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― 6.1chの誕生とその目的 ―5.1チャンネルのディスクリート音源を収録・再生できるドルビーデジタル(当時のAC−3)が民生市場に登場したのが1995年のこと。 圧縮率を低く抑えたより高音質なDTSが登場したのが1998年だ。 6.1chは1999年公開の「スターウォーズ・エピソード1」が初となる。 作品の中で、音が前後・左右に移動する、あるいは周回するといった「移動感」 を表現するためには、真後ろに音源が必要だったという事情から、 ジョージ・ルーカス監督とドルビー研究所の強い結びつきによって生み出された。 このことから分かるように、真後ろのスピーカー=サラウンドバックスピーカーは、 真後ろに音源を定位させたい場合に最も効果的であると言える。 5.1chではスピーカーが前方に3つ、後方に2つなので、 後方にもう一つスピーカーを追加することでエネルギーバランスを 取り、音場を均一に展開できるという理屈も存在する。 だが現在のDVD作品には、6.1ch音源が収録されたものは少ない。 ほとんどが5.1chで、6.1chシステムの場合はドルビープロロジックUx あるいはDTS Neo:6などを用いて、サラウンド成分から サラウンドバックスピーカーのための音源を作り出したりしている。 また一般の放送では2chのステレオがほとんどだが、 これに対しても同様に信号処理によって6ch分の音声を生成する。 ここで思うのは、 「結局6.1chにする意味ってどれくらいあんの?」 ということだ。6.1ch収録されたDVDは少なくて、 5.1chを6.1chに水増しして差はどれ程あるの? 2chを6.1chに水増しして差はどれ程あるの? ― 5.1chと6.1chの差が気になる人達へ ―◆ For サラウンドバックスピーカーが置けない人真後ろにスピーカーを置くことは、結構難しいと思う。私のような一人暮らしであれば、多少の不自由はお構いなし、 真後ろにスピーカー置いてやるぜ!という感じだが、 奥様を抱える人にとってはそうもいかない。 そんな人達にとって、サラウンドバックスピーカーの有無による パフォーマンスの差は結構気になるのではないか。 ◆ For 5.1chシステムをお持ちの方何年か前に、サラウンドブームに乗っかって5.1システムを構築したあなた。しかし気づけばAVアンプやスピーカーセットは6.1が当たり前。 6.1chが効果があるなら、もう一個足そうか? あるいはAVアンプを6.1ch対応のものに変えようか? そんな人達にとって、サラウンドバックスピーカーの有無による パフォーマンスの差は結構気になるのではないか。 ◆ For お金がない方(失礼!)6.1chにして良くなることはあっても、悪くなることはない、それくらい分かる!けど先立つものがないんだよ! サラウンドバックスピーカー、スピーカーケーブル、スタンド AVアンプが5.1chだから買い換えなくちゃ・・・そんな買えないぞ! そんな人達にとって、サラウンドバックスピーカーの有無による パフォーマンスの差は結構気になるのではないか。 ということで、5.1chと6.1chの差をレポートする。 上で述べた通り、6.1ch再生には3つのパターンが存在する。 @6.1ch収録ソースを再生 A5.1ch→6.1chアップコンバート再生 B2ch→6.1chアップコンバート再生 それぞれについて報告していく。 ― @6.1ch収録ソースを再生 ―6.1ch収録のソフトは「グラディエーター」を用いた。DTS−ESディスクリートでの収録だ。 冒頭の森の中での大規模な戦闘シーンでは、弓矢が放たれる音や 投石機が石を投げる音などがサラウンドバックSPから聴こえてくる。 コロセウムでの剣闘シーンでは馬車が走る音、歓声などが聴こえてくる。 だがこれは、真後ろからの音に集中していたからこそ分かったという気がする。 包囲感などは5.1chでも十分感じられる。