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「HDDレコーダー」と聞いて、何だか分かる方はどれ程いらっしゃるだろうか。 AV機器の中で近年急速にマーケットが拡大しており、注目を集める存在となっている。 実は私もHDDレコーダーの導入を検討している一人であり、 それもあって今回はHDDレコーダーを取り上げる。 ― HDDレコーダーって? ―「HDDレコーダー」とは、ハードディスク(Hard Disc Drive)を記録媒体とし、TVチューナーを内蔵。またHDDにはデジタルデータしか記録できないので、 MPEGエンコーダ/デコーダーを内蔵した録画機器のことだ。 ビデオデッキで、テープの代わりにHDDを搭載して、 アナログではなくデジタル記録を行うものと言えば分かりやすいだろうか。 AV機器として初めて発売されたHDDレコーダーは、 2000年8月にソニーが発売した「SVR-715」だ。 同年9月にはビクターがHDDとVHSデッキを合体させた「HM-HDS1」を発売している。 HDDレコーダー市場は、この2社が牽引してきたと言ってよい。 現在では単体HDDレコーダーの他、VHSデッキやDVDドライブを併載したWデッキも 数多く製品化されている。HDDレコーダーは、 「一度味わったら元には戻れない魅力がある」と言われており、 事実その魅力に取り付かれたユーザーが年々増えている。 先ほど述べた通り、HDDレコーダーというのは市場に登場してから2年しか経過していない訳で、 2年で現在のような状況まで来るというのは、急成長株と言ってよいだろう。 ― HDDレコーダーって何がいいの? ―記録媒体としてHDDを用いることで、様々な特長を実現できる。1.ディスクメディアならではのクイックアクセス これはカセットテープとCDの違いを想像してもらえればよい。 瞬時頭出しが可能で、例えば録画予約をしたものを帰宅してテープを巻戻しして再生・・・ などということは不要で、ボタン一発で即再生。 また番組の高速サーチが可能で、360倍速サーチでは1時間番組を10秒でサーチできる。 CMも一瞬でサーチ、CMがあったのか分からない程で、ストレスフリーな再生ができる。 2.テープが不要 HDDレコーダーは大容量のディスクを搭載、そこに十時間以上の映像が記録できる。 外部とのメディアの出し入れはしないので、録画時にテープを探して入れる必要はない。 急な録画の時に「テープがなーい!」という緊急事態とも無縁。 また、未録画部分を自動で検出して録画するから、上書き録画という悲劇も回避できる。 3.高画質デジタル録画 HDDはPCでのデータ記録に用いられているから、当然デジタル記録メディアである。 映像はMPEGという圧縮規格を用いてデジタルデータとしてHDDに記録されることになる。 デジタルデータというのはデータ量によって品質も変わるので、「デジタル=高画質」という 言い方はできないが、一般にアナログ記録よりも安定感のある映像が得られる場合が多い。 4.追っかけ再生・同時録画 HDDの特長として、「データ転送速度が大きい」という点がある。分かりやすく言えば、 HDDを1秒読み取れば、映像にして10秒分のデータが得られてしまうという感じだ。 残りの9秒は、読み取りヘッドは「ヒマ」な訳で、他のデータを読み取ったりしていてもOK。 これが「追っかけ再生・同時録画」の原理だ。この機能は、 ・ ある番組を録画途中でも、その番組の頭から再生できる。 これは予約録画の途中で帰宅した場合や、番組の途中で電話など少し手を空けたい時などに、 録画の終了を待たずに、録画を続けながら番組を冒頭から再生することができる。 ・ 番組の録画中に録画済の他の番組を再生可能 従来、録画中はその番組を見ていなくてはならなかったが、それから解放される訳だ。 5.大容量 現在DVDの容量は4.7GB、これでは高画質モードで1時間、少し品質に妥協しても2時間しか 録画できない。これではドラマを2回、映画1本でマンパイになってしまう。 