SOFT BALLET
『SMASHING THE SUN』〜『MENOPAUSE』
に見られるソフト・バレエ復活の意味を考察する
〜ちょいと特別編(その2)〜 (2003/10/28)

困った。
何が困ったって「再始動ソフト・バレエ」である。どう考えても、終末へ向けてゆるやかに降下しているように見えて仕方がないのだ。
だって再始動時の藤井麻輝は「ソフト・バレエという存在に決着をつけたい」という旨の発言をしていたし、そうした彼らの素行と楽曲は、筆者が以前論じたように、どうにも「ソフト・バレエというイメージ」を演じているように感じられた。そのうえ公式サイトには「2004年の活動は白紙です」とあり、でもって、その直前のツアー・タイトルは「大団宴」ときた。こりゃますますもって、やっぱりまた活動停止か正式な解散かい? と思ってしまうのだ。
そこへ届けられたのが、本稿で扱う再始動後第2弾アルバムとなる『MENOPAUSE』である。
これにも、困った。
何が困ったって、とにかく「混沌としている」のだ。音がグチャグチャ、というわけではない。そこにあるアルバムの世界観をわざと歪めて、混沌とさせているようにしか思えないのだ。
そのうえ、活動停止までの楽曲を思わせる(=イメージを模倣することで払拭する)楽曲も多数見受けられる。この、現時点では「問題作」と呼べてしまうだろう本作を、まずはその類似点から見ていこう。
本作は、その全体像としては『INCUBATE』に似ている。
曲順はもちろん違うし、コレがコレ! という前回の『FORM』との比較じみた真似はできない。なぜならその根拠は「陰と陽」の比率が「5/5」であるのが似ている、という聴感に基づくものだし、それに『INCUBATE』以外にも、多くの「過去払拭」が見られるからだ。が、今までの作品中では、暗鬱と光明が交差する様がやはりそれに最も類似する。しかし、前回のようにすべてそれ、といったわけじゃない。
じゃあ今回も、前回でも行った全曲対比をしてみよう。やはりと言うか「意識してんじゃないのかい?」という側面が、とにかく見当たるものでしてなぁ……。
まず(1)。本作は、「声のないリミックス・ヴァージョンの『U』を強暴にしたもの」とでも言うか、フジマキがにやりと笑っていそうな「ドロリ」としたインストで幕を開ける。ここでイキナリ混沌の底や淵に落とされる。
続く(2)は意外や意外、endsの「PURPLE」さえ連想させるラップ調のヴォーカルを含んでいるものの、「PILED
HIGHER DEEPER」を思わせるギター・フレーズがとにかく印象的。実質的なオープニング曲だというのに、この漆黒感はどうなのさ。
こちらもメドレー「気味」な、先行シングルでもあった(3)はイントロこそ「ESCAPE(Rebuild)」っぽく、リズムは「PASSING
MOUNTAIN」のリメイク・ヴァージョンのようだが、その全体像は進行といいコーラス部分でフェイド・アウトして終わる展開といい、まるで「WHITE
SHAMAN」だ。やっと光が見えたようでいて、強引なフェイド・アウトによってそれは消えそうに儚く映る。
まだまだメドレー「気味」な展開は続く。アルバム・ヴァージョンにリミックスされている(4)の曲調は、以前にも書いたが「BLOOD」のような「幼稚で純粋な残虐性」を感じさせる。いや、寧ろ「PASSING
MOUNTAIN」の無邪気さかも知れない。
(5)は迷うところだが、鍵盤の音は「PARADE」やあたりに近い「祝祭的」雰囲気。歌部分のシンセ・ベースは笑ってしまうぐらい「NEEDLE」を想起させる。「NO
PLEASURE」のイントロを思わせて仕方ない効果音も挿入されている。だが、遠藤の歌声はひどくナチュラルで、ソロ・プロジェクトであるendsの歌唱に近いのが、実は本作に於いて重要な点だ。
そこへきて、ほぼインストと言っていい(6)。これって、(1)のリプライズというかインタールードというか全体の空気感を統一するものなのじゃないだろうか。それが、フジマキのソフバ在籍中最大の傑作曲「U」なのじゃないだろうか。或いは「EYE」のような無機質さ。また「VIETNAM」を髣髴とさせる飛来音と爆音が響くのも印象的。しかし全体的な起伏は「GENE-SETS」だと思う。
一転して陽気な(7)は、「ENGAGING UNIVERSE」を夢幻ではなく実現に変えたような仕上がり。「フニクリ・フニクラ」らしきメロディが一部だけ歌に引用されているところなど、作為的ですらある。その無邪気さが「PASSING
MOUNTAIN」をも思わせる。
(8)は「INSTINCT?」や「HYSTERIA」などをポップにしたかのような、奇妙な倒錯感あふれる楽曲。ここでも「TWIST
OF LOVE」を思わせる進行のシンセが鳴ったりするが、しっかしひねくれまくっている。「FAITH
IS A」にも似てるか?
