2001年12月の日記
2001年12月25日(火)
日本興亜ビル女子トイレの怪
ずっと前に、これについて書くと予告して、ずっと書かずにいたのですが、自分なりに解決したかったのが出来なかったんですよね。
私の働いている日本興亜ビル7階の女子トイレの中に、時々、空気がゆがんだような、蜃気楼のような渦巻きが出来ていたんです。
私は異次元への入り口かもしれないと思って、手を入れてみたんですけれど、パッと消えてしまいました(普通の人は手を入れないでしょうが)。
でも、そこだけ周りと比べると空気が暖かいんです。思わずその日、同僚に「霊ってあったかかったけ?」と聞いてしまいました。
何かそこに、暖かい空気のたまりが出来ているのでしょうが、どうしてなのかはわからない。
日本興亜ビルのトイレは、冷暖房がついていないので、寒くなったこの頃は、その空気だまりも出てきません。
私はそのウサギ大の渦巻きを、勝手に「ラビちゃん」と呼んで、かわいがっていたんですけどね・・・。
来年の夏、また会えるかしら?(いや、別に霊だというわけでは・・・。)
で、せっかくだから、それにちなんだ短いパロディを書いてみました。
(アル○ゲドンとエヴァ○ゲリオンとマルコ○ィッチの穴をさりげなくパロったつもり・・・らしい。)
とーってもとーっても、くだらないです。
今日はワールドポーターズの前で、カップルに写真を撮ってくださいと頼まれて撮ってあげたのはいいのだけれど、
他人のカメラは覗き方がよくわからなくて、うまく撮れているのかとっても不安・・・。
カップルさん、ごめんなさい!!(しかし、クリスマスの横浜は、カップルだらけで目の毒・・・。)
2001年12月24日(月)
クリスマス・ダイアリー
※この話は前作の続きです。前作は、ダイアリーの10月7日に入っています。
※私の書いたパロディーは、御手洗さんが常に馬車道にいることになっています。
御手洗さんがいないことになっていると、他の方もそうだと思いますが、まず御手洗さんを登場させる設定に悩むことになるからです。他の話の設定ともどもお許しの上、ご了承ください。
12月17日
今日、里美から「先生、私盲腸で入院したの〜」と電話をもらい、あわててM病院へ駆けつけた。
御手洗も一緒に来るように誘ったが、「あかつき号の乗客達に、一体何が起きたのか・・・。」とわけのわからないことを口走ったまま、心はどこかに行ってしまっているようなのでおいていくことにした。
受付で病室を聞くと、どうやら大部屋が空いていなかったようで、3人部屋だという。部屋に入ると、入り口に一番近いベットに半身を起こして、里美が手招きしていた。
「先生、こっちこっち〜。」
「里美ちゃん、大丈夫なの?」
「うーん、今は薬で痛み、散らしてもらってるから。明日の昼頃、手術だって。」
里美の体にメスが入ると思うと、仕方ないながらも気が滅入ってくる。
「先生、御手洗さんは〜」
「ごめん、御手洗はちょっと別次元に心が飛んでってるみたいで・・・、あ、いや、なんか研究でもしてて忙しいんじゃないかなあ・・・。」
「ふーん、残念だなあ。御手洗さん、なかなか私に会ってくれないんだもん。私、避けられてるのかなあ・・・。」
「いや、そんなことないよ。あれで色々忙しい男だからさ。それより、いつからお腹、痛くなったの?」
「昨日の夕方くらいからかな〜。しばらく我慢してたんだけど、こりゃなんかおかしいぞって思って、今日病院来たら、盲腸だって〜。大部屋あいてないからどうしようかとおもったけど、手術、早いほうがいいっていうから〜、思い切って入院しちゃった〜。」
「この部屋だと、部屋代とられるの?」
「うん、一日3千円だって。」
「それはちょっと痛いね。」
「うん。それよりさあ、クリスマスまでに退院できるかどうか、心配なの〜。お正月とか痛くなっちゃったらこまるから、それもあって今手術することにしたんだけど・・・。」
そうか、来週はもう、クリスマス・イブだった。
「そっか、もし退院できなくても、必ずプレゼント持ってお見舞いに来るよ。里美ちゃん、何が欲しい?」
「うーん、そうだなあ・・・。急に言われても、思いつかない。先生のセンスで選んで。」
うわっ、痛いところをつかれた。
「いや、僕のセンスって言われても・・・。そうだ、花束なんて、どう?」
「うーん、いつもだったら花束って嬉しいんだけど、病院に花束って、ありきたりじゃない?」
「そう、そうだよね・・。」
「何か、思い出に残るようなものがいいな。」
うーん、ますます思いつかない。
とりあえず、必要なものはないか聞いたが、一度家に帰って準備万端整えてきたらしく、特に必要なものはないと言われた。明日、クリスマスプレゼントに却下された、花束でも持って出直してくるか。
12月18日
病院の面接時間が午後からだというので、里美の手術が終わる頃をみはからって見舞いに行くことにした。
今日は朝から御手洗の姿が見えなかったので、どのみち一人で行くことになった。
花屋で花をみつくろってもらったら、オレンジ色のガーネットの、かわいらしい花束になった。もっと色々とカラフルな方がいいかと思ったが、今は単色で揃えた方がおしゃれなのだそうだ。
夕方頃病室に着くと、もうすでに里美は手術を終えて、ベットにいた。さすがに今日は、あまりしゃべりたくはないようだ。それでも、麻酔が局部麻酔だったので、痛みはないものの腸が取り出される感触がして、気持ちが悪かったと言った。
花瓶に花束を入れて、枕元のキャビネットに飾ってあげると、とても嬉しそうにしばらく眺めていた。
「明日も来るね」と言って、あまり疲れさせてもいけないと思い、30分程度で病室を後にした。
夕飯の買い物をして馬車道の部屋に帰ると、御手洗が何やらお菓子の小さな箱のようなものから、何か人形のようなものを取り出そうとしていた。私に気づいてあわてて後ろ手に隠した。
「やあ、お帰り。お腹がすいたね。今日の夕飯は何かな?」
「何か白々しいね。何を隠したんだい?」
「いやあ、そのー、ほら、2ヶ月くらい前、仮面ライダーの撮影現場に出くわしたじゃないか。その時の仮面ライダーのフィギュアが入ったお菓子が、偶然ファミリーマートに売っていてね。思わず嬉しくて、買ってしまったんだ。いや、別に仮面ライダーが欲しかったわけじゃなくて、これも何かの縁だと思って・・・。」
「別に、君が仮面ライダー好きでもかまわないよ。そこのファミリーマートに売ってたんだ。お菓子のコーナーは時々見るけど、仮面ライダーは見かけたことがなかったなあ・・・。」
「そうなんだよ、この辺は金融オフィス街だから、子供向けのお菓子はあまり売っていないんだ。だから、S田のファミリーマートまで、わざわざ買いに・・・、あっ。」
「ふーん、わざわざ電車に乗って、買いに行ったんだ。最近、また、熱心にインターネットをやっていると思ったら、そんなことを調べていたんだね。」
御手洗はそれには答えずに、口笛を吹きながら自室へ引き上げてしまった。
12月19日
今日も御手洗は朝から姿が見えなかったので、一人で里美の見舞いに行くことにした。我ながら盲腸くらいでかいがいしいと思ったが、病気のときは何かと心細いものだ。毎日顔を出すだけでも、気晴らしにはなるだろうと思った。
里美の病室へ行くと、若いお嬢さん達の笑い声が響いていた。セリトスの女子大生達が見舞いに来ているらしい。女性ばかりの中に入っていく勇気もなかったので、しばらく時間をつぶそうと、1階のロビーに降りた。
缶ジュースを買って、待合室の椅子に掛けようとすると、車椅子の高校生くらいの青年が通りかかった。立ち上がったらだいぶ背の高そうな、スマートでスポーツマンっぽい短髪の青年で、いかにも車椅子の操作になれていない様子でぎこちなく前に進んでいた。どうやら彼も缶ジュースが買いたいみたいだったので、自動販売機の前まで押していってやることにした。
「どうもすみません。」
青年は、スポーツマンらしいさわやかな笑顔で言い、お金を入れて買いたい缶ジュースのボタンを押した。
ジュースが取り出しにくそうだったので、代わりに取ってあげた。
それでなんとなく、待合室で一緒にジュースを飲むことになった。
「ずいぶん、背が高そうだね。何かスポーツでもやっているの?」
「はい、高校でバスケットをやっています。」
「へえ、やっぱり、バスケットって、背が伸びるんだね。うらやましいなあ。でも、今は怪我をしてるんだね。はやく治して、バスケットがしたいんじゃない?」
「はい、でも、以前のように治るのかどうか・・・。」
「え、そんなに重たい怪我なの?」
言ってしまって、自分のデリカシーのなさに気づき、赤面してしまった。
「うーん、リハビリによっては以前のように治るかもしれないけれど、時間がかかるんです。僕、高校を卒業したら、アメリカに行って、NBAの選手になるのが夢だったんです。でも、事故に遭ってしまって、卒業までにも治るかどうか・・・。」
「NBA・・・って?」
「アメリカのプロバスケットリーグです。」
「プロって、野球で言う大リーグみたいなもの?すごいなあ、じゃあ、バスケット、よっぽどうまいんだね!」
「いや、まだそれ程でもないんですけど・・・。高校総体で、一度優勝しただけで・・・。」
「え〜、じゃあほんとにすごいんじゃないの!だったら、絶対、リハビリがんばらなくちゃ!治してまた、バスケットやらなきゃ駄目だよ。」
「治れば、の話ですけどね。」
青年は照れたようにうつむいている。
「僕、バスケットのこと何も知らないんだけど、誰か、目標にしている選手とかいるの?」
「はい、ロスアンゼルス・レイカーズの、コービー・ブライアント選手です。コービーって、日本の神戸から名づけられたんですよ。」
青年は嬉しそうに、きらきらした目で語った。彼は大器君という名前らしい。名前のとおり、大きな器なのかもしれなかった。
しばらく話してから、彼の病室を聞き、また見舞いに来るよと言って別れた。里美の病室へ行くと、女子大生達はもう帰っていたので、気兼ねなく入っていけた。里美は若さのせいか回復がはやいらしく、昨日より全然元気になっているようだ。
一通り、世間話などしてから、ふとさっきの青年のことを思い出して里美に話した。
「えー、NBA選手目指してるの〜、すっごーい!!」
「ねえ、すごいよね。将来、イチローや野茂みたいに有名になっちゃうかもね。」
「うん、でも、NBAに入った日本人って、まだいないんじゃないかなあ。も〜っと有名になっちゃうかもよ。」
「え、そうなの?」
私はスポーツには疎いので、バスケットのことは全然わからない。
「そうですよ〜、早く怪我治るといいですね・・・。そうだ、先生、今度彼をここに連れてきてよ。未来のスターとお話した〜い!」
「そうだね、今度彼に会ったら、聞いてみるよ。」
言いながら、ちょっと彼に嫉妬心が沸いた。
馬車道の部屋に帰ると、めずらしく御手洗が夕食の仕度をしていた。どうやら、トマト系のパスタのようだ。
雨でも、いやヒョウでも降るんじゃないかとビクビクしていると、上機嫌で出来上がったパスタを持って、台所から現れた。
