elements
『MACHINATIONS』
〜至上の「歌もの」が見せる「ひかり」〜 (2004/07/09)

私が以前よりプッシュしているelements(エレメンツ)だが、この度、2004年9月2日に晴れて新作を発表することになった。
事情により早めに「音」を頂戴し、許可も得たので、ここに「レヴューというか全曲解説モドキ」を、発売2ヶ月近くも前にして発表させてもらおうと思う。要は、そんぐらい期待したって構わない傑作なんだぞ、と言いたいわけである。
本作は、前作『BEAT-ITUDE(ビアティテュード)』以来、3年振りにもなる5作目のアルバム。プロデューサー兼エンジニアに益子樹(スーパーカー、くるり等を手がけ、自身のユニットASLNやROVOでも活動)を迎え、すべて一発録りで切り開いた「最新型elements」が体現するロックとは何か?
それは「陰謀」というタイトルに「マシーン」がダブル・ミーニングでかけられている、「機械化した現代への警鐘」だった。
「機械化」はあるいは、「無機質化」「文化衰退」などもあてはまるだろう。神話やファンタジーを意識した歌詞は訓示めいた表現も多く、比喩さながらに現代人への啓示のように響く。音楽は全体的に「バンド感」が強調されており、即興めいた箇所も多い。
tRace elementsで培われた「剥き出しに光る詩情」と、Alternate
Symphonyで実践された「即興による演奏力の向上」がここに合致し、何度聴いても聴き飽きない、歌ものポップ・アルバムが完成した。
以下、全曲解説さながらに(そのうち楽曲解説に加筆/修正して転用などします)この傑作を論じてみようと思う。その奥底にある「小さなひかり」を見詰めて……。
01.RAIN
冒頭からパーカッシヴに打ち鳴らされるアコーディオン、しっかりとしたリズム・ワーク……グイグイと彼らの世界に引き込んでくれる明快なオープニング・ナンバー。アクティヴな間奏部分ではシンセの音も聞かれる。
ここでの「雨」とは、「恵み」の証だ。植物に、生物に、潤いをもたらす「恵み」の象徴だ。あるいは「慈悲」の象徴でもある。そしてそれは善悪問わず、万人に与えられるものでもある。イントロダクションに相応しい、ポジティヴさをたたえた楽曲と言えよう。
02.THE ANSWER
軽快なドラミングで始まる、2曲目に相応しいロック・ナンバー。2分強という、ストレートでコンパクトにまとまっている楽曲。こうした「ツナギのナンバー」を作るのが、elementsはうまい。
万能の“ANSWER”が、「知らないということ」であるというのは、ソクラテスで言うなれば「無知の知」の領域である。自分が「知らない」と認めてしまえば、知の束縛から解放されるのだ。それを軽快なロックで知らせてくれる、実に爽快ながら奥の深い楽曲だ。
03.BLANKET OF THE SKY
伸びるベースがあらわすように、リズム・ワークが肝のバラード・ナンバー。繊細なものからノイジーに変化していくギターが全体を覆っている。
「毛布のような空」は、無力となった者をも包み込んでくれる「慈愛」の証だ。言わば、ある種絶対的な「救済」の象徴と言えるだろう。この曲は、その毛布のように優しく響く。
04.COME DOWN MOSES
以前よりtRace elementsやmaxのソロで演奏されていた曲。
救世主たるモーゼの到来を待ち、ファラオが形だけの王であることを示唆した歌詞は抽象的ながら、ある箇所では普遍的に変換される。
たおやかでアコースティックな響きから、バンド・サウンドに展開していくさまは、バンドとしての結束が強まったことを示しているかのようだ。作品中、最もひろいスケール感を持った楽曲。
05.TOO LATE
乾いた曲調の中、印象的なベースと絡むギターとアコーディオンが、うら哀しく響く。
手遅れになる前に悲劇を予感できまいか、と嘆く詩人の姿が垣間見られる。しかしそれは叶わず、すべては「遅過ぎる」ことばかりだ。取り戻せない過去を取り戻そうとすることの虚しさと、現実が描かれている。
06.JOHNNY GOT HIS GUN
「ジョニー」を対象とすることで、ささやかに反戦を訴えている、最もメッセージ色の強い曲。
銃撃のようにソリッドなギター・ノイズとアコーディオン(あるいはシンセ)が絡み、maxにより戦争の無益さがストーリー・テリングのようにして訴えられる。楽曲自体はアップ・テンポで、タブラなども用いられており、エンディングでは即興的なアコーディオンが耳に残る。
