EPISODE FINAL
〜TRUE CHARACTER OF Green Lad〜
翌朝・龍の家
「兄さん…」
「おっ、来たか。」
約束通り、龍の所にやってきた晃。
「…一人で来たのか??」
「うん…だめかな??」
「…」
晃の考えている事はすぐに理解出来た。
まあ、晃らしいと言えばそれまでなのだが。
「お前がいない事に気付けば、ほっといても探しに来るだろうよ、あいつらなら。」
「…それもそうか。」
「まあ、人が少ない方が忍び込むにゃぁ、いいんじゃねえかな。」
「…うん。」
ほっとした様子の晃。
龍は恵を呼びに行き、準備を整える。
「待たせたな…行くか。」
「うん。」
晃・龍・恵の3人で、神谷の本拠地へと向かうのであった。
「ん…朝…か。」
窓から差し込む朝日を浴び、ベッドから起きあがる霞。
一応周りを見渡すが、香織の姿はない。
いつもの通り、晃の部屋で寝たのだろう。
「いつも一緒にいるわりには…進展無いよなぁ…」
余計なお世話を一人でぶつぶつ言いながら、顔を洗いに洗面所へ向かう。
「ん…?? ドアが開いてる…???」
晃の部屋のドアが開いている。
いつも寝る時はきちんと閉めているだけに、霞の目には珍しい光景に映った。
「晃〜…?? あれ??」
部屋の中には、晃の姿はない。
晃のベッドで香織、床の上で勇矢が寝ていた。
「晃のヤツ…こんな早くからどこ行ったんだ??」
「ん…??」
霞の独り言に、香織が眼を覚ます。
「あれ?? 霞さん…?? おはようございますぅ…」
まだ眠たそうに眼をこすりながら、霞に朝のご挨拶をする。
「香織ちゃん、晃はどうしたんだい??」
「え?? 晃くんなら…あれ??」
晃がいない事に気付いた香織。
何を思ったのか、窓の外やら押入の中、挙げ句の果てにベッドの下まで確認している。
「いないみたいです…ねぇ…」
「まあ、そんなところに隠れはしないだろうさ。」
「あう〜…」
香織はまだ寝ぼけている様子だ。
その騒ぎに勇矢まで眼を覚ます。
「どうしたの?? ばたばたしちゃって…」
「勇くん、晃知らない??」
「兄ちゃん??」
ベッドの方を向いて、晃がいない事に気付く。
「さあ…出かけたんじゃないの??」
「こんな早くに?? 一体どこへ…」
「…昨日お兄さんが来てたんだよね??」
「兄さん?? ああ、そういえば…」
勇矢の鋭い発言に、昨日龍と晃が話をしていた事を思い出す。
「兄さんの所へ…?? 何しに行ったんだろう…」
「行ってみれば良いんじゃない??」
「…そうだね、そうするか。」
廊下に出る霞。
「あ、ボクも行きたいな。」
「ああ、顔洗って準備しておきなよ。」
「はーい。」
勇矢も洗面台に向かう。
「んー…あきらくーん、おーい、どこだ〜…」
香織は未だ夢の中で晃を捜していた…
「ここが神谷の屋敷…だよな。」
「ええ、そうよ。」
神谷の屋敷と思われる建物の前にたどり着く3人。
「あれだけの魔物の死骸も転がっているし、間違いないでしょうね。」
「…」
「どうした?? 晃。」
妙にキョロキョロとしている晃。
「いや…妙だなと思って。」
「妙…??」
「確かにここは神谷の屋敷だと思う。」
そう言って、門をくぐる晃。
それに続く2人。
「でも…人の気配も、魔物の気配も微塵に感じられない…」
「と、言う事は…??」
「本拠地は…別のどこかにあるんじゃないかな??」
「本拠地が…別の場所??」
晃の発言に足が止まる2人。
晃は少しずつ足を進める。
しばらく進むと、晃の足が止まる。
「どうした、晃??」
「これ…結界だ…」
「結界?? 私には何も見えないけど…??」
「俺にも見えないな。」
晃が手を伸ばすと、掌の中心から波紋状に波が広がっていく。
