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〜THE DOOR TO THE DEVILISH WORLD〜



「遅いわねぇ…相変わらず。」


居間のソファーで寝転がりながら本を読んでいる霞。
晃達が勇矢を捜しに出て2時間近く経過している…。


「またなんかトラブッてんのかなぁ…??」

「大丈夫でしょ?? 晃のことだから、色々と付き合いも多いだろうし。」

「付き合いか…修羅にでも会ったかな??」


流石にカンが鋭い霞。
ブツブツと呟きながら起きあがり、居間を出ていこうとすると…


≪ガチャ≫


玄関の扉が開く。
香織と勇矢が中に入ってきた。


「随分と遅かったねぇ??」

「あ、すいません…ちょっと色々と…」


霞は、勇矢の服の汚れ具合を見て…


「喧嘩でもしてたのかい?? 勇くんは。」

「あ…いや…あの……」


言葉にならず、声を詰まらせていた。


「ああごめん、別に怒ってるわけじゃないんだ。」


返答に困ってる勇矢に詫びる霞。
ふと…


「ん?? 晃は…??」


晃がいないことに気付く。


「あれ??」


晃がいないことを知り、香織達もキョロキョロする。
外に出ると、やはり晃の姿はない。


「…はぐれたのかなあ?? さっきまで側にいたはずだけど…」


そう言って、香織は庭の方に足を運ぶ。
霞達も後を追って庭に向かった。


男が宮殿内を走り回っている。 今まで従っていた本当の当主を捜す為に。 しかし何故、いや、いつからすり替わっていたのだろうか…?? 気配や、声色が変わった事にも気が付かなかったのか?? どうにも不思議な話だ…信じられない。 しかし今この現状で、これだけの魔物の死骸が転がっているとなると、 この仕業も今まで従ってきた当主だろう。 これだけの魔物を相手に一人で闘っているというのか…?? 一体何者なんだ… しばらく走り続けていた道が途切れる。 目の前には大きな扉… そしてその中には… 「…魔界の門…か。」 扉を開けようと手を伸ばしたその時… ≪ドォーン…≫ 扉の中から、重低音が鳴り響く。 爆発音…?? いる…この中にヤツがいる… おそるおそる扉を開ける。 その中には無数の死骸と、一人の男が佇んでいた。 男は部屋の中央で佇み、"魔界の門"の方向に手を向けていた。 男は手を下ろし一息つくと、ゆっくりと振り返った。 「鴉丸…か。」 何気ない、ごく普通のほほえましい顔で、鴉丸を見る男。 「あんた…一体何者だ?? 何故神谷の…いや、何故鉱を殺して成り代わった??」 ごく自然に、言いたい事が言えた… 我ながら動揺はしていないみたいだな… この男の正体だけははっきりさせておかなければ… 「その風貌から察するに、神谷の人間ではない事は確かだ。 神一族の人間とも思えん、話して貰うぞ、あんたは何者だ??」 鴉丸の問いかけに、男は… 「神谷は…昔からこうだった。」 「…なに??」 男は振り返り、歩み始めると、魔界の門の近くで足を止めた。 さっきまで紅い光を放っていた魔界の門が蒼い光に変わっている… 「平和な日々に耐えきれず、必ず何かよからぬ事を考え、混乱を招こうとする。 神谷の紅い力によって門は開かれ、青薙の蒼い力で門は閉ざされる…」 「青薙…あんたは青族なのか??」 「番人とでも言っておこうか…」 「番人…?? 魔界の門の番人だというのか??」 男に歩み寄る鴉丸。 しかし… 「うわっ!!」 何か見えない力で体をはじき返された。 「今ここには、結界を敷いてある。 青の力を持たない者は門には近づけんよ。」 「そうなのか…なら何故最初からそうしなかった??」 「…開きかけた扉を完全に封印する為には、青族の力が必要だ。 私一人の力でも制御は出来るが、あくまでも制御するだけ… 完全に封印する為には、それなりの力を持った青族が必要なのだ。」 「青族の力が必要?? この時代に一体どれだけの青族がいるって言うんだ?? 過去に全て絶滅したという話しか、俺は聞いた事がないぞ!?」 「じゃあ何故、神谷は他の神族を襲ったと思う??」 「それは…」 確かにそうだ… 別に門を開くだけなら、神条や神堂を襲う必要はないはずだ。 だまって魔物を呼び寄せてから、一気に片を付ければいい話… じゃあ何故… 「神谷は青族の存在に気付いてしまったのだ、神族に青族が混同していることを。」 「そんな!? 我々の中に青族が混じっていたというのか??」 「そうだ。 外見上わからないように細工を施していたようだが、落ち度があったようでな。」 「細工??」 「青族は元々神族の一つ。神族の名の通り、髪と眼は青いのだ。 だがそれを3神族の色にする事で、青族だという外見上での判断を出来ないようにしたのだ。」 