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ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

アームレスヘッドフォン、比較してみよう!

(2003.6.21)


アウトドアでのリスニングスタイルに欠かせなくなったアームレスヘッドフォン。
発売から5年を数え、参入メーカーも増え、音質も良くなり、
デザインもファッショナブルなものが増え、若者を中心に一気に普及した。
今回はこの「アームレスヘッドフォン」を取り上げてみたい。


  ― アームレスヘッドフォン登場 ―

まずはアームレスヘッドフォン登場までの流れをおさらいしよう。
従来のヘッドフォンは、装着スタイルという点からは2種類に大別できる。
密閉型とオープンエアー型という違いこそあるが、大きな振動板を使った頭の上に乗せるタイプ。
もう一つは、小さな振動板で耳の中に入れる、ウォークマンなどに使われていたタイプだ。

「頭乗せタイプ」は30〜50mmという大型振動板による迫力の低音、優れた音質が得られるが、
その分ヘッドフォンも大型・重量化してしまい、用途はもっぱら屋内に限定された。
「耳入れタイプ」は16mm程度の小型振動板を用いるため小型・軽量化が可能で、
いわゆる「ウォークマンスタイル」はこの方式がなければ考えられなかった。
ただその振動板の小ささゆえに低域はあまり得意ではなく、100Hz付近をブーストするなどして
カバーするしかなかった。トータルの音質も、頭乗せタイプとは明らかな差があった。

そこに、ソニーが1997or8年(不明)に発売した「ネックバンド」方式を採用したものが登場する。
頭乗せタイプのアームを後頭部に持ってきたものだ(頭に接触はしない)。
30mmのドライバを使用し、耳入れタイプとは一線を画す音質を得たのに加え、
ヘアスタイルが乱れないという点が若者の支持を受け大ヒットした。
この時点で、私は「次はアームがなくなるだろうな」と思っていた(いやホントだって)。

そして1999年に、ビクターが「アームレス」ヘッドフォンを発売する。
耳たぶに引っ掛ける&挟むことでヘッドフォンを装着した。
ネックバンド方式は優れた方式ではあったが、女性が使うにはまだ抵抗があった。
しかしアームレス方式は「耳もとのアクセント」的な感じになったのに加え、
アームがなくなったことでカバンの中に入れてもかさばらなくなり、女性にも受けた。
「音質が良い」「ヘアスタイルが乱れない」「かさばらない」「おしゃれ」
といった点で、アームレスヘッドフォンは大いに普及するに至ったのである。
今やネックバンドよりもアームレスの方が断然元気だ。
ネックバンドはアームレス登場までの過渡期の製品だったのかなという気さえしてきてしまう。

それでは、各社の製品を比較していこう。
アームレスヘッドフォンを発売している4社の製品を取り上げた。
各社とも複数のモデルを用意しているが、その中で最も売れ筋、
あるいは注目されるモデルのみを取り上げた。
音質、装着感、重量、デザイン、その他の特徴などに留意した。
もちろん、コメントは私の主観が入っているし、
感じ方の個人差もあるということを念頭に置いていただきたい。
なおパイオニアは16mm口径の振動板を使ったタイプを発売しているが、
音質的には耳入れタイプであり、除外した。

Victor
HP-AL53

  (定価 \2,500)

形 式
オープンエアタイプ
ドライバ口径
 27mm
マグネット
 ネオジウム
再生帯域
 12〜24,000Hz
重 量
 24g(コード除く)

カラーバリエーションは14種類

アームレスヘッドフォンを業界に先駆けて発売したビクターの「Be!」シリーズ。
私が現在使用中のモデルだ。
高磁力ネオジウムマグネットを使用した27mmドライバを採用。
高音に少しアクセントをつけた、鮮度のある音。
ただ、曲によっては低域方向のもうひと伸びが欲しいと感じるときがある。
このモデルは、ドライバが他のモデルの30mmと比べて27mmと10%小さく、
これを面積比にすると20%近く少ない計算になる。
低音は面積で効いてくるので、これが原因かも知れない。
逆に、ドライバを小さくした分、他のモデルよりも一回り小さい。

装着は「ストップアクションフック」方式で、イヤーフックが2段階に開閉する。
開いた状態で耳にひっかけ、そのまま閉じると耳たぶが挟まれる仕組み。
耳に装着するとき・外すとき、どちらも簡単だ。
またコードが何かに引っかかって強く引っ張られたときはフックが開いて
ヘッドフォンがすぐに外れるため耳を痛めることもない。
耳への圧着はややゆるい気もするが、音質的には問題ない。
長時間の装着でも耳はあまり痛くならない。

本モデル「AL53」と、光沢のある材質を使った点以外は全く同じ「AL53E」を含め
全14種類の豊富なカラーバリエーションを用意。自分好みのものが必ず見つかるはずだ。
デザイン的にはリングの中心をずらしたデザイン、より小さなボディサイズが訴求されている。
その他、からみにくいコード、フィット感が向上するフック先端のラバー、0.5m+1.0mコードなど。


Panasonic
RP-HS101

  (定価 \3,300)

形 式
オープンエアタイプ
ドライバ口径
 30mm
マグネット
 ネオジウム
再生帯域
 14〜24,000Hz
重 量
 36g(コード含む)

カラーバリエーションは9種類

高磁力ネオジウムマグネットを使用した30mmドライバを採用。
音質は、低音再生は優れているものの、高音が不足している。
最初に聴いた時は「何でこんなこもった音なんだ?!」と思った。
慣れてくるとそれほど違和感を感じなくなったものの、やはり高音は不足気味かなと思う。
ただこれは音漏れに関しては有利に働く。音漏れはしばしば「シャカシャカ音」と
例えられることからも分かるように、音漏れの主要成分は中高音だからだ。