しかし、その光景を見れたのは晃だけらしく、2人には見えなかった。
「外に魔物を出さない為の結界…だね。」
「ってことは…」
「この結界が、魔物の気配を閉じこめているんだ。
中に入れば、気配を感じ取る事も出来る…けど…」
「けど??」
晃が手を引く。
その瞬間、晃の手があった場所が青く光り、またすぐに消えた。
「今のは…??」
「これはきっと、蒼の結界…」
「蒼の結界??」
「兄さん、この先に進んでみて??」
「この先に??」
晃に言われたとおり、先に進もうとするが…
「のわっ!!」
何か壁にぶつかったかのように、はじき飛ばされた。
「龍!! 大丈夫??」
「ああ…なんなんだ一体…」
「こういうことさ。」
そう言って、晃は平然と先へ進んでみせる。
「はじき…飛ばされない??」
「この結界は、青族しか通れないようになっているんだよ。」
「なっ!?」
「どうしてそんな結界が…??」
驚く2人。
晃は、何か的を得たように2人言った。
「この結界を作ったのが、青族の人間だからさ。」
「!!?」
その一言に2人は言葉を失う。
「思った通り、中に入ったら、魔物の気配も感じられるようになったよ。」
「やはり、その中に全ての謎がありそうだな。」
「晃くん、いったん引き返しましょう。
結界で魔物が封じられているなら、色々と手の打ちようが…」
「残念だけど、それは無理かな。」
「え??」
そう言うと、晃は結界の中から手を伸ばす。
晃の手が結界に触れた途端、火花が散り咲く。
「中に入ったが最後、術者が解かない限り、この結界の外には出られないんだ。」
「晃…お前まさか…」
「兄さん…みんなを頼むね…」
晃はそう言って、城の中へ駆け込んでいった。
「晃君!!!」
「晃!!! チョット待て!!! 晃ぁ!!!!!」
「いない…兄さん達、一体どこへ行ったんだろう??」
「もし晃くんが、龍さん達と一緒に行く場所があるとしたら…」
「…」
3人が思い詰めて考えていると…
「神谷!?」
3人同時に、声を揃えて言う。
「そうか…もし昨日兄さんが来ていた理由がそれだったとしたら…」
「晃くんが、私達に何も言わずに出て行ったのもうなずけますね…」
「兄ちゃん…」
3人がしばらく沈黙した後、玄関の方で音がした。
「…兄さん??」
「…お前達…か…」
龍と恵が戻ってくる。
「兄さん!! 晃は…??」
「…」
霞のその問いに、龍は答えない。
「…なんで答えてくれないの?? ねえ、恵??」
「…」
恵も言葉を飲み込んでいる。
「…そんな…まさか…」
「晃くん…」
そんな2人の報告を聞いて、香織がぺたりと膝をつく。
「早まるな、香織。
別に誰も死んだとは言ってないだろう。」
「じゃあ、一体…」
「一人で…神谷の城へ潜って行ったわ…」
「一人で…?? どうして!!」
そんな2人に怒鳴りつける霞。
「仕方ないだろう、晃しか行けない場所へ、さっさと行ってしまったんだから。」
「晃しか行けない…場所??」
龍は、霞達に「蒼の結界」の事を話す。
その結界は、青の一族しか通れない事を話すと…
「私と勇矢なら通れるって事ですね??」
立ち上がり行こうとすると、
「駄目だ。」
「どうしてですか!?」
珍しく香織が大声で叫ぶ。
「…あいつ、『みんなを頼む』とか言いやがった。
お前等を巻き添えにしたくないって事だろう。」
「そんなの…やです!!」
「晃なりの考えがあるんだ、あの顔は…何かを確信している眼だった。」
「何かを…確信している??」
龍は一息吐くと、ソファーに腰掛ける。
それを見て、恵は台所へ向かった。
「中に入ると、魔物の気配が結構な数で感じ取れたようだ。
