エディがAV(オーディオ・ビジュアル)やホームシアターに関して熱く語る


登場から10年・・・DVD

(2006.6.23)


 家庭用の映像メディアの中心として今やすっかり
 定着した感のあるDVDも登場してから今年で10年が経つ。
 今回はDVDの今までとこれからについて語る。




    “最後の大型家電”

 DVDが登場してから今年で10年が経つ。
 それまでの家庭用映像メディアであったVHSやレーザーディスクを
 すっかり淘汰し、生活の文化として定着した。
 
 DVDが登場したのは1996年のこと。
 次世代の大容量記録メディアとして期待され、「最後の大型家電」
 という呼び名すらついていた。
 東芝、松下、パイオニアが先駆けて再生専用機を発売、
 パイオニアはLDも見られるコンパチブル式だった。
 


1996年11月に最初のDVD再生専用機が登場

 当時の映像D/Aコンバータは9bit、サンプリング周波数は27MHzだった。
 量子化8bit、サンプリング周波数13.5MHzというフォーマットに対して
 少しだけの余裕しかなかったが、それまでのS−VHSやLDと比べても
 その高画質は歴然だった。しかし発売からしばらくは映像ソフトも少なく、
 片面一層4.7GBに収めるために映像ビットレートが不足しがちで
 デジタルノイズが目立つソフトもままあった。
 
 ツタヤではDVDソフトのレンタルを早くから始めていたが、
 プレイヤーの普及が進まず、東芝のポータブルDVDプレイヤーも
 セットで貸し出していたのを思い出す。
 私はそれを利用して初めてDVDを見て感動して、DVD対応のシステムを
 一気に導入した。1998年暮れのことである。



    DVDのブレイク

プレイステーション2

定価 39,800円(当時)


2000年3月4日発売

 DVDのソフトも、ハードも普及は順調とは言えなかった。
 そんな状況を打開したのは、言うまでもなくPS2の発売である。
 PS2はゲーム用の大容量記録メディアとしてDVDをチョイスし、
 そのビデオ再生にも対応したのだった。
 “おまけ”としてのDVD再生機能だったが、結構大きなポイントに
 なったようで、ゲームとしての魅力もさることながら、
 「DVDソフトが見られる」ということも影響して
 PS2は大きく販売を伸ばし、DVDのプラットフォームが
 一気に急増することにつながったのである。
 
 皮肉にも、PS2の発売とともにDVD再生専用機の進歩が始まる。
 「DVDを見るならPS2で十分なんでしょ?」と言われて
 しまわないように、各社とも「PS2とは一味違います」という
 言葉とともに差別化に必死になっていた。
 
 1999年に松下は高級機「DVD-H1000」を発売。これは24P収録された
 シネマ素材をプログレッシブのまま出力することが可能で、
 ハリウッドから文句が来たようで発表から発売まで時間が空いた。
 プログレッシブ出力の映像は、I/P変換を経由しないことで完璧なコマが描写され、
 落ち着きのあるまさに「フィルム画質」にふさわしいものだった。
 
 2001年には松下から「DVD-RP91」が発売される。
 長らく10bit/27MHzでとどまっていた映像DACが12bit/54MHzに進化した。
 サンプリング周波数のアップは折り返しノイズの除去に効果的で、
 当時の専門誌が絶賛。この後各社が追随し、108MHz、216MHzまで進化した。
 
 ソフトの方もPS2の発売以降潤沢に揃い始め、
 片面一層から片面二層が当たり前になり映像品質も上がっていった。
 また映像だけでなく、特典映像を収めるディスクの増加も
 消費者からの支持を集めた。



    DVDレコーダーでは戦再び

 家庭用映像メディアの中心になるためには、録画メディアとして
 VHSに取って変わらなくてはならなかった。
 逆に、家庭用メディアの中心になるということはそこに莫大な利が生まれる。
 このことがメーカーを消費者不在の争いに陥れることになる。
 消費者に不便を強いたVHS対ベータ戦争が繰り返されたのだ。
 