「お帰り〜石岡君。今日はいい日だね。」
「何かいいことでもあったのかい?」
「いや、ちょっと仮面ライダーのガチャガチャを見つけてね、200円は高いと思ったんだか、やってみたらあの青年の緑のライダーが一発で当たって・・・、あ、いや、そんなことはどうでもいいじゃないか。毎日、どこに出かけてるんだい?」
「あのね、里美ちゃんが盲腸で入院したって言ったじゃないか。お見舞いに行ってたんだよ。君も一回くらい、顔を出してあげてくれないか?里美ちゃんは君のファンでもあるんだから・・・。」
「ああ、あゆみちゃん、盲腸で入院してたんだっけ?」
「里美ちゃん!!他の誰の名前を間違ってもいいから、里美ちゃんだけは間違えないでくれないか?」
「ああ、里江ちゃんね。気が向いたら見舞いに行くよ。」
私は腹が立ったが、せっかくの彼の上機嫌に水をさすこともないと思い、おとなしく彼の作った夕食をいただくことにした。
久しぶりに会話もはずみ、とても楽しい夕食になった。そこでまた、バスケットの青年のことを思い出し、御手洗に話してみた。
「ふーん、NBAね。そういえば、ドレックスラー君は、元気かなあ?」
「ドレックスラー君?誰だい、それ。」
「NBAの選手だよ。もう、確か引退したんじゃなかったかな?」
「えー、NBAの元選手と知り合いなのかい?」
「いやあ、知り合いってほどじゃないけどね、数年前、彼がポートランド・ブレイザーズにいた頃、ジャパンゲームが横浜アリーナで開催されてね、日本に来たんだよ。たまたまS田のカラオケバー・キャロットで飲んでたら、彼が突然現れたんだ。何でも、キャロットの娘さんがポートランドへ留学していた時に知り合ったダンさんっていう弁当屋が、通訳でブレイザースに付き添って来ていたらしい。」
「弁当屋?」
「ああ、ダンさんは昔、日本で英会話の教師をしていてね、ポートランドへ帰ってから、BENTOっていう弁当屋を始めたんだ。他にも事業をいくつかやっているらしいけどね。僕もあれから一度、ポートランドの彼の店に招待されて行ってみたけど、主にご飯の上に特大の焼き鳥がのっているやつと、カレーライスの弁当だったよ。その量が半端じゃなくってね、日本人には食べきれない量だが、アメリカ人にはあれでちょうどいいんだろうね。
彼の車がまた笑っちゃってね、ナンバープレートが『BENTO2』なんだ。1は奥さんの車なんだよね。日本のナンバープレートも、そんなしゃれた番号に、早くできるようになるといいのにね。
それで、話は戻るけど、ダンさんはキャロットに誰か選手を連れて来てくれると言ってたらしいんだが、まさかトップスターの彼を連れてくるとはみんな思わなかったらしくてね、店の中は騒然としていたよ。いくらなんでも君だって、マイケル・ジョーダンくらいは知っているだろう?」
「ああ、それなら聞いたことある。彼、バスケットの選手なんだ。」
「・・・。その、マイケル・ジョーダンとね、並び称されて、『東のジョーダン、西のドレックスラー』と呼ばれていた程の選手なんだよ、ドレックスラー君は。そのドレックスラー君が、いきなり日本のカラオケバーに現れたんだ、大騒ぎになるはずさ。彼は当然、ものすごく身長が高くってね、バスケットを知らない若者達まで、彼と写真を撮りたがって、群がってたよ。その時、ちょっと彼等と、話をしたんだ。」
「へえ〜、すごいじゃないか!大器君が聞いたら、ものすごくうらやましがるだろうね。彼は、なんだっけ、コービーなんとかっていう選手が好きらしいんだけど・・・。」
「コービー・ブライアントだろ。若手では最も期待されている選手の一人だよ。」
「そうそう、コービーが見舞いにでも来てくれたら、彼の怪我も一発で治っちゃうかもしれないよ!」
「今は、NBAのシーズン中だからね、NBA選手が日本へ来ることはありえないよ。だいたい、この間のテロのせいで、ジャパンゲームまで中止になったくらいだからね。海外へ来ることなんて、ありえないね。コービーも本当なら、そのジャパンゲームに来るはずだったんだよ。大器君は当然、チケットを買って心待ちにしてたんじゃないかな。」
あー、そういえば、そんなことを言ってたな、と私は思い出した。御手洗がNBA選手を知っていたことにまず驚いたが、それ以上都合よくいくはずもないんだよな、と思い直した。
12月20日
今日はさっそく、大器君にドレックスラーのことを話したくて、先に彼の病室を訪れた。案の定、彼は驚いて、そして悔しがった。彼はその時、わざわざ横浜そごうの屋上のイベントに、ブレイザーズの他の選手を見に行ったのだそうだ。もちろん、ドレックスラーの方が、より会いたかったに違いない。
里美のことを話すと、会いに行ってもいいと言う。彼の包帯グルグルの足を気遣って車椅子に乗せてあげ、里美の病室へ連れて行った。
里美は歓声をあげて喜び、彼は対照的に真っ赤になってうつむいてしまった。でも、里美の方が私よりも年が近いせいか、すぐに打ち解けて、楽しそうにしゃべり始めたので、またちょっと嫉妬してしまうことになった。
里美は、時折腹が痛むのか、笑いながらも顔を歪めていた。まだ、ガスは出ないのかと聞くと、
「やだー、先生、彼の前でそんなこと聞かないで下さい!!」
と、怒られてしまった。また、嫉妬・・。
連れてこなけりゃ良かったかな・・・。
馬車道へ帰ると、御手洗は出かけているようだった。仕方がないので、一人で夕食を作って食べた。里美の見舞いに行ってくれる気はあるのだろうか?御手洗にも嫉妬したくないので、本当は連れて行かなくても良いのだが、やっぱり里美の笑顔が一番見たい。そういえば、里美のクリスマスプレゼントは何にしよう?セルテの2階でNBAや大リーグの選手のフィギュアが売っているのを見たので、大器君にはコービーを買ってあげようかと思っていたが、里美にベイスターズショップで谷繁選手のグッズを買ったりしたら、さすがに怒られるかなあ・・・。
12月21日
里美は、どうやら明日には退院出来るらしい。抜糸はまだだし、しばらく通院は必要だが、どうやらガスはもう出たらしい。病院はもうしばらく入院したらと言ったらしいが、里美はどうしてもクリスマスを病院で過ごしたくなかったのだろう。部屋代がかさむせいでもあるらしいが。
「先生、イブはデートしてくれるよね。」
「え、僕なんかと一緒でいいの?」
と、照れたふりをしながらも、絶対そうするつもりだった。
大器君の病室に寄って、里美が明日退院することを告げると、さわやかにお祝いの言葉を言ってくれた。
退院する前に、君のところへも挨拶に来るって言っていたよと言うと、
「ありがとうございます。でも、先生がもう病院に来ないと思うと、そっちの方がさみしいです。」
里美が先生、先生と呼ぶものだから、彼にもうつってしまったらしい。
「何言ってるんだい、そりゃあ、毎日とは言えないけれど、時々見舞いに寄せてもらうよ。そうだ、クリスマスのプレゼントを考えているんだ。イブの日に持ってくるよ。」
「えー、いいんですか?わー、楽しみだなあ。でも、先生、里美さんとデートなんじゃないんですか?」
「え、いやあ、まあ、大丈夫、実は夜にレストランを予約してあったんだ。料理の鉄人の石鍋シェフのレストランでね、予約するのが大変なんだよ。彼女が退院できなかったら、キャンセルしなきゃならないかと思っていたんだけれど、実は退院できてほっとしたんだ。その前に、見舞いに来るよ。あ、そうだ、君へのプレゼントは決めてあるんだけれど、彼女へのプレゼントはまだ決めていないんだ。何をあげたらいいと思う?何か思い出に残るものって言われたんだけど・・・。」
「うーん、そうだなあ、残るものっていったら、やっぱり貴金属じゃないの?」
「貴金属?」
「うん、婚約指輪とか。」
「え、いや、それはちょっと・・・。でも、指輪はいいかもしれないね。よし、決めた!指輪を買おう!でも、僕、センスないんだよなあ、何か、いいブランドとか知らない?」
彼はちょっとあきれた顔をして笑っていた。
御手洗は今日は自室にこもったまま、ずっとパソコンにむかっているようだった。ちょっと紅茶を入れて覗いて見たら、何やら英文をつらつらと打っているようだったので、声を掛けずに紅茶だけ置いて部屋を出た。
12月22日
結局、御手洗は里美の見舞いに来ないまま、里美は退院することになってしまった。里美は最初の日に御手洗のことを口にしただけで、もう、あきらめていたようだった。
退院の荷物をまとめて、手続きの前に大器君の病室へ寄った。少し、別れの挨拶をして、病室を出ようとすると、
「先生、がんばってね!」
と、小声で声を掛けてきた。里美はちょっと怪訝な顔をしたが、
「じゃあ、また、今度はお見舞いに来ますね!」
と笑顔を見せた。
里美とイブの待ち合わせをして別れ、部屋へ戻ると、御手洗はもう眠っているらしかった。ずいぶん早く寝ているな、と気になった。そういえば、夕べは遅くまでパソコンにむかっていたようだった。
明日はクリスマスのプレゼントを買いに行こう。
12月23日
今朝、テレビを見ていたら、米倉涼子がジェム・ケリーのコマーシャルに出ていた。アレキサンドライトとかいう、指輪のコマーシャルだ。おしゃれな女優さんが宣伝しているなら、きっとおしゃれに違いない。これだ、と思い、タウンページでジェム・ケリーの店を調べると、案外近くの、相生町6丁目にあることがわかった。5丁目の中華料理店、新海王のある通りを桜木町にむかって行くと、程なく6丁目のジェム・ケリーの店がある通りに出た。なんだか、恥ずかしくて入るのをしばらくためらっていたが、思い切って店の中に入ると、里美と歳の変わらない若い女性店員が、さっそく寄ってきた。
「プレゼントですか?」
「あ、はい、クリスマスの・・・。」
「どのようなものをご希望ですか?」
「あ、あの、コマーシャルでやってる・・・。」
「ああ、アレキサンドライトですね。米倉涼子さんがやってる。」
「そう、アレキサンドライトの指輪です。」
「御相手の方は、おいくつくらいですか?」
「そうですね、ちょうど、あなたと同じくらいかな・・・。」
「そうですか、じゃあ、お若いんですね。」
彼女は、冗談ぽく笑った。
「それでしたら、赤のアレキサンドライトがいいですよ。若いうちは、赤が似合うと思います。」
「あ、じゃあ、それを下さい!!」
「サイズは何号ですか?」
「え、サイズって・・・。」
「指輪のサイズです。9号とか、10号とか・・・。」
「えーっと・・。」
「これくらいの細さですか?」
彼女は手の平を、私の顔の前に押し出した。
「そ、そうですね、それくらいだと思います。」
「指は?」
「え?指輪?」
彼女はぷっと吹き出した。
「何指ですか?薬指?」
「え、いや、婚約指輪じゃないんで、中指とか・・・。」
「そうですね〜、じゃあ、10号くらいですかね。それなら多分、中指か人差し指には合うと思います。もし、合わなかったら、調節に来て下さい。」
「は、はい。じゃあ、それでお願いします。」
なんとか、里美のプレゼントを買うことが出来た。後は、セルテでコービーのフィギュアを買おう。
