AV - eye
   
ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

2003年秋のAV業界総括

(2003.10.26)


先日「CEATEC」が幕張で開催され、横浜では「A&Vフェスタ2003」が開催された。
そのレポートは他サイトが画像付きで詳しく掲載しているのでそちらをご覧いただくとして、
本サイトでは業界全体としての流れを考えてみたい。

  ― 直視型ディスプレイ ―

直視型ディスプレイというのは、ブラウン管、プラズマ、液晶などのディスプレイのこと。
言うまでもなく業界の流れはフラットパネルディスプレイ(FPD)、
プラズマと液晶に大きくシフトしている。

液晶の先駆者のシャープはもともとラインナップが豊富だったのに加え、今年は
ソニー、パナソニック、日立が液晶・プラズマ両者のラインナップを一気に拡充、
パイオニア、ビクター、東芝、サンヨーも数こそ及ばないが力のこもった製品を投入。
どこのブースもFPDを壁一面に並べていた。

技術的な面の進歩としては、パネルの画素数はほぼ前年と同じで、
主にエンハンスなどの画像処理技術によって画質を向上させているようだ。
それと地上波デジタルチューナーを搭載してきたというところか。

FPDというカテゴリーが大変活況を呈しているというのが分かったし、
FPDがいよいよ普及期にさしかかったのかと期待を込めて見る部分はある。
しかしその一方で、決して安くはないFPD、その市場がそんなに大きい市場なのか?と
思うところもある。つまり、「勝者なき競争」「利益なき繁忙」にならないか不安もある。
日本だけでなく、ヨーロッパなど、世界的に見てこれからブームが到来するという
予測もあるので、杞憂に終わってくれればよいのだが。

いっぽうでホッとしているのが、FPDではまだ日本が独壇場であるということ。
だがサムスン、LGなど韓国メーカーの猛追を受けているので、安閑としてはいられない。

  ― プロジェクター ―

プロジェクターはハイエンドとローエンドが活況を呈している。
ハイエンドは縦1080×横1920画素のパネルを使った「フルHDプロジェクター」だ。
ソニーのQUALIAと、ビクターのD−ILA、どちらも反射型液晶を使ったもの。
どちらも映像を見たが、素晴らしい。「動く写真」とも言うべきリアリティだ。
100万のDLPプロジェクターの映像がボケて見えてしまう。

ローエンドは10万〜20万のモデル。エプソン、日立、パナソニック、サンヨー、東芝など。
日立のWOOOは液晶のグリッドが目立つ。パナソニックのAE500はなかなか。
私的にはサンヨーの「LP−Z2」が最も気に入った。
黒がしっかり沈み、グリッドも目立たなく、ワイド80インチでは密度感もある。
定価26万で、1280×720画素のハイビジョンパネルを搭載するんだから、
プロジェクターも進歩したもんである。
プロジェクター業界も競争が激化してきた。各メーカーはカジュアルユーザーを
増やして、市場を拡大しようと必死だ。どこまで一般客をつかめるか。

  ― DVDレコーダー ―

この分野は、ソニー「PSX」が話題をさらった感がある。
±RW方式を採用したDVDレコーダーと、250GBor160GBの大容量HDDを合体。
GRチューナー、EPGも搭載して、PS2としても使える、きれいな高速GUI、
これで79,800円(160GB)!ジャパネット高田も真っ青のサービスぶりだ。
ソニーということで、年末にかけてTVCMなど一大プロモーションを展開するのは
間違いなく、年末商戦でオバケ商品となる可能性を秘めている。

ソニーはPSXとは別にHDD付きの「スゴ録シリーズ」を発表、DVDレコーダーに
本格参入を果たした。「Cocoon」などで培ったノウハウを武器にどこまで伸びるか。
またビクターも独自の高画質技術とRAM/RWのマルチドライブを引っさげて、
HDD付きのモデルで本格参入する。互換性を重視する同社らしい路線だ。
他にはシャープが薄型のモデルを発売、デノンが松下のOEMながら
HDD/DVDレコーダーを発売する模様だ。

今まで市場を牽引してきた松下・東芝・パイオニアだが、
松下は高級機を8月に発売したものの、量販モデルは3月の発売で、
年末の動きは大人しい感じがして、ややすぼんでしまった感がある。
東芝はRAM/RWのマルチドライブを搭載したXS31とXS41を発売。
ただしRWは編集が不得意なビデオモードのみの対応で、真のマルチドライブ
とは言えない(ビクターはフルスペック対応)。
パイオニアは薄型の共通筐体として一気に5機種を発表。
ダビング中も他の操作ができるマルチタスクと高速ダビングが武器だ。

