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ここはエディが思いついたAV機器に関する妄想・体験について語ったり、新製品についてコメントしたりするところです。

D−ILAプロジェクター体験記

(2002.9.13)


新橋のビクタービルで開催された、「D−ILAプロジェクター体験会」に参加してきました。
そこでの体験が新鮮なうちにプロジェクターへの想いを吐き出します。

    ― プロジェクターの現況 ―

現在のプロジェクター市場は、液晶・DLPの2方式が市場を賑わせている。
そして少数だがD−ILA・三管式もある。
プロジェクター市場は近年急速に拡大しているが、その内訳は
PCと接続して企業が会議等でプレゼンに用いる「データ用」が圧倒的多数を占め、
個人が部屋を暗くして映画などを楽しむ「AV用」はごく一部に過ぎない。
上で挙げた4つの方式のうち最も普及しているのは液晶式だ。
4つの中では、最も低価格で高解像度、明るい画面が手に入るからだ。
近年登場したDLP方式は液晶よりもコントラストが稼ぎやすく、好みはあるにせよ
一定数のユーザーをGETしている。ただ画素数が不足していて、データ用としては少ない。
D−ILAは優れた長所を持っているが、製品化はビクターのみで、高価な高級機としての位置付けだ。
三管式は、画質のみを追求した場合には現在でもトップレベルだが、
輝度が足りない、高価である、設置・調整が大変ということで一部のマニアに愛されるのみとなった。

    ― 今のプロジェクターに求められていること ―

データ用プロジェクタに求められることは、「明るいこと」「高解像度」の2点だ。
企業での会議の時に、部屋を暗くしてしまっては会議にならない。
明るい部屋・もしくは少し暗くした状態でも画面が鮮明に見える必要がある。
よって何よりも優先して輝度を稼がなくてはならないのだ。
そして、パワーポイントで文字を表示したり、製品の画像を映す時に、
やはり高精細な画面が求められる。近年ではXGA(1024×768画素)が標準となった。

さて、データ用の話はこの辺りにして、AV用プロジェクターの話をしよう。
AV用では、データ用ほど輝度は必要とされない。その代わりに、
「正確な色再現」「高コントラスト」「滑らかな階調表現」などが求められる。
日頃見ているブラウン管の画質をプロジェクターで再現するのは簡単なことではない。
色で言えば、どうしても色が赤や緑に振れたり、色ムラが発生したり、色純度が不足したりしてしまう。
輝度との兼ね合い、ランプの光の集光能力、ランプの種類などが原因だ。
コントラストは、まあ要は黒再現の問題だ。液晶はパネルの背後から光を投射し、
黒はその光をパネルで遮断して「黒」とするのだが、完全に遮断できないのだ。
最近はパネル自身が改良されてきて、大分改善されてはきたが、完全ではない。
DLP方式は光を反射するデバイスで、黒は光をレンズとは離れた方向に反射させて「黒」とする。
よって液晶に比べれば黒が出しやすい。が、迷光がレンズから出てしまい、完全な黒は出ない。
各社各モデル、黒再現は一大使命となっている。
さて、近年はDVDやハイビジョンの普及によって、ワイドパネルに対する要求も非常に多い。
AVファンからは、「ワイドパネルを積んでなければプロジェクターにあらず」という意見もある程だ。
確かに、DVDで16:9の映像を観る時に、4:3の時よりも画面が小さくなってしまうのは頂けないし、
解像度の点で有利、画素変換なども容易(つまりはボヤけない)といった点も大きい。
さらに、ファンノイズの小ささも、近年大きく改善された。
ソニーの10HTを嚆矢として、ヤマハのDPX−1の登場時あたりから
各社がファンノイズ低減に力を入れ始め、今ではどの機種も30dB前後まで静音化を果たしている。