2つのプレゼントをかかえて部屋に戻ると、またもや上機嫌の御手洗がいた。
「パンは電子レンジであたためて〜12秒でふっくら食べごろ〜♪」
「なんだい、また仮面ライダーの何かでも見つけたのかい?」
「仮面ライダー?はて?何のことだろう?ああ、あのカミキリムシみたいなやつのことか。ははは、すっかり忘れていたよ。」
御手洗はスキップしながら自室へ戻っていった。相変わらず、わけがわからない。
12月24日(クリスマス・イブ)
昼過ぎ、入院している大器くんの見舞いに行こうと仕度をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「はい。」と返事をして出ると、なんとノートパソコンを大事そうに抱えた、里美が立っていた。
「あれ、里美ちゃん、どうしたの?待ち合わせは夕方のはずじゃ・・・。」
「あ、違うんです、昨日、御手洗さんから電話があって、今日ノートパソコンを借りたいから、充電して持ってきてくれないかって言われて・・・。」
「やあ、里美君、助かったよ。ほら、石岡君、彼のお見舞いに行くんだろ?はやく仕度しないと置いてくぞ!」
「え、お見舞いって、君が彼のお見舞いに行くの?」
「何を言ってるんだ、石岡君、今日はクリスマス・イブだよ、忘れたのかい?」
「え、いや、それはわかってるけど・・・。」
「ほら、グズグズしない。里美君も一緒に来るかい?」
「あ、はい!行かせていただきます!!」
私は、わけがわからないまま、慌てて仕度をした。
病院に着くと、御手洗は迷いもせずに大器くんの病室へむかっていく。見ると、パソコンのCD−ROMらしきものをひらひらとさせていた。御手洗はまだ病人である里美にノートパソコンを持たせたままだったので、途中から私がノートパソコンを抱えてついてきていた。里美もわけがわからないという顔で、ひたすら僕らの後をついてきている。
「メリークリスマス!」
と大声で言いながら、大器君の病室になだれこんだ。「ここは病室だぞ!」とたしなめたが、聞きもせずに大器君のベッドへむかっていった。大器君は当然、えらく驚いた顔をしている。
「メリークリスマス、大器君。未来のある君へ、素晴らしいプレゼントを持ってきたよ!」
御手洗は私からパソコンを取り上げ、大器君のベッドに備え付けられたテーブルの上にセッティングした。そして、さっきからひらひらさせていたCD−ROMをパソコンに入れた。
「さあ、ご覧あれ!」
御手洗がパソコンをクリックすると、何やら、映像が映し出された。アフロヘアーの、黒人青年が映っている。
「あー、コービーだ!!」
大器君がびっくりして叫んだ。
「ハーイ、タイキ」
なんと、コービーが大器君の名前を呼んだ。そして、ペラペラと英語で話し始めたではないか。
「さ、里美ちゃん、なんて言ってるの?」
「しー、あのね、たぶん、はやく怪我を治して、君がアメリカに来ることを楽しみにしている、そんなようなことですよ。」
ほんの1分間程の映像だったが、大器君は英語の意味もほとんどわかっているようだった。そういえば、彼の枕元のキャビネットの上には、英語の本らしきものがある。アメリカに行くために、英語の勉強もしていたのだろう。
「これは、一体・・・。」
彼は、感激しながらも、わけがわからないらしく聞いた。
「君の事を聞いて、駄目元でドレックスラー君に連絡をとってみたんだ。そうしたら、NBA選手を見舞いにやることは出来ないが、コービーのビデオレターを撮ってきてあげることは出来るかもしれないって、返事があってね。是非、クリスマスまでに間に合うように出来ないかと言ったら、メールで映像を送ってきてくれたんだよ。それが、昨日、届いたってわけさ。」
大器君は、あまりのことに、呆然自失しているようだった。
「だから、君は、どうしても怪我を治して、アメリカに行かなければいけないよ。わざわざコービーの元へ走ってくれたドレックスラー君や、メッセージをくれたコービーに、恩を返さなければならないからね。」
「ありがとうございます・・・。こんなに嬉しいクリスマスプレゼントは初めてです・・・。」
大器君は、涙で目が潤んでいる。
「そうだ、石岡君も、彼にプレゼントがあるんじゃなかったのかい?」
「え、あ、そうだね、御手洗のプレゼントに比べたら、たいしたものじゃなくて渡しづらいんだけど・・・。」
私は、恐縮しながらも、コービーのフィギュアの包みを差し出した。彼は笑顔で包みを開けてくれた。
「あの、もしかしたら、もうそれ、持ってたりするかもしれないなあって、今、ちょっと思ったんだけど・・・。」
「いやとんでもない!これはアウェーのジャージーじゃないですか!僕、確かにホームのジャージーのフィギュアは持ってるんですけど、こっちは持っていなかったんです!これ、すごい貴重品ですよ!!わー、ありがとうございます!!」
大器君は本当に嬉しそうに目を輝かせている。良かった、本当に良かった・・・。
「じゃあ、僕はこの辺で失礼するよ。君達はこれからデートなんだろ?僕は一人寂しく飲みにでも行こうかな?ドレックスラー君に会った、キャロットにでも・・・。」
「ありがとうございました!」
御手洗は大器君に手を振りながら、さっさと病室を出て行った。残された私と里美は、顔を真っ赤にして突っ立っていた。
「先生、せっかくお友達が気を利かせてくれたんだから、がんばってね。今年が最高のクリスマスになりますように!」
大器君はいたずらっぽく笑って言った。
fin
あっ、御手洗へのプレゼントを忘れた。
まずいかなあ・・・。 by石岡
2001年12月14日(金)
雨風しのいで馬車道へ行く方法
最近めっきり寒くなってまいりましたが、みなさん風邪などひいていませんでしょうか?
ルートをご存知の方もいるかとは思いますが、最近、関内駅北口伊勢崎町側の入り口からすぐに地下道に入り、地下鉄の関内駅の前を抜け、馬車道の出口へ出る方法で通勤しています。
雨の日などは、馬車道のスタバの前の出口まで全くぬれずに行くことが出来ますし、地下街のお店が開いている時間帯などは暖房もきいていてあったかいです。
朝は朝で、鳥の鳴き声と音楽が流れています。信号も渡らなくて済みます。
その要領で、伊勢崎町にも行けます。関内駅へ帰る時は、のぼりがエスカレーターなので、さらに楽です。
夏の暑い時期、梅雨の雨の時期、そして冬の寒い時期は便利ですよ〜。
ちなみに、最近馬車道の工事はますます激化し、まっすぐ会社へ行けた試しがありません。
行きと帰りで通れる道が違う日すらあります。まさに迷路です。
今日はちょっと会社で急いで走り書きした文章を課長にみられて、言葉遣いが悪いの、このくらい漢字で書きなさいの言われて、ブルーになってしまいました。
パソコンばかり打っている私は、字(特に漢字)がかけません。一度など、自分の名前の漢字が書けなくなった時があったくらいです(本当の話)。
言葉遣いが悪いと言われると、いつも書き込みしているこれらの文章も、大丈夫なんだろうかと不安になってしまいます・・・。
ところで最近、クリスマスのイルミネーションを写真に撮ろうと思って近場をまわっていましたが、不景気のせいか、例年よりいまいちパッとしないような気がします。
横浜以外の地域の方、今年のイルミネーションはどうですか?
2001年12月6日(木)
とらふぐ
最近、馬車道に"とらふぐ亭"という、とらふぐちり鍋のお店が出来ました。
このお店の表から見える生簀の中のふぐは、何故かいつもみぃんなこっちを向いているのです・・・。
前を通るたびにみんな怖がっています。
なぜ、ふぐは外を見ているのでしょうか?誰か理由を知っている人はいますか?
2001年11月の日記
2001年11月28日(水)
カレーミュージアム
この前、やっと初めて会社帰りにカレーミュージアムへ行きました。(遅いでしょう?)
関内の駅で、100円引き券や飲み物券を配っていたのを集めて、会社の同僚達と5人で行きました。
ハーフサイズがあると聞いていたので、ハーフを食べて何件か回ろうと計画して行きました。
行ってみると、なんだかラーメン博物館のちっちゃい版のような感じで、狭いお店が点在していました。
店頭のメニューをみながらとりあえずまわってみると、案外ハーフサイズのメニューって少ない・・・。
全部のカレーにあると思ったのに〜。
おまけに「あしたばグリーンカレー」はすでに売り切れ・・・。
そんなこんなで、最初はタイカレーのお店「メーヤウ」に入りました。
ここは、デザート付きのセットだと、全メニューハーフサイズがあります。
4種類全部頼んで、味見っこしながら食べました。
私が食べた大根入りのカレーは甘くって、カレーじゃないみたいだったけれど、
他のカレーはか、辛い・・・。
でも、なかなかおいしかったです。
その後、みんながさつまいもカレーが食べたいと言ったので、名古屋の「スパイスの秘境」に入りました。
また、全種類頼んで、辛さは中辛を選びました。
食べてみると、「・・・・・。」
さつまいもカレーはゴマ風味で、ちょっと変わった味で、アリかな?って感じでしたが、
他のカレーは、どう考えても家で作った方がうまい・・・。
みんなで失敗したね〜と言いながら、1時間以上はかるーくねばって、おしゃべりしてました。
途中でお腹いっぱいだったので、残しちゃった。
ハーフサイズでも、結構ボリュームあるんだもん。
なんか、まん中の吹き抜けの天井のスクリーンに花火が映ったりしてたみたいだけれど、
あんまりよくみませんでした。なんか雷みたいな音がしてたんだけど・・。
ちょっと博物館ぽいエリアもあったけど、いかんせん狭いね。
高くても、ラーメン博物館の方がましかなあ・・・と思いつつも、次来た時は、「エチオピア」に入ってみようかなと思ったのでした。
ちなみに、今回の写真は「馬車道の電話ボックス」。
最近は、どこもめっきり公衆電話が減りましたが、私はいくつかある馬車道の電話ボックスの中で、このデザインが一番気に入っています。
このあたりはベンチが撤去されたりしていますが、この電話ボックスは残るといいなと思っています。
2001年11月23日(金)
ベイスターズ
今日は毎年やっている、ベイスターズの少年野球教室でした。
うちの両親と弟が少年野球のコーチをしている関係で、私もよく見に行っています。
残念ながら、私の磯子区には谷繁選手は来たことがありません。今年も港北区でした。
でも、何年か前、あの佐々木投手が来たことがあります。
話は変わって、水曜日、会社の同僚達と馬車道の映画館に「冷静と情熱のあいだ」を観に行ってきました。
馬車道の映画館は11/29で閉館となってしまいます。
これが最後の映画だろうな〜と思って観てきました。
椅子の硬いこの映画館ともさよならです。
最近、会社帰りに足繁く通って、「JSA」「ファイナルファンタジー」「ブリジットジョーンズの日記」「陰陽師」と観てきましたが、一番面白かったのは「陰陽師」かな・・・。
皆さんは、どんな映画がお好きですか?