あいつが言った訳ではないが、あの顔は、魔物以外の気配も感じ取っていた顔だな。」
「魔物以外って…誰か人がいるって事??」
「さぞかし、あの結界を貼った張本人だろうな。」
「でも、青の結界を貼るって事は、青の人間って事だよね…??」
「!?」
勇矢のその一言に、霞と香織が止まる。
「ああ、晃もそう言っていたよ。」
「そんな…7人目の青族がいるって事ですか??」
「さあ、な…晃を信じて待つしかあるまい。」
「そんな…」
香織が黙り込んでしまう。
「はい、暖かい紅茶を入れてきたわ。」
「ああ、すまんな。」
「ほら、霞達も座りなさいよ…私達も今後の対策ってものを考えないとさ。」
「…そうね…」
そう言って、霞もソファーに座る。
香織は立ったままだ。
「しかしまあ、あれだけでかい結界を張れるって事は、
それだけ大きな力を持っているという事だろうな。」
「修羅…かしら??」
霞が紅茶をすすりながらそう言うと…
「残念ながら、そいつは的はずれだな。」
通路の方から、声が聞こえた。
全員が顔を向けると…
「修羅!? それに…」
「珠緒さんも…」
修羅と朱緒が立っていた。
「キミが噂の『修羅』か…確かに強い力を持っているようだな。」
「さすがは、神堂家の長男様だ…誉め言葉有り難く頂いておくよ。」
龍と修羅が初対面の挨拶を交わす。
「でも…修羅達じゃないって事は…一体誰が…」
「そいつは俺が聞きたいねぇ…晃には思い当たる節があるようだがな…」
「晃はその『青の人間』を知っているって事…??」
「そうとしか思えねえな…」
晃だけが知っている青の人間…それは一体…??
城の中。
晃はひたすら魔物を蹴散らしながら進んでいた。
「チッ!! …出所なだけあって、流石に数が多いな…」
迷路のような屋敷を、ひたすら駆け続ける。
「くっ!!後ろ!!?」
敵に攻撃を仕掛けたが、攻撃を交わされ、背後に回られる。
すぐに振り向き攻撃をしようとするが…
「くっ!! 間に合わ…うわっ!!!」
攻撃は間に合わず、敵の攻撃を受ける。
なんとか受け身だけは間に合ったが…
「くっ…この前の魔物とは訳が違うか…楽には行けそうにないな…」
手間取っているウチに、次々と現れる魔物達。
「囲まれたか…チッ!! 仕方ない…」
晃は膝をついた姿勢のまま、掌を地に付ける。
眼をつぶり、気を整えると…
(………今だ!!)
その瞬間、晃の掌から赤い光が放たれる。
「炎撃…爆龍波!!!」
晃を中心に、弧を描くように無数の火の刃が飛び散っていく。
その刃に次々と魔物達は切り刻まれていった。
しばらく立つとそれも収まり、静けさが訪れる。
「ふう…取り敢えずは、回避出来たな…休むか…」
座りこむ晃。
しかし、これだけの魔物の量を、結界一つで封じているのには驚いた。
中には結構強い魔物もいる…それをたった一人で封じてきたのか…あの人は。
自分の未熟さを、改めて教えられているような気がするな…
これも…試練なのかい??
「…今の気配…近いな…」
何かの気配を感じ取る。
立ち上がり、その方向へ向かった。
「…扉?? 今までにない…大きいな…」
晃の身長の4倍はあるであろう、大きな扉を見つける。
その扉の取っ手に両手を伸ばすと…
「!!? …この奥…この奥に…いる!!」
先程の気配がこの扉の中にいる事を確信する。
しかし、何故か体が動かない…
(開けないと…この扉を開けないと行けないのに…手が…動いてくれない…
怖いのか?? 僕は…恐れているのか…?? この中に入る事を…)
動かない自分の体にただただ問いかける。
両手にはびっしりと汗をかいているのを感じていた。
(動け…動け!!……動けぇぇぇ!!!!!)