以前にも述べたが、続く(9)は文句なく「WITH
YOU」プラス「TWIST OF LOVE」プラス今のポップネス、といった感。本作中、最も(もしくは唯一)ひねくれず、ポップに自己完結した楽曲だと思われる。でもって、再始動後ソフト・バレエを代表する、「以前の『陽』のイメージをまとめた曲」でもある。
またメドレー「っぽく」始まる(10)は、「JAIL
OF FREEDOM」だろうか? 唐突に終わってしまうのが何だか、えらく怖い。時には「INFANTAL
VICE」な感もある。
最大の謎が、(11)だ。これは今の今まで、唯一の「ソフバに於ける日本語タイトル曲」であるし、類似曲がまるでない。そりゃ雰囲気は何かしか(喩えば「EYE」や「DEEP-SETS」あたり)に似ているものの、その混沌具合は比類がない。本作の全体像を表現するに値するだろう言葉――「ドロリ」――としている。そして「混沌」に満ちている。これも突然、アルバム世界を閉じてしまうのがひたすら「怖い」。
で、気付けば、まるで「U」のバンド・ヴァージョンみたいなシークレット・トラックを経由して、リピート機能で冒頭の「ドロリ」に戻っている。ドロリから始まってドロリに終わり、(バカスカを挟んで)ドロリに戻る。その間に光が何度か見え隠れするものの、全体的に「ドロリ」とした混沌に満ちている。
あ、そうそう、おまけに言えば、シングル『SMASHING
THE SUN』のカップリング新曲「TUESDAY」も、「FAIRY
TALE」を一部だけダークにしたような感もあるのじゃないかな? 「OUT」のリミックス(F-ix
destruct)だって、「U」や「EYE」、または「THRESHOLD」といった「フジマキ節」を意識した破壊的なものに感じられる。
その他、各所をじっと見詰めて(聴き込んで)いけば、そうした「類似的断片」は前作の比じゃないほど見付かる筈だ。ファンにとっては「聴く度に新しい発見がある」作品になるだろう。
……と、いったように。
全体として、どこか「リスナー諸君、君達は僕らの以前のイメージを望むだろうから、それらを新曲として、今風に再構築しましたよ?」という挑戦的な潔さが漂っているように、今までのソフバに思い込みの強い筆者には感じられてしまう。しかし、どれもこれもが何かしかの形で「ドロリ」としていて、時には今までの作品にないほどポップな曲や場面もあるのに、とかく全体は「混沌」に満ちている。前期と後期を合致させたような雰囲気さえ漂い、時には、「あれ? 音響派の作品?」と思えてしまう場面もあったりもする。実際。
とは言え、単に混沌グシャグシャなのじゃなく、数ヶ所をメドレー編成にするなど、構成にはとても凝っている。そのため混沌としながらも整然とした、いや整然じゃないのだが「ちゃんとした形」になっている。暴走すればどんな分解も可能だっただろう素材を、うまくまとめあげている印象がある。三者三様の個性が、久々――『MIRRION
MIRRORS』〜『INCUBATE』振りぐらい――に、「ギリギリで交わった」ように思える。『FORM』のように「あつらえたカッチリとした整合」じゃなく、「ドロドロと混ざり合った整合」だ。
それは、彼らなりの「ポップ」の死線。これを越えたら「ポップじゃなくなる」のを認知したうえでの判断、じゃないだろか。
その答えを、『FORM』という統合、分裂しての模索期間、再統合を試みた『SYMBIONT』という実験、を経て、三者の本性を「そのまま」混ぜ合わせた『MENOPAUSE』に行き着いたのじゃないだろうか、と筆者は思うのである。
で、気付けば、やっぱり全体は「ドロリ」ながら、音色や歌声は基本的に「ナチュラル」になっていることに、ふと気付く。
