V - eye
エディが思いつきでAVを斬る!語る!

今年がHDMI元年となるか?

(2004.9.12)


   映像信号をデジタルのまま伝送できるHDMI端子が
   普及の兆しを見せている。今回はHDMI登場の流れと、
   HDMIの利点、現在の状況などを整理して語ってみる。


    ― HDMIって何ですか ―

 HDMIは「High-Definition Multimedia Interface」の略称だ。
 パソコンの世界では多くの採用例があるDVI端子をベースにした、
 映像と音声を一緒にしてケーブル1本で伝送するというものだ。
 送り出し機器からディスプレイにデジタルのままストレートに
 信号が伝送でき、映像と音声信号をピュアなまま伝送・再生できる。
 伝送速度は5Gbpsを超え、ハイビジョン映像も余裕で伝送できる。
 またHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)という
 強力な著作権保護技術も盛り込まれている。
 
 しかし思うのは、デジタルの映像ケーブルというとi−LINKがあり、
 DVカメラ、デジタルチューナーなど一定の範囲の機器で既に
 搭載されているということだ。
 
 違いはどこかというと、i−LINKは基本的に映像信号または
 放送信号のストリームをそのまま伝送するのに対し、
 HDMIは映像信号、音声信号自体を伝送するという点だ。
 i−LINKでも、デジタルによる劣化のない伝送はできるが、
 受信側におけるデコード、信号処理、パネルの画素数に
 合わせこむスケーラー処理などを経なければならない。
 
 DVDに記録されているのはデジタル化された映像信号であり、
 放送信号のストリームではない。したがってi−LINKではなく
 HDMIという別規格が用意されたというわけだ。
 ここまでで分かったように、HDMIから出力された映像信号は
 表示部と直結するため、送り出し機器の映像信号処理が重要なカギを握る。
 
 なおDVIとHDMIは互換性があり、変換ケーブルを使えば
 互いに信号の融通が利く。ただしDVIは映像のみを取り扱うため、
 音声信号ケーブルは別に用意する必要が出てくる。
 
 また、今までも何回か触れてきたが、D端子はデジタルではなく
 アナログでの伝送である。D端子の名前の由来は、端子の形状である。

    ― HDMI登場の流れ ―

marantz
DV8300

(発売時定価 138,000円)
 

 DVIからのデジタル出力を初めて可能にしたDVDプレイヤーは
 2003年3月に発表されたマランツの「DV8300」であった。
 ただ当時は著作権問題が解決しておらず、DVI出力に対し
 認可が下りていなかったため、その年の10月にアップデートで
 DVI出力が可能になったという経緯がある。

 HDMI端子が初めて搭載されたのはパイオニア「DV-S969AVi」であった。
 2003年の12月に発売となっており、今でも現行機となっている。
 
 PC対応としてのDVI端子は以前から採用例があったが、
 AV用としてHDCPに対応したプロジェクターは2002年にお目見えしている。
 ただ100万円以上する高級機だった。2003年からは廉価ゾーンに
 対応モデルが出始め、三洋「LP−Z2」、松下「TH−AE500」、
 三菱「LVP−1208」などがあった。
 
 プラズマ/液晶のFPDには、2002年に富士通ゼネラルのプラズマに
 DVIが搭載されたのが初になる(自信は持てないが・・・)。
 2003年になっても対応モデルが増えた感はなかったが、
 何しろDVI出力が認可されたのが2003年末であるから、
 今年から対応モデルが増えていくと思われる。

    ― 現在の状況 [DVDプレイヤー] ―

DENON
DVD-1910

(定価 46,200円)

この価格でDVI対応。ファロージャ製コンバータも搭載
 

 HDMI/DVI対応のプレイヤーは今まで、DVDオーディオや
 SACDも再生可能な、いわゆるユニバーサルタイプの高級機のみ
 であったが、2004年後半に入り、廉価ゾーンに下りてきた。
 
 デノンは7月にHDMI/DVI対応のDVDプレイヤー3機種を一挙に発表。
 最上位機は16万円だが、中級機は10万円を切った。
 そして最下位機「DVD−1910」はなんと5万円も切ってしまった。
 マルチチャンネルオーディオ対応は潔く捨て、DVI出力に的を絞った。
 しかしスケーラーには定評あるファロージャ製チップを使うなど、
 DVIのパフォーマンスを堪能するには十分。
 
 松下はつい先日「DVD−S97」を発表している。
 4万円台の売価ながらHDMI端子とDVDオーディオに対応している。
 デノン同様にファロージャ製チップを採用している。
 
 年末にかけ、他社からも廉価なHDMI/DVI対応プレイヤーが出てくるだろう。

    ― 現在の状況 [レコーダー] ―

Victor
HM-DHX2

(売価 8万円前後)