よほど明快な音源でもない限り、 サラウンドバックスピーカーがなくても後方の音源の移動感は得られる。 たまに明快な音源が後ろから聴こえてきて「お!使ってるな」と分かる。 他に6.1chソースとして「パイレーツ・オブ・カリビアン」「モンスターズ・インク」 などを見たが、ほぼ同じ感想だった。 ― A5.1ch→6.1chアップコンバート再生 ―まずは5.1chで何回もサラウンドテストをした「マトリックス」だ。モーフィアスを救出しに行き、屋上で戦闘、ネオが銃弾をよけるシーンだ。 ガンの発砲の音が意外に背後からはっきり聴こえてややびっくりした。 ネオがエージェントに発砲して玉切れになったときに、 背後から「カチカチッ」と明快な音像定位! これを5.1chで再生すると、音像が曖昧になる。 「アルマゲドン」では、シャトル打ち上げの際のカウントダウンが 後方から明快に聴こえてくる。シャトルが小惑星に突っ込む際に、 無数の断片がシャトルをかすめていく様子もよりリアル。 5.1ch→6.1chのアップコンバートは意外と機能していると感じた。 ただ@と同じく、効果の大小はシーンによって変わる。 明快な音源が移動する場合に限られるのだ。 効果の内容も、5.1chでは曖昧な音源が明確になるということだ。 ― B2ch→6.1chアップコンバート再生 ―地上波の音楽番組、K−1などをドルビープロロジックUxやDTS Neo:6を用いて6.1chに拡張した。 サラウンドバックスピーカーから大きな音が出力されることは 滅多にない。基本的には包囲感を出しているようだ。 ごくたまに背後から明快な音が聴こえた。 CDソースを6.1chに拡張して聴いた。 これも基本的に包囲感を出している。 正直、2ch→6.1chアップコンバートは不要で、5.1chでもよい。 6.1chシステムで2chソースを再生するときに、 サラウンドバックSPが鳴らないのはもったいないから 6.1chに拡張しますね、みたいな感じがする。 ― テストの感想 ―@とAでは、予め収録したサラウンドバック用の音源を再生しているか、サラウンド成分からサラウンドバック用の音源を生成しているかが異なる わけだが、私的には大きな差は感じられなかった。 そして2つに共通して感じたことをもう一度述べると、 1.明快な音源が真後ろから聴こえることは少ない 2.サラウンドバックSPがない場合は定位が曖昧になる 3.包囲感は5.1chでも十分感じられる 4.サラウンドといっても音場は前方がメイン 4.についてだが、サラウンドバックから大きな音が出ていても、 フロントからも大きな音が出ていると、サラウンドバックの効果が薄れる。 今回は後ろに神経を集中していたが、普段は複数のスピーカーから 音が出ているため、真後ろの音が多少マスキングされるのだ。 真後ろからの音が他チャンネルに比べて大きい時にしか、存在を知覚できない。 また前方には映像が存在するわけで、当然人の注意は前方に向く。 さらにそもそも人間は背後の音には比較的鈍感という事実もある。 ― ま と め ―サラウンド再生を行う際に、サラウンドバックは必要不可欠なものではない。6.1chが標準ではなく、5.1ch再生の質を向上させたい人にお薦めする。 つまりは上級者向けのものであると思う。 しかも映画はアクションが主流で、音源が前後左右にグァングァン移動する ようなコンテンツを好んで見る方向けとなる。 明瞭なセリフ、BGMの広がり、臨場感、迫力といった、映画を楽しむための 基本的な能力は5.1chに十分備わっている。 6.1chは、サラウンドをより楽しむための“味の素”のようなもので、 ある意味精神安定剤的なものなのかもしれない。 それよりも大事なことは、映画自体を楽しむことだ。 サラウンドバックから音が出てるとか出てないとか、 後方の音場がどうだとか、後方への移動感がイマイチだなぁとかを 気にしながら映画を見るなんて本末転倒だ。 「6.1chにしておけばまず間違いない。 あとは映画に集中しよう」 という感じで行きましょう! |