三洋 LP−Z2      定価\281,400 (2003年10月発売、使用期間04年2月〜06年3月)


 D4パネル搭載高画質+レンズシフトの広い設置性、液晶プロジェクターの本命!

LP-Z2



    主な特徴

 1.ハイビジョン対応1280×720画素のリアルD4パネル
 2.最大コントラスト1300:1
 3.左右±1/2画面、上下±1画面のレンズシフト機構
 4.騒音24dBの静音設計
 5.DVI端子装備


    画 質   ★★★★

 映画DVDのプログレッシブ信号を入力。
 「完璧」と表現したくなるような、素晴らしい映像だ。
 本機は1280×720画素の、実に276万画素という高精細パネルを使っているため、
 液晶ならではの格子はほぼ見えない。画面の密度感は十分だ。
 「粗くない」どころではなく、「ここまで細密に表現されるとは!」という驚き。
 DVDのD2映像は720×480画素なので、Z2でリサイズを行っていることになるが、
 元のソースの鮮鋭感はまずまず保持されているようだ。

 暗くして見た状態では、赤・緑などの発色は非常に鮮やか。
 反射光を見ているという事実を忘れそうになる。
 色合いについては、「赤が強い」というのが巷の意見であったが、
 確かにそうである。本機は画質調整機能が豊富に装備されていて、
 一週間程度いじってみた段階では、完全にニュートラルな色合いにはできていない。
 赤を弱めると、緑が強くなったり、なかなか難しいものである。
 ただ赤味は本機の「個性」であって、「癖」とは感じていない。
 人にもよると思うが、私の場合、大きな不満にはつながってはいない。

 これまではランプを、入力信号に応じて光量を動的に変化させる
 「リアクトイメージモード」にしていたが、これを「シネマブラックモード」にする。
 ランプ光量が80%に落ち、ファンの回転数が下がる。
 光量が落ちるとは言っても、部屋を暗くして見るなら全く十分な明るさだ。
 最暗部がさらに暗くなり黒の再現性が上がり、映画らしい雰囲気が出て、
 明るさも目に馴染みやすい感じになる。
 部屋の明かりを消して映画鑑賞するときには「シネマブラックモード」で間違いない。

 液晶式の弱点である黒浮きについて。
 スクリーンはキクチ科学研究所のグレーマットアドバンスだから、
 黒に関しては通常のマットタイプなどと比べて有利な条件になっている。
 ランプを「シネマブラックモード」、レンズのアイリスを絞った状態では、
 まだ黒が浮いている。さらにコントラストを−20、ガンマを+5として
 満足のいく黒レベルが得られた。完全な黒とまではいかないが、
 黒浮きが気になって集中できないというレベルからは完全に脱している。

 なぜかインタレース入力にすると黒が1段階ほど沈む。
 この状態だと、ほぼ真黒が再現できている。これがZ2の本当の実力だろう。
 2台のDVDプレイヤーで試したが、同じ結果だった。
 本機はプログレッシブ入力の方が黒が浮き気味になるようだ。解せない。

 次に、インタレース信号を入力。
 本機に内蔵されているIP変換回路を利用してプログレッシブ映像にする。
 フィルム素材では2−3プルダウンを検出してプログレッシブ変換を行うようだが、
 チラつきが残るし、字幕も少しジラジラする。
 DVDでプログレッシブ変換した信号を入力した方がよい。
 ビデオ素材のソースを入力。
 特に甘くなっている様子もなく、一瞥した限りでは自然な映像。
 ほとんどの場合で大きな不満はない。ただ、フラッシュのシーンで、
 スダレがハッキリ見える時がある。
動きのある場面でも散見される。
 基本的に前後のフィールドを合成しているようだ。
 ただ宇多田のライブを見てみたが、ライティングのシーンでもスダレは現れず、
 むしろ黒が締まるのと合わせて、絶好調の画質だった。あまり気にしなくて良いようだ。
 ソースが地上波の場合、もうちょっと鮮鋭感が欲しい。拡大しているから
 ボケるのは仕方がない部分もあるが、ブラウン管の映像と差があり過ぎる。
 スケーリングと同時にエンハンスも行わないと、なまるだけだ。

