松下電器産業株式会社は、PCカードスロットを搭載したHDDとDVD−RAMのハイブリッドレコーダ「DMR−HS2」を
8月1日に発売することを発表した。
前身となった「DMR−HS1」は、番組を気軽に録画でき、優れた使いやすさを提供するHDD(ハードディスク)と、
HDDに録画したものを残せる・外部に出力できるリムーバルメディア、DVD−RAMを一体化したヒットモデル。今回の
「DMR−HS2」はその後継機という位置付けである。同じく松下から発売されている、目下バカ売れ中のDVD−RAM
レコーダー「DMR−E30」が93,000円なのに対し、それにHDDを足した構成の「DMR−HS1」が200,000円と、
割高感が目立っていた。HS2はHS1をブラッシュアップ、主に低価格化に主眼を置いた新製品と言える。
今回はE30、HS2のどちらが買いか、私なりに検証してみたい。
― DVD−RAM機ということで ―
まずはDVDレコーダーについて概説を。
ご存知、DVDレコーダーにはRAMとRWがある。両者の違いは、大雑把に言えば『PC系のRAM、AV系のRW』である。
RAMはCD−Rのように、もともとPCの周辺機器として規格が制定された。従って100万回の書き換えに耐える高い
信頼性と、高い転送レートを確保した。その代わりに、記録方式がセルDVDと異なってしまった(ランド/グルーブ記録。
詳細は省略)。これにより、一般のDVDプレイヤー・DVD−ROMとの互換が取りにくくなってしまった。
いっぽう、RWは一般のDVDプレイヤー・ROMとの互換を重視、記録方式はセルDVDと同じとした(グルーブ記録)。
その代わり書き換え回数は約1000回に減り、転送レートもRAMの半分に落ちた。しかし、DVD−ROMとの互換は
とりやすく、最近の安価なDVDプレイヤーでも、RWの再生に対応したものは多いが、RAMの再生に対応したものは
少ない。記録容量はRAM・RWとも同じだし、書き換え回数は1000回で事実上十分であると思われる。
従って違いは、再生互換の取り易さと、転送レートの違い、の2点であろう。RAM陣営は最近、高い転送レートを
生かした追っかけ再生や同時記録・再生機能をPRするようになった。RW系は、互換を保証するDVD−R記録方式が
出てきたことでメリットが薄れつつあり、転送レートが低いこと、RAM機の低価格化に押され苦戦の傾向が見えてきた。
― HS2の特徴 ―
まずはディスクメディアということで、頭出しの速さ、また録画の際にも頭出しの必要がなく一発録画、編集可能という点を
PRしている。さらにDVD−RAMならではの高い転送レートを生かした追っかけ再生や同時記録・再生機能をアピール
している。これはHDDにも共通するフィーチャー。HDDはHS1と同じ40GBを搭載、最近の流れからすると容量が
少ないという見方もあろうが、SPモードで17時間録画できるのでそれほど大きな問題ではない。DVD再生の際は
プログレッシブ出力に対応。パナソニックのプログレッシブ画像は定評あるところで、某AVショップのブラインドテストでも
その実力を発揮した。
新たに追加されたのはリニアPCM(XP記録時のみ)、PCカードスロット、またGUIも一新されたという。記録時間が
1時間に限定されてしまうとは言え、リニアPCMはオーディオファンにとっては心強いだろう。またデジカメ画像の保存にも
使って欲しいということでPCカードスロットを装備。この辺りはユーザーの楽しみ方の変化を逃さないなと感じる。
本体が小さくなった。高さはHS1の120mmから79mm、一気に2/3に、奥行も351mmから306mmに短縮された。
3次元Y/C分離、3次元ノイズリダクション、TBC等はHS1から引き続き搭載された。GRチューナ非搭載は残念だが、
RWの低価格機はBSチューナを省略してきた中で、パナのRAM機はしっかり装備。
まとめればHS2は、『HDDにどんどん録ってRAMに残す、快適な操作性とデジタル高画質を提供する』という、HS1の
コンセプトはそのままに、より一層スタイリッシュに、リーズナブルに、魅力的になった機種と言える。
― E30との違い ―
最大の焦点は、HDDの有無がどれ程の違いを生むのか、である。使い勝手の点では、HDDもDVD−RAMもどちらも
追っかけ再生に対応、頭出し等も勿論可能、大差ない。テープ等の場合は繰り返し録画をすると画質が若干劣化するが、
RAMでは問題ない。HDDを搭載する強みは3つある。
1.長時間番組録画に強い
例えば音楽番組で3時間程の特番が組まれる時がある。DVD単体機では画質を落として3時間で録るか、番組途中で
ディスクを交換するか、不要なシーンで録画を止めながら番組を見るか、いずれかになる。ライブを3時間録画したら
画質的にはかなりキツイ。ディスクを交換するのは留守録ではアウトだし、ディスクが2枚になるのはいただけない。
不要なシーンをカットしながら録るのは精神的に辛いし、番組を楽しめないし、必要なシーンをカットしてしまったり、逆に
不要なシーンをカットしてしまう場合もあろう。その点HDD搭載機であれば、一旦HDDに記録し、後から好きに編集
すればよく、必要なシーンだけ集めてDVD−RAMに効率よく収録でき、ディスク1枚で済む可能性が高い。このスマートさ
である。
2.コピー作成が簡単
DVD−RAMに録画したものを複製したい。これはDVD単体機では不可能だ。これがHDD搭載機ならできるのである。
しかも、HDDとRAMとの間でデータは自由に行き来できる。つまり、RAMのデータを一旦HDDにコピー、それから
データをDVD−Rに焼き直すなんてこともできる。しかも頭出し等も不要だから極めてスピーディーかつ的確に処理が
行われる。これもまたスマートと言う他はないであろう。
3.繰り返し録画が楽
一週間で見る番組が複数ある場合、例えば見る番組が一日に1つあって、どれも60分としよう。RAMにSPモードで記録
していった場合、2日見ないと2枚目のディスクを用意する必要がある。普通は2〜3枚のRAMを用意し、これを使いまわす
ことになるだろう。HDDがあれば、普段は「どれに録るのか」ということを意識せず録画予約をすればよく、非常に楽である。
また予想外にいい番組で、「残したい!」と思っても柔軟に対処できる。
その他、HS2ならではの機能はi−LINK、リニアPCM記録、PCカードスロット等。それぞれDVカメラユーザー、
オーディオファン、デジカメユーザーをターゲットにしているが、どれもあれば便利な機能である。
― 結局お前はどっちがいいんだ ―
以上から、ディスク録画・デジタル録画を楽しみたい人はE30。スマートに編集したい、色んな楽しみ方をしたい人はHS2。
という結論付けができる。もちろんHS2の方がいいに決まっているが、価格差は定価で42,000円。実売価格ベースでは
3万円弱の差になるか。上で考察したHS2の利点を考えれば3万以下の差は小さいと思える。懐に余裕があれば、僕はHS2!
|