ちなみに私は、「ショーシャンクの空に」と「バックドラフト」が好きです。
2001年11月18日(日)
ハワイアーン
皆さん、私のHPにたくさん遊びにきてくださってありがとうございます!
私はなまけものなので、なかなか更新しないかもしれないなあと危惧しつつも、嬉しく思っています。
本格的なHPを作るなら、他のソフトで作った方が良いのでしょうが、007さんのHPのようにかっこよく内容濃く作れる自信がないので、とりあえずしばらくは今までのようにお写真と馬車道トークができればいいかなと思っています。
ちょっと壁紙アレンジして、見やすくしたつもりです。(小説は自信がないので、わざと読みにくくしていたふしが・・・。)
今回の写真はベイサイドマリーナのハワイ料理のお店です。
私の家から自転車で15分程なので、よく買い物に行くのですが、ベイサイドマリーナのレストランはどれも値段が高そうに思えます。
でも、このお店はセルフサービスで、680円くらいで安価にもかかわらず、おいしいんですよ。
特に、さいころ型のマグロのやつ(たしかロコモコ?)がおいしいです。
サラダもおいしかったです。
今度はオムライスに挑戦してみたいなと思っています。
値段的にも内容的にも、お昼ご飯には最適と思われます。
皆さんも買い物がてら行ってみてくださいね。
ハワイ料理って日本人の口にも合うんだなーって思えるかも。
2001年11月14日(水)
本日、初めてこのホームページをアップロードしました。
写真等もたった2枚しかのせられないのですが、随時新しい写真に変えていきたいと思ってはいます。
過去の馬車道日記も9月から載せているので、みてみて下さいね!
2001年10月の日記
2001年10月12日(金)
マクドナルドの謎
馬車道にあるマクドナルドの前を通りかかると、いつもオルゴールの音がします。
初めて気づいた時は、どこから流れているのかわからず、マクドナルドから聴こえるのかなと思いつつも、
どうしてマクドナルドからオルゴールの音が聴こえるのかわからず、キョロキョロと音声源を捜していました。
そのうち、どうやらマクドナルドの前のひさしの下に埋め込まれたスピーカーから聴こえているのだとわかりました。
聴こえてくる曲はさまざまで、最近のヒット曲から昔のヒット曲、果てはどこかの国の民謡らしきものまで。
有線放送にオルゴールチャンネルがあって、それを流しているのでしょうか?
それにしても、私は他のマクドナルドでオルゴールの音を聴いたことはありません。
店の中にはそのオルゴールの音は流れていないようです。
完全に、外に向けてだけ、流されています。
このオルゴール、時々流れていない日があります。
台風の時など、3日連続聴こえなかったので、比較的天候の悪い日に流れていないようだと思いました。
しかし、別に雨の日だからって音楽を流さない理由があるのでしょうか?
ひさしの下に埋め込まれているスピーカーは、雨の被害を受けたりしそうもありません。
雨の日だからといって、馬車道を通る人の数がいつもより少ないというわけでもありません。
もしかして、マクドナルドの外で食べる人の為に流れているのかと思いましたが、
馬車道のマクドナルドの前には、ドナルドがドテーっと腰掛けている、どう見ても人間が座るには小柄な人2名分くらいのスペースしかあいていない無駄なベンチが置いてあるだけ。
これはあちこちのマクドナルドに置いてありますが、ドナルドがいなければ女子高生4人くらい座れるだろうに、
誰かドナルドの隣りに座って記念写真を撮る人でもいるのかしら?と疑問に思う代物。
ひょっとして、馬車道のマクドナルドは、ドナルドとベンチに座り、オルゴールのBGMの中で夢のような時間の過ごせる空間を演出しているつもりなのでしょうか?
そもそも、ドナルドって何者?世界中のアイドルなの?隣りに座れて、嬉しいものなの?
そんなことを考えていましたが、この間は雨でもオルゴールの音は流れ、今日は青空なのにオルゴールの音は流れていませんでした。
ということは、やはり、何かの暗号なのか・・・?
2001年10月7日(日)
THE HIRO IS
"NEVER DIE"
※この作品は作者の趣味で書いたパロディです。元の御手洗作品、仮面ライダーのファンの方、イメージが崩れる可能性は大です。でも、怒らないでね。
※現在、ワールド・ポーターズの開店時刻は10:30です。
「おーい、石岡君、早く起きたまえ!夕べ仕事は終わったんだろう?外は素晴らしくいい天気だ。散歩がてらプリンパンを買いに行くにはもってこいの日だよ!!」
友人のガシガシ私の部屋のドアを叩く音に文字通り叩き起こされながら、枕元の目覚ましを見ると、まだ朝の9時をまわったところだった。
夕べ仕事が終わったとは言っても、私が原稿を書き終えたのは夜中の3時過ぎである。それからもろもろのことを片付けて、シャワーを浴びて眠りについたのは明け方の5時過ぎくらいだった。最近、睡眠時間を削りに削って原稿を書いていたので、今日は昼過ぎまで眠る予定だったのは言うまでもない。
「なんなんだい、そのプリンパンっていうのは。僕は夕べも遅かったんだよ。もう少し寝かせておいてくれないか?」
「何を言っているんだい、石岡君。何日も外に出ないで原稿ばかり書いていて、そろそろ太陽の光を浴びないと、ミイラのように干からびてしまうぜ。昨日、ネットサーフィンをしていたら、ワールドポーターズのパン屋にプリンパンなるものが売っているらしいという書き込みを見つけたんだ。なんでも、プリンが丸ごと1個、入ったパンらしい。どういった形状で、どのような工程で作られているのか興味がないかい?そう思って、昨日夕方5時過ぎに買いに行ってみたんだが、もう影も形もなく売り切れてしまっていた。きっと、朝一で買いに行かなければ買えないんだよ。これで僕が急いでいる理由がわかったかい?ほら、僕が入れてあげた紅茶が冷めてしまうよ。はやく起きて仕度をしないか。」
サーフィンがミイラでプリンが丸ごと?なんだかわけがわからないが、せっかく友人が入れてくれた紅茶は飲まなければいけないらしい。私はのそのそとベットを抜け出し、自室のドアを開けて出た。
「そのプリンパンっていうのは一人では買いに行けないのかい?昨日も一人で買いに行ったんだろう?」
私が半ば投げやりに言うと、友人は信じられないというような表情をした。
「君はなんて冷たいことを言うんだい?僕が何日も太陽の光も浴びず、ろくに運動もしていないであろう君の体を心配して散歩に誘ってあげているのに、僕に一人でプリンパンを買いに行けっていうのかい?もういいよ、僕はプリンパンを買いに行くけれど、君の分は1個だって買ってきてはやらないからね!」
「あー、わかったよ、すぐに仕度をするからさあ、でもその前に君がせっかく入れてくれた紅茶を飲ませてくれないかい?」
私があわてて言うと、友人はころっと機嫌を直し、いそいそと台所へ紅茶のポットを取りに行った。
紅茶を飲み、急いで仕度をして友人と馬車道の通りに出ると、なるほど外はとても良い天気だった。空は抜けるように青く、海風が頬に優しく、心地よくふいてくる。最近、友人はみなとみらい方面がお気に入りのようで、しょっちゅう散歩に行っては観覧車などに乗っているらしい。妙に慣れた足取りで、うきうきと海岸方面に向かい歩いていく。
ワールドポーターズは馬車道からまっすぐ海岸方面に10分ほど歩いたところにある。世界各国の食材が売っていたり、きれいな映画館も入っていて、横浜の新たな観光スポットになっている。
ワールドポーターズの手前の信号のところにさしかかった時、右手に見える赤レンガ倉庫の方で、何かの撮影をしているらしい人々が見えた。かなりな人数なので、素人の自主制作映画の撮影などではなさそうだ。
「あれ、石岡君、何かの撮影をしているようだね。まだ開店までは30分近くある。ちょっと見に行ってみようか。」
うん?まだ10時までそんなにあったのか。ならばもう30分寝ていたかったなどと考えている暇もなく、友人は赤レンガ倉庫の方へ歩き出してしまった。まあ、友人は散歩などとは言ってもプリンパンがメインの目的、それも形状がどうこうではなく味の方が目的なのだとわかってはいたが、一応散歩という名目で出てきたのだから、ちょっとくらい寄り道してもいいだろうと思って、私はついていった。これがもし、レオナの映画の撮影か何かだったら、絶対に友人は回れ右をして逃げ帰ってくるのだろう。
赤レンガ倉庫に着くと、なにやら数台のカメラが構えている中心が撮影の対象らしかった。丸首の無地のTシャツの上に半そでのチェックの開襟シャツを羽織った、金髪の髪をつんつんに逆立てた青年が、胸の前で手をクロスさせた妙なポーズでスタンバイしている。何の撮影だろうと見渡してみると、手前の折りたたみ式のスタッフ椅子に妙な物体が2体、人間の首を出して座っているのが見えた。
「石岡君、これは何の撮影だろうね。なんだかグロテスクな着ぐるみを着た人が座っているね。おや、片方の人が持っているのは何か、見覚えのあるマスクのようだが・・・。」
着ぐるみを着た二人は、そろってこれから頭に被るのであろうマスクをひざの上に抱えていた。片方は得体の知れない幽霊、というより化け物のようなマスク、もう片方は何か見覚えのある虫の顔のようなマスクだ。
「ああ、あれはバッタの怪物に改造されそうになって危うく逃げ出して、その後変身能力を身に付けて孤独なヒーローを気取っている、仮面ライダーとかいう代物じゃないかね?もちろん、僕は子供の頃は、そんな幼稚な番組はみてはいなかったがね。今でも続いているとは驚きだね。それにしても、あの仮面ライダーはバッタというより、まるでカミキリムシだね。あの金髪の青年が仮面ライダーに変身するんだろうか?ずいぶん、日本のヒーローも変わったね。ちなみにね、石岡君、初代の仮面ライダーの藤○弘は変身後の仮面ライダーも着ぐるみを着て一人で演じていたんだ。だから途中で怪我をして、2号に不自然な形でバトンタッチすることになるんだけれどね。あの着ぐるみを着ているのは、差し詰めJACのお兄さんと言ったところか・・・。」
友人は明らかに嬉しそうに一気にしゃべりまくった。何が僕はそんな幼稚な番組はみていなかっただ、みてもいないでそんなに詳しく知っているわけがないではないか。
「ずいぶんよくご存知ですね。」
後ろから声をかけられて振り返ると、缶ジュースをたくさん詰め込んだ重そうなコンビニのビニール袋を下げた若いジーパン姿の女性が笑顔で立っていた。彼女も、撮影のスタッフの一人なのだろうか?