装着は「クリップヘッドフォン」という方式で、フックは固定されている。
このフックはポリアミド樹脂製、弾力性がありグネグネと曲がる。
フックをグニッと曲げた状態で耳にひっかけ、手を離すと耳たぶが挟まれる仕組み。
慣れれば煩雑ではないが、ビクターの可動フックには一歩譲る。
またフックのグリップがキツイ。1時間も装着していると痛くなって外してしまう。
買ってすぐに友達に譲ってしまった。その友人も痛くなると言っている。
しかしもう一人のユーザーは「全然大丈夫やで」と言っているので、
もしかしたら個人差の範囲なのかもしれない。
なおこれは可動部はないので機械的なもろさはない。

貝殻のような光沢のある素材を使っているがデザインとしてはシンプルだ。
色は9種類と豊富に用意されている。

このモデルの最大の特徴は、「コード巻取りメカ」である。
ヘッドフォンのコードが、なんとヘッドフォンのハウジングに収納できるのである!
カバンの中に入れているとどうしても何かにからまってしまったりするもの。
それをコンパクトにかつ簡単に収納することができる。
使うときは1mまでの間で、必要な長さだけ引き出して使えるという優れモノなのだ。
またスライダーが付いていて、持ち運びの際には写真のようになる。
私はこれに魅力を感じて購入した。実際、持ち運びの際にはストレスを感じなかった。
巻取りメカを内蔵している割にはハウジングもコンパクトだ。


SONY
MDR-Q25SL

  (定価 \2,600)

形 式
オープンエアタイプ
ドライバ口径
 30mm
マグネット
 ネオジウム
再生帯域
 20〜24,000Hz
重 量
 35g(コード除く)

カラーバリエーションは4種類

ヘッドホンでは最も豊富なラインナップを誇るソニー。
高磁力ネオジウムマグネットを使用した30mmドライバを採用。
このモデルは実際に聴いたことはないことをお断りしておく。
ドライバは他のモデルと同じ口径だが、ハウジングが大きい。
これは音質的に有利に働く。是非実際の音を聴いてみたい。

装着はパナソニックと同様の方式で、固定フック。
フックの材質などは明らかにされていないが、掛け心地を良くした新型タイプだという。

デザインはパールのようなキャップが特徴だ。そしてソニーが元祖の着せ替え。
カラーバリエーションは4つと少ないが、その日の気分で着せ替えできるという強みがある。
また左右のヘッドフォンをつなぐコード部にネックストラップを採用。
首もとを演出するとともに、ゴムではないので肌触りも良さそう。
このモデルは他社のモデルと比較して外方向への出っ張りが大きく、
半球のような形状をしている。ちょっとかさばりそうだ。
またそれに伴ってか、重量もコードなしで35gと最も重い。少し心配ではある。
0.5mに1.0mの延長コードが付属する。

audio-technica
ATH-EQ3

  (店頭価格 \1,000程度)

形 式
オープンエアタイプ
ドライバ口径
 28mm
マグネット
 ネオジウム
再生帯域
 16〜24,000Hz
重 量
 22g(コード除く)

カラーバリエーションは3種類

高級タイプのモデルを数多く発売している、その道では有名なオーディオテクニカ。
高磁力ネオジウムマグネットを使用した28mmドライバを採用。
このモデルも実際に聴いたことはない。

装着はビクターと同様の方式で、開いて止まるストップアクション機構。

カラーバリエーションは3種類と少ない。コードは0.5m、延長コードは付属しない。
特徴は22gと軽量なことだ。ストップアクションフックと合わせて、
「さわやかな装着感を楽しめる」としている。
また、安い。店頭では980円で売られている!
ここまで安いと「品質は大丈夫?!」と疑ってしまうくらいだ。
1000円しないので、アームレス入門者などにはぴったりかも。


  ― ま と め ―

今をときめくアームレスヘッドフォンの大手4社の製品を比較してみた。
デザインは「人それぞれの好み」という部分が多分にあるので、
選ぶ基準として、デザイン以外の各社の売りを考えると、
 ●ビクターの「ストップアクションフック」、
 ●パナソニックの「コード巻取りメカ」、
 ●ソニーの「着せ替え&ネックストラップコード」
 ●オーディオテクニカの「安さ」(笑)
ただ着せ替えは、他社が追随したので今やソニーだけのものではなくなった。
「装着・取り外しを簡単にしたい!」という人にはビクター、
「持ち運びを簡単にしたい!コードがウザイ!」という人にはパナソニック、
「おしゃれにこだわって首もとを演出したい!」という人にはソニーだ。
「アームレスって、どうなの?」という人には(?)テクニカ。
それ以外に、各人のデザインの好みや価格と相談して決めればよいだろう。

今回取り上げたもの以外にも、各社様々なコンセプトのモデルを発売している。
ビクターはスポーティデザイン&着せ替えモデル、高音質モデル、ワイヤレス(!)モデル。
パナソニックはキャップ着せ替えモデル、リング着せ替えモデル。
ソニーはデザインと音質を3種類から選べるモデル、「Q25SL」から
ネックストラップを外したノーマルな着せ替えモデル。
カタログや店頭で各社の製品をチェックすれば、納得するモデルを見つけられるはず。

アームレスヘッドフォンはヘッドフォンの代名詞的存在になりつつある。
今生まれた子供は、大きくなった時にヘッドフォンと言われたら
アームレスヘッドフォンを思い浮かべるのかもしれない。
アームレスヘッドフォンが文化に根付く日が来るのかもしれない。


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