― 昔からあったリアプロTV ―
リアプロジェクションTVというのは、プロジェクターをスクリーン背後から投射、
ユーザーはその透過光を見るという仕組みのTVのことだ。
この仕組み自体は以前からあり、6〜7年前までは
ソニー、松下、三菱、パイオニア、日立などAV各社が製品化していた。
ただ当時のリアプロTVはいろいろ問題があったのである。
1.画面が暗かった
当時は投射デバイスが小型ブラウン管しかなかった。
ブラウン管の特性上、輝度を上げるとフォーカスが甘くなる。
そのため、リアプロ画面は暗く、家庭の明るいリビングで使うには
圧倒的にコントラストが低かった。
2.視野角が狭かった
液晶テレビと同じで、「背後からの透過光を見る」という仕組みなので、
リアプロの正面から外れるにつれて明るさが落ちていく。
スクリーンで光を拡散して視野角を広げるという手段も、
もともとの光の絶対量が少ないため、不可能だった。
3.筐体がデカかった
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←昔のリアプロの典型的なモデル。
筐体の下部から投射した光を筐体内で何度か
反射させてスクリーンに導いていたため、
奥行きに加えて“ゲタ”も履いていた。
RGB3つのブラウン管の光を合成して投射する
こともさらに奥行きを増加させる要因だった。
奥行きは50cm〜60cm程度あった。
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さらに、昔は大画面ブームなどなく、50型リアプロなんかを持っているのは
一部のマニアで、大きな部屋を持ち、ちょっと部屋を暗くして見る
という、ホントに限られた人達だけだったわけだ。
― “生まれ変わった”最近のリアプロ ―
しかし2、3年ほど前から、リアプロが変化を見せ始めた。
かつての悪いイメージを覆し、リビングのTVとして使えるレベルになってきたのだ。
1.画面が明るくなった
投射デバイスとして、液晶、DMD、LCOSといった「固定画素方式」が現れた。
フォーカスが甘くなることなくランプ出力を上げれば明るさが稼げる。
2.筐体が小さくなった
小型ブラウン管の代わりに、数センチ角の小型パネルを用いるため、
奥行きが縮まり、ブラウン管TVと同等あるいはそれ以下になった。
さらにここ数年の大画面ブームの中で際立ってきたのが、
3.圧倒的なコストパフォーマンス
液晶・PDPは画面サイズに対しての価格上昇が大きい。
しかしリアプロはほとんどスクリーン・筐体の大きさだけを変えればよく、
コスト増はさほど大きくない。大画面ほどリアプロが安くGETできる。
例えば50インチで比較すると、プラズマのほぼ半値(!)、
60インチになるとさらに割安感が高まる。
4.低消費電力・長寿命
50インチリアプロの場合、200W前後である。これは30インチ程度の液晶TVと
同じである。50インチプラズマTVと比較すると、半分以下(!)という数字だ。
また、PDP・液晶は寿命は必ず来るが、リアプロはランプ交換をすれば
半永久的に使える。ランプは安く、またユーザーが簡単に交換できる。
ということで、高価な大画面PDPを指をくわえて見ていた人たちが、
「意外とリアプロ、いーんじゃない??」と感じ始めている。
実際、北米では「大画面=リアプロ」で、PDPよりも売れているのだという。
― 実機視聴 ―
しかし「百聞は一見に如かず」、実際の明るさや画質、デカさはどうなのよ??