「お察しの通り、仮面ライダーはJACの方が着ぐるみを着て演じているんです。でも、先日事故で、いつも仮面ライダーを演じてくれていた人が怪我をしてしまい、いまだに意識不明で入院しているんです。あそこに座っている人は、同じJACの人ですけど、代わりに撮影に参加してくれているんです。だけど、やはり仮面ライダーにも人間役の役者の動きに合わせた個性みたいなのがあって、代わりの人ではなかなかその動きが再現出来ないんです。それで、撮影がけっこうおしてしまっていて・・・。
あ、ちなみに、今の仮面ライダーはバッタの改造人間ではありません。念の為。」
彼女はそう言って、軽く会釈をすると、バタバタと撮影クルーの中へ帰っていった。
「ふーん、改造人間じゃなければ、何で変身するんだろうね。あ、どうやら撮影が休憩に入るようだね。ちょっと、あの金髪の青年に、話でも聞きに行こうじゃないか。」
「おーい、そんな勝手に役者さんに話を聞こうだなんて、まずいんじゃないか?」
止める間もなく、撮影が一段落してスタッフ椅子に腰掛けている金髪の青年のところへ、友人はスタスタと近づいて行ってしまった。スタッフ達は次の撮影の準備などもあってか色々と忙しいらしく、誰も友人を止めようとしない。私も仕方なく、友人の後を追った。
友人が金髪の青年に声を掛けようとすると、青年が大きな溜め息をつきながら、頭を抱えて大きくうなだれた。すると、横に座っていた、仮面ライダーの着ぐるみを着たJACの人が、慰めるように声を掛けた。
「すみません、僕もなるべく信さんの代わりがつとまるよう、努力しているんですが・・・。大丈夫、信さんは強い人です。必ず意識を回復して、すぐに現場に復活してくれますよ。」
「そやなあ。信さん、夏の炎天下の撮影でも、あんな着ぐるみ着てよっぽど暑いだろうに、半袖着ててもフラフラになっている俺気遣って、大丈夫かって言ってくれるくらい強かったもんなあ。でも、俺、信さんが心配で心配で撮影に身が入らへんねん。
・・・それにしても、何であの日、信さんわざわざ小道具の倉庫なんかに行ったんやろ。たまたまキャビネット止めてたネジが緩んでて、たまたま重い小道具が外に出てたから倒れたんやゆうたかて、たまたま事故にあったなんて、俺、納得出来へんねん。」
どうやら、意外にも仮面ライダーの青年は関西人らしい。そういえば、精悍な顔立ちの中にも、関西人らしい愛嬌がみえないこともない。
「ほう、JACのお兄さんは、たまたま小道具の倉庫で事故に遭ったのですか?」
友人が声を掛けると、青年は別段驚く様子もなく、人懐っこい顔をこっちに向けた。
「そうなんです、聞いてくれますか?あの日、信さんは小道具の倉庫なんかへ行く予定はなかったはずなんです。」
青年は、半ば興奮して、しゃべりはじめた。私達を撮影のスタッフだと勘違いでもしているのだろうか?
「あの日は、病院内に怪人が現れる話の回の撮影で、1日中撮影所内での、室内の撮影でした。医者や看護婦のエキストラを何人か入れて、かなり夜遅くまで撮っていました。信さんは先にあがってもう着替えてはったのですが、僕をバイクで家まで送ってくれようと、僕の楽屋で長いこと待っていてくれはったんです。僕がようやく撮影を終えて、楽屋に帰って私服に着替えて衣装を衣裳部屋に返しに行こうとしたら、監督に翌日の演技のことで、ちょっと呼ばれてしまって・・・。それで信さん、衣装を代わりに返しに行ってくれるって言ったんです。」
青年はそこまで一気にしゃべると、ふっと悲しい目をしてうつむいた。
「でも、打ち合わせが終わって楽屋に帰っても、信さん戻ってきてなくて、しばらく待っていたら、小道具倉庫の方で、ガッチャーンて、何かが倒れるような音がしたんですわ。俺、なんやろ思って、小道具倉庫に行ってみたら、信さん、小道具しまってあるキャビネットの下敷きになって、倒れてはったんです。慌ててキャビネットたてなおして信さんひきずりだしたんですけど、呼んでも全然意識、戻らなくって・・・。すぐに救急車呼んで病院行ったけど、怪我はたいしたことないねんけど、打ち所悪かったんか、意識が全然もどらへんねん。」
「ほう、それでキャビネットは何故倒れたんだい?」
「その日、病院のセット撮影やったから、キャビネットの下の方にしまってあった病院の重たい器具なんかが、みんな撮影で外に出ててん。もともと、最近キャビネット壁に留めてあるネジが緩んでて、気をつけるようにみんな言われててんけど、下の方の重しがなくなってたから、よけいにキャビネットは倒れやすくなっててん。信さん、なぜか上の方の帽子なんかが入っていた引き出しあけて、その引き出しの重みでキャビネットが倒れたらしいんや。でも、その日は病院のセット内での撮影やったんやで?誰も、帽子なんかかぶっていたやつはおれへんし、何で帽子類の引き出しなんかあけたのか、わからへんねん。」
青年は、すでに涙さえ浮かべている。
そこへ、先ほどコンビニの袋を持っていた女性が、缶ジュースを持ってやってきた。
「友野さん、ジュースお茶で良かったですか?」
「ああ、さくらちゃん、ちょうどのど渇いてたところや。ありがとう。」
青年は泣き笑いの顔で、女性から缶のお茶を受け取った。
「あ、友野さん、上着の袖、ほつれてます。脱いでください、縫っておかないと、美咲さんに殺されちゃいます。」
殺される?なんでそんな物騒な言い方するんだろうと思ったが、青年もあわてて、
「わあ、やばいわ。悪いけど、はよう縫ってくれる?美咲さんにばれたら、それこそ殺されるわ!!」
と言いながら、上着を脱いだ。
「美咲さんって、誰なんですか?」
私は、初めて友野と呼ばれるこの青年に、声を掛けた。
「美咲さんは、うちの撮影所の衣装さんやねんけど、これがまた、性格悪いおばはんで、おばはんゆうても30そこそこやと思うんやけど、人をいじめるのを生きがいにしてはるような人ですねん。いっつも理由もなく怒ってはって、人が何かミスでもしようもんなら、鬼の首取ったように怒って怒鳴り散らすんですわ。こないだも、バスガイドの衣装着てはったエキストラさんが、バスガイドの衣装と一緒にバスガイドの帽子衣裳部屋に返しに行ったら、『これは衣装じゃないでしょ!小道具の倉庫に戻してくれなきゃ困るじゃないの!!』って、怒鳴り散らして、そんなん、エキストラさんが知ってはる訳ないやないですか。泣きながら小道具の倉庫どこですかって、そらもう気の毒やったわあ。」
すると、しばらく宙を見つめて考え込んでいた御手洗が、ふっと思い出したように言った。
「その日は、病院のセットでの撮影だったと言ったね。」
「はあ、そうですけど。」
「看護婦のエキストラがいたと言ったね。当然、その看護婦は、ナースキャップを被っていたんだろうね。」
「はあ、それは、看護婦ですから・・・。あっ!!」
友野さんは急に何かに気づいたように、立ち上がった。
「さくらちゃん、あの日、エキストラさんの看護婦の衣装、戻しに行ったのは誰や?」
「はあ、あたしですけど・・・。」
さくらちゃんは縫い物の手を休めて、ぽかんとした顔で言った。
「看護婦の衣装、戻しに行った時、ナースキャップも持っていかへんかったか?」
「ああ、そういえば、一式一緒に衣裳部屋に持っていって、でも美咲さんちょうどいらっしゃらなくて、そのままたたんで置いておいたと思いますけど・・・。」
「それや!信さん、あの日、俺の衣装代わりに衣裳部屋に返しに行って、看護婦の衣装と一緒にナースキャップが置いてはるのを見たんや!ナースキャップは小道具やから、小道具倉庫に戻しておかな、また誰かが美咲さんにしかられると思って、信さん、小道具倉庫に戻しに行きはったんや!!」
「ええ、じゃあ、あたしのせいで信さんは・・・。」
さくらちゃんは、ショックで縫い物を落としてしまった。みるみる涙が湧いて出て、とうとうその場に泣き崩れてしまった。
「そんな、さくらちゃん、さくらちゃんのせいやないって。信さんは優しくて、強〜い人や。さくらちゃんのことかばおう思って、してくれたんやで。大丈夫、必ず意識が戻って、すぐにまた、ライダーキックやかかとおとし、かましてくれるって。」
慰めながら、友野さんも、その大きな瞳から涙を流していた。
「友野さん、病院から今、電話がありました!」
さっきまで、携帯電話で話していたらしいスタッフの一人が、叫びながら駆け寄ってきた。
「信さん、大丈夫だって!今さっき、意識回復したって!!」
「うおー!!!」
スタッフ全員の口から、歓声があがった。
「やったー、これで、心置きなく撮影再開できるぞ!!」
「そうだ、信さんが戻ってくるまで、俺達だけで、がんばるんだ!!」
「おい、友野、撮影はじめるぞ!」
監督らしい人が、友野さんに向って叫んだ。
さくらちゃんが、縫い物を拾って、あわてて仕上げて友野さんの肩にかけた。
「おーっし、全快バリバリやでー!!」
友野さんは叫んで、スタッフ達の輪の中に走っていった。
「そうだ、石岡君、いつのまにか10時を過ぎてしまったよ!とんだ道草を食ってしまった!」
御手洗が叫んで、あわてて元来た道を戻り始めた。
「赤い赤〜い、赤い車両の京急〜♪あ、そういえば、あの仮面ライダーはなんで変身できるのか、聞くのを忘れてしまったね。」
意味不明の歌を歌いながらも、彼はなんだか楽しそうだった。
(了)
2001年10月4日(木)
会社からみえる風景・その2
私の働いている日本興亜ビルから、隣りの歴史博物館の屋上が当たり前のようにみえます。
実はこのコンクリートうちっぱなしのような屋上を、時々昼休みにただひたすらランニングして
ぐるぐる回っている人がいます。
現場を写真におさめようとしましたが、おじさんにも肖像権があると思うので、屋上の写真だけにします。
このおじさん、前は白髪のそこそこ長めの髪のおじさんだったと思うのですが、
最近見たおじさんは、坊主がちょっと伸びたくらいの短髪の黒髪の人でした。
私は2人は別人だと思うのですが、会社の人は
「そんなところをランニングしている人が、何人もいるわけないじゃない。髪を染めたんでしょ?」
と言っています。髪を染めても、あんなに短くするかな?私は同じ人とは思えないんだけどな・・・。
そもそも、どうしてそんなところをランニングしているのでしょうか?