力一杯心の中で叫ぶ。
すると、晃の意志とは関係なく、ずっしりと重い扉が開きだした。
「わ、わ、わわわぁ!!!」
慌てて手を離すと、その勢いで前に倒れ込んでしまった。
「いててて…ここは…!?」
そこには、大きな黒い渦がどよめいていた…
その前には一人の男が倒れていた…
「これが…魔界の門…それにあれは…」
倒れている男に駆け寄るが…
「うわっ!!!」
眼に見えない力ではじき飛ばされた。
「…結界!??」
その瞬間、部屋中に重い声が響き渡る…
「ЙМАЗОПОКЙТАЛОКА…АОЛОКОДОМОЧО…」
「この音は…??」
裾を払いながら立ち上がる。
辺りをキョロキョロと見渡すが、何も見当たらない。
「СЦДЁПЙМОПИАИЙПАКАПЁТА…」
「何の音…いや、声か?? 何を言ってるのかさっぱりわからないな…」
と、その時…
「いまごろきたのか、あおのこどもよ、すでにもんはひらかれた…って言ってたよ。」
その声に振り返ると…
「ゆ…勇矢…??」
そこには、勇矢が。
勇矢だけではなく、香織、蕾、修羅、朱緒。
青の仲間が全員揃っていた。
「みんな…来ちゃったのか…」
「来ちゃったじゃねーよ…まったく、無茶しやがって…」
修羅が晃の元へ歩み寄る。
続いて、他の4人も晃の方へ歩き出した。
「出来れば…一人で方付けたかったんだけど…流石にキツイみたいだ。」
「ここまで一人で来れただけ上出来だよ…俺たちの仕事減らしてくれたからな。」
「改めて貴方の強さに驚かせて貰ったわよ、アキラ。」
修羅と朱緒に誉められる晃。
しかし晃は喜ばない。
「あの結界をどうにかしないと…」
「私に任せて。」
「…朱緒??」
朱緒が倒れている男に歩み寄る。
「朱緒はな、結界破りなんだよ。」
「結界破り?? パーソナルスキル??」
「ああそうだ、『ブレイク』って言ってな、どんな結界も破壊してしまう。
ものによっては多少の時間が掛かるが、何でも消すぞ、ヤツは。」
ケタケタ笑っている修羅。
「スキルと言えば…勇矢、さっきあの『音』を言葉で訳してたけど…??」
「うん、僕には言葉に聞こえたよ。」
「勇矢のスキルは『ヒアリング』。
人間の耳には聞き取れない言葉を、人間の言葉として聞き取れる力だ。
ただ、その気になって聞いていないといけないがな。」
「そうだったのか…」
勇矢のスキルがやっとわかった晃。
「蕾の残留思念は、パーソナルスキルだったんだね??」
「…残留思念??」
「残留思念ってのはな、物に植え付けられた記憶みたいな物だ。
それを読み取る事が出来る力さ。」
「へー、じゃあこれで全員のスキルが判明したんだね…」
「そう言う事になるな。」
エンカウント・ヒーリング・ヒアリング・メモリー・スキャニング・ブレイク。
これで6つのパーソナルスキルが判明した。
「これは…ちょっと無理ね…」
「何??」
結界に手を出していた朱緒が匙を投げた。
「これ、ただの結界じゃないわ。」
「結界じゃない??」
「何か強い力で…結界のようにおいてあるだけみたい…」
朱緒がそう言った時、先程のように声のような音が響き渡った。
「…勇矢??」
「うん…」
その『音』を聞き分ける勇矢。
「なにをしても…むだだ…あおのものたちよ…すでにとびらはひらかれた…
ばんにんがいないかぎり…われがおそれる…ものはない…」
「…番人??」
「あの…倒れている人の事??」
結界の中に倒れている男が番人なのか…??
