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― AV機器化するPC ―MPEGを利用した映像メディアのデジタル化、HDDの大容量化等によって、PCがAV機器の機能を吸収・統合し始めた。ソニーの「VAIO」、日立の「プリウス」などが、AV色の濃いPCに早くから熱心だった。
AVを専門とする同社らしく、読んで字のごとく、 AVとPCの融合を地で行く製品だ。 地上波チューナー+MPEG2エンコーダを搭載し、ビデオの機能を実現。音楽はCDあるいはネットワークを介して取り込み、MP3またはATRAC形式で保存。CD・MDの機能を実現するどころか「ミュージックサーバー」と呼ぶべき機能を実現した。i−LINKを搭載、DVからの映像を受け入れて高度な編集をも可能にしている。 これらを強力にサポートするのが大容量HDD・メモリと高速CPUだ。以上はインプットだが、アウトプットも記録型のDVD・CDドライブを搭載、映像・音楽データを自由自在に書き出すことが可能だ。 今やPCはパーソナルコンピュータではなく、音楽(Audio)・映像(Visual)・計算(Compute)にインターネットによるネットワーク機能(Communicate)を統合した“AVCCマシン”というべきだろう。近年はIP電話によって電話機能も統合され、今後PCはますます多くの機能を統合していくだろう。 | ||
― AV機器はPCに淘汰されるのか? ―今まで見てきたように、PCはAVの機能を取り込み、AV機器もPCに近くなってきている。しかし、PCの方がより多くの機能を包括していると思う。 例えば、PCが1台あれば、インターネット、表計算、文書作成などに加えて、 音楽や映像なども自在に楽しめる。ところがAV機器が1台あっても、DVDやCDなどの 再生・記録はできたりするかもしれないが、本格的なインターネットや表計算・文書などは 使うことができないのである。つまり、 PC機器にできてAV機器にできないことはあるが、その逆はない。 これでは、『じゃあPCにAVの機能を全部取り込んでしまえば、AV機器は要らなくなるね』 と思うのが当然かもしれないが・・・ 本当にそうか。 PCは、AVの機能はひと通り実現できる。しかし、PCが全てのAV機器を吸収・淘汰してしまう とは考えにくいという点がいくつかある。 @ 操作が難しい PCは、世帯普及率30%を超えたというデータもあるように、かなり普及してきた感があるが、 それでもPCを「使いこなす」というレベルにまで達している人はまだ多くはない。 20代〜30代男性ならば、かなりの人がパソコンのスキルを持っていると思うが、 年配の方、女性はまだまだ「PCって敷居が高い」と感じている人が多い。 この人たちにとって、PCで何かをするには必ず必要な「ソフトウェア」をインストールして、 カスタマイズする、というのは難しいだろう。 やはりPCは、ある程度の知識・スキルがないと扱えないものだ。 その点、AV機器は比較的易しい。電源入れてメディア入れてボタンをポンと押せば、 録画や再生ができてしまうという手軽さだ。 A 多機能・高性能なゆえの欠点 パソコンのスキルがない人に、『このパソコンを買えば、テレビも見れるし、録画もできるし、 音楽も聴けるし、DVDも見れるんですよ』と言ったところで、頭が混乱するだけである。 それに加えて、デジカメつないで、プリンタつないで、ADSLつないで、もう大変。 ましてや、それにワードだエクセルだアウトルックだと言えば、『あーもー訳分からん!!』と プッツン来てもおかしくはない。『テレビはテレビ、DVDはDVD』と、機能毎に分けた方が、 老若男女、多くの人にとって扱いやすい。 また例えば、知らない町に連れてこられて、「何でも自由に行動していいよ」と言われると、 困ってしまうだろう。何をすべきか分かっていたり、街の地勢を把握している人にとっては楽しいが、 分かっていない人にとっては単なる迷惑に過ぎない。「パソコンは沢山の事ができますよ」 と言われてもピンと来ない人はそんな感じだろうか。 B スタンドアローンで動作しない 単独で動作しないという意味である。 AV機器は、ビデオデッキ、DVD、テレビ、どれも電源さえあれば動くし、 使いたいものだけ電源を入れれば済む。 しかし、PCはディスクドライブだけ電源を入れても動かない。パソコンのOSを立ち上げないとダメ なのだ。どれかをちょっとだけ使いたい時でも、いちいちPCの電源を入れなければならない。 C 不安定要素 ソフトウェア動作の宿命、フリーズだ。フリーズしないパソコンはないのではないか。 