関内近辺の通りでランニングしている人は普通にいるし、何も屋上で同じところをぐるぐる回らなくたっていいのに。
人にみられるのが恥ずかしいなら、よっぽどうちのビルからみんなに見られている方が恥ずかしいと思うのに・・・。
次回、馬車道の秘密シリーズ、『マクドナルドの謎』に続きます(続くのか?)。
Re: 会社からみえる風景・その2 (返信4) 引用
七瀬零人 10/4(木)23:21:58 No.mystery-20011004180517.4 削除
Askaさん、はじめまして。
私はミステリーについてはあまり詳しくないので、みなさんの様に目が醒めるようなお話はできません。
職業柄、SF的な考察でこの難事件(?)について考えてみました。
これは事件でも何でもない(誰も事件だなんて言っていないが)ただの撮影です。
★ストーリー★
宇宙人にさらわれた男は、まさにドックイヤーと呼ばれる早さで年老いてしまった。
その男は日夜UFOを呼ぶためにトレーニングを重ねていた。
怪奇現象研究所に勤めるその男は、研究所の屋上でUFOを呼ぶための精神修行と位置付けたトレーニングを日課にしていた。
そんなある日、定期的に行われるUFO捜査試験中、男は忽然と姿を消してしまった。
同僚が捜査願いを横浜港署に出した翌日、男の周りだけがものすごい早さで時間が過ぎたかのように、その男は年老いた姿で発見された。
【考察】
物語の始まりはちょうど秋、この頃、その男はまだ若く、短い髪は黒である。
冬、正月のUFO騒動(これは、大晦日に山下公園の夜空に飛ぶ、「HAPPY NEW YEAR」という電光掲示板が付いた飛行船をUFOと間違えてしまうという話)
春、ミステリーサークル騒動(これは港のみえる丘公園で花見をしていた暴走族がいたずらで花壇を円く掘り返したという話)
そして夏、男は宇宙人にさらわれて、突然年老いた白い長髪になるわけである。
撮影方法の一つとして、物語の時系列どおりではなく、終りのシーンを最初に撮ってしまう方法がある。
ラストシーンで主人公が極端な長髪に変わるような、、例えば未来像を描いて物語は終了するのであれば、その段階を最初に撮ってしまうというのである。
Askaさんが最初に見た白髪は物語の最後、宇宙人にさらわれて年老いた姿になってしまったのにもかかわらず、研究所の屋上でトレーニングしている撮影風景だったのです。
そして、最近見かける短髪は物語の序盤の撮影でしょうね。髪をバサッと切って白く染めた髪の色を落としたのです。
そうそう、なぜ屋上なのか?という点。
研究所の屋上でUFOを捜査するという理由付けの他に、もう一つ重要な事があります。
変わる可能性のある風景を避けたかったからです。
屋上なんかではなく、普通に街中をランニングさせてもいいのでは?と思うでしょうが、それだと万が一映像に入った風景の中で建設などが始まるとまずいわけです。
おわかりですね。例えば春に駅前にビル建設が着工されたとなるとまずいわけです。
最初に撮ってしまった夏のラストシーンにはビルが無くなってしまいますからね。
だから、あまり町並みは見えないようにして、屋上の固定的なバックでランニングさせたのでしょうね。
次はマクドナルドの謎でお会いしましょう!
では。
注意)すべてフィクションです。
2001年10月の日記
2001年10月12日(金)
マクドナルドの謎
馬車道にあるマクドナルドの前を通りかかると、いつもオルゴールの音がします。
初めて気づいた時は、どこから流れているのかわからず、マクドナルドから聴こえるのかなと思いつつも、
どうしてマクドナルドからオルゴールの音が聴こえるのかわからず、キョロキョロと音声源を捜していました。
そのうち、どうやらマクドナルドの前のひさしの下に埋め込まれたスピーカーから聴こえているのだとわかりました。
聴こえてくる曲はさまざまで、最近のヒット曲から昔のヒット曲、果てはどこかの国の民謡らしきものまで。
有線放送にオルゴールチャンネルがあって、それを流しているのでしょうか?
それにしても、私は他のマクドナルドでオルゴールの音を聴いたことはありません。
店の中にはそのオルゴールの音は流れていないようです。
完全に、外に向けてだけ、流されています。
このオルゴール、時々流れていない日があります。
台風の時など、3日連続聴こえなかったので、比較的天候の悪い日に流れていないようだと思いました。
しかし、別に雨の日だからって音楽を流さない理由があるのでしょうか?
ひさしの下に埋め込まれているスピーカーは、雨の被害を受けたりしそうもありません。
雨の日だからといって、馬車道を通る人の数がいつもより少ないというわけでもありません。
もしかして、マクドナルドの外で食べる人の為に流れているのかと思いましたが、
馬車道のマクドナルドの前には、ドナルドがドテーっと腰掛けている、どう見ても人間が座るには小柄な人2名分くらいのスペースしかあいていない無駄なベンチが置いてあるだけ。
これはあちこちのマクドナルドに置いてありますが、ドナルドがいなければ女子高生4人くらい座れるだろうに、
誰かドナルドの隣りに座って記念写真を撮る人でもいるのかしら?と疑問に思う代物。
ひょっとして、馬車道のマクドナルドは、ドナルドとベンチに座り、オルゴールのBGMの中で夢のような時間の過ごせる空間を演出しているつもりなのでしょうか?
そもそも、ドナルドって何者?世界中のアイドルなの?隣りに座れて、嬉しいものなの?
そんなことを考えていましたが、この間は雨でもオルゴールの音は流れ、今日は青空なのにオルゴールの音は流れていませんでした。
ということは、やはり、何かの暗号なのか・・・?
2001年10月7日(日)
THE HIRO IS
"NEVER DIE"
※この作品は作者の趣味で書いたパロディです。元の御手洗作品、仮面ライダーのファンの方、イメージが崩れる可能性は大です。でも、怒らないでね。
※現在、ワールド・ポーターズの開店時刻は10:30です。
「おーい、石岡君、早く起きたまえ!夕べ仕事は終わったんだろう?外は素晴らしくいい天気だ。散歩がてらプリンパンを買いに行くにはもってこいの日だよ!!」
友人のガシガシ私の部屋のドアを叩く音に文字通り叩き起こされながら、枕元の目覚ましを見ると、まだ朝の9時をまわったところだった。
夕べ仕事が終わったとは言っても、私が原稿を書き終えたのは夜中の3時過ぎである。それからもろもろのことを片付けて、シャワーを浴びて眠りについたのは明け方の5時過ぎくらいだった。最近、睡眠時間を削りに削って原稿を書いていたので、今日は昼過ぎまで眠る予定だったのは言うまでもない。
「なんなんだい、そのプリンパンっていうのは。僕は夕べも遅かったんだよ。もう少し寝かせておいてくれないか?」
「何を言っているんだい、石岡君。何日も外に出ないで原稿ばかり書いていて、そろそろ太陽の光を浴びないと、ミイラのように干からびてしまうぜ。昨日、ネットサーフィンをしていたら、ワールドポーターズのパン屋にプリンパンなるものが売っているらしいという書き込みを見つけたんだ。なんでも、プリンが丸ごと1個、入ったパンらしい。どういった形状で、どのような工程で作られているのか興味がないかい?そう思って、昨日夕方5時過ぎに買いに行ってみたんだが、もう影も形もなく売り切れてしまっていた。きっと、朝一で買いに行かなければ買えないんだよ。これで僕が急いでいる理由がわかったかい?ほら、僕が入れてあげた紅茶が冷めてしまうよ。はやく起きて仕度をしないか。」
サーフィンがミイラでプリンが丸ごと?なんだかわけがわからないが、せっかく友人が入れてくれた紅茶は飲まなければいけないらしい。私はのそのそとベットを抜け出し、自室のドアを開けて出た。
「そのプリンパンっていうのは一人では買いに行けないのかい?昨日も一人で買いに行ったんだろう?」
私が半ば投げやりに言うと、友人は信じられないというような表情をした。
「君はなんて冷たいことを言うんだい?僕が何日も太陽の光も浴びず、ろくに運動もしていないであろう君の体を心配して散歩に誘ってあげているのに、僕に一人でプリンパンを買いに行けっていうのかい?もういいよ、僕はプリンパンを買いに行くけれど、君の分は1個だって買ってきてはやらないからね!」
「あー、わかったよ、すぐに仕度をするからさあ、でもその前に君がせっかく入れてくれた紅茶を飲ませてくれないかい?」
私があわてて言うと、友人はころっと機嫌を直し、いそいそと台所へ紅茶のポットを取りに行った。
紅茶を飲み、急いで仕度をして友人と馬車道の通りに出ると、なるほど外はとても良い天気だった。空は抜けるように青く、海風が頬に優しく、心地よくふいてくる。最近、友人はみなとみらい方面がお気に入りのようで、しょっちゅう散歩に行っては観覧車などに乗っているらしい。妙に慣れた足取りで、うきうきと海岸方面に向かい歩いていく。
ワールドポーターズは馬車道からまっすぐ海岸方面に10分ほど歩いたところにある。世界各国の食材が売っていたり、きれいな映画館も入っていて、横浜の新たな観光スポットになっている。
ワールドポーターズの手前の信号のところにさしかかった時、右手に見える赤レンガ倉庫の方で、何かの撮影をしているらしい人々が見えた。かなりな人数なので、素人の自主制作映画の撮影などではなさそうだ。
「あれ、石岡君、何かの撮影をしているようだね。まだ開店までは30分近くある。ちょっと見に行ってみようか。」
うん?まだ10時までそんなにあったのか。ならばもう30分寝ていたかったなどと考えている暇もなく、友人は赤レンガ倉庫の方へ歩き出してしまった。まあ、友人は散歩などとは言ってもプリンパンがメインの目的、それも形状がどうこうではなく味の方が目的なのだとわかってはいたが、一応散歩という名目で出てきたのだから、ちょっとくらい寄り道してもいいだろうと思って、私はついていった。これがもし、レオナの映画の撮影か何かだったら、絶対に友人は回れ右をして逃げ帰ってくるのだろう。
赤レンガ倉庫に着くと、なにやら数台のカメラが構えている中心が撮影の対象らしかった。丸首の無地のTシャツの上に半そでのチェックの開襟シャツを羽織った、金髪の髪をつんつんに逆立てた青年が、胸の前で手をクロスさせた妙なポーズでスタンバイしている。何の撮影だろうと見渡してみると、手前の折りたたみ式のスタッフ椅子に妙な物体が2体、人間の首を出して座っているのが見えた。
「石岡君、これは何の撮影だろうね。なんだかグロテスクな着ぐるみを着た人が座っているね。おや、片方の人が持っているのは何か、見覚えのあるマスクのようだが・・・。」
着ぐるみを着た二人は、そろってこれから頭に被るのであろうマスクをひざの上に抱えていた。片方は得体の知れない幽霊、というより化け物のようなマスク、もう片方は何か見覚えのある虫の顔のようなマスクだ。
「ああ、あれはバッタの怪物に改造されそうになって危うく逃げ出して、その後変身能力を身に付けて孤独なヒーローを気取っている、仮面ライダーとかいう代物じゃないかね?もちろん、僕は子供の頃は、そんな幼稚な番組はみてはいなかったがね。今でも続いているとは驚きだね。それにしても、あの仮面ライダーはバッタというより、まるでカミキリムシだね。あの金髪の青年が仮面ライダーに変身するんだろうか?ずいぶん、日本のヒーローも変わったね。ちなみにね、石岡君、初代の仮面ライダーの藤○弘は変身後の仮面ライダーも着ぐるみを着て一人で演じていたんだ。だから途中で怪我をして、2号に不自然な形でバトンタッチすることになるんだけれどね。あの着ぐるみを着ているのは、差し詰めJACのお兄さんと言ったところか・・・。」
友人は明らかに嬉しそうに一気にしゃべりまくった。何が僕はそんな幼稚な番組はみていなかっただ、みてもいないでそんなに詳しく知っているわけがないではないか。
「ずいぶんよくご存知ですね。」
後ろから声をかけられて振り返ると、缶ジュースをたくさん詰め込んだ重そうなコンビニのビニール袋を下げた若いジーパン姿の女性が笑顔で立っていた。彼女も、撮影のスタッフの一人なのだろうか?