「何の番人だと言うんだ??」
「多分…魔界の門を守る番人だったんじゃないかな??」
「門を守る番人??」
晃の一言に、香織が首をかしげる。
「ああ、多分神谷の計画に気付き、門を守る為にここに来たんだ。」
「守りきれずにやられた…というわけか。」
「うん…そんなところだろうね…ん!?」
結界が赤い光を放ちながら、消えていった。
「結界が…消えた??」
「…さあばんにんよ…みずからのてで…あおのちをたやすのだ…!?」
「なに!?」
勇矢がそう告げると、番人は静かに立ち上がった。
皆が戦闘態勢にはいるが…
「…晃!?」
「みんな…手を出さないで…僕に…任せて…」
晃は手を伸ばし、5人を遮る。
「晃?? お前何を言って…」
「ごめん…これは…」
そう言ってしばらく黙り込むと…
「これは僕の問題だから…」
「晃くんの…問題??」
「僕がやらなきゃいけない事なんだ…」
そう言って晃が前に出る。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
番人と晃は、向かい合ったままぴくりとも動かず、ただ見合っていた。
「・・・・!?」
晃は一瞬何かに驚いたような顔をし、一瞬振り返るとすぐ正面に向き直った。
「晃くん…??」
(まただ…晃の心が読めねぇ…一体何を??)
晃はすぅっと手を挙げ、番人に手を向ける。
しばらくの沈黙の後、晃の指から閃光閃が放たれた。
「なっ!!?」
その閃光は番人の胸を貫いた。
番人がその場に倒れると…
「なに?? あれ…黒い陰が…」
番人の体から、黒い煙のような物が出てきた。
その煙が出終わると…
(よし!!)
晃は瞬間移動し、番人の体を抱え、元の場所に戻ってきた。
「香織ちゃん!! 回復を!!!」
「え、あ、うん。」
番人の体を香織に預けると、晃は、黒い陰の固まりに眼を向ける。
「…こいつが元凶だな…」
「おのれ…はかったな…あおのにんげん…」
陰の言葉を勇矢が訳す。
「しからば…おまえのからだを…くらってくれる…!!?」
「勇矢、離れてろ!!!」
「うん!!!」
その直後、黒い陰が晃に向かって来る。
「…斬!!!」
閃光斬で斬りかかる。
が…
「むだだ! いくらきりきざんでも…われにはきかない!!」
「ちっ!!!」
閃光弾を放つが、それも貫通してしまう。
「チッ…どうしたら…」
その時…
「今のお前ではそいつを倒せんよ。」
「!?」
香織に回復された番人が、晃にそう言った。
「確かにお前は万能の力…無属性の力を持っているが、それだけではヤツは倒せんのだ。」
「何故…??」
「お前の体には…本当は必要のない物が入っているからさ。」
「え…??」
そう言って番人は…
「晃…今からお前の『力』を、解放させてやる。」
「一体何を…!!? ガッ………」
「あ、晃くん!!!!」
番人は、晃の『左胸』に手刀を突き刺した。
そして、その手を引き抜くと、手の中には一握りの黒い球が…
「香織!! 晃の回復だ!!!」
「え…」
その状況に驚き戸惑っている香織。
「何をしている!!! 晃を死なせたいのか!!?」
「え、あ、はい!!!」
ふと我に返り、すぐさま晃に駆け寄る。
「晃くん…晃くん……死んじゃやだよ………」
眼を瞑り、涙を流しながらも最大級の気力球を当てる。
「さて、ケリを付けるか…」
番人は、晃から取りだした球を、握りつぶした…
「魔界の住民よ…あるべき場所へ帰れ。」
番人が何やら呟くと、その目前に☆型の魔法陣のような物が浮かび上がる。
「…制!!」
その魔法陣の中央に手を置くと、白い光が魔界の門へ向けて放たれる。
「ЗЦБББББББББ!!!!」
叫び声とも聞こえる音と共に、魔界の門が縮んでいく…
しかし消える事はなかった…
「消えない…!!?」