ジョニーが天に召されたことを、ラストでは「これはひどくおもしろくない話だ」とまとめているあたりにも、静かながら強い反戦の意志を感じるものだ。
07.MACHINE“ON”
無機質なビート、単一フレーズがまさしく「マシーンのように」刻まれて始まる、中核曲と呼んでいいだろうこの曲では、暗に「現代人の機械化」が描かれている。これこそが本作のメイン・テーマであり、そのような「現代人への警鐘」として響くものだろう。
アクティヴになる後半部分では、バンドの一体感が本作中最も味わえる。エンディング部分の即興的な演奏にも注目すべし。
08.ROCK IN A PADDLE
これも「COME DOWN MOSES」同様、以前より何かしかの形で歌われてきた曲。
「水たまりの中の石」とは、絶対的な権力に反抗する瑣末な力のことではないだろうか。そう考えると「戦争の犬」というフレーズがリンクし、静かに反戦を訴えている曲として映る。
伸びやかなベースに、小刻みなビート。そこへ被さるアコーディオンや静かなギターの音色。まるで小石の群れのようにささやかなそれらも、ひとかたまりになれば大きな「力」になれる……新聞で読んだことがすべて本当にあったと思うかい? それは水たまりの中の石である、あなた次第だ。
09.FEEL
すべての文化は、言語で成り立っているものではない。「感じること」こそが絶対的な共通感覚であり、その大切さと無力さとを、この曲は訴えている。その「感じること」は万人に共通するものであり、そこから派生した「力、流れ、望み、孤独、思い、勇気(以上、エレメンツ史上初の「日本語」歌詞)」……といったものを信じたい。そんなポジティヴな力が、この曲を支えている。
楽曲は3拍子で、穏やかに進行する。そのなかで純粋に叫ばれる「信じること」は、本作に通底したテーマとも成り得るだろう。そういった意味では、本作中のどの曲にもリンクする「隠れ中核曲」のように思える、最重要曲。
10.FOOL'S GOLD AS AND COMMON SENSE
同じく3拍子の楽曲だが、こちらはアコーディオン主体のたおやかなワルツ風味。マンドリンの音色も優しく響く。
「全ての失った物はまた戻ってくる可能性がある」というひとことにすべては集約されるだろう歌詞は、「神=絶対的な存在」との対話形式で綴られている。そう考えたうえで最も啓示的かつ訓示的な歌詞を、何度も読み返してみるといいだろう。
11.PILLOW OF GRASS
草枕にたそがれながら、天国と地獄とを思い描く歌詞。さながらさまよう魂が、天へ向かう途中の光景を描いているかのようだ。やがて魂はすべてに別れを告げ、天へ導かれる……。
エンディングにしてはアクティヴな楽曲だが、最後の“goodbye”が希求的に響くのは、そこに通底する力が「ポジティヴ」であるからだ。前向きに、己が無力を認め、天に導かれることを受け入れるのだ。
……本作は、物質や人間の近代化への警鐘を鳴らしつつ、いにしえより存在する共通感覚というものを信じ、天と地とをさまよう現代人を描いた傑作だ。
中でも、全体に共通するテーマとして「信じること」がポジティヴに輝いているのは特筆に価する。現代社会に対して批判的な視線と音色を送っていた『BEAT-ITUDE』に対し、本作は実に、「ポジティヴな音」に満ちている。
「前作が少し暗かったから、自然と今回は明るくなった」とはmaxの弁だが、それはバンドがtRace
elementsやAlternate Symphony、あるいはbasic
elementsなどといった「フラクタル分裂」を起こし、再集結したことが前向きに作用していることの証かもしれない。本作は、押し付けがましくなるでなく、しかし確実に強い「ひかり」を放っている。
その「ひかり」の先に見えるのは、天。
さぁ、君も、音楽と言葉で天に招かれてみないか? この感覚は必聴ものだ。
この「歌モノの傑作」を、私はこんな賛辞で迎えようと思う。
| MACHIINATIONS | |
| 1. | RAIN |
| 2. | THE ANSWER |
| 3. | BLANKET OF THE SKY |
| 4. | COME DOWN MOSES |
| 5. | TOO LATE |
| 6. | JOHNNY GOT HIS GUN |
| 7. | MACHINE“ON” |
| 8. | ROCK IN A PADDLE |
| 9. | FEEL |
| 10. | FOOL'S GOLD AND COMMON SENSE |
| 11. | PILLOW OF GRASS |
(DDCZ-1064)