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HDMIは「High-Definition Multimedia Interface」の略称だ。 パソコンの世界では多くの採用例があるDVI端子をベースにした、 映像と音声を一緒にしてケーブル1本で伝送するというものだ。 送り出し機器からディスプレイにデジタルのままストレートに 信号が伝送でき、映像と音声信号をピュアなまま伝送・再生できる。 伝送速度は5Gbpsを超え、ハイビジョン映像も余裕で伝送できる。 またHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection)という 強力な著作権保護技術も盛り込まれている。 しかし思うのは、デジタルの映像ケーブルというとi−LINKがあり、 DVカメラ、デジタルチューナーなど一定の範囲の機器で既に 搭載されているということだ。 違いはどこかというと、i−LINKは基本的に映像信号または 放送信号のストリームをそのまま伝送するのに対し、 HDMIは映像信号、音声信号自体を伝送するという点だ。 i−LINKでも、デジタルによる劣化のない伝送はできるが、 受信側におけるデコード、信号処理、パネルの画素数に 合わせこむスケーラー処理などを経なければならない。 DVDに記録されているのはデジタル化された映像信号であり、 放送信号のストリームではない。したがってi−LINKではなく HDMIという別規格が用意されたというわけだ。 ここまでで分かったように、HDMIから出力された映像信号は 表示部と直結するため、送り出し機器の映像信号処理が重要なカギを握る。 なおDVIとHDMIは互換性があり、変換ケーブルを使えば 互いに信号の融通が利く。ただしDVIは映像のみを取り扱うため、 音声信号ケーブルは別に用意する必要が出てくる。 また、今までも何回か触れてきたが、D端子はデジタルではなく アナログでの伝送である。D端子の名前の由来は、端子の形状である。
DVIからのデジタル出力を初めて可能にしたDVDプレイヤーは 2003年3月に発表されたマランツの「DV8300」であった。 ただ当時は著作権問題が解決しておらず、DVI出力に対し 認可が下りていなかったため、その年の10月にアップデートで DVI出力が可能になったという経緯がある。 HDMI端子が初めて搭載されたのはパイオニア「DV-S969AVi」であった。 2003年の12月に発売となっており、今でも現行機となっている。 PC対応としてのDVI端子は以前から採用例があったが、 AV用としてHDCPに対応したプロジェクターは2002年にお目見えしている。 ただ100万円以上する高級機だった。2003年からは廉価ゾーンに 対応モデルが出始め、三洋「LP−Z2」、松下「TH−AE500」、 三菱「LVP−1208」などがあった。 プラズマ/液晶のFPDには、2002年に富士通ゼネラルのプラズマに DVIが搭載されたのが初になる(自信は持てないが・・・)。 2003年になっても対応モデルが増えた感はなかったが、 何しろDVI出力が認可されたのが2003年末であるから、 今年から対応モデルが増えていくと思われる。
HDMI/DVI対応のプレイヤーは今まで、DVDオーディオや SACDも再生可能な、いわゆるユニバーサルタイプの高級機のみ であったが、2004年後半に入り、廉価ゾーンに下りてきた。 デノンは7月にHDMI/DVI対応のDVDプレイヤー3機種を一挙に発表。 最上位機は16万円だが、中級機は10万円を切った。 そして最下位機「DVD−1910」はなんと5万円も切ってしまった。 マルチチャンネルオーディオ対応は潔く捨て、DVI出力に的を絞った。 しかしスケーラーには定評あるファロージャ製チップを使うなど、 DVIのパフォーマンスを堪能するには十分。 松下はつい先日「DVD−S97」を発表している。 4万円台の売価ながらHDMI端子とDVDオーディオに対応している。 デノン同様にファロージャ製チップを採用している。 年末にかけ、他社からも廉価なHDMI/DVI対応プレイヤーが出てくるだろう。