「お察しの通り、仮面ライダーはJACの方が着ぐるみを着て演じているんです。でも、先日事故で、いつも仮面ライダーを演じてくれていた人が怪我をしてしまい、いまだに意識不明で入院しているんです。あそこに座っている人は、同じJACの人ですけど、代わりに撮影に参加してくれているんです。だけど、やはり仮面ライダーにも人間役の役者の動きに合わせた個性みたいなのがあって、代わりの人ではなかなかその動きが再現出来ないんです。それで、撮影がけっこうおしてしまっていて・・・。
あ、ちなみに、今の仮面ライダーはバッタの改造人間ではありません。念の為。」
彼女はそう言って、軽く会釈をすると、バタバタと撮影クルーの中へ帰っていった。
「ふーん、改造人間じゃなければ、何で変身するんだろうね。あ、どうやら撮影が休憩に入るようだね。ちょっと、あの金髪の青年に、話でも聞きに行こうじゃないか。」
「おーい、そんな勝手に役者さんに話を聞こうだなんて、まずいんじゃないか?」
止める間もなく、撮影が一段落してスタッフ椅子に腰掛けている金髪の青年のところへ、友人はスタスタと近づいて行ってしまった。スタッフ達は次の撮影の準備などもあってか色々と忙しいらしく、誰も友人を止めようとしない。私も仕方なく、友人の後を追った。
友人が金髪の青年に声を掛けようとすると、青年が大きな溜め息をつきながら、頭を抱えて大きくうなだれた。すると、横に座っていた、仮面ライダーの着ぐるみを着たJACの人が、慰めるように声を掛けた。
「すみません、僕もなるべく信さんの代わりがつとまるよう、努力しているんですが・・・。大丈夫、信さんは強い人です。必ず意識を回復して、すぐに現場に復活してくれますよ。」
「そやなあ。信さん、夏の炎天下の撮影でも、あんな着ぐるみ着てよっぽど暑いだろうに、半袖着ててもフラフラになっている俺気遣って、大丈夫かって言ってくれるくらい強かったもんなあ。でも、俺、信さんが心配で心配で撮影に身が入らへんねん。
・・・それにしても、何であの日、信さんわざわざ小道具の倉庫なんかに行ったんやろ。たまたまキャビネット止めてたネジが緩んでて、たまたま重い小道具が外に出てたから倒れたんやゆうたかて、たまたま事故にあったなんて、俺、納得出来へんねん。」
どうやら、意外にも仮面ライダーの青年は関西人らしい。そういえば、精悍な顔立ちの中にも、関西人らしい愛嬌がみえないこともない。
「ほう、JACのお兄さんは、たまたま小道具の倉庫で事故に遭ったのですか?」
友人が声を掛けると、青年は別段驚く様子もなく、人懐っこい顔をこっちに向けた。
「そうなんです、聞いてくれますか?あの日、信さんは小道具の倉庫なんかへ行く予定はなかったはずなんです。」
青年は、半ば興奮して、しゃべりはじめた。私達を撮影のスタッフだと勘違いでもしているのだろうか?
「あの日は、病院内に怪人が現れる話の回の撮影で、1日中撮影所内での、室内の撮影でした。医者や看護婦のエキストラを何人か入れて、かなり夜遅くまで撮っていました。信さんは先にあがってもう着替えてはったのですが、僕をバイクで家まで送ってくれようと、僕の楽屋で長いこと待っていてくれはったんです。僕がようやく撮影を終えて、楽屋に帰って私服に着替えて衣装を衣裳部屋に返しに行こうとしたら、監督に翌日の演技のことで、ちょっと呼ばれてしまって・・・。それで信さん、衣装を代わりに返しに行ってくれるって言ったんです。」
青年はそこまで一気にしゃべると、ふっと悲しい目をしてうつむいた。
「でも、打ち合わせが終わって楽屋に帰っても、信さん戻ってきてなくて、しばらく待っていたら、小道具倉庫の方で、ガッチャーンて、何かが倒れるような音がしたんですわ。俺、なんやろ思って、小道具倉庫に行ってみたら、信さん、小道具しまってあるキャビネットの下敷きになって、倒れてはったんです。慌ててキャビネットたてなおして信さんひきずりだしたんですけど、呼んでも全然意識、戻らなくって・・・。すぐに救急車呼んで病院行ったけど、怪我はたいしたことないねんけど、打ち所悪かったんか、意識が全然もどらへんねん。」
「ほう、それでキャビネットは何故倒れたんだい?」
「その日、病院のセット撮影やったから、キャビネットの下の方にしまってあった病院の重たい器具なんかが、みんな撮影で外に出ててん。もともと、最近キャビネット壁に留めてあるネジが緩んでて、気をつけるようにみんな言われててんけど、下の方の重しがなくなってたから、よけいにキャビネットは倒れやすくなっててん。信さん、なぜか上の方の帽子なんかが入っていた引き出しあけて、その引き出しの重みでキャビネットが倒れたらしいんや。でも、その日は病院のセット内での撮影やったんやで?誰も、帽子なんかかぶっていたやつはおれへんし、何で帽子類の引き出しなんかあけたのか、わからへんねん。」
青年は、すでに涙さえ浮かべている。
そこへ、先ほどコンビニの袋を持っていた女性が、缶ジュースを持ってやってきた。
「友野さん、ジュースお茶で良かったですか?」
「ああ、さくらちゃん、ちょうどのど渇いてたところや。ありがとう。」
青年は泣き笑いの顔で、女性から缶のお茶を受け取った。
「あ、友野さん、上着の袖、ほつれてます。脱いでください、縫っておかないと、美咲さんに殺されちゃいます。」
殺される?なんでそんな物騒な言い方するんだろうと思ったが、青年もあわてて、
「わあ、やばいわ。悪いけど、はよう縫ってくれる?美咲さんにばれたら、それこそ殺されるわ!!」
と言いながら、上着を脱いだ。
「美咲さんって、誰なんですか?」
私は、初めて友野と呼ばれるこの青年に、声を掛けた。
「美咲さんは、うちの撮影所の衣装さんやねんけど、これがまた、性格悪いおばはんで、おばはんゆうても30そこそこやと思うんやけど、人をいじめるのを生きがいにしてはるような人ですねん。いっつも理由もなく怒ってはって、人が何かミスでもしようもんなら、鬼の首取ったように怒って怒鳴り散らすんですわ。こないだも、バスガイドの衣装着てはったエキストラさんが、バスガイドの衣装と一緒にバスガイドの帽子衣裳部屋に返しに行ったら、『これは衣装じゃないでしょ!小道具の倉庫に戻してくれなきゃ困るじゃないの!!』って、怒鳴り散らして、そんなん、エキストラさんが知ってはる訳ないやないですか。泣きながら小道具の倉庫どこですかって、そらもう気の毒やったわあ。」
すると、しばらく宙を見つめて考え込んでいた御手洗が、ふっと思い出したように言った。
「その日は、病院のセットでの撮影だったと言ったね。」
「はあ、そうですけど。」
「看護婦のエキストラがいたと言ったね。当然、その看護婦は、ナースキャップを被っていたんだろうね。」
「はあ、それは、看護婦ですから・・・。あっ!!」
友野さんは急に何かに気づいたように、立ち上がった。
「さくらちゃん、あの日、エキストラさんの看護婦の衣装、戻しに行ったのは誰や?」
「はあ、あたしですけど・・・。」
さくらちゃんは縫い物の手を休めて、ぽかんとした顔で言った。
「看護婦の衣装、戻しに行った時、ナースキャップも持っていかへんかったか?」
「ああ、そういえば、一式一緒に衣裳部屋に持っていって、でも美咲さんちょうどいらっしゃらなくて、そのままたたんで置いておいたと思いますけど・・・。」
「それや!信さん、あの日、俺の衣装代わりに衣裳部屋に返しに行って、看護婦の衣装と一緒にナースキャップが置いてはるのを見たんや!ナースキャップは小道具やから、小道具倉庫に戻しておかな、また誰かが美咲さんにしかられると思って、信さん、小道具倉庫に戻しに行きはったんや!!」
「ええ、じゃあ、あたしのせいで信さんは・・・。」
さくらちゃんは、ショックで縫い物を落としてしまった。みるみる涙が湧いて出て、とうとうその場に泣き崩れてしまった。
「そんな、さくらちゃん、さくらちゃんのせいやないって。信さんは優しくて、強〜い人や。さくらちゃんのことかばおう思って、してくれたんやで。大丈夫、必ず意識が戻って、すぐにまた、ライダーキックやかかとおとし、かましてくれるって。」
慰めながら、友野さんも、その大きな瞳から涙を流していた。
「友野さん、病院から今、電話がありました!」
さっきまで、携帯電話で話していたらしいスタッフの一人が、叫びながら駆け寄ってきた。
「信さん、大丈夫だって!今さっき、意識回復したって!!」
「うおー!!!」
スタッフ全員の口から、歓声があがった。
「やったー、これで、心置きなく撮影再開できるぞ!!」
「そうだ、信さんが戻ってくるまで、俺達だけで、がんばるんだ!!」
「おい、友野、撮影はじめるぞ!」
監督らしい人が、友野さんに向って叫んだ。
さくらちゃんが、縫い物を拾って、あわてて仕上げて友野さんの肩にかけた。
「おーっし、全快バリバリやでー!!」
友野さんは叫んで、スタッフ達の輪の中に走っていった。
「そうだ、石岡君、いつのまにか10時を過ぎてしまったよ!とんだ道草を食ってしまった!」
御手洗が叫んで、あわてて元来た道を戻り始めた。
「赤い赤〜い、赤い車両の京急〜♪あ、そういえば、あの仮面ライダーはなんで変身できるのか、聞くのを忘れてしまったね。」
意味不明の歌を歌いながらも、彼はなんだか楽しそうだった。
(了)
2001年10月4日(木)
会社からみえる風景・その2
私の働いている日本興亜ビルから、隣りの歴史博物館の屋上が当たり前のようにみえます。
実はこのコンクリートうちっぱなしのような屋上を、時々昼休みにただひたすらランニングして
ぐるぐる回っている人がいます。
現場を写真におさめようとしましたが、おじさんにも肖像権があると思うので、屋上の写真だけにします。
このおじさん、前は白髪のそこそこ長めの髪のおじさんだったと思うのですが、
最近見たおじさんは、坊主がちょっと伸びたくらいの短髪の黒髪の人でした。
私は2人は別人だと思うのですが、会社の人は
「そんなところをランニングしている人が、何人もいるわけないじゃない。髪を染めたんでしょ?」
と言っています。髪を染めても、あんなに短くするかな?私は同じ人とは思えないんだけどな・・・。
そもそも、どうしてそんなところをランニングしているのでしょうか?
