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― AVアンプの発展の歴史を軽く ―以前はアンプと言えば「プリメインアンプ」、音声信号を受け入れ増幅するというのが役目だった。AVアンプの幕開けはドルビーサラウンドの登場(1985年頃だったか)がきっかけだったと言ってよいだろうか。 これによって、「音声信号を受け入れ、何らかの音場処理を加えた後増幅する」という役目を負った、 “AVアンプ”というジャンルが生まれることとなった。 ドルビーサラウンドはL、R、センター、リアの4CH構成。2CHと互換がある(正確には2CHに マトリクスで合成していると言うのが正しい)ので、現在でもレンタルビデオ、ステレオ放送などで活躍中だ。 その後、方向性強調回路を加え移動感を強めた「ドルビーサラウンド・プロロジック」に進化。 その後AVアンプは冬の時代に入り、一時は年間出荷台数が2〜3000台にまで落ち込んだと言われる。 その状況を打開したのが、1995年の「ドルビーデジタル」の登場だ。 デビュー当時はまだDVD登場前夜、まずはレーザーディスクに採用され、「ドルビーAC−3」と呼ばれていた。 それまでのアナログ規格では限界があった点を、デジタル圧縮を用いて解決。 5.1CHをディスクリートで記録することで、チャンネルセパレーションの良さ、明瞭な移動感、 圧倒的な臨場感を実現。DVDの標準音声として採用され、DVDの普及とともに一気に広まった。 さらにDVDと組み合わせたホームシアターブームにも乗って好調を維持しているといったところか。 98年には新たな5.1CH圧縮規格としてDTSが,2000年にはAACが登場。 他にはドルビーデジタルEXに代表される「6.1CH系」、 ドルビープロロジックUに代表される「2CH→5.1CHアップコンバート系」など、音声規格が乱立。 ― AVアンプに求められていること ―AVアンプは、AV機器の中で、今最も多くの使命を背負っているのではないか。(1)音声規格への対応 音声規格っていくつあんのか??この際数えてみよう。 1.ドルビーサラウンド(プロロジック)。 2.ドルビープロロジックU。 3.ドルビーデジタル(しかも2CHから5.1CHまで) 4.ドルビーデジタルEX 5.DTS 6.DTS−マトリクス6.1 7.DTS−ディスクリート6.1 8.DTS Neo:6 9.DTS 96/24 10.AAC 11.AAC 6.1CH 大変だ。まあ実際にはシーラスロジックとかアナログデバイゼスとかがDSPとして1つの石に しちゃうんだけど、制御とか大変だろうなぁ。 (2)音場処理 ヤマハのシネマDSPに代表される、音場生成のための処理。他にも、 ソニーのデジタルシネマサウンド、パイオニアのアドバンスドシアターモードなどがあるが、 いずれの処理も非常に複雑で、かつ高速な演算が要求される。 従って、(1)デコーダと、この音場処理と、スピーカーコンフィグレーション等を一気にこなすために、 32bit浮動小数点DSP「SHARC」等が用いられたりする。 これほどの高度な演算チップを使うのは、よほどのことらしい。それだけ高価でもある。 オンキョー、デノン、マランツ等はデコードした音声そのままなので、比較的楽だろう。 (3)アンプとしての基本性能 ドルビーデジタル登場以後の音声フォーマット乱立の中で、 AVアンプはデコード・音声処理部が充実した反面、アンプ部が軽視される傾向があった。 言ってみれば頭でっかちで、体力面を軽視していたようなものだ。 だがここ1,2年、アンプとしてのクオリティも問われるようになってきた。 単純に言ってプリメインアンプに比べAVアンプはチャンネル数が2から5に増える訳で、 それだけで電源部、増幅段に対する負荷は高まる。 さらに近年の6.1CH系の登場でスピーカー数が増え、電源部などに対する負荷はますます高まっている。 そしてDVDオーディオが普及の兆しを見せてきており、これに対応するとなると ますますもって要求されるクオリティは厳しくなる。 (4)入出力系統 近年所有AV機器は増加の一途にあり、セレクターとしての働きも重要になってきた。 入出力系統を豊富に持つのは当然として、映像系統が大変だ。 従来のコンポジット、S端子に加え、コンポーネント端子は3つも端子がある。 そしてD端子も設けたり、6.1CH系の登場でスピーカーターミナルも増設。 AVアンプの背中が悲鳴を上げている。近年のAVアンプは大型化、高さも増える傾向にあるが、 端子類の増加とも関連があるのではないか。 (5)インターフェース 上記のように様々な機能が加わってきたAVアンプだが、今度はそれを使いこなすのが大変だ。 多くの機能を簡単に使うためのロジックを考えるのも容易ではない。 (6)環境対策 現在ではアンプのほとんどはまだアナログアンプである。 アンプがかなり熱を持つことから分かる通り、アナログアンプのエネルギー効率は低く、消費電力も多い。 AVアンプは環境負荷がかなり高いのは間違いない。 性能が下がるのを覚悟で消費電力を落としたような製品は今のところ出てきていないが、 メーカーにはプレッシャーがかかっているのは確かだ。 ― もの申す ―音声規格の乱立についてだが、もういい加減にしてほしい。どうにか減らせないものか。新しい規格が登場しないと売れないからか? 音場処理については、推進派(ヤマハ・ソニー・パイオニア)と反対派というか 処理を加えない派(デノン・オンキョー・マランツ等)に別れている。 オンキョーなどが頑なに音場処理を行わないのは、シネマDSPやデジタルシネマサウンドのような 強敵がいるので下手な音場処理はつけられないし、新たに音場処理アルゴリズムを構築するのも 予算的・技術的なバックボーンなどの点で難しいからだろう。しかしユーザーの立場からすると、 推進派の方が使いこなしの幅が広がるので、選択の際には選びやすいと感じる。 AVアンプを、演算部と増幅部に分ければ、演算部の進化は目覚しいが、 増幅部はほとんど進歩していないと思われる。 よって、是非ともAVコントロールアンプとパワーアンプを別筐体にして売ってほしい。 あるいは演算部をスロット交換できるようにして、毎年バージョンアップが可能とか。 それじゃAVアンプが売れなくなっちゃうのかなぁ。 僕的には、シネマDSP+オンキョーのパワーアンプとかをやってみたいんだけどねぇ。 入出力系統だが、映像端子は必要なのか。僕はこの方、映像端子を使ったことは一度もない。 映像端子を取り払えば大きなスペースが空き、コードの接続もどんなに楽になるか。 それと、AVアンプはデカ過ぎる!高さが17cmとか20cmもありやがって、 あれは常人が見たら何だと思うぞ?おしゃれな部屋には似つかわしくない。 マランツの薄型プリメインアンプ(PM−17SA)は人気だと聞く。 AVアンプも、薄型でスタイリッシュなものが出れば売れると思うぞ〜〜。 薄型化と、環境対策も含め、高性能なデジタルアンプの開発が急がれる。 |