BUCK-TICK
『十三階は月光』

〜BUCK-TICK劇場へようこそ〜 (2004/05/28)

「さぁさ寄っておいで、道化師の楽しいショウが始まるよ」
 BUCK-TICKの新作は、そんな方向性を見せていた。櫻井敦司がデカダンなイメージをここまで前面に押し出した歌詞を書くというのも、今井寿が徹底して雰囲気作りに打ち込む楽曲を提供するというのも、意外で嬉しい誤算だ。
 かねてより、櫻井は「道化イズム」を体現していた。それは時に、道化仲間の元DER ZIBETのISSAYを誘うことさえあり、徹底して「自分は道化である」ことを強調していた。「太陽ニ殺サレタ」のライヴ終盤のアドリブ歌詞を見るといい。「この俺を、溶かしてほしい」というそれは、道化精神が根付いた表現者の叫びであったのだ。それか単刀直入的に「愛しのロック・スター」を聴くといい。
 本作は、18トラックという曲数の多さの中で、「一介の道化師の生き様」が紡がれている。道化師登場、降臨、彼の名はA……そうして、楽曲楽曲がパズルのピースのように組み合わさり、道化師の生き様が描かれている。
 BUCK-TICKは基本姿勢はポップだが、本作ではその思い込みを取っ払って頂きたいイントロが終わり、実質的な1曲目から「ズゥン」という重く暗い響き。それはアルバム全体のカラーをも表している。重く、暗く、とことん道化にこだわっている。
「ロックではない」「シアトリカルなエンタテインメント」「サーカス小屋」……BUCK-TICKの面々はTV番組で、そのように発言していた。それはだけ確かに解る。とことんデカダンスにまみれた18トラックは、徹底してBUCK-TICKの「闇」の部分に照射をあてている。
 そう、本作は『Six/Nine』以来となる「コンセプト・アルバム」である。道化師Aの生き様を様々な角度から見詰め、心の闇を浮き彫りにし、デカダンスに貶める。BUCK-TICK、いや、櫻井敦司は本作をして、道化の衣装を脱いでみせたのだ。そのマントに刺繍された文字をひるがえし、そしてまざまざと観客に見せ付けている。道化イズムここに極まれリ、である。道化師であるがゆえに笑われ、愛する人には愛されず、悲哀の道を辿りながらも道化として生きていくしかない――本作は、そんな哀しいアルバムである。
 そのくせ最後(「DIABOLO」)では「乾杯!」などとエンタテインメントを締めくくる。
 BUCK-TICK初心者にはお勧めしないが、本作は、BUCK-TICKというバンドの「核」を表したアルバムである。彼ら(櫻井)の「道化イズム」に触れてから、本作を味わってほしい。BUCK-TICK最大の武器であるロマンティシズムも、先行シングル「ROMANCE」などに息づいているから。
 道化師に拍手を! 乾杯!


十三階は月光
1. ENTER CLOWN
2. 降臨
3. 道化師A
4. Cabaret
5. 異人の夜
6. CLOWN LOVES Senorita
7. Goblin
8. ALIVE
9. 月蝕
10. Lullaby II
11. DOLL
12. Passion
13. 13秒
14. ROMANCE〜Incubo〜
15. seraphim
16. 夢魔−The Nightmare
17. DIABOLO〜Lucifer〜
18. WO'S CLOWN?
<初回特典DVD>
01. ROMANCE(PV)

(BVCR-18045〜6)