いっぽうHDDは40〜120GB、製品によっては320GBまで搭載可能なものもある。 こうなれば、ドンドン録画しても余裕がある。 6.EPG EPGとは電子番組ガイドのことで、画面にテレビ番組情報が表示されるシステム。 録画予約をする時は、録画したい番組にカーソルを合わせてセットするだけ。 間違いなくしかも手軽に録画予約が行える。新聞等が手元になくてもOKというのも便利だ。 EPGはHDDレコーダーでなくても搭載できるが、HDDレコーダーには 必ずと言っていいほど搭載されており、他の特長と合わせてその魅力を増している。 7.欠点 = 外部に取り出せない HDDは大容量の代わりに、DVDやVHSのように、外部にデータを取りだすことができない。 よって、録画した番組を誰かに貸すということはできず、VHSなりDVDに録画し直す手間が必要。 また大容量HDDと言えども限界は必ずやってくるわけで、 満杯になった時点で録画済みの番組を消去する必要が出てくる。 この時に、「残しておきたい」と思う番組があった場合には、やはり何らかのメディア(これらを リムーバルメディアと呼ぶ)に落とす必要が出てくる。 ― HDDレコーダーのターゲットユーザー ―上記のHDDの特長から、次のようなユーザーをターゲットにしていることが分かる。「ビデオを録画予約などのタイムシフト用として使う機会が多い。 録っては消すという感じで、何かの番組を保存するということはめったにない。 時間がない社会人や、もっと便利にビデオを使いたいというユーザーを対象に、 番組を素早く再生、見たいところを素早く探し、見たくないところは飛ばすといった、 ストレスフリーな視聴スタイルを提供する。」 ― HDD+リムーバルメディアのWデッキ ―現在、HDD単体だけでなく、VHSデッキやDVDドライブを併載したWデッキが数多く製品化されている。上で述べたが、HDDの唯一の弱点が「外部に取り出せない、容量に限界がある」ことであり、 じゃあ「取り出せる、外部に保存できるリムーバルメディアと合わせて製品にすればよい」というのは 当然の発想であろう。しかし、Wデッキの魅力はそれだけにとどまらない。 それは「自由な編集が可能となる」ことだ。例えば音楽番組で、自分の好きなアーティストの場面だけを 集めてDVDに残したい、という時には、番組を一旦HDDに丸ごと録画。 後で必要な場面を指定してDVDに落とせばよい。 録画しながら、番組をハラハラしながらずーっと見続けるなんてことはしなくてよい。 またDVDのように容量が限られている場合、必要な場面だけを録画することで、 画質に妥協することなくオリジナルDVDが作れるというのも魅力的だ。 ― HDDレコーダー購入の個人的な目的 ―私は現在、ビデオデッキを保存用として用いている機会が少なくない。具体的な保存番組はプロレス。また藤本美貴ティのビデオも作り始めてしまった。 これらの番組では、残さなくてもいいかな・・・という場面が少なくなく、 特に上で考察した好きなアーティストだけを保存したいという時には、編集の必要性を強く感じる。 「番組を一旦HDDに丸ごと録画、後で必要な場面を指定してメディアに落とす」 という使い方が非常に魅力的に映るのだ。 じゃあHDD+DVDのWデッキを買えば?と思うのだが、10万近いという値段、メディアの価格がまずネック。 そしてDVDは容量が少なく、画質を妥協しない場合、ディスクが何枚もできてしまい、 そうなるとディスクの山から目的のコンテンツを探すといった状況になり、大変だ。 HDD+S−VHSという構成のWデッキもあるのだが、画質の点から言って私は許せない。 HDD+D−VHSという構成のWデッキがあればいいのだが、現在のところ製品化されていない。 しかし私はD−VHSデッキは既に所持しているので、HDDレコーダー単体を安く買って、 D−VHSとの擬似Wデッキを実現できるのだ。 このような編集機能の他、自由な視聴スタイルにも惹かれ、また技術者としては HDDレコーダーの便利さを身を持って知っておかねばなるまい、勉強の意味もあって買うことにした。 |