AV - eye
   
ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

PCとAV機器の融合に関する考察−part2

(2003.1.6)

  ― AV機器化するPC ―

 MPEGを利用した映像メディアのデジタル化、HDDの大容量化等によって、PCがAV機器の機能を吸収・統合し始めた。ソニーの「VAIO」、日立の「プリウス」などが、AV色の濃いPCに早くから熱心だった。

vaio
ソニー VAIO
映像・音楽を高度に融合させたPCシリーズ

 「VAIO」はVisual and Audio Integrated Operationの略で、
AVを専門とする同社らしく、読んで字のごとく、
AVとPCの融合を地で行く製品だ。
 地上波チューナー+MPEG2エンコーダを搭載し、ビデオの機能を実現。音楽はCDあるいはネットワークを介して取り込み、MP3またはATRAC形式で保存。CD・MDの機能を実現するどころか「ミュージックサーバー」と呼ぶべき機能を実現した。i−LINKを搭載、DVからの映像を受け入れて高度な編集をも可能にしている。
 これらを強力にサポートするのが大容量HDD・メモリと高速CPUだ。以上はインプットだが、アウトプットも記録型のDVD・CDドライブを搭載、映像・音楽データを自由自在に書き出すことが可能だ。
 今やPCはパーソナルコンピュータではなく、音楽(Audio)・映像(Visual)・計算(Compute)にインターネットによるネットワーク機能(Communicate)を統合した“AVCCマシン”というべきだろう。近年はIP電話によって電話機能も統合され、今後PCはますます多くの機能を統合していくだろう。

  ― AV機器はPCに淘汰されるのか? ―

 今まで見てきたように、PCはAVの機能を取り込み、AV機器もPCに近くなってきている。
しかし、PCの方がより多くの機能を包括していると思う。
 例えば、PCが1台あれば、インターネット、表計算、文書作成などに加えて、
音楽や映像なども自在に楽しめる。ところがAV機器が1台あっても、DVDやCDなどの
再生・記録はできたりするかもしれないが、本格的なインターネットや表計算・文書などは
使うことができないのである。つまり、

PC機器にできてAV機器にできないことはあるが、その逆はない。

これでは、『じゃあPCにAVの機能を全部取り込んでしまえば、AV機器は要らなくなるね』
と思うのが当然かもしれないが・・・

本当にそうか。

 PCは、AVの機能はひと通り実現できる。しかし、PCが全てのAV機器を吸収・淘汰してしまう
とは考えにくいという点がいくつかある。

@ 操作が難しい
   PCは、世帯普及率30%を超えたというデータもあるように、かなり普及してきた感があるが、
  それでもPCを「使いこなす」というレベルにまで達している人はまだ多くはない。
  20代〜30代男性ならば、かなりの人がパソコンのスキルを持っていると思うが、
  年配の方、女性はまだまだ「PCって敷居が高い」と感じている人が多い。
  この人たちにとって、PCで何かをするには必ず必要な「ソフトウェア」をインストールして、
  カスタマイズする、というのは難しいだろう。
  やはりPCは、ある程度の知識・スキルがないと扱えないものだ。
   その点、AV機器は比較的易しい。電源入れてメディア入れてボタンをポンと押せば、
  録画や再生ができてしまうという手軽さだ。

A 多機能・高性能なゆえの欠点
   パソコンのスキルがない人に、『このパソコンを買えば、テレビも見れるし、録画もできるし、
  音楽も聴けるし、DVDも見れるんですよ』と言ったところで、頭が混乱するだけである。
  それに加えて、デジカメつないで、プリンタつないで、ADSLつないで、もう大変。
  ましてや、それにワードだエクセルだアウトルックだと言えば、『あーもー訳分からん!!』と
  プッツン来てもおかしくはない。『テレビはテレビ、DVDはDVD』と、機能毎に分けた方が、
  老若男女、多くの人にとって扱いやすい。
   また例えば、知らない町に連れてこられて、「何でも自由に行動していいよ」と言われると、
  困ってしまうだろう。何をすべきか分かっていたり、街の地勢を把握している人にとっては楽しいが、
  分かっていない人にとっては単なる迷惑に過ぎない。「パソコンは沢山の事ができますよ」
  と言われてもピンと来ない人はそんな感じだろうか。

B スタンドアローンで動作しない
   単独で動作しないという意味である。
  AV機器は、ビデオデッキ、DVD、テレビ、どれも電源さえあれば動くし、
  使いたいものだけ電源を入れれば済む。
  しかし、PCはディスクドライブだけ電源を入れても動かない。パソコンのOSを立ち上げないとダメ
  なのだ。どれかをちょっとだけ使いたい時でも、いちいちPCの電源を入れなければならない。