「…消す事は出来ない。」
「…何故??」
番人が振り返ると、
「それはお前達の仕事だからだ。」
「え…私達の??」
「…晃はどうだ??」
「それが…」
賢明に気力球で回復を試みている物の、
晃の意識が一向に回復しない。
「そうか…少し早かったかな…」
「おい、一体何をしたんだ?? 晃の体から抜き取ったあの球は一体…」
「…あの球は魔の結晶体だ。」
「…魔の結晶体!? 何故晃の体にそんな物が…??」
「それは…追々話す事になるだろう…それよりも晃を回復してやらねばな…」
番人が晃に歩み寄る。
手をかざすと…
「凄い…みるみる塞がっていく…」
番人の気力球によって、晃の左胸に空いた傷口が塞がっていく。
「私の気力球が意味無かったくらい凄い…」
「馬鹿を言うな…お前の気力球を与えていたから回復出来たのだ。」
「え…どうして??」
その一言が理解出来なかった香織。
周りの者達も同様に理解は出来なかった。
「ヒーラーの特殊な気力球というのは、直接的な回復をするのではなく、
回復する為の『素』を活発にさせる為の物なのだ。
つまり、自然的な治癒能力を高めるという事だな。
普段の鍛え方次第で自然治癒能力は高められる。
だから私はお前の気力球ですぐ回復出来たのだよ。」
「へぇ…そんな仕組み、知らなかった…」
自分の力の真相を教えられた香織。
自分の両手を見て、驚いている。
「治癒能力が高まっている状態で、気力球を与えれば、かなりの回復力に変化する。」
「それにしたって、あれだけ一瞬で回復出来るなんて…凄いです。」
「まあ…ん、気が付いたな…」
晃が眼を覚ます。
「ん…香織…ちゃん??」
「よかった…晃くん…」
体を起こす晃。
「晃、時間がない。
いま一時だけ封じてあるだけだからな…とどめはお前の仕事だ。」
「…うん、やってみるよ…」
立ち上がり、門へ向かう。
「修羅、五旁星の基礎は知ってるな??」
「…ああ。」
「じゃあ、あとは任せる…」
そう言って番人は腰を下ろした。
その間にも晃は、先程の番人のように呪文のような物を唱えていた。
「五旁星…か。」
「修羅、五旁星って??」
「いいか、今晃が準備している5旁星は、
術者が1ヶ所1ヶ所にそれぞれの属性を打ち込んでいく。
術者が打ち込んだ場所に、それと同じ属性の閃光を、サポートする俺たちは、
その術が終わるまで、当て続けなければいけない。
いわば持久戦になる。」
「つまり、アキラが型を作り、その作った型に私達が気を流し込むって事ね。」
「まあ、そんなところだ。
五旁星は順番に、闇・雷・風・火・水の順に作られる。
意外と感覚が長いからな…温存しながら当て続けるんだ。
気が当たっていれば、その量には関係しないはずだからな。」
香織・勇矢・蕾の3人が、手に汗を握っていた。
「さあ、そろそろ始まるぞ…準備はいいか??」
「ええ」
「よし!!」
5人が晃の後ろに並び立つ。
晃が手をかざす。
晴天の空より、現れし闇…
晃の上方に黒い星が浮かび上がる。
その星に、修羅が気を流し込んだ。
闇を切り裂く、電光石火…
晃の左足元に黄色い星が浮かび上がる。
その星に、朱緒が気を流し込む。
雷雲を吹き飛ばす、風の陣…
晃の右肩の辺りに緑色の星が浮かび上がる。
その星に、蕾が気を当てる。
風の精を焼き払う、業火の炎…
晃の左肩に赤い星が浮かび上がる…
その星に、勇矢が気を流す。
炎を沈めし、零下の吹雪…
晃の右足元に青い星が浮かび上がる…
その星に、香織が気を流し込んだ。
すると、それぞれの星が輝きだし、星と星が光で結ばれていく…
全てが結ばされると、円が描かれ始め、五旁星の魔法陣が完成した…
晃はゆっくりと五旁星の中心に手を置き、手に光を集め始める…
そして…
全てを照らし出す、一条の光よ、今ここに!!!