そんな事があり得るのか?? じゃあ、いままで接してきたヤツの中に、青族がいたかもしれないのか… 「落ち度とは…??」 「青族としての能力が減少してしまった。 無理な細工を施したが故に、完全にその一族に近づける事は出来なかったのだ。」 「…まさか…」 「そう、片眼がその一つだ。」 やはり…じゃあ、”あいつ”が青族の一人だったと言う事か… 「青族としての力が減少していることで、すぐには封印の人材には出来ない… その為にも、力の増幅をさせる為の時間が、どちらにしろ必要だったと言う事か…」 「そうだ。 闘いの中で、力を見出してくれた方が、手っ取り早い。 その為にも、少しだけ神谷を利用させて貰ったのだ。」 「…なるほどな…」 そう言う事か… 利用されていた事はしゃくに障るが、 結局の所、鉱のせいでこうなった事には違いない… 魔界の門が開こうが閉ざされようが、俺は興味ない話だが、 開いてしまえばそれなりに面倒な事になるだろう… 鴉丸は振り返り、部屋を出て行こうとするが… 「あんたに任せるしかないようだ、ま、何か手伝えるようなら言ってくれ。 乗りかかった船だ…無視は出来ない。」 「そうか…必要ならばその時は力を借りよう。」 「…ああ。」 鴉丸は出て行った…。
「全くもう…どこ行っちゃったんだろう…」 裏庭を探し続ける香織達。 流石に住み慣れたとはいえ、こういう時ばかりはこの家の広さに後悔したりもする。 「…あれは…??」 ふと立ち止まる香織。 「どうした?? 香織ちゃん??」 「何かあったの?? 姉ちゃん…」 香織が壁際に身を潜めこっそりのぞき込んでいる。 二人もつられてそ〜っとのぞき込むと… 《あれって…龍さんじゃないですか??》 (兄さん?? ああ、本当だ…) 《誰かとしゃべってるみたいだけど…??》 声を縮め、更にのぞき込むと… 《晃くん…??》 (だね…何か深刻な雰囲気だな…) 晃が壁にもたれかかりながら、龍と話しているようだ…
「兄さんがこっちに来るなんて、珍しいね。」 「ちょっとな、恵の伝言もあったから寄っただけだったんだがな。」 「恵さんの…伝言??」 「ああ…」 樹によりかかっていた龍が晃の方へ少し歩み寄った。 「神谷の動向が止まった…らしい。」 「止まった…?? どういう意味??」 「…正確には止められた…みたいだがな。 神谷の内部で、何かが起きているのは確かなようだ。」 ふぅ〜っと一息つく龍。 晃もその伝言に驚きを隠せないようで、何もしゃべれないでいた。 「よくよく考えてみれば、例の魔物騒ぎも、結局はあの1件だけだったしな… 納得出来ない訳ではないんだが…妙に気になってな…」 「うん…確かに気になるね…行って確かめるしかないかな…」 「…お前の口からその言葉が出るとは思っても見なかったな。 明日、一緒に行くか??」 「うん、行く。 明日でいいんだね??」 壁から離れて裾を払う晃。 「お前が戦場に立ってくれるとは、嬉しい限りだな。」 「…兄さんのお陰だよ??」 「はあ?? 俺の??」 素っ頓狂な声を出す龍。 何行ってるんだお前?? みたいな顔を見て、クスッと晃は笑う。 「自分らしい力の使い方を見つけろって。 あの言葉を聞いてから、何かこう…吹っ切れた感じがしてさ。」 「ああ、言ったっけかな…そんな事。」 ポリポリと頬を掻く龍。 「なんか、自分が変わったかな…って感じがしてさ。」 「変わった?? 誰が??」 「ん?? いや、僕が。」 自分を指さして言う晃。 龍はその仕草を見てクスクス笑い出した。 「な…何で笑うの??」 「いやいや、そうか、変わったか。」 まだ小笑いが止まらない龍。 そんな龍を見て"???"な状態の晃だが… 「なあ、晃。」 「な、何??」 「お前、本当に自分が変わったと思うか??」 「え?? う、うん。変わってない訳ないと思うんだけど…」 龍の問いにドギマギな返答をする晃。 「じゃあ、一つ。」 そう言って龍は、指を"ピストル"の形にして晃に向ける。 「…………。」 「…………。」 しばらくの沈黙のあと、龍の指から閃光閃が放たれる。 その閃光は晃の頬をかすめる位置だったのだが… 「…っつぅ…」 晃はとっさに左手で、その閃光を受け止めた… 「…これが答えさ。」 「…え??」 龍が珍しく微笑ましい顔で言った。 「お前に当たらない位置に撃った…でもお前は、敢えてそれを受け止めた…何故だ??」 「それは…」 「流れ弾を恐れたんだろう??」 「!!?」 龍のその一言に驚きを隠せない晃。 そう、晃の後ろには先程からこっそり覗き見している香織達が居るのだ。 「いくらずっと見ていたとはいえ、とっさに閃光が飛んで来れば、危ないかもしれない。 それをわかっていたお前は、敢えて自分の手を犠牲に受け止めた…って訳だ。」 「でもそれが一体…」 「だから、これがおまえが変わってないっていう証拠さ。 今までも、今でも、お前は"優しい人間"だって事には変わりないんだよ。」 「あ…」 龍に図星を突かれて固まってしまう晃。 「いくら強くなろうと、闘う意志を持とうと、"神堂 晃"というお前自身は、優しい人間のままだ。 何も変わっていない…そうだろ??」 「うん…そうだね…」 うつむく晃の目から、少しだけ涙がこぼれる。 「さて、長く引き留めてしまったな…明日、こっちに来い。 お前達が来てから出向くとしよう。」 「うん、わかった。」 そう言って龍は去っていった…
