽器ではないのだ。


A TIME OF DAY タイム・オブ・デイ
1. The Great Unknown 大いなる未知
2. 30 Pieces 三十の断片
3. King Oblivion 忘却王
4. A Sky About To Rain 翳りの天
5. Every Step I Take 虚空の轍
6. Stardust And Sand 星屑と砂
7. In For A Ride イン・フォー・ア・ライド
8. Prince Of The Ocean 海洋のプリンス

(ARC-1121)