AV - eye
   
ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

PCとAV機器の融合に関する考察−part1

(2002.12.31)


『PC(パソコン)・ネットワーク機器とAV機器が融合する』ということは数年前から言われてきたことで、
最近の製品群を見ると、事実そういった大きな流れが感じられる。
今回はPCとAV機器が融合している状況を今一度把握することと、
PCとAV機器の住み分けというか、AV機器はPCとどう差別化していかねばならないのか、
等を私なりに考察してみたい。熱がこもって長編となったので、2回に分けてお送りする。

  ― PCとAVの融合の流れ ―

@デジタル化

10年程前では、音楽はCD、カセットテープが主流で、その頃はPC自体が
まだ普及していなかったせいもあろうが、PCでCDを聴いている人なんていなかった。
CDはCDプレイヤーで聴いていたはずだ。
カセットテープは当然PCでは聴けず、カセットデッキでしか聴けない。
映像はVHSビデオ、LD(レーザーディスク)などがあったが、
同様にPCとの接点はなく、専用の機器でないと再生できなかった。
PCでは表計算・ワープロ機能・専用ソフトを稼動させていて、インターネットもまだ
日の目を見ていない時期、これまた『PCはPC』と、独立に見るのが一般的だった。
それがいつからか、『PC(パソコン)・ネットワーク機器とAV機器が融合する』という流れになった。

なぜか??

それは、一口で言えば『映像・音響メディアのデジタル化』が理由である。
以前はAV機器はアナログメディアが主流で、PCは‘0’ ‘1’のデジタル記録だった。
記録形態が異なるため、その扱いも異なり、それがお互いの融通を妨げていた。
それが、映像メディアはDVDやDVの登場によって一気にデジタル化が進んだ。
同じデジタルで記録されているのならば、PCのデータでも映像でも音楽でも、
それは同じ“データ”として分け隔てなく扱えるわけで、PC・AVどちらの機器でも扱えるのだ。
そして、DVDレコーダー、CD−Rといった記録型メディアの登場によって
PCとAVの融合は一気に拍車がかかることになる。

Aデータ圧縮技術の進歩

読者の中にも誤解をされている方がいるのではないかと思うのだが、
何らかのアナログ信号をデジタル化すると、情報量は実は数倍〜数十倍にも増えてしまうのだ。
「情報量」と書いたが、具体的には信号が占有する周波数帯域が広がってしまう。
これでは、デジタル化することで却って扱いが難しくなってしまう。
特に、映像というのは音声比で1000倍とも言われる程情報量が多く、
これ程莫大な情報量をパソコンが受け入れるのは困難である。

そこでデータ圧縮技術を用いるのが一般的なのだ。
一般に「デジタル化」と言えば、暗黙のうちにデータ圧縮をしていることを意味する。
このデータ圧縮技術を用いることで、アナログ信号に比べ情報量を減らすことができる。
データ圧縮技術はアナログでは原則的に不可能と言ってよく、デジタルの特権である。
このデータ圧縮技術を用いることで、デジタルでありながら情報量を少なく抑えることができ、
PCとAV機器の両方で扱えることにつながっている。

特に情報量が大きい映像データの方が、圧縮技術による恩恵が大きい。
映像の圧縮技術は1980年代後半から非常に活発に行われ、MPEG1、MPEG2、MPEG4等、
国際標準化機関によって定められた規格が登場したことで世界的に普及している。

Bデバイスの進歩

デジタルデータを用いた圧縮には、データの相関性が用いられる。
動画像の圧縮の際には、時間軸方向の相関を利用してデータを効率的に圧縮する。
具体的には直前の画面全体をフレームメモリに蓄え、現時刻の画面と逐次比較を行うわけだ。
このメモリが高価で、映像機器のデジタル化を妨げる原因の1つになっていた。
それが近年のメモリの大容量化・低価格化によって、この問題がクリアされた。
また、逐次比較を行ったり、その後のDCTと呼ばれる処理では高度な演算が行われており、
性能の低い演算素子では圧縮に遅延が伴い問題となる。
それも近年のCPUの高速化・低価格化によってクリアされた。

実はAのデータ圧縮技術は1970年代から理論的には検討されていたことだったのだが、
当時はそれを実現するためのデバイスが存在せず、取り組まれることがなかった。
データ圧縮技術はデバイスの進歩なくしては実現しなかったのである。
言い換えれば、デバイスの進歩に伴ってデータ圧縮技術が徐々に現実のものとなったのだ。

