ピンク・フロイド
『ザ・ウォール・ライヴ』

〜映像版が欲しい〜 (2000/4/19)

「音だけじゃ、まあこんなもんだろうな」
 これが私の、率直な感想だった。
 私が買ったのは日本盤のチャチいケースのものだったのだが、お陰でインタビューの日本語訳を読むことができ、ロジャーのコメントが他メンバーと一緒に並んでいるのを見て深い感慨を得たものである(まあ本当はいろんな愚痴を言ってたんだろうけど)。
 かねてから私は、『ザ・ウォール』のライヴ盤が出ないのを気に病んでいた。「空前のスケール!」などの売り文句を耳にするものの、ではなぜ販売されないのか、と。恐らく音源の所有権などの問題があったのだろうが(そういえば今作はフロイドの現販売元のソニーではなく、東芝から出ていた)、何はともあれ、出てメデタシ、といったところか。
 だがブックレット内の写真やコメントなどで、皆が皆「映像とマッチしていた」と言う。ならばそういったものこそ、映像版で出せばよいではないか。『光』なんかより、ずっと楽しめる筈だ。まあ、いずれ出るのかも知れないが。
 では限られたその「音空間」はどうかと言うと、結局「アルバムに忠実」という結論に至る。リックのシンセやデイヴのギターによるアレンジが加わっていようと、コンセプト・アルバムなのだからプレイは一貫してアルバム通り。そこに挟まれた未発表インストやMCすら、すべて物語の進行を促進するものだ。だから、曲の構成を問うことはオリジナル・アルバム自体の構成を問うことになる。では、そのアルバムとの比較に視点を移すとどうか? これはやはり「忠実」のひとことに尽きるのだが、若干、物語が立体的に見えるようになった感はある。
 だが、立体的に見えたせいで、あることに気付いてしまった。
 このコンセプト自体、ロジャーの被害妄想ではないのか? アルバムではぼんやりと、そう考えていたことが、明確にされてしまった気がする。ここまで曲を並べて物語を拡大しなくても、2、3曲で表せる内容である感じがするのだ(まあそれを拡大することがプログレッシヴな試みなのだろうけれども)。リックが「僕の入る隙間がなかった」と語っていたが、まさしくその言葉通り、ギチギチに固められて、今まで自由だった曲の解釈が、ひと通りしかできなくなっている。
 コンセプト云々の話を抜けば、とにかく「ロジャーとデイヴのかけあいが聴ける『ラン・ライク・ヘル』は素晴らしかった!」である。私はどうにも現メンバー(って言ってもいいよね殆ど)のガイ・プラットのプレイや声がハードロック・ライクに感じられて好きではないので、ロジャーの狂気的な声が入ったそれは、デイヴの声に緩和され、また荒々しく、時折入るリックの即興的効果音が曲の雰囲気を盛り上げる。この曲のためにコレを買ってもいい、と思える。だが他の曲はアレンジの入る隙間がなく(もしくはとても狭く)、正直に言えば「まあアルバムよりはいいけどな」という感想だった。
 どうにも、『ザ・ウォール』や『ファイナル・カット』まで来ると、フロイドの曲やアルバムは意味を強く帯び過ぎてしまう。そのため、こんな愚痴混じりで長ったらしい、レヴューらしくないレヴューになってしまったが、言い詰めれば「狭苦しい感じ」がした、ということか。
 映画版を観るよりは、手軽だし、まだ想像の余地があるからいいけどね。

IS THERE ANYBODY OUT THERE?
〜THE WALL-LIVE EARLS COURT 1980/1981
ザ・ウォール・ライヴ
アールズ・コート 1980〜1981
<Disc-1>
1. MC : Atmos MC
2. In The Flesh? イン・ザ・フレッシュ?
3. The Thin Ice ザ・シン・アイス
4. Another Brick In The Wall - Part 1 アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パートI)
5. The Happiest Days Of Our Lives ザ・ハピエスト・デイズ・オブ・アワ・ライヴス
6. Another Brick In The Wall - Part 2 アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パートII)
7. Mother マザー
8. Goodbye Blue Sky グッバイ・ブルー・スカイ
9. Empty Spaces エンプティ・スペーシズ
10. What Shall We Do Now? ワット・シャル・ウィー・ドゥ・ナウ
11. Young Lust ヤング・ラスト
12. One Of My Turns ワン・オブ・マイ・ターンズ
13. Don't Leave Me Now ドント・リーヴ・ミー・ナウ
14. Another Brick In The Wall - Part 3 アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(パートIII)
15. The Last Few Bricks ザ・ラスト・フュー・ブリックス
16. Goodbye Cruel World グッバイ・クルエル・ワールド
<Disc-2>
1. Hey You ヘイ・ユウ
2. Is There Anybody Out There? イズ・ゼア・エニバディ・アウト・ゼア
3. Nobody Home ノウバディ・ホーム
4. Vera ヴィーラ
5. Bring The Boys Back Home ブリング・ザ・ボーイズ・バック・ホーム
6. Comfortably Numb コンフォタブリー・ナム
7. The Show Must Go On ザ・ショウ・マスト・ゴー・オン
8. MC : Atmos MC
9. In The Flesh イン・ザ・フレッシュ
10. Run Like Hell ラン・ライク・ヘル
11. Waiting For The Worms ウェイティング・フォア・ザ・ワームス
12. Stop ストップ
13. The Trial ザ・トライアル
14. Outside The Wall アウトサイド・ザ・ウォール

(TOCP 65356〜57)