そりゃ遠藤遼一と森岡賢と藤井麻輝の「ナチュラル」だから、それらは「普遍」じゃないし噛み合う筈もないし、曲によって森岡/藤井色が明確に現れているのも解る筈だ。だが、何よりそれをまとめる遠藤の歌声こそが「ナチュラル」なんである。これは彼にとってendsがいかに大きな存在だったかを示しているし、ソロでは歌からインストに移行した森岡の手腕もあるし、She-Shellでギター表現と歌のポップネスを追求した藤井の活躍も大きい。
なので、結果としてバラバラな筈の三者が結合した「ソフバなりの自然体」を、本作は表しているように思える。
喩えば『FORM』のテーマは「融合」だったかも知れないが、また再始動後の『SYMBIONT』はその具現化を成すべく試みた結果なのかも知れないが、今のソフバは、それらよりずっと「自然に融合」している。つまり「融合しようとして実際には『自然には』融合できていなかった」ことを片付けようとした結果が再始動であり、また本作であり、そこに現れたのは「光と影のコントラストが目立つ混沌」だったのじゃないか、などと思うのである。
で、それこそがフジマキの言う「決着」なのじゃないだろうか。
だから活動終息(または収束、集束、どれも)に向かっているように感ぜられるのじゃないだろうか。
ふたつ以上のものが混ざれば、そこに「混沌」が生まれるのは必然だ。だから本作は、必然的に産み落とされた「ソフト・バレエとしての」極点であり、それ即ち「混沌」だったのじゃないか、と筆者は述べたい。そういうことである。
ただ、第2期のソフト・バレエは、未だに代表曲「BODY
TO BODY」に代わる楽曲だけは提示していない。
それこそが最大の問題であり、それを無視したことこそが、今の彼らの勇敢さを表しているのかも知れない。或いはひょっとして、それを捻じ曲げて捻じ曲げまくった結果が、あの「メルヘンダイバー」だったのかも知れない。完成系こそ違えど、双方とも、どちらの時期でも「エレクトリック・ボディ・ビートの代表曲」じゃあるだろう。
現に再始動後のソフバ第1曲目はそれだったし、再始動後の代表曲は? と訊かれると「メルヘンダイバー」と答えてしまいそうな筆者もここに居る。ああ、そう思うと本作の「ドロリとした混沌」って、セカンド・アルバム『DOCUMENT』に近いものもあるよなぁ……
でもこれがもし、ソフト・バレエなりの「終幕」であったとしても、それはそれで筆者としては「ソフバらしい」と納得できる。こんな「混沌」を謎めいて残して、去っていってしまっても不思議ではない。
だって、あの3人だもの!(with ラフ&リスペクト)
今後も、ずっと「彼ら」の活動に、期待したい。ソフト・バレエは、筆者の中ではYMO的存在なのだから。いやほんと。
| SMASHING THE SUN | |
| 1. | SMASHING THE SUN |
| 2. | OUT(F-ix destruct) |
| 3. | TUESDAY |
| CD extra | BRIGHT MY WAY(PV) |
(WPCL-10030)
| MENOPAUSE | |
| 1. | Nirvana |
| 2. | Heleben Sahar |
| 3. | Smashing The Sun |
| 4. | Ascent - die a peaceful death |
| 5. | Realize |
| 6. | H158 |
| 7. | Hunting Hi-Times |
| 8. | Your Web |
| 9. | Bright My Way |
| 10. | Incoherent And Confused |
| 11. | 土縋り 〜 secret track |
| <With Live DVD> | |
(WPZL-30011〜2 (CD + DVD) / WPCL-10040)