 結局、どちらも容量4.7GBで12cm径のディスク、
 ほとんどの人にはどっちがどっちか分からないような規格を2つ出して、
 果たして意味があったのだろうか。
 RWもRAMも再生できる、あるいはRWもRAMも録画できる
 コンパチ機が主流になった今、結論は出ていると思う。
 


DVD録画機ではかつてのVHS対ベータ戦争の様相が再び。どちらも25万円(当時)

 発売としてはRAM陣営が半年遅れた格好になったが、
 しばらくは松下・東芝を抱えるRAM陣営が積極的に商品化を行い、
 またRW機よりも低価格だったため、RAM陣営が押し気味だった。
 しかしRWは再生互換性の高さを活かし、DVDプレイヤーでの
 再生対応を推し進めた。近年はコンパチ化が進み、
 もはや両陣営のシェアというもの自体が見えにくい状況である。
 
 スタンパによる製造ではなく、レーザーで記録していくという方法から
 二層化は難しく、記録型DVDは片面一層からのスタートを強いられた。
 2時間記録を行うモードを「標準」という名前にしたが、
 「標準」と呼ぶにはいささか情報量が不足で、ブロックノイズやモスキートノイズ
 といったデジタル特有のノイズが目立った。従って安定した画質が得られる
 1時間記録、あるいは80分程度が推奨されることが多かった。
 
 私も1枚のディスクに80分程度しか記録できないのならと、
 S−VHSをしぶとく使い続けた。D−VHSにもお世話になった。
 しかしジッターがなくドロップアウトもない安定画質、
 非接触での読み取りで機械的に安定度が高いこと、などを理由に
 2003年11月にDVDレコーダーを購入した。

 DVDの画質は基本的にはビットレート量に依存するが、
 シーンによるビット配分の巧拙で画質に差が出る。
 リアルタイムの可変ビットレート(VBR)は固定ビットレート(CBR)と比べると
 良いが、短い時間のバッファを使ったリアルタイム処理では
 ビット可変量は限られており、エンコード効率は良くなかった。
 2003年11月にソニーが「RDR-HX10/HX8」に初搭載した「2パスエンコード」によって
 ビット可変量を大きくとることができようになり、2時間記録でも
 かなり安定した画質を得ることができるようになった。
 また片面一層から来る容量の制約も片面二層DVD−Rの登場によって緩和された。
 2005年5月にパイオニアが発売した「DVR-555H/530H」が初対応の製品となった。

 2パスエンコードもしくは片面二層のいずれかを手にして初めて
 2時間の高画質録画が可能となり、「やっとDVDが家庭用映像メディアとしての
 資格を得た」と思っている。



    DVDはこれからも

 ちょうどこのコラムを書いている時に、東芝から世界初HD−DVDレコーダー
 「RD−A1」が発表された(記事)。
 さかのぼって3月には再生専用機「HD−XA1」が発売されており、
 これで録画機と再生機の両方が揃ったことになる。
 対抗のBlu-ray陣営は既にレコーダーはソニー、松下、シャープから発売
 されており、再生専用機も今年中には複数社から発売される模様。
 
 現行DVDの規格争いが無意味だったし、消費者にメリットなんてないことは
 明らかなのに、またも同じことを繰り返す。学習能力がない業界である。
 いつも言っているように、私としてはどちらの規格でもいい。
 早く安心して使える商品を出してくれと言いたい。
 
 そんな愚痴はさておき、HD−DVD、Blu-rayとも12cm径のディスクであり、
 一見しては現行DVDと同じだ。かつてVHSは映像帯域を広げた
 「S−VHS」規格を発表し、VHSというプラットフォームを延命させる
 ことに成功した。これと同じように、次世代DVDも現行DVDが
 記録情報量を増やした規格に乗っかって延命しようとしている、
 と捉えることができるだろう。数十年経過して振り返った時に、
 今は「DVD:12cm径映像ディスク時代」の中間に差し掛かるくらいの
 時期という気がする。
 

 DVDが登場して10年という時間が経過した。
 「メディアは10年持てばいい方だ」というような話もあるが、
 DVDはやっと山道の半ばに到達したというような感すらある。
 ハイビジョン対応を果たしたDVDの今後の更なる発展を期待する。