C 不安定要素
   ソフトウェア動作の宿命、フリーズだ。フリーズしないパソコンはないのではないか。
  PCで音楽を聴きながら作業をするということはよくあるが、その最中にフリーズしたりすると、
  再起動が面倒くさい。おまけに作業中のデータを保存していなかったりするとがっかりする。
  但しこの点は、ソフトウェア動作をするDVDレコーダーなどのAV機器も当てはまる。
  実際、私の持っているHDDレコーダーもフリーズしたことがあった。
  だがこれは、ビデオデッキの機能だけが停止するので、PCに比べれば大したことではない。
   またBと関係するが、PCではPC本体が故障したら、全ての機能が停止してしまう。
  復旧させるのは簡単ではなく、元通りになるまで全ての機能は使えない。
  AV機器はどれか1つが故障しても、もちろん他の機器は関係ない。

D レスポンスの悪さ
   パソコンは、使いたいときに電源を入れても、操作を受け付けるまで2分程度かかる。
  電源入れてすぐに使えるAV機器と比べれば、トロさは歴然。

E 高価
   例えば、ごく普通の家庭を考えると、お父さんは高性能PCでAVを楽しんでいる。
  お母さんは?子供は?当然、音楽を聴きたい、テレビも見たい、という要求があるだろう。
  お母さんにPC、子供にもPC・・・それは金銭的にも無理だし、スキル的にも無理がある。
  やはりミニコンポとか、テレビ・ビデオが適当だろう。

F 性能・品質
   マニアはもちろんだが、「ちょっとクオリティにこだわりたいな」と思う人は少なくない。
  このような人たちにとっては、AV機器とPCのどちらが高画質・高音質を実現できるのか?
  という点は気になるところだ。
   AV機器は当然のことながらAV用途のみを考えて作られているが、PCは(AV機能を重視
  している製品もあるが)基本はPC、機能の実現が主で、クオリティの追求は二の次になる。
  AV機器は製品の全ての部品・回路などを画質・音質に最適化して作ることができるが、
  PCはPCとしての機能が優先され、そのような最適化が難しいのだ。
  従って、一般にはAV機器の方が高品質を実現しやすい。
   だが最近は、HTPC(ホームシアター・PC)と言って、DVDを高画質に再生するためだけに
  自作でPCを作る人も出てきた。それなりの知識を持って、高画質のためだけに部品を
  うまく組み合わせれば、高級AV機器を凌ぐ画質が得られる。だが、それなりの投資が必要で、
  専門的な知識も必要なため、ごく一部のマニアに限られている。
   音質については、AV機器の方が高音質と言って良いだろう。

G ライフスタイル
   PCでテレビや音楽を楽しむ、それはいいのだが、いつもそれでよいだろうか。
  PCで映像・音楽を楽しむ時には、やはりPCの前かその近くにいることになるだろう。
  そう、PCは本来「パーソナル・コンピューター」、個人的で小空間の使用がほとんどだ。
  だが、たまには、パソコンモニターとにらめっこするのが嫌になって、
  床に寝転がってゆったりテレビを見たり、音楽を部屋いっぱいに流したりして、
  パーソナルスペースから解き放たれたいと思う時があるはずだ。
   また、大画面テレビがあって、家族が集まるリビングにPCを置くのか。考えにくいはずだ。
  PCはあくまでパーソナル、ファミリー仕様ではないのだ。

H リモコンが使えない
   そう、パソコンにはリモコンがない。
  ソファに寝そべって本を読みながら音楽を聴くというシチュエーションでも、
  曲を変える時等にはPCのところまで行かなくてはならない。面倒くさい。

  ― これからのAV機器はどうあるべきか? ―

   上で考えたPCの短所が、すなわちAV機器の狙い目、存在価値なのである。

   ・買ってきて電源入れればすぐ使える。
   ・使う人を選ばず、扱いやすい。
   ・固まったりしない。
   ・比較的安価。
   ・マニアが満足する高級機も作れる。

  PCと競合する部分もあるが、PCとAV機器とでは、求められるものにはかなり違いがあると思う。
  PCは、結局様々な「機能」を実現するもので、多くの機能を必要としないユーザー、
  クオリティを追求したいユーザーには適していない。
  よって、AV機器はPCに淘汰されるということは考えにくい。
  しかし、AV機器はPCと無関係でよいという訳ではない。
  むしろAV機器としての資質は保ちつつ、PCとの連携は進めるべきだ。
  同じDVDやCDなりのメディアを使うのなら、PCとAV機器の両方で使えた方が
  ユーザーにとって当然便利だ。共通のメディアを使うことで、量産効果によって価格も下がる。
  記録メディアに限らず、データ形式、データの伝送、端子、その他まで共通化すれば、
  これらの価格も下がるし、ユーザーの取り扱いの負担も軽減、あまり知識がない人でも
  システム(PCでもAVでも)を構築するのが楽になる。
  AV機器の音楽をPCに取り込む、PCの音楽をAV機器に取り込む、そのような
  非常に柔軟なデータの融通が、我々のAVライフを大いに楽しくしてくれるに違いない。

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