ハイビジョンが録れる、唯一のHDMI対応レコーダー
 

 録画機器となると、途端にHDMI/DVI対応機がなくなってしまう。
 今をときめくHDD/DVDレコーダーは、これだけモデルチェンジが激しいのに
 対応機が未だ出てきていない。何かの謀略があるのだろうか。
 
 録画機器として世界初のHDMI対応を果たしたのがD−VHS機の
 ビクター「HM−DHX2」である。「録画機器として初」という
 冠に加え、「ハイビジョン」という強力なおまけ付き。
 HDMIのデジタル伝送という利点が最も活きると思われる
 ハイビジョン映像を、録画機器としていち早く対応し、
 しかもこのような安価な価格で発売したことは大変素晴らしい。
 
 さてHDD/DVDレコーダーだが、HDMI搭載モデルが
 今年登場すると見るのが自然な流れだろう。

    ― 現在の状況 [ディスプレイ] ―

Pioneer
PDP-505HDL

(売価 600,000円程度)

滑らかな階調表現に加え、前面ガラスを廃し映り込みを低減。軽量&低消費電力も注目
 

 プラズマと大画面液晶ディスプレイには、今年になりHDMI対応モデルが
 増えてきた。松下、パイオニア、シャープなどは既に対応、
 ソニーは新機種から対応している。今年の年末から来年春までには、
 各メーカーともHDMI対応を終えるだろう。
 
 20インチ台以下の液晶には、今のところ対応の兆しはない。
 デジタル伝送をしても差が分からないからであろう。
 ワイドブラウン管も、FPDブームの陰に隠れている今、
 HDMIが訴求ポイントにならない可能性が高く、
 対応はしないかもしれない。
 
 ただ、HDMI端子はプログレッシブ変換や色信号処理、
 スケーラーまでブッ飛ばして表示部に行ってしまうため、
 ディスプレイの腕の見せどころを素通りして行くことになる。
 プレイヤー側の信号処理回路のグレードが低ければ、
 HDMIではなく従来のD端子伝送の方が高画質、
 ということも考えられる。
 
 ちなみにディスプレイにHDMI端子が搭載されると、ケーブル1本で
 接続が終わるので、使い勝手も大きく向上するだろう。

    ― 現在の状況 [プロジェクター] ―

SANYO
LP−Z3

(定価 294,00円)

大ヒットモデル「LP−Z2」の信号処理部をブラッシュアップ。ユーザーの意見を反映し細部もリファインされている。
 

 HDMIのデジタル伝送が最も活きると思われるのがプロジェクターだ。
 映像を大画面に拡大するのが、一番映像の“アラ”が目立つ。
 逆を返せば、それだけ差が分かりやすいのだ。
 
 大画面プラズマや液晶がもてはやされるなかで、
 それ以上の大画面を得られるのに価格は20万円台という
 コストパフォーマンスは、かなりオイシイと思うのだが・・・
 
 さて今年もHDMIに対応した廉価モデルが出てきている。
 三洋「LP−Z2」、松下「TH−AE700」、日立「PJ−TX100J」だ。
 エプソンは廉価機についてはHDMI対応を見送った。
 
 HDMIが活きるもう1つの点は、ケーブルの引き回しが長くなる点。
 送り出し機器からプロジェクターまで5mや7mといった長さに
 なることが多いカテゴリーだ。アナログ伝送では長さの分だけ
 劣化してしまう恐れがある。特に高周波信号は距離の影響を
 受けやすいため、細部の映像がつぶれ、精細感が損なわれる可能性もある。
 デジタルでは信号の品位を保ったまま伝送することが可能となる。
 
 またコンポーネントケーブルを使っていたユーザーは
 ケーブルが3本から1本になるので、大助かりだろう。

    ― ま と め ―

 さて、各カテゴリー毎にHDMI対応が進む様子を語ってきたが、
 最も大事なのは「D端子からHDMIにすると、どれほど良くなるの?」
 という点だろう。そりゃあ理論的には良くなるんだろうけど、
 人間の目にどう分かるのか、どう見えるのか、
 という点を見定めなければならない。
 D/A変換とA/D変換を経ると信号が劣化するのは、その通り。
 しかし十分な量子化精度があれば、誤差なんて分かりっこない。
 
 雑誌やネットでチラッと読んだことがあるのは、
 「HDMIにすると、ベールが1枚剥がしたような透明感が」
 「色合いが大きく変わる」
 「精細感はD端子とさほど変わらない」
 という、いいんだか悪いんだか分からない感じである。
 いずれ私が試す機会があったらレポートするつもりである。
 
 ただいずれにせよ、HDMIにして画質が悪くなることはないだろうし、
 ケーブルの接続も楽になるから、今後HDMIは標準となっていくだろう。