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地竜との戦い

著:スカイト・ユキーリア
訳:空雪
 

ここはとある洞窟(理由あって詳しい場所は言えない)…その最奥部に僕は居る。
そこは広場になっており、地面が土でできていた。

………ゴゴゴゴゴゴォォォ……

来る!!思うのと避けるのは同時。そして「ソレ」が僕の居た場所の下から現れるのも…。
緑色のゴツゴツした皮膚を持つ竜、地竜と呼ばれる生き物だ。
グゥアアアアアァァァァァ!!!
身も凍るような雄叫びが僕の体の筋肉を緊張させ、神経を研ぎ澄まさせる…。
地竜は巨体に似合わぬ素早い動作でその尻尾を叩きつけてくる。
あんな物を食らえば僕の体など一撃でぐちゃぐちゃだろう。
紙一重で尾の一撃をかわし、僕は素早くゲートの呪文を唱える。
僕が呼び出した魔物は「ターマイト」。大顎を持つ巨大なシロアリである。
地竜の殺気に過敏に反応したのか、ターマイト達は一直線に地竜を目指して突進する。
その発達した顎の一撃なら地竜の強靭な肌も貫けるはず、僕はそう判断していた。
そして巨大なシロアリの大顎が地竜の体を捉えた。
ガギッ!!
鈍い音が響く。
地竜の体のが硬質化し、ターマイトの攻撃を防いでいた。
「エンデュランス」僕は地竜がこの術を使ってくる可能性を失念していた。
次の瞬間、ターマイトは地竜の尻尾に薙ぎ払われ、壁に叩きつけられた。
ターマイトの体はばらばらになっていた、先ほどの僕への一撃とは威力が違いすぎていた。
「地竜の逆鱗に触れるな」
誰かが言っていた昔からの言い伝えが僕の頭をよぎる。
一瞬の静寂が辺りを包む、お互い相手の出方を窺っているためか。
どうすれば奴を倒せる?僕は頭をフル回転させ、考えた。
いくつかの方法が頭をよぎる。
僕は迷った。その迷いを読んだのだろうか、地竜が術を放つ。
その瞬間、僕は奇妙な浮遊感を感じた。まるで、宙に浮いているような…。
違う!!これは落ちているのだ!!
気付いた瞬間、地面に体をたたきつけられたのを感じた。しかも、肩に激痛が走る。
見ると、巨大な石の槍が僕の右肩に深々と突き刺さっていた。しかし、これでもかなり運の良い方だ。
ふと上に目をやると、地竜が大きく開いた穴に飛び込もうとしていた。
僕は、その瞬間、迷うのをやめた。
「槍よ、生命の海に生まれし無数の槍よ、我が呼び声に答え、我に牙剥く愚かなる者を貫け」
空いている左手を上に突き出し素早く呪文を唱える。右肩の傷が痛むが気にしてられない。
左手の指にはめられた虹色の指輪が青く輝く。
次の瞬間、穴に飛び込んできた地竜はその体に無数の穴を穿たれ絶命した。
そして、力を失った地竜の体が落ちてくる。そう、僕の体の上に。
「げっ、やば!」

ふぅ、とため息を吐き出し、穴の底から這い出る。
「ふぅ、やれやれ…」
地竜が落ちてきた瞬間にグラヴィトンで地竜の体を浮かせ、難を逃れたのだ。
しかし、呪文の発動が少しでも遅ければ命を失っていたところだ。
「しかし…決め手がこれじゃあ格好がつかないな…」
僕は足元に転がっていた「貝」を見つめて一人苦笑した。

〜とある召喚術師の手記〜より抜粋
 

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