ということで、実機視聴レポートをお届けする。
SONY “グランドWEGA” KDF-50HD900
(売価 \360,000前後)
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2002年モデルだが、その後新モデルの発表はないため現行モデルとなっている。
1368×768画素の液晶パネルを使用、DRCなどソニーの技術をフル投入。
見たのは2002年のCEATEC会場であったが、今でも印象に残っている。
明るさは会場の中でも全く不満がなかった。きらめきまで十分再現されている。
精細度も高く、プラズマに引けをとらない印象だった。
驚いたのが視野角だ。左右に動いてみたが、ほとんど変化がない。
「ホントにリアプロか」??と目を丸くしたのを覚えている。
奥行きはおよそ35cm、14型ブラウン管と同等あるいはそれ以下、
“ゲタ”も画面サイズに対してずいぶん低くなっている。
エプソン “リビングステーション” ELS-47P1
(直販価格 \460,000)
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先日発売されたばかりの新モデル。テレビでは新参のEPSONが
リアプロ市場から侵食していこうと意気込むモデルだ。
パネルは1280×720画素の液晶。プリンタ内蔵というのは、
エプソンらしいのはそうなのだが、正直微妙な感じだ。
エプソンダイレクトを通じた直販のみということで、
量販店などでは見られないのだが、秋葉原にあるエプソンの
ショールームに立ち寄る機会があったので視聴する機会を得た。
まず感じたのが、「暗い・・・」ということだ。
確かにショールーム内は明るかったが、それを差し引いても、暗い。
画質云々を評価するレベルには少々明るさが足りない。
左右に動くと、明るさが落ちる。視野角の印象も良くなかった。
ソニーのリアプロの印象が強烈だったからだろうか。
調整でもう少し明るくなると思いたい。
ちなみに奥行きは37cm、ゲタもソニーと同程度か。
プリンタとスピーカーとを組み合わせたデザイン的はまずまずか。
― サムスン、三菱、ビクター・・・ ―
北米のリアプロ市場は、ソニーとサムスンが2強となっているようだ。
サムスンはDMDを用いたDLP方式のリアプロ。
DMDは反射型デバイスなので、透過型の液晶と比べて
光の利用効率が高いため明るさの点で有利だ。
ただDLPプロジェクターと同じく単板式で、色割れが存在する。
日本展開はまだだが、画質にうるさい日本で成功するか。
JVC(Victor) HD-52Z575
(定価 およそ\480,000)
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北米リアプロ市場に殴りこみをかけるのがJVC(ビクター)だ。
これは7月から発売になるモデルで、同社独自の反射型液晶素子「D−ILA」を
用いたものだ。新映像処理デバイス「GENESSA」も搭載する。
D−ILAはDMD以上の光利用効率の高さを誇るのに加え、
高コントラスト・高速応答などが特徴で、さらに基本的には3板式で
色割れが発生しない。画質への期待が高まる。
驚くのがプラズマかと思わせるデザインだ。
ゲタはもはやないと言って良い水準だ。奥行きは41cm。
是非とも日本で拝みたいものだが、「検討中」とのこと。
◆8/18 追加
プロジェクトX21展のビクターブースで実機を見ることができた。
グラベガの衝撃以上だった。明るさは全く問題ないレベル。
色は鮮やか、コントラストも取れていて、格子感もなし。
ただ液晶と比べると鮮やかさなどの点で若干液晶に軍配が上がる。
視野角だが、45度くらいまでは鮮やかさが保たれる。
60度くらいになってくると暗くなってくるという感じだ。
リビングで使う分には十分といっていい水準だろう。
裏を見てみると、確かにプラズマよりは奥行きがあるが、
意外と「薄い」と感じた。40cm程度はあるのだが、大画面と
対比するからか、「そんなでもないじゃん」と感じた。
しかし予想以上の完成度を誇るリアプロである。
遠くから見ると、画質・デザインの点で全くプラズマと区別がつかない。
さらに消費電力も低いという長所もあって40万円を切る価格で購入できるとなると、
プラズマ購入予定者のうち、壁掛けにしたいユーザーを除いた
かなりの数がD−ILAリアプロに流れるのは必至と思われる。
50インチプラズマが60〜70万円、シャープの45インチ液晶が80万円程度、
これとD−ILAリアプロを対抗させたら、どれが一番売れるだろうか。
国内発売をすれば、大画面TV市場に革命を起こすのは
間違いないのではないだろうか。
現在は生産を始めたばかりということで北米のみの販売だが、
いずれ国内にも展開してくれることを期待したい。
三菱は試作レベルながら、奥行きが20cm程度のリアプロを
作れる技術発表を行っている。20cmならもはや液晶・PDPと並ぶ
薄型テレビと言ってよいだろう。どの程度の価格で登場するか期待だ。
― まとめ ―
最近のリアプロは、PDP・液晶と比べても十分魅力的であると感じる。
住宅事情の差が大きいと言うが、今までワイドのブラウン管を置いていた
スペースがあればリアプロも問題なく置ける。
後はメーカーが日本の市場に本腰を入れるかどうかだと思う。
北米のリアプロブームが日本に飛び火してくるのは
「時間の問題」ならぬ「メーカーの問題」か?!
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