録画機器となると、途端にHDMI/DVI対応機がなくなってしまう。 今をときめくHDD/DVDレコーダーは、これだけモデルチェンジが激しいのに 対応機が未だ出てきていない。何かの謀略があるのだろうか。 録画機器として世界初のHDMI対応を果たしたのがD−VHS機の ビクター「HM−DHX2」である。「録画機器として初」という 冠に加え、「ハイビジョン」という強力なおまけ付き。 HDMIのデジタル伝送という利点が最も活きると思われる ハイビジョン映像を、録画機器としていち早く対応し、 しかもこのような安価な価格で発売したことは大変素晴らしい。 さてHDD/DVDレコーダーだが、HDMI搭載モデルが 今年登場すると見るのが自然な流れだろう。
プラズマと大画面液晶ディスプレイには、今年になりHDMI対応モデルが 増えてきた。松下、パイオニア、シャープなどは既に対応、 ソニーは新機種から対応している。今年の年末から来年春までには、 各メーカーともHDMI対応を終えるだろう。 20インチ台以下の液晶には、今のところ対応の兆しはない。 デジタル伝送をしても差が分からないからであろう。 ワイドブラウン管も、FPDブームの陰に隠れている今、 HDMIが訴求ポイントにならない可能性が高く、 対応はしないかもしれない。 ただ、HDMI端子はプログレッシブ変換や色信号処理、 スケーラーまでブッ飛ばして表示部に行ってしまうため、 ディスプレイの腕の見せどころを素通りして行くことになる。 プレイヤー側の信号処理回路のグレードが低ければ、 HDMIではなく従来のD端子伝送の方が高画質、 ということも考えられる。 ちなみにディスプレイにHDMI端子が搭載されると、ケーブル1本で 接続が終わるので、使い勝手も大きく向上するだろう。
HDMIのデジタル伝送が最も活きると思われるのがプロジェクターだ。 映像を大画面に拡大するのが、一番映像の“アラ”が目立つ。 逆を返せば、それだけ差が分かりやすいのだ。 大画面プラズマや液晶がもてはやされるなかで、 それ以上の大画面を得られるのに価格は20万円台という コストパフォーマンスは、かなりオイシイと思うのだが・・・ さて今年もHDMIに対応した廉価モデルが出てきている。 三洋「LP−Z2」、松下「TH−AE700」、日立「PJ−TX100J」だ。 エプソンは廉価機についてはHDMI対応を見送った。 HDMIが活きるもう1つの点は、ケーブルの引き回しが長くなる点。 送り出し機器からプロジェクターまで5mや7mといった長さに なることが多いカテゴリーだ。アナログ伝送では長さの分だけ 劣化してしまう恐れがある。特に高周波信号は距離の影響を 受けやすいため、細部の映像がつぶれ、精細感が損なわれる可能性もある。 デジタルでは信号の品位を保ったまま伝送することが可能となる。 またコンポーネントケーブルを使っていたユーザーは ケーブルが3本から1本になるので、大助かりだろう。
さて、各カテゴリー毎にHDMI対応が進む様子を語ってきたが、 最も大事なのは「D端子からHDMIにすると、どれほど良くなるの?」 という点だろう。そりゃあ理論的には良くなるんだろうけど、 人間の目にどう分かるのか、どう見えるのか、 という点を見定めなければならない。 D/A変換とA/D変換を経ると信号が劣化するのは、その通り。 しかし十分な量子化精度があれば、誤差なんて分かりっこない。 雑誌やネットでチラッと読んだことがあるのは、 「HDMIにすると、ベールが1枚剥がしたような透明感が」 「色合いが大きく変わる」 「精細感はD端子とさほど変わらない」 という、いいんだか悪いんだか分からない感じである。 いずれ私が試す機会があったらレポートするつもりである。 ただいずれにせよ、HDMIにして画質が悪くなることはないだろうし、 ケーブルの接続も楽になるから、今後HDMIは標準となっていくだろう。 |