関内近辺の通りでランニングしている人は普通にいるし、何も屋上で同じところをぐるぐる回らなくたっていいのに。
人にみられるのが恥ずかしいなら、よっぽどうちのビルからみんなに見られている方が恥ずかしいと思うのに・・・。
次回、馬車道の秘密シリーズ、『マクドナルドの謎』に続きます(続くのか?)。
Re: 会社からみえる風景・その2 (返信4) 引用
七瀬零人 10/4(木)23:21:58 No.mystery-20011004180517.4 削除
Askaさん、はじめまして。
私はミステリーについてはあまり詳しくないので、みなさんの様に目が醒めるようなお話はできません。
職業柄、SF的な考察でこの難事件(?)について考えてみました。
これは事件でも何でもない(誰も事件だなんて言っていないが)ただの撮影です。
★ストーリー★
宇宙人にさらわれた男は、まさにドックイヤーと呼ばれる早さで年老いてしまった。
その男は日夜UFOを呼ぶためにトレーニングを重ねていた。
怪奇現象研究所に勤めるその男は、研究所の屋上でUFOを呼ぶための精神修行と位置付けたトレーニングを日課にしていた。
そんなある日、定期的に行われるUFO捜査試験中、男は忽然と姿を消してしまった。
同僚が捜査願いを横浜港署に出した翌日、男の周りだけがものすごい早さで時間が過ぎたかのように、その男は年老いた姿で発見された。
【考察】
物語の始まりはちょうど秋、この頃、その男はまだ若く、短い髪は黒である。
冬、正月のUFO騒動(これは、大晦日に山下公園の夜空に飛ぶ、「HAPPY NEW YEAR」という電光掲示板が付いた飛行船をUFOと間違えてしまうという話)
春、ミステリーサークル騒動(これは港のみえる丘公園で花見をしていた暴走族がいたずらで花壇を円く掘り返したという話)
そして夏、男は宇宙人にさらわれて、突然年老いた白い長髪になるわけである。
撮影方法の一つとして、物語の時系列どおりではなく、終りのシーンを最初に撮ってしまう方法がある。
ラストシーンで主人公が極端な長髪に変わるような、、例えば未来像を描いて物語は終了するのであれば、その段階を最初に撮ってしまうというのである。
Askaさんが最初に見た白髪は物語の最後、宇宙人にさらわれて年老いた姿になってしまったのにもかかわらず、研究所の屋上でトレーニングしている撮影風景だったのです。
そして、最近見かける短髪は物語の序盤の撮影でしょうね。髪をバサッと切って白く染めた髪の色を落としたのです。
そうそう、なぜ屋上なのか?という点。
研究所の屋上でUFOを捜査するという理由付けの他に、もう一つ重要な事があります。
変わる可能性のある風景を避けたかったからです。
屋上なんかではなく、普通に街中をランニングさせてもいいのでは?と思うでしょうが、それだと万が一映像に入った風景の中で建設などが始まるとまずいわけです。
おわかりですね。例えば春に駅前にビル建設が着工されたとなるとまずいわけです。
最初に撮ってしまった夏のラストシーンにはビルが無くなってしまいますからね。
だから、あまり町並みは見えないようにして、屋上の固定的なバックでランニングさせたのでしょうね。
次はマクドナルドの謎でお会いしましょう!
では。
注意)すべてフィクションです。
2001年9月の日記
2001年9月20日(木)
観覧車
今日、地元の本屋の店頭に昨日まで山積みにされていたパロサイ・ホテルが無くなっていて、必死で捜したら店の奥の方に積まれていました。
前に積み直したかったけど、さすがにそれは出来なかった・・・。
横浜ではどれくらい売れているのでしょうか?
私の会社の窓からみなとみらいの観覧車が見えるのですが、横からなのでわかりにくいのですが、毎日回っている時と回っていない時があります。
つまり、客がいない時は回っていないということだと思うのですが、ということは、入った人数と出て行く人数を数えていたりするのでしょうか?
パロサイ・ホテルの中にも、観覧車の話がありましたよね。
ちょっと前、突然横浜の空が昼間なのに夜のように真っ暗になった時がありました。
本当に突然でした。
いつも夜なら当然観覧車やその周辺のビルは灯りがともってきれいなのですが、その日は真っ暗でした。
雷の中、当然観覧車も止まっていたと思うのですが、いつ、どのタイミングで止めたのでしょうか?
そんなことありえないとは思うけれど、閉じ込められたらこわい・・・。
観覧車が新しくなってから乗っていないので、いまいちその辺の状況がわからないんですよね。
毎日、見ているのにね。
2001年9月16日(日)
皆さんにとっては今さらの質問かもしれないのですが、
島田作品に精通していらっしゃる皆さんはどの作品が一番お好きなのでしょうか?
ちなみに私は『眩暈』です。
理由はだいぶ前に読んだのであんまり覚えていませんが、あのひらがなの大きな字が妙に印象に残っているからです。
何年か経ってトリックを忘れる頃、全作品読み返してみようと思っています。
でもそれだと、御手洗通とは言えないかしら。パロサイ・ホテルの始めの方のクイズ、全然解けなかったもん。
(そういえばマイカル、どうなっちゃうんでしょう・・・。)
2001年9月13日(木)
馬車道の映画館
今日、1日中会社の窓からランドマークタワーを見ていて、
ニューヨークのことを思い、戦々恐々としていました。
By the way,
馬車道の映画館が封鎖されることになりました。
私もあれだけワールド・ポーターズの映画館を褒め称えた手前、言えた義理ではないのですが、
やはり子供の頃から慣れ親しんだ映画館が無くなるというのは、一抹の寂しさがあります。
20階建てくらいのホテルが建つといううわさですが、馬車道の景観も大きく変わってしまうのでしょうか?
御手洗さんが見て、びっくりしなけりゃいいけど・・・。
2001年9月9日(日)
横浜でお得に映画を観る方法
パロサイ・ホテルの中で、石岡くんが銀座で映画を観損ねたくだりがありますが、横浜で話題の新作映画をお得に観る方法をお教えします。
馬車道にも映画館はありますが、今回それは忘れてください。
最近、ワーナー・マイカルの映画館が増えていますが、横浜ではマイカル本牧、港北ニュータウン、そしてみなとみらいのワールド・ポーターズにあります。
ワールド・ポーターズは桜木町駅から歩いて10分程度ですが、我等が馬車道からも、実は歩いてちょうど10分のところにあります。
馬車道を海に向ってずーっと行き、途中歩道橋を必ず渡ってなおもまっすぐに行けば、ワールド・ポーターズの端っこに着きます。
人通りが少ない分、人込みがちょっと苦手という人には、関内駅から馬車道経由コース15分、というのはお勧めです。
この映画館、余程空いている映画以外は全部指定席です。話題の新作にいたっては、2つから3つの劇場でやっていたりします。(それでも、休日などは窓口からぎゅうぎゅうに並んでいることもあります)
1つ1つの劇場は小さめですが、チケットを切ってからエスカレーターで2階あがったところに大きな劇場もあります。大きなスクリーンで観たい時は、窓口のお姉さんにお聞きすると良いでしょう。
この指定席、実は前日から買うことが出来ます。前日に買えば、ほぼど真ん中の席を取ることができます。
私のように会社から歩いて10分なら前の日会社帰りに行ってチケットを取るのはたいした手間ではないのですが、わざわざ電車賃と時間をかけて取りに行くのは大変だと思う方でも、
新作映画が新しくてきれいで椅子の良い映画館の、ど真ん中の席で待ち時間なしに観られるのなら、前日チケットを取りに行くのがどれだけお得かおわかりいただけると思います。(結局前売り買う手間とかわりません)
加えて、毎月1日の映画の日、女性なら毎週水曜日のレディースデイを狙うと、なんと前日でも千円でチケットを買うことが出来ます!
もちろん、行ったついでにワールド・ポーターズやクイーンズスクエアでお買い物したり、ジェットコースターや観覧車に乗るのも良いでしょう。
(1つ注意すべきなのは、時々火曜日にワールド・ポーターズがやっていないことがあります。でも、映画館はやっているので、お休みでもめげずに中央のエレベーターで5階に上がりましょう!)
御手洗ファンのあなたなら、馬車道探索も当然アリです。
2日間かけても遊び放題です。
車で行っても駐車場は、映画館利用者なら3時間まで無料!平日は1日いても千円です。
特に水曜日はワールド・ポーターズはレディスデイのサービスをしているお店もたくさん!!(といっても、消費税分の割引や1杯のワイン、ピングーのノートをくれる程度のサービスですが)
私はこの方法で、『A○』や『千と千○の○隠し』をど真ん中で観ることが出来ました。(もちろん千円で)
他にもグルメ情報などお届けしたいのは山々ですが、観光ガイドのようになってきたので今回はこの辺で。(長くなってすみません)