晃の手からまばゆい光が放たれる!!!
封魔!!六星陣!!!
大きな白い星が魔界の門へと放たれる。
魔界の門は白い光に包まれ、まばゆい光を放った!!
「うわぁ!!!!」
その光と共に起きた突風が、6人を吹き飛ばした。
「くっ…どうなったんだ!?」
光と風がやむと、そこには…
「消えた…門が消えた…!?」
「やったな…お前達…」
黒く渦巻いていた魔界の門は、跡形もなく消え去っていた…
しかし…
「ぐっ…はぁ!!」
番人が血を吐き出し、倒れ込んだ。
「だ、大丈夫ですか!?」
香織が駆け寄ろうとするが…
「近寄るな!!! 巻き添えを食らいたくなければな…」
「え…??」
「一度でも『魔』を体内にとどめた『人間』は、魔が消える時、魔と共に消え逝くのだ。」
「そ、そんな!!! じゃあ、魔の結晶体を持っていた晃くんも…??」
晃が近寄る。
「晃…やってくれたな…」
「うん…」
「もう気付いているかもしれんが…お前は…」
「『人間』ではない…って言いたいんでしょ??。」
「え!!?」
「なっ!!」
一同が驚く。
「ああ…よくわかったな…」
「心臓が無いのに動けてるからね…察しは付くよ。」
「お前は、神に直接引き渡された子なのだ…いわば『神の子』…
魔が生まれし時、魔を封印する為に作られた子なのだ。」
「晃くんが…人間じゃない…??」
香織は驚きを隠せない。
香織だけではない。
その場にいた全員が言葉を失っていた。
「魔の結晶体は、心臓の代わりとして埋め込まれた、擬似的な物。
戮陰も、結晶体から生まれし物だ。
だが心配するな…魔は結晶体と共に封印された。
もう、戮陰に脅える必要もない。
次に魔が生まれし時は、また新たな子が生まれる。
おまえはこの先、普通の『人』として生きてゆけ…
これが…お前に残せる…最後の言葉だ…」
「…うん…」
晃は男の手を取り、うっすらと涙を浮かべる…
「晃…神からお前を授かった事…私は誇りにするよ…」
男の手が、晃の手から落ちた…
「と…父さぁぁぁぁぁぁん!!!!」
晃はそう叫んで、涙を流した…
そしてその時、龍達もその場に現れた。
「みんな!!! 大丈夫か??」
「晃!! 大丈…!!!?」
晃が膝をつき、男の前で泣いているのを見て霞は…
「洸…父さん!??」
「この人は…晃くんのお父さんだったんですね…」
「ああ…」
しばらくそんな晃を見守っていた一同だが…
「!?…これは…地震???」
「いかん!! 崩れるぞ!!!」
突序、地震と思われる大きな揺れが起き始めた。
老朽化している城の内部は、徐々に崩れ始めていった…
「みんな脱出するぞ!!」
皆が順に部屋を出て行くが…
「晃くん??」
晃は座りこんだまま動かない…
「晃!! 何をして…」
龍の声を霞が遮る。
「兄さん、先に行ってて…晃は私が連れて帰るわ。」
「…わかった…必ず戻ってこいよ!!」
「ええ、わかってるわ。」
そう言って龍は走って行った。
「…晃…」
晃の肩に手を置く…
晃は霞の胸に蹲り、未だ泣きじゃくっていた…
晃…
私もね…父さんが死んじゃった時、涙が止まらなかった…
あんなに厳しくて、優しかったお父さんがいなくなってしまった悲しさ…わかるよ。
普段泣いた事がなかった私が、
あの時だけはずっと泣いてたんだよね…
だからさ、晃も今だけは思いっきり泣きな…
いくらでも私の胸の中で泣きな…
私はいつだって、晃のそばにいる。
ずっと、どんなときだってそばにいる。
たとえ血は繋がっていなくても、
貴方は私にとって、
掛け替えのない、大切な弟なんだから…
いつまでも、いつまでも、私達は『姉弟』だからね…
Epilogue