PCで音楽を聴きながら作業をするということはよくあるが、その最中にフリーズしたりすると、 再起動が面倒くさい。おまけに作業中のデータを保存していなかったりするとがっかりする。 但しこの点は、ソフトウェア動作をするDVDレコーダーなどのAV機器も当てはまる。 実際、私の持っているHDDレコーダーもフリーズしたことがあった。 だがこれは、ビデオデッキの機能だけが停止するので、PCに比べれば大したことではない。 またBと関係するが、PCではPC本体が故障したら、全ての機能が停止してしまう。 復旧させるのは簡単ではなく、元通りになるまで全ての機能は使えない。 AV機器はどれか1つが故障しても、もちろん他の機器は関係ない。 D レスポンスの悪さ パソコンは、使いたいときに電源を入れても、操作を受け付けるまで2分程度かかる。 電源入れてすぐに使えるAV機器と比べれば、トロさは歴然。 E 高価 例えば、ごく普通の家庭を考えると、お父さんは高性能PCでAVを楽しんでいる。 お母さんは?子供は?当然、音楽を聴きたい、テレビも見たい、という要求があるだろう。 お母さんにPC、子供にもPC・・・それは金銭的にも無理だし、スキル的にも無理がある。 やはりミニコンポとか、テレビ・ビデオが適当だろう。 F 性能・品質 マニアはもちろんだが、「ちょっとクオリティにこだわりたいな」と思う人は少なくない。 このような人たちにとっては、AV機器とPCのどちらが高画質・高音質を実現できるのか? という点は気になるところだ。 AV機器は当然のことながらAV用途のみを考えて作られているが、PCは(AV機能を重視 している製品もあるが)基本はPC、機能の実現が主で、クオリティの追求は二の次になる。 AV機器は製品の全ての部品・回路などを画質・音質に最適化して作ることができるが、 PCはPCとしての機能が優先され、そのような最適化が難しいのだ。 従って、一般にはAV機器の方が高品質を実現しやすい。 だが最近は、HTPC(ホームシアター・PC)と言って、DVDを高画質に再生するためだけに 自作でPCを作る人も出てきた。それなりの知識を持って、高画質のためだけに部品を うまく組み合わせれば、高級AV機器を凌ぐ画質が得られる。だが、それなりの投資が必要で、 専門的な知識も必要なため、ごく一部のマニアに限られている。 音質については、AV機器の方が高音質と言って良いだろう。 G ライフスタイル PCでテレビや音楽を楽しむ、それはいいのだが、いつもそれでよいだろうか。 PCで映像・音楽を楽しむ時には、やはりPCの前かその近くにいることになるだろう。 そう、PCは本来「パーソナル・コンピューター」、個人的で小空間の使用がほとんどだ。 だが、たまには、パソコンモニターとにらめっこするのが嫌になって、 床に寝転がってゆったりテレビを見たり、音楽を部屋いっぱいに流したりして、 パーソナルスペースから解き放たれたいと思う時があるはずだ。 また、大画面テレビがあって、家族が集まるリビングにPCを置くのか。考えにくいはずだ。 PCはあくまでパーソナル、ファミリー仕様ではないのだ。 H リモコンが使えない そう、パソコンにはリモコンがない。 ソファに寝そべって本を読みながら音楽を聴くというシチュエーションでも、 曲を変える時等にはPCのところまで行かなくてはならない。面倒くさい。 ― これからのAV機器はどうあるべきか? ―上で考えたPCの短所が、すなわちAV機器の狙い目、存在価値なのである。・買ってきて電源入れればすぐ使える。 ・使う人を選ばず、扱いやすい。 ・固まったりしない。 ・比較的安価。 ・マニアが満足する高級機も作れる。 PCと競合する部分もあるが、PCとAV機器とでは、求められるものにはかなり違いがあると思う。 PCは、結局様々な「機能」を実現するもので、多くの機能を必要としないユーザー、 クオリティを追求したいユーザーには適していない。 よって、AV機器はPCに淘汰されるということは考えにくい。 しかし、AV機器はPCと無関係でよいという訳ではない。 むしろAV機器としての資質は保ちつつ、PCとの連携は進めるべきだ。 同じDVDやCDなりのメディアを使うのなら、PCとAV機器の両方で使えた方が ユーザーにとって当然便利だ。共通のメディアを使うことで、量産効果によって価格も下がる。 記録メディアに限らず、データ形式、データの伝送、端子、その他まで共通化すれば、 これらの価格も下がるし、ユーザーの取り扱いの負担も軽減、あまり知識がない人でも システム(PCでもAVでも)を構築するのが楽になる。 AV機器の音楽をPCに取り込む、PCの音楽をAV機器に取り込む、そのような 非常に柔軟なデータの融通が、我々のAVライフを大いに楽しくしてくれるに違いない。 |