またこの秋からRWでも追いかけ再生ができるドライブとなり、
事実上RAMに劣る点はなくなった。逆にRWは1万円台のDVDプレイヤーでも
再生可能となるなど、広いプレイヤビリティが追い風となってきている。
現在はパナソニックがその資金力を生かして、モデルが若干安価なのと、
ボブサップを使った巨大プロモーションのおかげでRAM陣営が有利であるが、
今後RW陣営が巻き返しそうな予感もあり、目が離せなくなってきた。

  ― DVDプレイヤー ―

DVDプレイヤーはプログレッシブプレイヤーが標準となりつつある。
メーカーによっては、非プログレモデルを生産しなくなったところもある。
映像DACは廉価機種やレコーダータイプでも最低54MHzのものになり、
108MHzタイプも増えて、高度のオーバーサンプリングが当たり前となった。
今年は216MHzタイプが登場、プログレッシブ映像に対してもCDと同じ
8倍オーバーサンプリングを行えるところまで到達した。

またSACD、DVDオーディオに対応したものも、ずいぶんと低価格になった。
パイオニアはSACD・DVDオーディオ両者に対応した「DV−600A」を
定価29,800円で発売しているし、ビクターはSACDには非対応でDVD−Aのみだが
RAMとRW両者に対応して108MHzの映像DACを搭載した「XV−A77」を発売、
今や2万円中盤で売られている。
DVDプレイヤーはレコーダータイプにない特徴を求められており、
今後はSACDやDVD−Aの再生機能、高次オーバーサンプリングDACなど
よりコアな付加価値を付けて、低価格化が進むと思われる。

  ― AVアンプ ―

ハイエンドがついに40万円超の争いになってきた。
デノンの「A1SR」が45万円、パイオニアの「AX10Ai」が50万円、
ヤマハの「DSP−Z9」が50万円、ソニーの「DA9000ES」は60万円だ。
一体型ではもはや限界を超えている物量が投入されている。
ソニーとヤマハは9.1チャンネル再生が可能となっているが、
スピーカーを一体いくつまで増やせば気が済むのか。
オーバークオリティもいいところだ。私は理解できない。

パイオニアの「自動音場補正機能」がこのところブームだったが、
今年はそれが廉価ゾーンに下りてきた。一部を除きほぼ全機種に搭載された。
ボーズはスピーカーとアンプのパッケージながら、
同等の機能を搭載したモデルを発売、高い評価を受けている。
ヤマハも「YPAO」と名づけた同等の機能を搭載してきたし、
ビクターはイコライザこそ搭載しないが、拍手一発でスピーカー設定が可能な
機能を搭載するなど、今後「自動設定機能」が広まりそうな感がある。

また今年はデジタルアンプ元年と言ってもよいのではないかと思うほど
デジタルアンプが表舞台に出てきた年だと思う。
オンキョーが高音質アンプでデジタル方式を採用したのを皮切りに、
ソニーも60万円のAVアンプにデジタルの「S−master」方式を採用。
ヤマハもデジタルのパワーアンプを発表したし、ビクターの「DEUS」方式もある。
スピーカーとのパッケージではケンウッドやシャープをはじめ、
デジタルアンプを採用し始めたメーカーが多い。
いずれも従来のデジタルアンプよりも長足の進歩を遂げていると評価されており、
今後アンプも徐々にデジタル化していくだろう。

  ― ま と め ―

今年感じたことは、低価格化が進んでいるのはどの分野も同じなのだが、
高級志向に走るメーカーも増えてきたことだ。
ソニーの「QUALIA」、プロジェクターやAVアンプ、スピーカーなど、
より趣味性を高めて、真に満足できる商品とは何かを模索する動きが見えてきた。
ここ数年AV機器は低価格化が進行し、悪い意味でPCっぽくなり、
単に「映像を見る」「音楽を聴く」という”機能”を果たすだけになってしまった。
AV機器は本来、映像と音楽を通して「人を感動させる」ことが目的のはずで、
そこには単に機能を実現するだけでなく、人間の感性や高い趣味性、
所有することの悦びなどが同居していなくてはならないはずだ。
そこに目覚めてきたことは、AVマニアとして真にうれしいことだと感じている。

同じことはハンバーガー業界に見て取れる。
「今の時代、消費者は安さを一番に求めている」と信じ、
マクドナルドは65円や59円ハンバーガーを売り出し、
低価格路線を実行したものの行き詰ってしまった。
逆に600円もするモスバーガーの「匠味」が大人気だと言う。
不況の時代なのは間違いないが、人は安いだけでは満足せず、
そこに「こだわり」や何らかの形での「喜び」がなければならないのだ。

安いハンバーガー作りは、中国や韓国メーカーに任せておけばよい。
ここには日本のAVメーカーが今後発展していくためのヒントが隠されている。


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