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上位天使

著:グリーン=ヒル
訳:Yen-Xing
 

エルド教の司祭達が長年追求している問題の一つに次のような物がある

「なぜ、上位天使が存在しないのか?」

ぱっと聞いただけではこの問題はわかりにくいだろう。精確に把握するには天使と対称の位置にあるデーモン達と比較する必要がある。すなわち『デーモン達には明らかなヒエラルキーが存在している』という観点から天使を観察するのだ。

即時召喚可能な下級デーモン・即時召喚が不可能だが多数存在する中級デーモン・一定の各個足る存在力を持ち、デーモンの軍団さえ統括することがあるという上級デーモン そして、それら上級デーモンのさらに上に存在する……冥界の六王達である

一説には天使の側にも対極で有るとされる天使が存在していたという。「太陽を睨む天使」「月に咲く天使」が その対局である天使で有ると言われるが……ならばなぜ残りの4体の天使は失われたのか?

冥界の六王は遙かなる太古、魔法帝国が滅んだ後に登場したとされている。このときに冥界の六王(当時は六皇子)と天使達が争った結果、六王は封印され、4体の天使が滅んだとされている。

これはエルド教で一般的に話されている伝承であるが、これには有るおかしな点がある。此処で言う4体の天使がその歴史に登場するのは魔法帝国時代やその後の暗黒時代(別名:混乱の六皇子時代)より遙かに先のことであり年数にして300年は先の話である。

対というので有れば同時期に出てきてしかるべきであろう。また、当時の六皇子はまだ「魔」ではなく、むしろ4大エレメントの影響を大きく受ける各属性を持った存在であったという。となると、エルドの伝承に出てくる6大天使は冥界の六王の対ではない可能性も考えられる

では、対になる天使は最初から存在していなかったのか? それではエレメントのバランスが大きく魔に偏ることになる。この世界は有る要素が傾けば対の要素も同様の変移を見せる世界である。別に対になる存在がいる(あるいは居た)と見るべきであろう。

此処で、有る興味深い説がある。そもそも六王は最初からこの世界にいたのではなく、全く別の隣り合った世界からやってきたという説である。年代別mana測定法によれば暗黒時代は聖魔のエレメントが非常に少なく、4大エレメントが著しく増加していたとされている。manaの偏りはその前の魔法帝国時代の反動であるとされているがmanaの総量計算の結果では魔法帝国時代より暗黒時代のmana総量の方が2倍以上多いのである。これでは反動と言うことでは片づけられない。

そこで、異世界説である。

六王がこちらに来たときに相応するmanaを向こうの世界から持ち込んだとするのである。多分に帳尻合わせ的な説であるが、否定するにたる根拠もないのが事実である。ひょっとしたら6大天使はそのバランスを修正するために作られた存在なのかもしれない。登場年代に開きが有るのはそれだけのmanaを集めるのに長い時間がかかったという理由も考えられる。

もし、この説が正しいとするならば彼らが居た元の世界ではどのようなことがあったのだろう?
想像するのも面白いかもしれない
 
 

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