静かだ。 いや、静かすぎる… 先程の爆発音も気になる…とにかく何か手がかりを見つけたいところだが… 探せど探せど、あたりは静寂と魔物の死骸… この状況の手がかりになりそうな物は、何一つ見つからない。 鴉丸も気になるな…無事だといいんだが… そう思った矢先。 「…竜之介…か。」 「鴉丸…無事だったか。」 「ああ…」 妙に覇気がない…何かあったのか…?? 「俺等には…どうする事も出来ないみたいだな。」 言うが早いか、鴉丸の方から話し始めた。 「…会ったのか?? 城主に。」 「ああ…自分では"魔界の門の番人"だと言っていたがな。 「番人…?? なるほどな。 番人ともなれば、鉱の行動を阻止するしかない…」 「そう言う事みたいだな。 開いた扉は、青族の人間にしか封印は出来ないそうだ。」 「…なるほど…奴らに頼るしかないのか。」 晃達の事を思い浮かべる。 結局自分は…何も出来ないのか… 「青族の人間を知ってるのか…??」 「ああ、俺の記憶の限りでは、6人いる。」 「…そんなにいるのか??」 「ああ、俺も最初は驚いたがな。」 驚きを隠せない鴉丸。 その存在に、早く気付いておきたかった… いや、気付いていたとしても、自分にはどうする事も出来なかっただろう。 結局は…利用されていただけ… 「悔しいものだな…」 「…ん??」 「自分の力を利用されていただけってのは…悔しいよな。」 「………。」 その鴉丸の表情に、竜之介は何も言えないでいた。 結局自分も何も出来ない事には変わりないが、今まで尽くしてきた彼にとっては、 非常に衝撃的な事実だったのだろう… 「俺は…元々神谷の人間ではない…所詮はただ引きずり込まれただけの操り人形か…」 「だが、神族な事には変わりないだろう??」 「!!?? お前…」 「俺が一般人と仲良く話してる事を見た事あるか…??」 ふっ、と鼻で笑う龍。 「同じ神族の人間だからこそ、お前と話す気になれた…同じ神谷を嫌う人間としてな…そうだろう?? 鴉…」 「…まさか知っていたとはな…だが、もう神族の肩書きなんて物は、それこそ昔に捨てている。」 大きく溜め息を吐く鴉丸。 「奴らもそろそろここにやってくる時期だろう。 …お前の妹も来る事になるんじゃないのか??」 「…そうかもな…その時はその時だ。」 二人は共に歩き出した…
「大丈夫?? 左手…」 「ああ、大したことないよ。」 閃光を受け止めた晃の左手に、治療をしている香織。 勇矢は余程疲れたのか、晃のベッドで熟睡している。 「それにしても、わざわざ受け止めなくてもさぁ…」 「まあ、一応ね…万が一って事もあるしさ。」 「でも、そこまで気を遣わなくても…」 「そりゃあ、香織ちゃんがいなかったら受け止めなかったけどね。」 クスッと笑う香織。 晃の左手から手を離す。 「ありがとね、香織ちゃん。」 「ううん、私の為に傷つけちゃったんだからさ、私が治してあげないと♪」 「それこそ気を遣わなくてもいいのに。」 立ち上がる晃。 「晃くん??」 「ちょっと、お風呂入ってくる。 香織ちゃん先に休んでて。」 「うん、わかった。 おやすみ♪」 「うん、おやすみ。」 晃は部屋を出て行く。 (晃くん…龍さんと何話してたんだろう…) 香織はそのまま眠りについた…
神谷の動きが止まった… 誰かに動きを止められた… 誰に?? 例の魔物??? いや、魔物の仕業ならここまで平穏ではないはず。 神谷もいない、魔物もいない… 誰かが、塞き止めているのか… 一体誰が?? 恵さんの話では、魔界の住人は青族の力を用いない事には太刀打ちが難しいと言っていた。 ならば、今この状況で魔物を塞き止めているのも、青族の人間と考えるのが普通だ。 でも、修羅の話通りなら青族は6人。 僕たち以外にも青族が…?? …まさか… この眼で確かめなければ… 僕が行かなくてはいけない気がする… もしかして僕を待っているの…?? 本当にそうなら…今までの事は全て………。 確かめよう… 確かめないと… 全ては明日…明らかになるはずだ… この騒ぎの原因も…青族の事も… そして… 僕の事も……………。
★EPISODE FINAL★