    ― D−ILAプロジェクター「DLA−G150CL」 ―

上記のような流れを把握した上で、D−ILAプロジェクターの視聴インプレッションを書くことにする。
今回視聴に用いたのは「DLA−G150CL」、本体価格1,785,000円。
この価格設定から言って、三管式を欲しがるようなユーザーをターゲットにしたハイエンド機ということだろう。
まあ価格は現在の価格であって、D−ILAという方式自体が良いものなのかどうかを見極めたい。
パネルは1365×1024画素、XGAの上を行くSXGA(1280×1024画素)クラスだ。
これをRGB3枚用いているので、総画素数は420万画素になる計算だ。
画素数的には民生用としては恐らくトップだ。ただ、アスペクト比は4:3。
この点については体験会でも出席者から指摘されていたが、市場の大部分をデータ用が占めているので、
4:3パネルにせざるを得ない、ワイドパネルを新たに作ると価格がさらに上がってしまうということだった。
D−ILAパネルは半導体の製造工程と似た製法なので、コストの点では厳しいようだ。
ただ、画素数自体が420万と多いので、ワイド画面でも不足を来たすことはなさそうだ。
明るさは1000ANSIルーメン、問題ないレベルだ。映画再生用に輝度を70%まで落とすこともできる。
他には、液晶のように画素の「仕切り」がないので、大画面でも瑕疵が目立たない、
太陽光に近く、最も自然な色再現が可能なキセノンランプの使用などが訴求されていた。

    ― 「G150CL」の視聴インプレッション ―

さてその画質。一見して、非常に濃密な映像ということが実感できる。
液晶のように画素の「仕切り」がなく、開口率93%という高開口率とあって、
画面全体で力が抜かれている部分がなく、力感が溢れているといった印象。
人の顔、空、街、どれをとってもびっしり画素が詰まっている。フィルムにかなり近い。
キセノンランプの恩恵か、色が豊富で純度が高いことも、「濃密」という印象につながっている。
「アメリ」の1シーンでは、絨毯の赤、口紅の赤が非常に鮮やかだった。
色の緑かぶりなどはなく、ナチュラルな色が再現できていると感じた。
画素数が多いので、描写は滑らかだ。ハイビジョンソースでは高解像度な映像が楽しめた。
また、画素数が多いことは何も映像だけではなく、字幕の見やすさにもつながっている。
黒再現は、完全な黒かと言われたら違うと答えるが、かなり黒に近く、「黒浮き」と言えない程だと感じた。
色純度を低下させている印象はなく、三管式を除けばトップ集団の1つと言ってよいのではないか。
なお単板式DLPのカラーブレーキングのような不自然な現象は見られなかった。
I/P変換は、担当者はDVDプレイヤー側で行っていると言っていたが、
字幕のコーミングが発生していたことから、恐らくプロジェクター側で行っていた模様。
このI/P変換が原因か、DVDプレイヤー自体の限界なのか分からないが、
DVD入力では、偽輪郭が発生していた。ハイビジョンソースでは見られなかった。
ファンノイズは大きめという印象。
視聴インプレッションは以上だが、こう見ると良い印象が支配的だ。正直、欠点を見つけるのが難しかった。

    ― まとめ ―

上記のように、液晶・DLPと比較して優れた画質を誇るD−ILA方式だが、問題は価格。
液晶の売れ筋、エプソンの「ELP−TW100」、ソニーの「VPL−VW12HT」の3倍以上、
DLPの売れ筋、シャープの「XV−Z9000」の2倍以上もする。
またファンノイズももう少し小さくしたいし、3板式とあって本体も大きい。
キセノンランプをこだわって使っていることで消費電力も620Wもある。
D−ILAは、業務用としてはデジタルシネマでDLP方式を抑え、最高画質を獲得し高評価を得ている。
家庭用としては、もっと安価な高C/Pの製品の登場を待つだけだ。
プロジェクター市場全体としては、今年は低価格プロジェクターが活況を呈してきた。
機会があればこれらをまとめて「AV−eye」で語ってみたい。


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