 ハイビジョン信号を入力。
 素晴らしい精細感だ。80インチに投影しても画が全く甘くならない。
 色も鮮やかで、目に飛び込んでくるようだ。

 ただ、色が演出傾向というか、自然な色合いというところからは
 すこーし違う気もする。赤、緑が強くイコライジングされている。
 どちらかと言えば映画よりはスタジオ撮り素材の方が良いかもしれない。
 また、よく言われるD4パネル特有の「縦縞」が見えてくる。
 野球のグラウンドや青空といった一様な部分をパン撮影したような
 映像だと、知覚しやすくなる。気になる時があるにはある。
 しかし、20万以下の値段が信じられないパフォーマンスだ。
 考えてみれば液晶TVやプラズマと画素数は同じなわけで。



    設置性   ★★★★★

 本機は上下左右へのレンズシフトが大きな特徴だ。
 実際、私が設置した際も、非常に楽に終わった。「LP−Z2導入記」
 レンズシフトがなければ、スクリーンの正面で視聴することは不可能だし、
 床置きしてスクリーンにちゃんと投映することも叶わない。
 プロジェクターを移動しても、スクリーンとの直角だけ気にすれば、
 上下左右のズレは修正できる。しかも指1本でダイヤルをクルクルと
 回すだけの簡単さである。

 もしレンズシフトがなければ、高い台を用意してそこに置くか、
 天吊りにするか、自分の前にプロジェクターを置くか、
 画質劣化を伴うデジタル台形補正を使うことになる。
 いずれにせよユーザーに負担を強いることになったり、画質を落とすことになる。
 レンズシフト機構によって、プロジェクターは
 真の普及品となり得たと言っても過言ではないと思う。

 他機も装備しているデジタルの台形補正機能、本機も装備しているが、
 これだけ広いレンズシフトができれば、まず不要だろう。



    操作性   ★★★★

 電源投入から出画するまでの時間は30秒程度。特に長いとは思わない。
 リモコンは十字カーソルキーと決定ボタンをメインとする操作で、
 GUIを見ながら直感的に操作ができる。
 ただ、左を押しても「戻る」になっていないので、最初は戸惑った。
 また十字キーが動きやすく、右を押したつもりが上になったりといったことがある。

 リモコンのボタン配置は、気が利いたものとなっている。
 アスペクト変更、ランプモード、入力選択、調整済み画像モードに
 独立してボタンが与えられているので助かる。蓄光式ボタンも嬉しい。



    その他   ★★★★★

 本機の24dB(シネマブラックモード時)という騒音レベルは業界最静だ。
 脇に置いているのにも関わらず、その存在を忘れてしまう。
 冷却効率を考えて、筐体をサイズアップしたらしいが、もろ手を上げて賛成だ。
 シネマブラック時以外の騒音は28dBだが、注意しなければ気にならない。
 それよりもエアコンの音の方がよほど音圧レベルは大きい。

 光漏れは、スクリーンに対した時の右側から少しある。
 私は本機を視聴位置の右側に置き、光漏れを死角にして見えないようにしているが、
 漏れ量はわずかなので、視界にさえ入れなければまず気になることはないだろう。

 拡張性という点では、DVI端子の搭載が注目だ。
 現時点では高級DVDプレイヤーにしか搭載されていないが、
 いずれ低価格化した際には是非試してみたい。



    デザイン   ★★★★★

 背面に向かって流れていくデザインは、文字通り流麗。
 前面のレンズカバーは、デザイン面の他にレンズ保護も兼ねて一石二鳥だ。
 写真では分かりづらいが、カバーの上半分は透明なアクリルが使われている。
 カバーを下ろすと、半分ほどが本体の下にスライドして収納されるという
 仕掛けも、所有者を悦ばせる。プロジェクターとしては最高と言っても
 いいようなデザイン設計だと個人的には評価する。




    総 評   ★★★★

 ハイビジョン対応D4パネル、黒の再現性にこだわり、上下左右のレンズシフト、
 優れた静音性、スタイリッシュなデザイン、DVI端子搭載・・・
 実売20万円以下のプロジェクターとしては、大変に高い完成度だ。

 欲を言えばIP変換回路をあと一歩詰めて欲しかったとか、
 自然な色合いというには今一歩だとか言いたくなるが、
 結論としては、本機には大いに満足している。






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