Cマルチメディア化

一世を風靡した感のある「マルチメディア」という言葉。
「メディア」とは「媒体」、今回のテーマに合わせて言えば
「データを融通するための媒介物」といった所だろうか、そのメディアが次々と生まれている。
CD−R/RWやDVD−RAM/RWがその筆頭だ。
これらのメディアは大容量という特長に加え、PC・AVに共通して使われている。
以前の、「AVのメディアはPCでは再生できない&PCの閉鎖性」から比較すると長足の進歩だ。
同じデジタル記録のデータを、共通のメディアに記録できるというのは、これ以上ない融合だ。
これによって、PCで編集して焼いたDVDをDVDプレイヤーで見る、
PCに取り込んだMP3をDVDプレイヤーで聴くということが可能になった。

  ― PC・ネットワーク機器化するAV機器 ―

AV機器も、従来のハードウェアからソフトウェアで動作させるタイプが増えてきた。
その理由には以下3つほどある。

(1)高度な機能を実現するには、高性能なCPU・大容量のメモリが低価格化で入手できる今、
  カスタムICを作って実現するよりも、ソフトウェアで実現する方が安価。
(2)競争が激化するなかで、製品の開発サイクルを縮める必要性がある。
  IC化には時間がかかり過ぎるので、比較的早期に実現できるソフトが優遇される。
(3)カスタムICは一度作ると変更が効かない。通常1年も経てば使い物にならなくなり、
  また一から設計し直し、製造しなければならず、時間・コストがかかる。
  ところがソフトの場合は自由に変更することが可能で、プログラムを追加・修正することで
  徐々にグレードアップしていくことができ、無駄がない。
  製品の開発側としても、ソフトの方がやりやすいという事情もある。

RD-XS40
東芝 RD-XS40
120GBのHDDと、LAN端子を装備した
DVD/HDDハイブリッドレコーダー

実際、最近登場してきたDVDレコーダーや
HDDレコーダーは、外箱を開けるとドライブ
以外はほとんどPCと言ってもいいような
構成になっている。 製品によってはOSに
Linuxを用いているとまで公言するメーカーも
あり、 AV機器においてもソフトウェアの
重要性が増してきたことが感じられる。

また改めて述べるが、HDDレコーダー、
DVDレコーダーというのはPCと共通の
記録メディアであり、PCとAV機器の
境界線を薄くしている。
オーディオでも、MP3を記録したCD−RがDVDプレイヤーで再生できたり、
PCからの音楽データ転送を実現したNetMDによって、PCとAVの垣根が低くなっている。


TH-AE300
パナソニック TH-AE300
SDカードスロットを搭載した
低価格ながら高画質な家庭用液晶プロジェクター

SDカード、メモリースティックに代表される
メモリーカードを受け入れるAV機器も登場。
パナソニック製品、ソニー製品を筆頭に、
メモリーカードスロットを備えたプラズマ
ディスプレイ、 DVDレコーダー、
プロジェクターなどが続々登場している。
今のところ、JPEG、MP3、AACなどの
ファイルしか扱えないケースが多く、
機能も乏しいが、いずれMPEGファイル
等も再生可能になるだろう。
TX-NA900
オンキョー TX-NA900
LAN端子を装備、専用サイトから
音楽をダウンロードできるAVアンプ

XV-Z90S
シャープ XV-Z90S
IEEE 802.11b準拠の無線LANを搭載、
ケーブルレスを実現したDLPプロジェクター
そして今後増えると思われるネットワーク対応機器だ。
LAN端子を装備したHDDレコーダー、AVアンプ等が
お目見えしてきた。 取り込んだデータをPC・他の機器に
高速転送したり、インターネットを介して 専用サイトへ
アクセス、音楽のソフト等をダウンロードして再生する
といった機能が実現する。

無線LANはIEEE 802.11bが実用化されてきた。
搭載機器はプロジェクタ、液晶テレビなどだ。
ただ、ビットレートは理論値で最大11Mbps、
実際にはその半分程度に抑えられてしまうという。
扱える映像信号も480iだけだから、高画質とは
言えない水準だ。その点ではIEEE 802.11aが
HDTVの伝送を視野に入れて開発中だ。
転送レートは最大54Mbpsと、IEEE 802.11bの
約5倍だから、高品質な映像が伝送できる。

有線の高速データ転送インターフェースとしては、
i−LINKが普及してきた。
DVカメラ、BSデジタル機器等の映像機器をはじめ、
DVDオーディオ・スーパーオーディオCD等の
高音質オーディオ機器にも搭載する流れが見えてきた。

PCのモニター端子であるDVI端子が、
プロジェクター標準装備として定着してきた。
これはデータ用途が大多数を占める市場ゆえ、
ノートPCとの連携を強く考慮したものだ。

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